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コラム

地域に必要な支援「コミュニティコーピング」を超高齢社会体験ゲームで学ぶ地域共生社会実現のヒント 〜コミュニティコーピング〜

AdobeStock_299007374.jpegのサムネイル画像本コラムでは、地域共生社会実現のヒントをテーマに、全6回にわたり超高齢社会における「社会的孤立」という問題と、その解消を目指すコミュニティコーピングというプロジェクトについてご紹介していきます。
最終回の第6回は、現在コレカラ・サポートが普及活動を行っている、超高齢社会体験ゲーム「コミュニティコーピング」を紹介します。

※コミュニティコーピング...コレカラ・サポートでは「社会的孤立」の解消を目指し、相談支援の現場において"当事者と家族の両方の立場から問題を考え"、"お金・健康・住まいと生活・人間関係の4つの視点から課題を整理し"、"支援が必要な人と専門職や地域資源をつなげる"という活動を「コミュニティコーピング」と呼んで実践しています。

「社会的処方」を取り入れた超高齢社会体験ゲーム

第五回の記事では、地域共生社会実現に向けた行動変容のヒントとして、社会問題や地域問題を自分事として人を巻き込む「ゲーミフィケーション」という考え方を紹介いたしました。
今回は、超高齢社会の疑似体験ができる超高齢社会体験ゲーム「コミュニティコーピング」を紹介します。
超高齢社会体験ゲーム「コミュニティコーピング」は、第4回でご紹介した「社会的処方」を用い、人と地域資源をつなげることで「社会的孤立」を解消する協力型のゲームです。プレイヤー同士が協力し、孤立する人の本当の悩みを引き出して、専門家や地域の人たちにつなげていくことで「解決」を目指すというストーリーをゲームによって体験していく内容になっています。
ゲームはオンライン版を2020年10月にお披露目し、体験会にはこれまでに約180人が参加しています。2020年11月開催の「第1回全日本ゲーミフィケーションコンペティション」では、ゲームに出てくる住民の悩みがリアルであり、親の介護、空き家の問題、8050問題など、実社会で起きている社会問題と、ゲーム性を両立させたことが評価されて準グランプリを受賞しました。また、2021年4月にはボードゲーム版を制作するため、インターネットで寄付を募るクラウドファンディングを実施したところ、目標額の倍以上100万円超の寄付が集まり、同年7月にボードゲーム版が完成しています。
これらの活動が、新聞やラジオなどの各メディアにも取り上げられたことをきっかけに、高校や大学などの教育機関や、自治体などから勉強会や研修ツールとして「コミュニティコーピング」を使いたいという要望や、企業のCSRとして普及活動を支援したいという申し出が寄せられるようになってきています。

▼ゲームの基本設定と遊び方

ゲームに参加するプレイヤーは基本4~6名で、まず、「研修中の医大生」や「カフェのマスター」、「自治会の会長」など、まちの中の住民キャラクターを担うことから始まります。それぞれが、話を聞くのが得意だったり、経済的な相談に力を発揮したりするといったスキルを持っています。住民の住む地域は、A~Fまで6つの地区に分かれており、スタートの時は「2021年」と設定されています。
各プレイヤーは、自分の手番に2つのアクションを行います。まず「今後の生活が不安」「家族のことで悩んでいる」といった漠然とした悩みが書かれている「住民カード」を山札から引き、カードに指定された地区に置きます。次に、以下の3つのうちのどれか1つを選択して実行します。

  • プレイヤーの3つの選択
  1. 住民に声をかけて本当の悩みを引き出す「COPING(コーピング)」
  2. 訪問診療医、ケアマネジャーら専門家や施設などの地位資源と自分自身が関係を築く「つながり」
  3. 「COPING(コーピング)」によって本当の悩みが明らかになった住民に対し、「つながり」で得た地域資源を紹介するなどして解決を図る「処方」

