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コラム

今、起きている新たな「社会的孤立」地域共生社会実現のヒント 〜コミュニティコーピング〜

Image by Steve Buissinne from Pixabay .jpg本コラムでは、地域共生社会実現のヒントをテーマに全6回にわたり超高齢社会における「社会的孤立」という問題とその解消を目指すコミュニティコーピングというプロジェクトについてご紹介していきます。
第2回は「社会的孤立(※)」が広く社会全体に与える影響と地域共生社会が解決すべき課題について考察します。

(※)社会的孤立:必要なときに必要な助けが届かない状態。
詳しくはこちら:本コラム第1回「超高齢社会における「社会的孤立」の問題」

Image by Steve Buissinne from Pixabay

高齢者、3軒に1軒は「ひとりぐらし」

少子化と高齢化に伴い、総人口に対する高齢者の割合が増えることが予測される中、日本におけるもう一つの特徴として、世帯の小ささとそれに伴って高齢者のみの世帯が占める割合の高さが挙げられます。
2015年の国勢調査に基づいた国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によると、2020年の時点で世帯主が65歳以上の一般世帯のうち、単独世帯が34.0%、世帯主が後期高齢者となる75歳以上の一般世帯の中では単独世帯が38.0%になるとされています。つまり、高齢者の世帯において3軒に1軒はひとりぐらしということがわかります。今後、高齢者の割合が増えると同時に世帯の縮小、もっと言えば家族で自助できる範囲の縮小が進むということが予想されます。

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表:世帯主65歳以上・75歳以上の世帯の家族類型別世帯数,割合 (2015~2040年)
参考:国立社会保障・人口問題研究所 日本の世帯数の将来推計(全国推計)(2018年推計)

また、内閣府による60歳以上を対象とした意識調査によると、病気等の際に配偶者や子を頼ることを想定している人が多いことがわかります。ここで、夫婦のみの世帯や単身者等で子や頼れる親族がいない人の場合、自分が困ったときに誰に頼ればよいのかという問題がでてきます。

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図:病気や一人でできない仕事の手伝い等に頼れる人(複数回答)
参考:内閣府 平成30年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査結果(概要版)

現在、コレカラ・サポートに寄せられる相談も約8割がこの夫婦のみの世帯や単身者等、子や頼れる親族がいない方からのものです。その中には、心身に何らかの不調を抱えているケースが数多く見受けられます。また最近では、病院の入院や介護施設の入所などで求められる身元保証に関する相談も増えてきています。公的な支援制度がないため監督省庁の規制がない民間の保証人代行サービスを利用するケースも増えてきています。しかし、こうした民間の保証人代行サービスについて、数年前に公益性の高い公益法人が倒産し契約不履行になるなどの問題点も指摘されています。

現役世代へのしわ寄せ

「社会的孤立」の問題は、健康との関係性から高齢者の社会課題として取り上げられる機会が増えてきましたが、決して高齢者だけの問題ではなく、現役世代にもその影響がおよんでいます。
例えば「介護・看護」を理由とする離職者(介護離職者)は、5年ごとに実施されている総務省「就業構造基本調査」によると2017年時点で年間で約10万人。2007年から10年間の統計を比較しても、介護離職者数・介護離職率ともにほとんど変わっていません。2015年9月安倍内閣(当時)は安心につながる社会保障を掲げ、2020年代初めに介護離職ゼロを達成することを目指しましたが、図からもわかるように目標達成は非常に厳しい状況です。現役世代の人口が減少していく中で、企業にとっては人材流出による労働力不足、社会全般においては経済活動の減速にもつながる深刻な問題となってきています。

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図:介護・看護により離職した人数 
参考:令和2年版高齢社会白書(全体版)

また、2020年に埼玉県が県内の高校2年生を対象として家族を介護した経験について調査行ったところ、回答者(48,261名)のうち、障害や病気などが理由で「はい」と答えた数が4.1%(1,969名)という結果が出ています。さらに、1,969名へのアンケート調査によると、学校生活に「影響なし」と答えた生徒が41.9%いる一方で「孤独を感じる」「ストレスを感じる」「勉強時間が充分に取れない」などの回答も挙がっています。

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図:学校生活への影響(複数回答) 
参考:埼玉県ケアラー支援計画のための ヤングケアラー実態調査結果(2020年)

「社会的孤立」は、社会的背景や家庭の事情など様々な要因が複雑に絡み合うことで表面化しにくいという特徴があります。その中でどのように孤立している人の状況を把握していくかが、今後の問題解決への糸口になると考えています。

コミュニティコーピング誕生の経緯

超高齢社会の様々な問題の根っこにある「社会的孤立」。実は私たちは、昔から世話焼きなおばさんや市民活動団体など自分たちの周りに問題解決の素地を持っています。そこで、コレカラ・サポートでは「社会的孤立」の解消を目指し、相談支援の現場において"当事者と家族の両方の立場から問題を考え"、"4つの視点から課題を整理し"、"支援が必要な人と専門職や地域資源をつなげる"という活動を「コミュニティコーピング」と呼んで実践しています。

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図:4つの視点

「コーピング」とは元々、課題と向き合い対処するという意味です。困っている人が助けを求めるだけではなく、①まわりの人たちがちょっと勇気を出して声をかけてあげる状況をつくること、②支援が必要な人と地域資源・専門職とをつないでいくことが重要です。イギリスでは、患者の非医療的ニーズに目を向け地域における多様な活動や文化サークル等の地域資源とマッチングさせることにより、患者が自律的に生きていけるよう支援するとともにケアの持続性を高める「社会的処方」という考え方があります。従来の医療の枠組みでは対処が難しい問題に対して、薬ではなく「地域での人のつながり」を処方するのです。ここで活躍するのが患者と地域資源をつなげる役割を担う「リンクワーカー」という存在です。私たちが取り組む「コミュニティコーピング」においても、課題の当事者と地域資源とを上手くマッチングをさせる役割を担う人材が、地域共生社会実現に向けた大きな駆動力になると考えられます。
第3回では、再注目されるコミュニティの重要性と「リンクワーカー」として求められる人材について取り上げます。

参考情報
コレカラ・サポートでは、超高齢社会体験ゲーム「コミュニティコーピング」体験会を開催しています!

korekara.pngコレカラ・サポートでは、人と地域資源をつなげることで「社会的孤立」を解消する協力型ゲーム「コミュニティコーピング」の体験会を毎月オンラインで開催しています。ゲームを通じて体感的に、超高齢社会や「コミュニティコーピング」の概念に触れ、理解することができます。第1回全日本ゲーミフィケーションコンペティション準グランプリ受賞。
研修やワークショップなどでの導入を検討してみたい方、まずは体験会へのご参加をおすすめしています(個別のご相談も承ります)。
詳しくはこちら https://comcop.jp/index.html

執筆者プロフィール

mrchiba.png千葉 晃一(ちば こういち)氏
一般社団法人コレカラ・サポート 代表理事

金融機関の個人資産相談部門を経て2009年独立。2011年から相続や財産管理等、高齢期の複雑多岐な悩みを専門家がワンストップで対応する「コレカラ・サポート」を設立・運営。
NHK首都圏ネットワークの特集「プロジェクト2030」で介護者支援、遺族支援の活動が紹介される等、注目を集めている。
(一社)コレカラ・サポート https://koresapo.net

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