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土壌汚染対策法や条例の落とし穴知って得する、土壌汚染の新常識

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君津システム株式会社の鈴木喜計です。日本の土壌汚染対策について、1980年代後半から土壌汚染調査・浄化に対して数多くの企業や自治体のお手伝いをした経験を踏まえたコラムを今月から改めて進めていきます。どうぞよろしくお願いいたします。

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土壌汚染対策法に準拠するリスク

日本には土壌汚染対策法や都道府県が定めた条例(以下、法例という)があり、クライアントの状況がどうあれ、それに準拠した手法で調査・対策がなされているのが現状です。また、法例があるのだからそれに準拠するのが当たり前という暗黙の了解があり、調査会社もクライアントもこの現状に何の疑問も抱いていません。しかし、よく考えれば、この現状にはいくつかの潜在的なリスクが介在します。

まず、以前のコラムでお伝えしてきたように、現行の法例に準拠した手法では、土壌汚染や地下水汚染を完全浄化することは不可能だということです。一つとして同じ地質環境のサイトはない中で、地質汚染機構の解明をせずに、画一的で最大公約数的な法例準拠の手法にどれだけ時間と費用をかけても完全浄化はできません。

次に、法例はある一定の状況下において有効になってくるので、その状況に当てはまらなければ、必ずしもそれに準拠する必要がないということです。その状況とは、1)有害物質使用特定施設の使用を廃止した時、2)3,000㎡以上(条例によって上乗せ有り)の土地の形質変更の届出の際に土壌汚染の恐れがある時、です。つまり、操業中の工場等では、法例の網にかからないため、自主調査等を行う場合は、完全浄化を目的としていない法例準拠の手法による調査・対策の必要は無いということです。

裏を返せば、工場を閉鎖するまで調査の必要はないとも言えますが、私は操業中の自主調査をクライアントの方々へお勧めしています。

自主調査のメリット

まず、調査は工場を閉鎖した後に行うものという既成概念があり、自主調査に抵抗のある企業もあるかと思います。しかし、工場閉鎖後に調査を行うと、次のようなデメリットがあります。

  1. 問題の先延ばしであり、より状況が悪化した状態での対応を迫られる。
  2. 法例に縛られるため、費用が増え完全浄化までには時間がかかる。
  3. 閉鎖後に調査・対策をするため、機会損失が大きく、土地売買のチャンスを失う。
  4. 経営資源に余裕がなく、対応が不十分となる。

一方、自主調査にはいくつかのメリットがあります。

  1. 自社の土壌汚染の現状把握により、対策をする上でも経営判断をする上でも先が見通せる。
  2. 法例準拠の手法によらず、より高性能で安価な手法により調査をすることができる。
  3. 法例に縛られた土俵ではなく、自社にとって最も有利な土俵で調査が展開できる。
  4. 特に閉鎖予定のある工場では、閉鎖に合わせて調査・対策を行い閉鎖後すぐに売却が可能となる。
  5. 操業中で、経営資源に余裕がある内に対応できる。

つまり、柔軟でスピーディーな経営判断が必要とされる昨今では、自主調査は必須事項と言えます。法例に準拠しない優れた手法があるということや様々な既成概念が自社の首を締めることになりかねないということにぜひ気づいていただきたいと思います。

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執筆者プロフィール
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鈴木 喜計 (すずき よしかず) 氏
君津システム株式会社
代表取締役


1973年君津市役所に入所。31年間公害問題の調査研究・技術開発に従事し、土壌・地下水汚染の調査手法や浄化技法の開発・検証・普及に努める。
いままでに実施した地質汚染調査・浄化の実績は海外を含め100件を超え、240もの学術論文/研究発表、13巻の著書(共書)を持つ。その専門性が認められ、平成9年に起こった日本初の地下水汚染事件での鑑定人や平成14年土壌汚染対策法での国会参考人を担当、土壌環境基準設置委員(環境省)、廃棄物処理法改正委員なども歴任した。平成16年に「君津システム株式会社」を起業し現在に至る。

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