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硫化水素の危険性と抑制方法について教えてください。

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脱硫を行う施設や各種排水処理施設などで発生しやすい硫化水素は、急性中毒による死亡災害の原因になるなど、注意が必要な物質です。各現場で発生を抑制するために、どのような点に注意すべきでしょうか。発生の経緯から抑制方法までをご紹介します。

硫化水素とは?

硫化水素とは、硫黄と水素の無機化合物で、常温常圧化においては、特徴のある腐卵臭を持つ無色の気体として存在します。特に硫化水素が発生しやすい施設としては、石油化学工業の脱硫を行う施設、半導体洗浄水処理施設、下水処理場、各種排水処理施設、産業廃棄物の処分場などがあります。

硫化水素の主要な発生要因の一つに、硫酸塩還元菌による嫌気性発酵があります。硫酸塩が存在しかつ十分な酸素が供給されない環境(嫌気性環境)下では、硫酸塩還元菌による有機物分解が促進されます。この分解により硫酸塩が硫化物イオンへ還元され、硫化水素を生成します。

特に気を付けたい点は、硫酸塩還元菌は自然界に普通に存在するということです。人為的にせよ自然的にせよ、硫酸塩が存在する、酸素が十分に供給されないなどの条件が揃えば、硫化水素の発生は珍しい現象ではありません。

また、温泉地で、卵の腐ったようなにおいを感じることがありますが、これも硫化水素が原因です。ちなみに硫黄自体は無臭であり、硫黄臭いと言われるのは硫化水素の臭いです。硫化水素は特定悪臭物質として悪臭防止法に定められています。

硫化水素の危険性

硫化水素の発生が問題視されるのは、悪臭物質であるという以上に、一定濃度以上で人体に重大な影響を引き起こす物質であるためです。

▼硫化水素の毒作用

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(引用:中央労働災害防止協会「酸素欠乏危険作業主任者テキスト」より)

さらに下記の性質があることも、労働災害等が起きやすい理由の一部と言えるでしょう。

▼硫化水素の性質

  • 空気より重いため、濃度が高まりやすい
  • 無色であるため、発生したことに気づきにくい
  • 発生条件が特殊なものではなく、比較的発生しやすい物質である
    (硫酸塩が存在する、酸素が十分に供給されないなどの条件が揃えば、発生することがある。)

過去には温泉旅館にて、入浴客の男性が硫化水素ガス中毒とみられる症状で重体に陥った事故もありました。厚生労働省が運営する「職場のあんぜんサイト」においても、硫化水素が原因となって発生した労働災害事例が数多く報告されています。

▼硫化水素による労働災害(死傷)事例の件数(平成26年度)

事例 件数
硫化水素中毒による死亡災害事例 4件(6名が死亡)

(参照:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」より作成)

健康被害以外にも、硫化水素が空気中で酸化され硫酸となり、排水管やコンクリートなどの腐食に繋がることもあります。

硫化水素の発生を抑制するために

1. 特に発生しやすい環境を把握する

身の回りに以下の環境が無いか、確認を行いましょう。
▼特に注意したい環境・施設の例

  • 浄化槽やピット・タンクなど、汚泥や液体などの処理・貯留施設、及びそこにつながる配管等
  • 硫酸バンドやポリ硫酸第二鉄などを用いた排水処理工程から排出される汚泥等の保管施設、もしくは、汚泥等が詰められたドラム等の容器内

2. 原料や薬剤を切りかえる/嫌気性環境をつくらない

硫化水素の発生を抑制するには、硫黄分が含まれる原料や薬品を切り替えたりすることで、工程中から硫黄分を取り除く方法があります。しかし、原料そのものの変更は様々な理由で実現困難なことも多いでしょう。次に、なるべく嫌気性環境にしない、つまりピットや置場で酸素を混ぜ込むように曝気・撹拌する方法が考えられます。

3.その他の工夫

産業廃棄物の処分場も、硫化水素が発生しやすい環境と言えますが、アミタでは、委託前のサンプル検討において、その廃棄物単体及び他廃棄物との混合時に硫化水素が発生しないかを確認しています。また、嫌気性環境にならないような十分な撹拌作業の他、安全管理のため、検知管や検知器にて硫化水素濃度を測定するなど、留意して廃棄物のリサイクルに取り組んでいます。

執筆者プロフィール
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佐中 亨(さなか とおる)
アミタ株式会社
カスタマーホスピタリティグループ 東日本チーム

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