生物多様性とSDGs(その5): 「生態系を育み、時代の変化に対応する」SDGs戦略へ | 企業のサステナビリティ経営・自治体の町づくりに役立つ情報が満載

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コラム

生物多様性とSDGs(その5): 「生態系を育み、時代の変化に対応する」SDGs戦略へ本多清のいまさら聞けない、「企業と生物多様性」

Photo_by_Ivana_Cajina_on_Unsplash(240-160).jpg本コラムでは「生物多様性とSDGs」をテーマに、アミタの本多が"超解説"をお届けします! 
5回目の今回は「市場社会における自社製品やサービスの持続可能性への対応」と「時代の変遷に伴う社会的課題への対応」について解説いたします。

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Photo by Ivana Cajina on Unsplash

さて、前回は生物多様性における「生物種の多様性」の機能と戦略に倣ったSDGs戦略(フェーズⅡ) として、「地域社会の環境や持続可能性の向上に寄与する」という視点から「自社工場や事業所が所在する地域社会(生態系)への対応」について解説しました。このフェーズⅡにおける戦略には、もう一つ、「市場社会における環境や持続可能性の向上に向けた対応」が挙げられます。ここではとくに、製造業のビジネスモデルの大転換が求められます。

▽【表-1】生物多様性の3つのレベルに対応する「SDGs戦略における企業の役割」の概念(連載2回目からの再掲載)

フェーズⅠ フェーズⅡ フェーズⅢ
生物多様性のレベル 遺伝子の多様性 生物種の多様性 生態系の多様性
生存リスクに対応する機能※ 種の存続危機に対応する 地域の生態系の危機に対応する 長期的な環境変動に対応する
生物多様性の機能に倣ったSDGs戦略における企業の役割 人類の持続可能性(生態系における物質循環)の危機への対応 地域社会や市場社会における環境や持続可能性の向上に向けた対応 時代の変遷に伴う社会的課題への対応
企業の取り組み例
  • 「分解者」としての責務を果たす
  • 廃棄物のゼロ化
  • 製品リサイクルの高度化
  • CO2排出量の削減
  • 製品やサービスにおけるCSV
  • 事業所周辺地域の生物多様性保全のCSV
  • 生物多様性を活用した環境負荷の課題解決
  • 公共的機能を果たすSDGs戦略
  • 官民連携の住民サービス提供
  • ブロック・チェーン都市計画への参画

※多様性が果たす役割には様々なものがありますが、ここでは生存リスクに対して果たす役割を紹介しています。

フェーズⅡ事例:「持続可能性という性能と品質」を可視化する

例えば製品ライフサイクル(原料調達・製造段階から消費者が製品を利用・廃棄するまでの過程)の中での環境負荷を減らし、持続可能性を高めた商品開発をしていくことが不可欠となります。運搬用のドローンのように、社会変革やイノベーションに対応する代替不能な新製品の場合であれば、当面は新規需要が見込めるでしょう。しかし、例えば自家用車のような既存の耐久消費財の場合は、新しい付加機能の魅力を訴えて買い替え(=旧製品の廃棄等)を促すような商品開発は、もう時代遅れなのです。

これからの工業製品に求められるのは「高機能」や「省エネ性能」だけではありません。長く使える「耐久性」や、繰り返しの修理にも低コストで対応できる「整備性」、そして製品寿命を迎えた時に利用可能なパーツを新製品に流用できる「再利用性」、さらには自動車における自動ブレーキや自動運転のような最新機能をアップデートで後付けできる「改良対応性」が重要になります。「自動運転の新型車を所有したい」というニーズを求めるのではなく「今の車に常に最新の自動運転システムを付けたい」というニーズに応えるのです。

同時に「製品を購入したい顧客」よりも「製品の機能(サービス)の提供を受けたい顧客」に向けたリース中心の商品開発も重要になるでしょう。消費者が製品を購入しなければ廃棄の必要もなくなり、製造者側の管理責任で資源を再利用できるからです。いわゆる「サービスとしての製品」の提供ビジネスです。いくつか例をあげると、以下のようなものがあります。

