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ネイチャーポジティブとは?今後企業に求められることについても解説

Image by Alexas_Fotos feom

「ネイチャーポジティブ(自然再興)」とは生物多様性の損失を止め、回復傾向へと向かわせることを意味します。さらなる注目が予想されているネイチャーポジティブについて、自然の再興の必要性、期待される経済効果に加え、今後企業に求められることを解説します。

ネイチャーポジティブに関連し、企業の生物多様性のリスクと機会を開示するフレームワーク「TNFD」が注目されています。TNFDに取り組む意義や、TNFD対応を経営戦略に活かし「ネイチャーポジティブ」に取り組む方法について紹介したセミナーの動画を公開しました。

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その他、TNFDの最新情報をもとに、TNFDのLEAPアプローチの実施方法を解説したセミナーの動画も公開しています。詳細はこちらをご覧ください。

ネイチャーポジティブとは

ネイチャーポジティブという名称が誕生したきっかけは2020年の国連生物多様性サミットにて発足した「リーダーによる自然への誓約」にて、持続可能な開発の達成を目的に2030年までに生物多様性を回復の道に導くと示されたことにあります。この誓約の考え方を引継いだ「2030年自然協約」にて、ネイチャーポジティブという名称が正式に使用され、ネイチャーポジティブはカーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーに次いだ世界の潮流となっています。
ネイチャーポジティブでは2020年を基準として2030年までに生物多様性の損失を停止させ回復軌道に乗せ、2050年までに自然共生社会を実現することを目指しています。地球規模生物多様性概況第5版によると、今まで通りのシナリオだと生物多様性は損失し続けると指摘されており、2030年までに自然を回復傾向とすることは世界の共通目標として認識されていると言えるでしょう。

▼ネイチャーポジティブのイメージ

ネイチャーポジティブイメージ.png

出典:環境省

なぜ、ネイチャーポジティブ(自然再興)が必要なのか?

私たちの暮らしは生物多様性によって支えられてきました。食料、水の供給や、気候の安定、災害の被害抑制、保険や医療など、人間が生きていくために必要な環境や資源は、生物多様性による生態系サービスによって恩恵を受けてきました。しかし今、生物多様性は前例のない早さで減少しつつあります。特に日本は生物多様性の損失への寄与度が世界の中で最も高いという研究結果もあり、生物多様性の損失を止めるための対応は喫緊の課題であると言えるでしょう。

では、具体的にどのくらいの損失が発生しているのでしょうか。
動植物は自然環境の破壊や汚染、資源の過剰な利用、外来生物の存在、気候変動などの影響により減少し続けています。世界の森林面積は、1990年から2020 年の30年間で1億7,800 万ha(日本の国土面積の約5倍)が減少し、2023 年3月時点で国際自然保護連合(IUCN)が評価対象とした動物・植物などの150,388 種のうち、約27%に該当する42,100 種以上が絶滅の恐れがあることが判明しています。

そして、多様な動物の中でも特に注目されているのがミツバチなどの花粉を媒介する動物の減少です。生物多様性及び生態系サービスに関する政府間化学-政策プラットフォーム(IPBES)は、世界の主要農作物の4分の3以上が収穫量や品質管理の面で動物による花粉媒介に依存し恩恵を受けていると指摘していることから、これら動物の減少がいかに社会に大きい影響を及ぼしているかが分かります。
多様な生物の存在は、絶妙なバランスで存在する生態系システムを維持しています。この生態系の関係性を損なうということは、生態系サービスの恩恵を受けられずこれまでの当たり前の生活を維持することが困難となるということです。

ネイチャーポジティブに関する世界と日本の動向

では、各国のネイチャーポジティブに関する主要な動きを見てましょう。

  • 世界の動向

昆明モントリオール生物多様性枠組

国際的な動きとして、2022年12月に開催された国連生物多様性条約第15回締約国会議(Conference of the Parties:COP15)では「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択されています。2050年の「自然共生社会の実現」を目指し、2030年のミッションとして「自然を回復軌道に乗せるために生物多様性の損失を止め反転させるための緊急の行動をとる」ことが示されました。

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生物多様性COP15の2030年目標、日本企業への影響とは?

TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)

世界自然保護基金(WWF)、国連環境計画(UNEP)、国連開発計画(UNDP)、Global Canopyの4団体により2020年7月より非公式に発足され、金融機関、規制当局、企業などの参加を経て 、2021年6月に正式に発足したのがTNFDです。よくTCFDの生物多様性版といわれるTNFDですが、LEAPアプローチを通じ、自然関連の非財務情報開示を企業に促すことが目的として設立されています。

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・第九回 TNFDとは? 最新の動向や事例、TCFDとの違いを解説!
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  • 日本の動向

生物多様性国家戦略2023-2030

昆明モントリオール生物多様性枠組同枠組みで、各国は生物多様性国家戦略を策定・改定することが求められましたが、日本では「生物多様性国家戦略2023-2030 」が閣議決定されました。2030年のネイチャーポジティブの実現に向けて5つの基本戦略とそれぞれの状態目標、行動目標が設定されています。

▼生物多様性国家戦略2023-2030

生物多様性国家戦略.png

出典:環境省

ネイチャーポジティブ経済研究会

政府主導で策定される国家戦略に対し、よりビジネス視点で進言を再生保護することを経済成長と両立させるためのアプローチが「ネイチャーポジティブ経済研究会」です。具体的には企業や政府、学術機関など様々なステークホルダーが連携し、自然資本の評価や持続可能なビジネスモデルの開発、政策提言などを通じてネイチャーポジティブを推進しています。

