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コラム

持続可能な水産物調達に向けた4つのステップとは?WWFジャパンが語る!企業に求められる水産サステナビリティ

180119_WWF_7-001.png本コラムではこれまで6回にわたり、水産資源に関わる企業の方に向けて「水産資源の現状と企業に求められる行動」をテーマにご紹介しました。最終回となる今回は、欧米諸国の事例を参考に、「持続可能な水産物調達の実現」についてお伝えします。

<ASC認証商品が並ぶ、フランスの鮮魚売り場>

欧米で先行して進む企業の責任ある調達

水産物の将来にわたっての安定的な調達が大きな課題となっている中、欧米では多くの企業が、持続可能な水産物調達についての目標を発表することで、社会に対して公約し、その達成に向けた取り組みを推進しています。

下記に2点事例を挙げます。WWFジャパンのウェブサイトでも、その他の事例をご紹介しています。

▼マークス&スペンサー(イギリス・主要小売店)

  • 2010年に「WWFシーフード憲章」に署名し、WWFとパートナーとして、マークス&スペンサーのサプライチェーンを持続可能な水産物の責任ある調達に転換することと、世界の漁業と養殖業の持続可能性を向上させるためにリーダーシップを発揮することを宣言(※1)。
  • MSC(海洋管理協議会 以下MSC)認証水産物の調達を推進し、全ての水産物のトレーサビリティを確保した上で、持続可能性が危機に瀕する魚の調達を取止めることを含めた、持続可能な調達方針の策定を約束(※2)。
  • 自社の調達する天然魚について漁獲された海域や漁法を公表するなど、透明性のあるコミュニケーションを実施(※3)。
  • フィリピン沿岸での、キハダ漁業の漁業改善プロジェクト(FIP)に、他の企業と参画するなど(※4)、単なる持続可能な調達に留まらず、実際に漁業者の持続可能な漁業への転換を支援。

▼ハイアットホテル(アメリカ)

  • 2014年に、2018年までにグローバルの水産物調達量の5割以上を責任ある調達に切り替えると発表(※5)。
  • 上記に基づき、水産物調達量の15%をMSC認証済みの漁業、及び、ASC (水産養殖管理協議会 以下ASC)認証済みの養殖業からのものとし(※6)、危機に瀕する水産物の調達を排除する取り組みを実施。
  • 調達目標の達成に向けた世界の従業員向けのトレーニングプログラムの実施。

一方日本では、水産物を含めた調達において環境やサステナビリティに配慮するとの方針を掲げている企業は少なくありませんが、持続可能な水産物調達についての具体的な方針や目標を発表している企業は一部の例外を除きほとんどありません。よって日本の企業がどのように責任ある水産物の調達を推進していくのか、そして、どのようにその取り組みを改善していくのかが、外部からは分かりづらくなっています。

責任ある水産物調達への実現に向けたステップ

それでは、企業が責任ある水産物の調達を進めていくために、具体的にどうしていけばいいのでしょうか。そのための標準的なステップは以下の通りです。

1. 持続可能な調達方針の設定と公表

自社の水産物の持続可能な調達方針を定め、それを公表することが第一歩となります。「水産物調達にあたり、環境やサステナビリティに配慮する」といった内容では何を目指すのかが漠然としすぎていて、調達方針として不十分です。

できる限り具体的に「どのような水産物を極力取り扱わないようにするか」と「どのような水産物を優先的に調達していくのか」の双方について公式に発表するとよいでしょう。

例えば、持続可能な水産物の調達に積極的なイオン株式会社では、「イオン持続可能な調達原則」の下、「イオン水産物調達方針」を公表しており、「持続可能な商品の販売」、「違法な取引の排除」、「トレーサビリティの確立」、「定期的なリスク評価」の4つの分野で取り組みを進めるとしています。例えば、「持続可能な商品の販売」では、優先する水産物についても下記の通り発表しています。

  • イオン株式会社:持続可能な商品の販売
    ・2006年から資源の持続性と環境に配慮した天然魚の「MSC認証」商品の販売を開始。
    ・2014年3月から、責任ある養殖により生産された水産物の「ASC認証」の商品の販売を開始。 
    (イオン株式会社ウェブサイト:「イオン持続可能な調達原則」より)

2. 現状把握

次に、自社の調達状況を調査し、現状を把握します。調達先と協力し漁獲された場所や漁法を特定した上で、持続可能性の評価ができる第三者に調査を依頼するなどの方法が考えられます。