  • 車を製造して売るのではなく、リースやシェアリングでのサービスを提供する。
  • 照明灯や照明器具を売るのではなく、リースで照明サービスを提供する。

これらのサービス提供ビジネスは多くの工業製品で応用でき、その需要は今後急上昇するはずです。例えば、巷では基本性能や省エネ性能が最新型とさほど変わらない"10年落ち"のハイブリッドカーが元気に走っていますが、自動ブレーキや自動運転システムは現在と10年後では比較にならないほど進化します。つまり、新型車に搭載された「最新の自動運転システム」が、1回目の車検を迎える前に「数世代前の旧式システム」にもなりかねないのです。そこで、既存の車両に後付けできる(もちろん信頼性も高い)自動ブレーキや自動運転システムが開発され、それをリースで提供するような新サービスが誕生すれば、市場は諸手を広げて歓迎するでしょう。リースであれば日進月歩で性能が向上するシステムを都度更新でき、旧システムの製品を利用者が廃棄せざるを得ない状況も生じなくなります。そのような製品ライフサイクルの中で成功する、新しいビジネスへの転換が求められています。これからの工業製品、とくに耐久消費財としての工業製品には、そのような視点からの商品開発とサービス設計が必要になることは間違いありません。

一方でプラスチック製の容器類のような消耗品であれば、国際的な認証機関によって海洋環境での十分な生分解性が認証された生分解性プラスチックなどの代替素材への転換が求められます コストが上がるから対応は先延ばしにしたいと思うところでしょう。しかし、代替素材を使用した製品でなければ、コスト云々以前に製品を輸出できなくなる時代が目前に迫っているのです。食品や飲料、生活用品、医療品等の容器で幅広く使用されている従来型のプラスチックから持続可能な代替素材への転換は、既に国内の多くの製造業にとって自社の存続にも関わる逼迫した緊急課題なのです。

本コラム連載の1回目で申し上げた通り、SDGsは「競争のグローバル化から共生のグローバル化へ」のパラダイムシフトを促す取り組みです。そこでは「持続可能性という性能と品質」を可視化するための大転換が、未来を担う製造業に求められているのです。

フェーズⅢ事例:「生命の最終的な安全保障システム」に倣うSDGs戦略とは

さて、次はいよいよ生物多様性における「生態系の多様性」の機能と戦略に倣ったSDGs戦略(フェーズⅢ) として「時代の変化や社会的変動に伴う課題への対応」についての解説をさせていただきます。

まず「生態系の多様性の機能」とは何かを振り返ってみましょう。もし仮に温暖化で地球上の全ての陸地が砂漠化したとしても、生命はそう簡単には滅びません。多くの生物種が滅んでいく一方で、現状の砂漠で暮らしている生物が生息域を拡大し、新たな生態系を築きます。反対に氷河期で全地球が寒冷化したら? そう、現状の北極圏や南極圏、そして高山帯の生物が生息域を拡大させ、新天地で新たな生態系を築くのです。つまり「生態系の多様性」とは、地球規模での長期的な環境変動のような重大危機においても生命を持続可能に維持・発展させてきた戦略的な機能そのものであり、「生命の最終的な安全保障システム」とも言えるものなのです。だからこそ生命は、40億年の歴史の中で巨大隕石や破局噴火による大絶滅時代をも乗り越え、今日に至る「進化と発展」を続けてこれたのです。

この「長期的な環境変動に対応する」という機能に倣った企業のSDGs戦略が、フェーズⅢとしての「時代の変遷に伴う社会的課題への対応」です。その課題内容はそれぞれの国家や地域の状況によって異なるものですが、我が国の場合、時代の変遷と共に深刻化する「地域社会の過疎高齢化」や「少子化」「都市部への一極集中」などを背景とする「地域コミュニティの喪失や弱体化」が筆頭に挙げられるでしょう

こうした課題は、地域における「自治体行政の機能不全」という形で顕在化します。地域コミュニティの自治機能が衰退する一方で、個々の人々の生活様式が多様化しているため、行政サービスの仕事は質・量ともに増え続ける一方です。にも関わらず必要な予算もマンパワーも確保できないため、多くの地方自治体で行政サービスが「立ち枯れ状態」を迎えつつあります。

このような状況に対応する企業のSDGs戦略として「市場や社会における(SDGsの目標達成に資する)公共的な機能への参画」が挙げられます。もちろん、現状の公共事業においても多くの民間企業が競争入札や随意契約で参画していますが、それは自治体が定めた業務仕様と公的予算に従うケースがほとんどです。この場合の「企業の公共機能への参画」とは、ビジネスを通じて主体的に自治体サービスを代替し、その機能や価値を向上させることで「第2の公」たる存在になることを意味します。

「第2の公」を目指すビジネスモデルへ

では「第2の公」たるビジネスモデルの具体例として、どのようなものが挙げられるでしょうか。一つの取り組み事例として弊社アミタグループが東日本大震災の被災地である宮城県南三陸町で展開中の地域デザイン事業をご紹介したいと思います。