▼「みどりの食料システム戦略」の実現により創出される市場規模の推計

Green Food System Strategy.png出典:第4回 ネイチャーポジティブ経済研究会 三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成資料

ネイチャーポジティブ経済移行戦略
上述の国家戦略の重点施策として位置づけられ、環境省、農林水産省、経産省、国交省が連名で取りまとめたのが「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」です。
ネイチャーポジティブが企業にとってコストではなく、新たな経済成長につながるチャンスだと分かりやすく示し実践を促すため、

  1. 企業の価値創造プロセスとビジネス機会の具体例
  2. ネイチャーポジティブ経営への移行にあたり企業が押さえるべき要素
  3. 国の施策によるバックアップ

を記載し、ネイチャーポジティブ経済への移行の必要性を示しています。

▼ネイチャーポジティブ経済移行戦略 参考資料

Nature Positive Economy Transition Strategy1.png

Nature Positive Economy Transition Strategy2.png

出典:環境省 ネイチャーポジティブ経済参考資料集

ネイチャーポジティブの経済効果

生物多様性の損失は経済面で大きな影響をもたらしています。世界経済フォーラムは、世界のGDPの半分(約44兆ドル)以上が生物多様性の損失により潜在的に脅かされていると指摘し、この状況は気候変動に次ぐ深刻な危機であると示しました。

逆に考えると生物多様性を再興させることは、社会の大きな損失や危機の防止に繋がるということです。さらに、起こりうる危機を回避する目的のみならず、自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転することに資する経済「ネイチャーポジティブ経済」には大きな期待が寄せられています。

日本がネイチャーポジティブ経済へ移行することにより、2030年で最大104兆円(波及効果含めて約125兆円)のビジネス機会があることが推測されています。また、ネイチャーポジティブへの移行によって得られる機会を賄うために必要な就業者数は約930万人が必要であると予想されているため、雇用の創出にもつながることが期待されています。

▼ネイチャーポジティブの経済効果

ネイチャーポジティブ経済効果.png

出典:ネイチャーポジティブ経済研究会

ネイチャーポジティブにおける今後の動向

2024年4月、30by30(サーティー・バイ・サーティー)の達成を後押しする目的もあり「生物多様性増進活動促進法」が可決されたことにより「自然共生サイト」が法制化されます。

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これにより自然保護活動の枠組みが明確になるため、企業や自治体は生物多様性保全に関する取り組みを効果的に進めやすくなるでしょう。

また、ネイチャーポジティブが注目されるに従って、企業による生物多様性の開示枠組、TNFDにも注目が集まるでしょう。現在、TCFDが企業に対して気候変動リスクの開示を実質的に義務付けているように、TNFDも将来的に開示の義務化が進むのではないでしょうか。

いま企業に求められることとは

企業は生物多様性の再興と自然の持続可能な利用を進めていく上で、重要な役割を担っています。事業活動を通じて国内外の生態系に依存し大きな影響を与えていますし、さらに商品やサービスなどを通じて消費者とつながり、市場を変革する影響力を持っています。生態系にも市場にも大きな影響力を持つ企業には、主体的にネイチャーポジティブな経済を促進することが求められています。

上記のような認識の下で環境省は企業向けに基礎的な情報や考え方などを取りまとめた「生物多様性民間参画ガイドライン」の第3版を公表しています。このガイドラインは「生物多様性に関する活動への企業の参画を促すことを通じて、生物多様性の保全と持続可能な利用を促進すること」を目的としており、企業のネイチャーポジティブ経済への貢献を求めています。「関係性評価・体制構築」「目標設定・計画策定」「計画実施」「検証と報告・見直し」という4つのプロセスに分け、企業が生物多様性に対して横断的に取り組みを進めやすいようまとめられています。

▼生物多様性配慮のための基本プロセス

ネイチャーポジティブ基本プロセス.png

出典:環境省

さいごに

本記事ではネイチャーポジティブが「生物多様性の損失を止め、反転させる」と定義されていること、現状から見た自然の再興の必要性、そして生物多様性の回復によって得られる経済効果について解説してきました。
今後急激に加速することが予想されるネイチャーポジティブの潮流の中で、企業に対しては情報開示の要求が強まっていくでしょう。しかし、情報開示は現状を把握するための手段であり、ネイチャーポジティブという目的を直接的に達成するものではありません。自然を再興させ、ビジネスの継続性を担保するには生物多様性のリスクと機会を顕在化させ、中長期計画や戦略の立案、またその実行をすることで持続可能な経営への転換が求められています。

アミタでは、ネイチャーポジティブ戦略/生物多様性戦略を提供しています

seibutu_tayousei.png企業活動が生物多様性におよぼす影響の把握やリスク分析には高度な専門性と多くの時間が必要であり、具体的な進め方に悩む企業が多いのが現状です。
アミタは「循環」に根差した統合的なアプローチで企業価値の向上&持続可能な経営を実現に貢献する、本質的なネイチャーポジティブ/生物多様性戦略の立案・実施をご支援します。

サービス詳細はネイチャーポジティブ戦略/生物多様性戦略をご覧ください。

関連記事:サーキュラーエコノミーとは? 3Rとの違いや取り組み事例まで解説!

執筆者情報(執筆時点)

梅木 菜々子(うめき ななこ)
アミタ株式会社
社会デザイングループ カスタマーリレーションチーム

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