調達状況の把握においては、「サプライチェーン全体のトレーサビリティの確保」がキーワードとなります。トレーサビリティが確保されていなければ、自社が調達している水産物がどこから来ているのかを特定できず、IUU(違法・無報告・無規制)漁業に関係しているかどうかも把握できません。例えば注意すべき点として、サプライヤーから提出される書類が、実際に調達する水産物に紐付けられていないケースなどが挙げられます。

上記でご紹介したマークス&スペンサーは、自社が調達する水産物についての情報を、漁獲国、漁獲地域、漁法まで特定し、持続可能性についても確認した上で、インターネット上に公表しています。

180119_WWF_7-mands.png(マークス&スペンサー ウェブサイト
WILD-CAUGHT FISH & SHELLFISH SOURCING TRANSPARENCY 2017」より)

しかし、一般的に取り扱う魚種が欧米に比べ多種多様な日本の市場においては、一度に全ての調達状況の調査を行うのは現実的ではない場合もあります。その際は、調査対象を自社調達量の上位の魚種に絞り、それに特に調達を取止めるべき危機に瀕する魚種を加えるなど、優先順位をつけて行うのが現実的です。水産物の流通経路は複雑で、すぐには解決できる課題ではありませんが、食の安全にもつながりますので取り組んでいきましょう。

まず調達から除外するものとしては、以下の魚種が考えられます。

▼危機に瀕する魚種の例

参考となるウェブサイト 具体的な魚種
国際自然保護連合(IUCN)絶滅危惧種レッドリストでThreatened(絶滅危惧)に指定される魚種 クロマグロ、ミナミマグロ、ウナギ類 など
水産庁より発表されている直近の魚種別系群別資源評価において、資源水準が低位の魚種、資源動向が減少中の魚種 マアジ(太平洋系群)、ホッケ、トラフグ など

(参考:IUCNウェブサイト:「The IUCN List of Threatened SpeciesTM」より、
水産庁ウェブサイト:「平成29年度魚種別系群別資源評価」より)

▼水産庁:平成29年度魚種別系群別資源評価

180119_WWF_7-002.png (水産庁ウェブサイト:「平成29年度魚種別系群別資源評価」より)

なお優先して調達していくべき持続可能性な水産物かどうかの判断においては、合法性のみの確認では不十分です。さらに、該当の魚の「資源水準」に問題がない場合でも、そのまま持続可能性の担保はできません。なぜなら、持続可能性には生産や事業活動による生物多様性や地域社会への影響までを考慮する必要があるからです。第2回のコラムでご紹介した、国際的に信頼あるMSC認証制度やASC認証制度において第三者による認証を取得した水産物は、持続可能性が担保されているとみなせますので、優先的に調達することを推奨します。

3. 具体的な目標と行動計画の設定

自社の調達状況を把握した後に、持続可能な調達方針に基づき持続可能な水産物調達の目標と行動計画を策定します。ここでは、具体的で測定可能な目標をいつまでに達成するのかを明確にする必要がありますが、長くても3年間程度の短期的な目標・行動計画とするとよいでしょう。
多くの企業が困難に陥るケースとして、認証取得水産物の調達だけでは自社の調達をまかなえないというものがあります。その際に検討すべきは、MSC認証取得を目指す漁業改善プロジェクト(FIP)や、ASC認証取得を目指す養殖業改善プロジェクト(AIP)への参画です。端的に言えば、これらのプロジェクトは、水産物のサプライチェーン上の関係者が協力し、漁業・養殖業を一定期間内にMSC認証やASC取得可能レベルの持続可能なものへと改善していくものです。企業が積極的にこれらのプロジェクトを支援することは、将来的な自社の持続可能な調達目標を満たすためだけでなく、海洋環境や労働者を含めた人々の生活を改善させていくために、生産者と協力して持続可能な水産物の生産を推進していく効果があります。第6回のコラムにてご紹介しましたが、日本企業の例を挙げると、ニチレイフレッシュ社が調達先であるMMA社とインドネシアでのブラックタイガー(エビ)の養殖業改善プロジェクト(AIP)を支援し、2017年8月にASC認証を取得しています。

4. 計画実行と、定期的なレビューによる改善

実際に行動計画を実行していく中で、様々な課題が表われてくるのが普通です。また、水産物の資源状況は短期間に大きく変動するケースもあり、調達状況の調査も定期的に更新していく必要があります。企業が持続可能な水産物調達への転換を着実に進めていくためには、第三者の視点も取り入れて定期的に進捗のレビューを行うことで、絶え間ない改善を図るとともに、調達状況の変化にも対応し柔軟に目標や行動計画を見直していくことが大切です。

