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気候変動に関するESG投資家が重視している点は?-WWFジャパン池原氏が伝授!

Photo by rawpixel on Unsplash

近年、海外のみならず、国内でも注目度が高まっているESG投資。投資家は、何を重視して投資先となる企業を判断しているのでしょうか?今回は、投資家が参照している国際的なベンチマーク指標やガイドラインと、ESG投資市場の拡大に対して、企業が取り組むべきポイントをご紹介します。

※本記事は、アミタ(株)主催セミナーにおける池原氏のご講演内容をもとにアミタ(株)の見解をまとめたものです。

GPIFの動向が日本企業の取り組みを加速!

国内でESG投資がさかんになった要因の一つとして、2015年9月、日本国民の年金を管理・運用する機関である年金積立金管理運用独立行政法人(以下、GPIF)が、「ESG に配慮した責任投資を行うこと」を宣言した「PRI(国連責任投資原則)」に署名したことがあげられます。
GPIFは、当時も運用資産が140兆円に上る世界最大の機関投資家※であり、この組織がESG投資へ舵を切ったことで、日本のESG投資市場は大きな盛り上がりを見せました。投資家がESG情報を評価するようになったことで、企業側も社会的課題であるESG要因への対応を一層求められるようになりました。
GPIFは、2018年9月にも、温室効果ガスの削減に取り組む企業への重点的な投資を公表しており、同法人によるESG投資への積極的な推進によって、日本のESG投資市場は活発になっています。

▼GPIFの最新動向

  • 2018年9月、温室効果ガスの削減に取り組む企業への重点的な投資を開始。
    新規投資額は、約1.2兆円と公表されている。
  • 2018年9月、ESG投資戦略のベンチマークとして、2つの国際的な環境指数を選定。
    「S&P グローバル大中型株カーボン・エフィシェント指数(除く日本)」と「S&P/JPX カーボン・エフィシェント指数」であり、これらによって炭素排出量に関する情報開示を十分に行っている企業のウェイトが引き上げられ、開示が十分に行われていない企業のウェイトは引き下げられることとなる。

※2018年第1四半期時点で、GPIFは、約158兆5800億円の試算を運用している。

投資家が参照する代表的なベンチマーク指標やガイドライン

では、実際に投資家はどのような情報を判断材料としているのでしょうか。現在、投資家がESG投資を行う際、投資先の企業を検討する際に用いるベンチマーク(指標)やガイドラインの例は以下です。

  • DJSI(Dow Jones Sustainability Index)
  • CDP(Carbon Disclosure Project)
  • TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosure)

※それぞれの詳細は記事の下部をご参照ください。

CDPについては、2006年からは日本企業にも質問書が送付されるようになり、高い格付けを獲得する日本企業も増加しています。

投資増加に向けて、企業が取り組むべきポイントは?

パリ協定が目指す脱炭素社会の実現に向けて、グローバルで重視されている視点は以下の3点と考えられます。
ESG投資市場は、まだまだ拡大途中であり、実は、投資家側もキャッチアップを求められている最中です。ESGの観点から投資先を選定するための指標作り等を進めているのが現状ですが、10年、20年前と比べると、「実効性の高い取り組み」と見なされる要件は集約され明確になりつつあります。

1)長期的なビジョン・目標を打ち出しているか

・ 環境制約が本業にどういう影響をおよぼすのか、客観的な視点でリスク分析を行っていること
・ リスクをマネジメントしていくための戦略、および適切な指標・目標を設けていること

2)ライフサイクル全体で排出削減に取り組んでいるか

・ 自社の上流・下流(スコープ3)の排出量を見える化し、削減に取り組むこと
・ 削減を進めるにあたり、サプライヤー企業やエネルギー供給事業者等との対話、協働を積極的に行うこと

3)再エネ活用および普及に積極的であるか

・ 自社で再エネ利用を促進することのみならずステークホルダー(サプライチェーン全体)に働きかけていること

以上、環境戦略の見直しのご参考になれば幸いです。

  • DJSI(Dow Jones Sustainability index)

世界有数の金融市場指数プロバイダー「S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス」と、サステナビリティ投資のスペシャリスト「RobecoSAM」が運営するインデックスであり、「経済・環境・社会」に関する3つの判断基準に基づき、総合的に優れた企業を選定する。
DJSIシリーズには、北米地域対象の「DJSI North America」、欧州地域対象の「DJSI Europe」、アジア太平洋地域対象の「DJSI Asia Pacific」など8種類ある。
中でも注目を集めているのは、先進国・新興国双方を対象とした「DJSI World」であり、世界の大手企業3500社から約300社を対象に、質問票を送付し、回答をもとに約300社を選定している。

  • CDP(旧Carbon Disclosure Project)

2000年にイギリスで設立され、東京にも支部を持つ国際NGOが運営するプロジェクト。
現在、「気候変動」「ウォーター」「フォレスト」「シティ」「サプライチェーン」の5種類がある。
環境情報の開示を企業に要請することに賛同する「署名投資家」を募り、投資家の代わりに世界中の企業に質問書を送付する役割を果たす。そのため、質問書には、サステナビリティ企業を選ぶ際に、投資家が欲しい情報収集のための内容が記載されている。

2016年時点で、加盟する機関投資家は826社。市場規模に換算すると、100兆米ドルにのぼると言われている。なお、情報の透明性を重んじるプロジェクトであり、回答しない企業は社名を公表される。そのため、各企業の対応能力によって、上位にランクインする企業と、回答しない企業との2極化が進んでいる。

  • TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosure)

主要25か国・地域の中央銀行、IMF(国際通貨基金)、世界銀行等が参加する「金融安定理事会」が設置した、気候変動関連の財務情報開示を進める組織。
「気候変動に伴う課題は、金融セクターへのリスクとなる」という観点から、機関投資家と企業の間で、気候変動による事業への影響やリスク共有を進めることを目指している。2017年には、企業による「気候変動に関する財務情報開示の指針」を定めた最終報告書を発表。
賛同を表明している企業・団体等は、グローバルで510以上(2018年9月時点)にのぼり、日本からも環境省、金融庁をはじめ、大手金融機関や保険会社等が賛同している。

講師プロフィール

池原 庸介(いけはら ようすけ)氏
公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)
自然保護室 気候変動・エネルギーグループ プロジェクトリーダー

企業で環境関連業務に従事した後、英エディンバラ大学で気候変動科学の研究に従事。2008年より現職。SBT、企業の温暖化対策ランキングプロジェクトなどを通じ、主に気候変動分野における企業協働に取り組んでいる。グリーン電力証書制度運営委員。法政大学人間環境学部 非常勤講師。

執筆者プロフィール(執筆時点)

amita-nishijima.jpg西島 有紀(にしじま ゆき)
アミタホールディングス株式会社
経営戦略グループ 共感資本チーム

社会的事業や非営利団体を支援する(公財)信頼資本財団の事務局スタッフとして活動後、アミタに合流。現在は、持続可能社会への希望や共感といった無形の"想い"を、未来づくりの"資本"に変えていく共感資本チームにて、広報業務を担当。

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