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コラム

プラスチックごみ問題と向き合うために必要なこと-コンプライアンスだけで十分なのか?− 初心者向け原田先生の廃プラ問題最前線!企業におけるリスクとチャンス

Photo_by_Brian_Yurasits_on_Unsplash.jpgプラスチックごみ問題が社会の関心を集めるようになって、様々な企業の方から「コンプライアンスの観点から助言してほしい」とご要望をいただくことが多くなりました。しかし、海洋プラスチックごみをめぐる問題には、日本はもとより海外でも使い捨てプラスチックの使用禁止やプラスチックごみの完全な回収を保証するような抜本的な法規制はそもそも存在しません。では、こうした状況のもとでどのようにビジネスを展開していけばいいのでしょうか?最終回の今回は、企業は廃プラスチック問題とどう向き合えばいいのか、考えます。

Photo by Brian Yurasits on Unsplash

※本コラムでは、今話題の"廃プラスチック問題"について、大阪商業大学公共学科准教授の原田禎夫氏に分かりやすく解説いただきます。コラム一覧はこちら

廃プラスチック問題における、技術的解決の見通しは?

海洋ごみの大半は、陸域を起源とし河川から流出したいわゆる「使い捨てプラスチック製品(Single-use plastic waste)」といわれています。
こうした中、生分解性プラスチックをはじめとした代替素材の開発などが急速に進んではいますが、生分解性能の評価手法自体がまだ十分に定まっていない状況です。また、既存のプラスチック製品の全てを代替することは今すぐには不可能であると考えられます。

一方、リサイクル率の向上については、技術的課題が多い上に、リサイクルそのものに大量のエネルギーを要することから、リサイクルを推進するだけでプラスチック依存社会から脱却することは出来ないでしょう。「熱回収も有効に活用にしつつ、CO2回収・貯留(CCS)技術を活用すべき」という意見もありますが、ごみ処理の大半を担う地方自治体の財政状況は厳しく、こうした「高価な技術」を導入することが難しい地域も少なくありません。以上から、技術的な解決方法の模索が進んでいますが、ただちに改善することは難しいと考えられます。

法的規制の現状とは?

先進国、途上国を問わず、多くの国で、使い捨てプラスチック製品に対する拡大生産者責任(EPR)の導入や使用禁止など、法的拘束力を持った規制がすでに導入されています。例えば、下記が挙げられます。

年度 国名 内容
2015 フランス 2020年から使い捨てのコップや皿、ストローなどの使用を禁止する「緑の成長のためのエネルギー転換法」を制定。
2018 台湾 ストロー、コップ、レジ袋などの使い捨てプラスチック製品の使用禁止範囲を2019年から段階的に拡大し2030年までに全面禁止。
2019 EU 使い捨てプラスチック製品の流通を2021年までに禁止する「特定プラスチック製品の環境負荷低減に関わる指令」を採択。

表:筆者作成

しかし、日本では、現行の容器包装リサイクル法のもとでは、このような規制はきわめて不十分で、回収・リサイクルにかかる費用が価格に内部化されていません。こうした法整備の状況によって、事業者や消費者に十分なインセンティブが働かず、環境中へ大量にプラスチックごみが流出する結果につながっていると考えられます。

海洋ごみ問題の解決には、河川や海でのごみの回収・処理活動の強化に加えて、法規制や経済的インセンティブを活用した発生抑制策の充実が急務であることは論を待ちませんが、こうした制度整備には多くの時間を要し、急速に深刻化する問題に十分に対処することはできません。

社会的営業免許の可能性

上記のように、技術的解決や法による規制は時間がかかるものです。しかしそれを待っていては、問題は深刻さを増すばかりです。こうした中、政府や企業の取り組みを補完する仕組みとして社会的営業免許(SLO:Social License to Operate、または社会的免許)が提唱されています。

この社会的営業免許は、もともとは生物多様性保全の議論を通じて、2000年代に入って唱えられるようになったものであり、企業が社会に貢献していることが政府や人々から認められることで、営業活動の継続が認められるというものです。社会的営業免許は、法的免許とは異なり、政府の許認可にもとづく「免許証」や「許可証」といったものではありません。また、ロビー活動によって獲得される政治的免許とも異なり、政治家や官僚のような権力を持った特定の個人によって付与されるものでもありません。あくまで、消費者やメディアなど社会におけるステークホルダーが特定の企業の活動について、社会に貢献していると認めている状態を指します。例えば、日本企業もかかわっているボリビアでのサン・クリストバル鉱山の操業をめぐる地域住民との交渉過程が、社会的営業免許の獲得をめぐる事例として知られています。