アミタグループは南三陸町との協働により、地域に眠っている未利用の資源や価値を可視化・増幅させつつ、地域コミュニティを活性化させる資源循環事業地域ブランディング事業を展開しています。

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これらの事業の中核となる取り組みは、これまで主に公的インフラにより「処理」がなされてきた地域の廃棄物系バイオマス(生ごみ、し尿・合併浄化槽汚泥)の地域資源としての資源化・有効活用です。

具体的には、2015年10月にバイオガス施設「南三陸BIO(ビオ)」を開設し、バイオガスによる資源循環事業を展開しています。地域内から回収した生ごみ等からバイオガスと液体肥料(有機肥料)を生成するのです。

(写真説明:資源・エネルギーの地域内循環を担う拠点として2015年に開設されたバイオガス施設「南三陸BIO」。官民連携のスキームでバイオガス事業を展開している(生ごみを利用したメタン発酵)。資源循環事業を通じて多くの人々のネットワークを育んでいることから「地域の関係性を育むインフラ」としても高く評価され、町内外からの視察も多数受け入れている。)

バイオガスは電気及び熱として利用し、液体肥料は地域の農地で利用します。液体肥料は化学肥料に対する持続可能な代替物となり、コスト削減と農作物のブランド化につながります。

また、循環しているのは資源だけではありません。持続可能な地域をつくろうという住民の意志も循環しているのです。生ごみ分別という「全住民が共有する日々の営み」を通じて、地域コミュニティにおける住民間の関係性が深まり、活性化が進んでいます。未曾有の震災の後で自宅に引きこもりがちだったお年寄りも、分別活動を通じて家の外に顔を出すようになり、地域社会とのコミュニケーションが活発になりました。

一方で地元の若者たちは、資源循環事業を通じて地域の取り組みへの関心を高めると共に、持続可能な地域産業を目指す循環型農業や、FSC®森林認証、ASC養殖認証など、まさしく「持続可能な開発目標=SDGs」に資する取り組みが次々に展開される様を目の当たりにし、故郷への誇りと愛着を深めていきました。

そして地元の高校生の卒業時の定住意志アンケートで「卒業後も南三陸町に住み続ける」と回答した生徒の割合を、資源循環事業が展開される前と後で比較すると、実に4割以上も上昇する結果となったのです。にわかに信じがたいほどの驚異的な急上昇率ですが、同高校の校長は「資源循環事業が生徒たちの意識を変えたのは間違いありません」と明言されていました。

若者の定住化促進につながる事業は、日本社会における「時代の変化や社会的変動に伴う課題への対応」として最も重要なテーマの一つになるでしょう。その点ではまさしく「生態系の多様性に倣ったSDGs戦略」の具体例になるのではないかと思います。

☆南三陸町の資源循環事業の詳細については
弊社発行の電子書籍「バケツ一杯からの革命」をご参照ください。

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このような成果を生み出している弊社の地域デザイン事業ですが、自治体との契約や予算の中で展開している事業ですから、事業予算は税金に基づくものです。一方で、自社の既存事業の収益から予算を確保し、さらなる収益を生むための投資として「第2の公」の役割を果たすビジネスモデルも考えられます。つまり民間主導のCSV(共有価値の創造)としてのビジネスモデルです。次回は、その具体的な内容について解説させていただきたいと思います。

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アミタでは、生物多様性戦略/環境調査サービスを提供しています。

seibutu_tayousei.png企業活動が生物多様性におよぼす影響の把握やリスク分析には高度な専門性と多くの時間が必要であり、具体的な進め方に悩む企業が多いのが現状です。アミタは周辺の里地・里山・田園と連携した生物多様性の保全・向上施策など、地域社会の持続性に貢献する本質的なCSV戦略の立案・実施をご支援します。

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e-book04-160.png宮城県北部、人口約13,000人の町で今、過疎やコミュニティ崩壊といった地域課題に真正面から立ち向かう革命が起きている。南三陸町で実践される循環のまちづくりについて、本コラム著者、本多が取材しました。

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執筆者プロフィール(執筆時点)

本多 清(ほんだ きよし)
アミタ株式会社
環境戦略デザイングループ 環境戦略デザインチーム

環境ジャーナリスト(ペンネーム/多田実)を経て現職。自然再生事業、農林水産業の持続的展開、野生動物の保全等を専門とする。外来生物法の施行検討作業への参画や、CSR活動支援、生物多様性保全型農業、稀少生物の保全に関する調査・技術支援・コンサルティング等の実績を持つ。著書に『境界線上の動物たち』(小学館)、『魔法じゃないよ、アサザだよ』(合同出版)、『四万十川・歩いて下る』(築地書館)など。

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