東大院生レポート第11回:地方創生の可能性 ~私たちができること~ | 企業のサステナビリティ経営・自治体の町づくりに役立つ情報が満載

環境戦略・お役立ちサイト おしえて!アミタさん
「おしえて!アミタさん」は、未来のサステナビリティ経営・まちづくりに役立つ情報ポータルサイトです。
CSR・環境戦略の情報を情報をお届け!
  • トップページ
  • CSR・環境戦略 Q&A
  • セミナー
  • コラム
  • 担当者の声

コラム

東大院生レポート第11回:地方創生の可能性 ~私たちができること~長濱さん@東大院生レポート

nagahama11-001.jpg先日、CSRJAPAN副編集長から、次の内容のメールをいただきました。
「ITの発達によって、いつでもどこでも欲しいものが手に入るようになった上に仕事までできてしまったら、住む場所なんてどこでもよくなりますよね。となると、自然豊かなところでのびのびと子どもを育てたく、田舎暮らしをしたくなります。」
前回はソーシャルイノベーションについて寄稿しましたので、副編集長の願いをかなえるべく、今回は地域に目を向けた地方創生について書いてみました。

写真1:長野県木曽福島赤沢美林

日本の人口減少の現状と課題

nagahama11-002.jpg国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(2012年)」によると、現在の人口減少が継続することを前提とすると、2100年には日本の総人口は5千万人弱まで減少すると見通されています(図1)。また人口流入によって東京圈に人口が集中していて(国際的にも首都圏ヘの人口集中の度合いは高い)、2050年には人口が半分以下になる地点が6割を超え、うち2割では無居住化することが予想されています。若い世代の結婚・出産・子育ての希望はかなえられるか、地方ヘの新しいひとの流れをつくれるのか、という課題が見えてきます。

図1:日本の将来推計人口(国立社会保障・人口問題研究所 2012)

地方ヘの移住に関する意向

nagahama11-003.jpg東京在住者の4割が今後地方ヘの移住を予定又は検討したいと考えています(図2)。移住の不安として「雇用」や「日常生活・交通の不便」があり、具体的な時期は期間を特定しているわけではなく、思いはあっても実行はしがたいという人たちが3割以上をしめています。移住希望は、男性は10・20代と50代で高く、女性は10・20代が高いものの、年齢が高くなると減少傾向にありますが、いずれも全体の5割近くを占めています。

図2:東京在住者の今後の移住に関する意向調査

地方創生への制度と実践

nagahama11-004.jpg政府は少子高齢化の進展に対応し、人口の減少に歯止めをかけるとともに、東京圏ヘの過度な人口集中を是正して地或で住みよい環境を確保するために、「まち・ひと・しごと創生法」が平成26年11月に公布しました。また地方版総合戦略として、成果目標・重要業績評価指標(KPI:Key Performance Indicators)の設定し、地域特性や課題を抽出する「地域経済分析システム(RESAS(リーサスRegional Economy (and) Society Analyzing System)」の提供を開始して、ビッグデータを活用し地域の特性をわかりやすく「見える化」するシステムの構築を始めています。また地方創生人材支援制度や地方創生コンシェルジュ制度など、地方創生を担う専門人材を官民協働で確保育成にも乗り出しています。こうした地域創生関連の予算措置として、地方創生先行型交付金(平成26年度補正予算)は約1,700億円が計上されました。

写真2:岐阜県東濃地域(中津川・加子母)の樹林地を巡る

地域での仕事づくりの壁

nagahama11-005.jpgテレビ・新聞等のマスメディアでも「地方創生」という言葉が多く聞かれるようになり、国の行政機関と市町村が教育機関、金融機関、労働団体、メディア等の各業界の推進組織で地方版総合戦略について審議・検討され、広く関係者の意見が反映される動きがみられるようになりました。そこでは生産性の高い活力に溢れた地域経済の構築のために、地域での仕事の創出が目指されています。しかし地方経済の活性化を実現することは容易なことではありません。若者人材の流出、地域に閉じた資金往環など、地域経済は、人材・資金両面から内部に完結した経済運営をしている一方で、日本経済全体のダイナミズムとの相乗効果が得られていない現実があります。

写真3:山梨県小菅村ワサビ田

成功している事例から

nagahama11-006.jpg「瀬戸内ブランド」*)の取組みの事例を見てみましょう。ここでは様々な地域資源を組み合わせた観光地の一体的なブランドづくり(価値を高めるブランディング化)、ウェブ・SNS等を活用した情報発信・プロモーション、効果的なマーケティング等、戦略策定等の推進組織(DMO:Destination Marketing/ Management Organization) によって、地域が主体となって行う観光地域づくりが進められています。そこにある独自の地域資源に着目して、地域で生活する人々の協力と参加により生産性が向上しているといえます。

*)瀬戸内ブランド:http://www.setouchiweb.jp/about/

写真4:茨城県筑波山から望む梅園

私たちができること ~地域の自然環境に目を向ける~

nagahama11-007.jpg地方に豊かにある自然環境資源に着目してみましょう。あなたの住むそこしかない自然は何でしょうか。よく訪れる地域はどこでしょう。そこを拠点として何がアピールできるでしょうか。見つかったら、発信しましょう。口コミやインターネットによる配信もいいですし、地元の放送局や新聞社等のメディア媒体に働きかけることで、急速に広がりを持たせることが可能となります。「ロコチャン」というサイトでは各地方放送局が地域の特性と良さを把握していて、先行事例を発信しています。

ここには「気づき⇒知らせる⇒人を巻きこむ」という仕組みがあります。地元では当たり前でも、外から見るとキラリと光る「あるもの」を発掘し、その発展を促すことによって、新たな価値の発掘が期待できます。地元の内外ヘの発信により世論を形成し、新たなネットワークの構築を図ることができます。

地方創生は、一人ひとりが地域の自然環境に目を向け、周りに知らせることから始まるのかもしれません。自分のお気に入りの山や海、川など地域の良さに出会ったら、そこで遊んで感じたことをぜひ広めてみませんか?

図3:内田竜嗣さん(東京大学)による茨城県筑波梅園に関する作品。こんな形で地域の良さを広げることもできますね。

プロフィール

nagahama_pro.jpg長濱 和代(ながはま かずよ)氏

東京都の小学校教員をしていた2006年に、国際環境NGOアースウォッチによる途上国の森林プロジェクトに参加して、地球環境の劣化を目の当たりにして以来、環境教育の可能性を模索中。2013年3月に筑波大学大学院生命環境科学研究科で環境科学修士。同年4月から東京大学大学院・新領域創成科学研究科博士課程に在籍中。

<研究テーマ>
海外の研究調査地は北インド・ヒマラヤ山麓に位置するウッタラーカンド州で、住民参加による森林管理の事例として森林パンチャーヤトを研究している。インドは今後世界中で最も多い人口を抱え、経済的かつ地球環境的変化を遂げる国の一つとして注目している。

長濱さん@東大院生レポート の記事をすべて見る
このページの上部へ