プレイヤーの手番が一巡するとゲームでは1年が経過したことになり、その時点で悩みが解決されていない人が1つの地区内に4人以上残っていれば「地域崩壊」で全員がゲームオーバーとなってしまいます。2021年から2030年末までの10年間、すべての地区A~Fを存続できるようプレイヤーは協力しながらゲームクリアを目指します。


gazou11.png超高齢社会体験ゲーム「コミュニティコーピング」

ゲームを通じて超高齢社会の課題を学ぶ

このゲームは、内容がすべて現実とリンクしているのが大きな特徴です。実は、住民カードを山札から引いた状態では、その住民の本音はわかりません。なので、まずは声をかける「COPING(コーピング)」によって、カードの裏側に書かれている本当の悩みを知ることがポイントとなります。悩みの種類は「お金」「健康」「住まい・生活」「人間関係」の4つに大別されています。例えば、「妻が認知症に。元気なうちは良いが、自分が入院したり、介護が必要になったりしたらどうすれば良いのだろう」「先日、定期健診でがんの再発がみつかった。今後の自分の治療だけでなく、生活や子供たちの将来のことなどが不安」「5年前から義母の介護をしているが、実家の母親も介護が必要になってきた」など、住民が抱える悩みは、いずれも私たちが実際に受けた相談がベースとなっています。

jumincard.PNG中には、1人の住民が複数の悩みを抱えていたり、ターンによっては突然、住民カードを一度に2枚引く、つまり悩みを抱える住民が倍に増えるなどの「ハプニング」が起きたりします。そのため、ゲームクリアを目指すには、プレイヤー同士の連携が重要になってきます。お互いの得意を活かしつつ、どの地域のどの悩みに対処するか、誰が本当の悩みを引き出すかなどを話し合わないとゲームクリアはかなり難しく、限られた地域資源を最大限活かすうえでの鍵は、住民同士の協力であることが実感できる内容となっています。
また、ゲーム終了後には振り返りの時間を設けて、ゲーム終了後の地域の現状や、起きた結果の要因分析、「実際によりよい地域にするために自分にどんなことができるか」などを話し合います。

これにより、今まで社会問題や地域課題にあまり関心がなかった人には「こういった事が身の回りで実際に起きている」ということを知るキッカケや、自分自身がそういった問題と直面したときに「これはあの時にゲームでやったことでは?」となって、次のアクションに結び付けるためのヒントを得るなどの効果が期待できます。また、実際に地域で活動している人にとっては、「ゲームではこうだけど、実際にはこういったことなのですよ」といった知見を参加者に共有することが、現実の問題をより深く考えるきっかけとなったりもします。プレイヤー同士の新たな視点が加わることで、互いに気づきを得ることができ、新たな連携を図る動きが生まれるといった効果もあらわれ始めています。


gazou10.jpgゲームの振り返り


gazou5.1.jpg.png高校での出張体験会&出前講座



画像6.1.jpg.png高校でのゲーム体験会の様子

今後の展望について

今後は、一人でも多くの方々に地域共生社会実現のヒントである「コミュニティコーピング」を体験していただけるよう、教育機関だけでなく、自治体での市民講座や職員の研修、市民活動領域など活動の幅を広げていく予定です。私たちは「コミュニティコーピング」を通して、誰もが「助けて」と言い合える社会の実現を目指していきたいと考えています。

本コラムでは、全6回にわたって地域共生社会実現のヒントとして「社会的処方」「リンクワーカー」「行動変容」「ゲーミフィケーション」など様々なキーワードを紹介してきました。地域共生社会実現には、地域住民一人一人が当事者意識を持つことが重要です。地域内に困難を抱え孤立する人がいた場合には、医療従事者など専門職だけでなく、周囲の人たちが地域資源へと橋渡しする存在になることが重要になってきます。本コラムが参考になりましたら幸いです。

超高齢社会をゲームで疑似体験 「コミュニティコーピング」出張体験会&出前講座を開催しています!

gazou4.pngコレカラ・サポートでは、超高齢社会の様々な問題を疑似体験できるゲーム「コミュニティコーピング」の出張体験会&出前講座を行っています。ゲームを通じて超高齢社会の社会問題や地域課題を体感し、「コミュニティコーピング」の概念に触れ、理解することができます。現在、高校や大学の総合学習の一環、自治体等での市民講座や関連職種の研修としてお問い合わせをいただいています。導入を検討したい方は、まずは弊社主催の体験会へのご参加をおすすめしています。
詳しくはこちら
https://comcop.jp/

執筆者プロフィール

mrchiba.png千葉 晃一(ちば こういち)氏
一般社団法人コレカラ・サポート 代表理事

金融機関の個人資産相談部門を経て2009年独立。2011年から相続や財産管理等、高齢期の複雑多岐な悩みを専門家がワンストップで対応する「コレカラ・サポート」を設立・運営。
NHK首都圏ネットワークの特集「プロジェクト2030」で介護者支援、遺族支援の活動が紹介される等、注目を集めている。
(一社)コレカラ・サポート https://koresapo.net

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