図1 法的免許,政治的免許と社会的免許

no6_image001_191226.png出所:Morrison (2014)をもとに筆者作成

社会的営業免許は、企業の取り組みが社会にどのような便益を生じているのか、社会の同意を得て、社会正義に則ったものであるかどうかによって決定されるのです。

図2 社会的営業免許(SLO)の4つのレベル

no6_image002.png出所: Land Based Aquaculture 「Social Licence」をもとに筆者作成

なお、社会的営業免許には4つのレベルがあると言われており、図2はそれらを示したものです。たとえ法的には問題がなかったとしても、もし企業活動が社会的な同意を得られないと、市民や地域社会から場合によっては妨害を受け、事業の継続が難しくなるでしょう。一方、市民や地域社会の理解をより広く得られるほど、企業活動は社会に受け入れられ、場合によっては市民や社会と理不尽な批判に対して共闘することすら可能になります。

社会的営業免許とプラスチック問題の今後

では、企業はどうすれば社会的営業免許を得られるのでしょう?たとえばCSR活動は、社会的営業免許を得るための1つの方法といえます。ほかにも、地域住民やNGO/NPOと対等な立場で意見をかわし、地方自治体や国とも対話を重ね、市場の動向にも注意を払い、場合によっては国際的な世論をも味方につけるなどして、企業は様々な場面で社会的営業免許を獲得することができるでしょう。

プラスチック問題に当てはめて考えると、急速に悪化する海洋プラスチック汚染を前に法令の整備はまだまだ不十分であり、これまでのコンプライアンスの考え方だけでは不十分です。本当にプラスチックが必要な場面はどのようなものなのか、代替素材はないのか、そうしたことを企業自らが見極め、社会と対話すること、地域レベルから国際的レベルまで、価値観を共有できるかどうかが今まで以上に重要になります。海洋プラスチック汚染の深刻さが明らかになるにつれて、政府の規制を待たずして積極的に脱プラスチックに取り組む動きが特に海外の企業を中心に多く見られます。

一方で、日本国内では代替素材の開発など技術的な対策は進んでいますが、上記のような全体的な社会との対話のプロセスは一歩遅れている印象があります。もし、こうしたプロセスを無視し、形だけの対策を採ったとき、場合によっては「グリーンウォッシュ」(あたかも環境に配慮しているかのように見せかけること)と、かえって批判を浴びるかもしれません。

たとえば、日本では来年7月から始まるレジ袋有料化に際して生分解性のレジ袋は対象外として認められました。しかし、海外ではそもそも「生分解性」という言葉そのものを使うことを禁止したり、生分解性のレジ袋も従来品のレジ袋と同様に禁止したりする動きもあります。その理由は、生分解性といえどもきわめて限られた条件のもとでしか分解しないこと、また従来品との識別が困難なため、プラスチックのリサイクルにも大きな影響を与えかねない、といったことがあります。あるいは消費者や企業が(実際にそうとは限らないにもかかわらず)「環境にやさしい」と誤解しかねないことも指摘されています。そのため、英下院の環境・食糧・農村地域委員会は「プラスチック包装を代替素材に置き換えるのではなく、使用そのものを減らすことに焦点を当てるべき」と報告しています。

もちろん生分解性プラスチックそのものを否定するわけではありません。しかし、たとえば国内外で使い捨てプラスチックの象徴としてレジ袋への規制が強まり市場が確実に縮小している中、多額の費用(時間も含む)をかけて生分解性プラスチックのレジ袋を開発すること、あるいはそうした事業への投資については、長期的な視点で、その効果や影響を十分に検討し、判断することが大切だと思います。

私たちの生活に深く根ざしたプラスチックごみをめぐる問題の解決には、これという特効薬はありません。これまでのように、ごみ問題は「消費者のモラルの問題」と片付けたり、法令違反を犯していないから大丈夫と考えたりしているだけでは通用しない時代を迎えているといえるでしょう。プラスチックごみ問題と向き合い、的確な判断を下すために必要なことは何か。それは今まで以上に、社会との「対話」を重ねること、が私からの答えです。

参考文献
関連情報

廃棄物処理・リサイクルにお困りでしたらぜひアミタへご相談ください。

執筆者プロフィール

mr.harada.jpg原田 禎夫(はらだ さだお)氏
大阪商業大学 公共学科 准教授
NPO 法人プロジェクト保津川 代表理事

1975年京都府生まれ。現在、大阪商業大学公共学部准教授。近年深刻な問題となっている海や川のプラスチック汚染について、内陸部からのごみの発生抑制の観点から取り組むNPO法人プロジェクト保津川代表理事。

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