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上記はあくまで標準的なステップとなり、例えば行動計画の中に現状把握のプロセスを含めたり、現状の評価をある程度行った後に、調達方針を設定するなどの方法も考えられます。ただし、一般的に日本企業は調達方針の発表の前に調達状況の把握を十分に行わなければならないとの考えに縛られがちなため注意が必要です。水産物の複雑な流通形態の下で、完璧な調達状況の把握を待つのでは時間がかかりすぎてしまいます。上記の通り優先付けをして、まずは第一歩を踏み出すことが大切です。いずれにしても、持続可能な水産物調達への転換を一企業単独で行うのは困難です。サプライチェーン上の関係者との協力が不可欠であり、さらに持続可能性の改善に知見を有するNGO等の外部のパートナーと協力していくことが推奨されます。

最後に

これまで、水産物の危機的な状況などをお伝えしてきましたが、企業が持続可能な水産物調達へと転換することには様々なメリットがあります。

  • 消費者需要の確保:
    消費者は、購入する製品への環境・社会的な説明責任をますます求めるようになってきています。企業の社会的責任に関する調査によれば(※7)、世界の消費者は、価格と品質が同程度であれば、その90 パーセントが社会貢献を支えるブランドに乗り換えるとのことです。また同じく90 パーセントが、無責任な行動をとっているブランドや製品の購入をボイコットするとも答えています。
  • コスト削減と利益の向上:
    企業が、サプライヤー等のサプライチェーン上の関係者に、持続可能性についての認識を高めるようにインセンティブを与えたり、各種サポートすることで、自社の事業コストを低減させることができるとの研究結果(※8)があります。
    水産物取扱企業は、実践的なステップを踏んでいくことで消費者やステークホルダーの需要を満たしつつ、利益を上げていくことが可能です。
  • 事業リスクの軽減:
    持続可能な活動に取り組み、また強制労働を防ぐことにより、企業は風評リスクを軽減することができます。水産物を持続可能に調達・加工するよう転換することにより、企業にビジネス上の利益がもたらされます。
  • 資源を支える基盤の確保:
    地球上の数千万もの人々が、天然や養殖の水産物から生計や栄養を得ています。また、水産物のサプライチェーンの中で何百万人もの労働者が働いています。これらの人々はみな、あらゆる種類の水生生物を支える健全な海洋・淡水生態系に依存して生きているのです。


本コラムでは全7回に渡り皆様に情報をお届けしてまいりました内容はいかがでしたでしょうか

2015年に開催された国連持続可能な開発サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」において、17の「持続可能な開発目標(SDGs)」が設定されています(※9)。持続可能な水産物の調達は、特に目標12「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」、目標14「海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する」、目標17「持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する」の実現に密接に関係しています。また、2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、水産物を含めた持続可能な調達がテーマとなっています(※10)。日本において水産物を取り扱う企業には、上記のように持続可能な水産物の調達方針を設定・公表した上で、具体的な取り組みを迅速かつ着実に進めていくことが求められます。

参考

(※1)http://corporate.marksandspencer.com/plan-a/food-and-household/product-standards/raw-materials-commodities-and-ingredients/fish-and-shellfish
(※2)http://assets.wwf.org.uk/downloads/m_s_and_wwf_seafood_charter.pdf
(※3)https://corporate.marksandspencer.com/documents/plan-a-our-approach/seafood-disclosures/mns-wild-caught-fish-shellfish-sourcing-transparency-june2017.pdf
(※4)https://www.wwf.org.uk/what-we-do/projects/philippines-yellowfin-tuna-fishery-improvement-project
(※5)http://newsroom.hyatt.com/Hyatt-Announces-Major-Global-Initiative-to-Source-Seafood-Responsibly-in-Partnership-With-World-Wildlife-Fund
(※6)https://thrive.hyatt.com/content/dam/Minisites/hyattthrive/reports/CR-Scorecard-2016.pdf
(※7)http://www.conecomm.com/research-blog/2015-cone-communications-ebiquity-global-csr-study
(※8)http://corporateresponsibilityassociation.org/files/Sustainable%20Value%20Chain%20Research%20Findings.pdf
(※9)http://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/15775/
(※10)https://tokyo2020.jp/jp/games/sustainability/sus-code/

執筆者プロフィール

wwf_mr.misawa-s.jpg三沢 行弘(みさわ ゆきひろ)氏
公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)
シーフード・マーケット・マネージャー

企業等での国内外の事業の企画・推進に携わった後に、WWFジャパンに入局。WWF海洋水産グループにて、人類が自然と調和して生きられる未来を築くことを目指し、企業への持続可能な水産物調達の働きかけや、漁獲から食卓まで、持続可能な水産物サプライチェーンの構築を推進している。

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