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知っているとちょっと自慢できる廃棄物処理施設のトリビア:設置許可が必要な施設、必要でない施設とは?BUNさんの「元・行政担当者が語る 廃棄物管理のイロハ」

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平成22年の廃棄物処理法改正(23年4月施行)により、「委託処理状況の確認」が条文に盛り込まれたことから、処理施設の現地確認を社内ルール化した企業も多いことと思います。また、大きな工場、特殊な作業をしている工場等では、自社で処理施設を設置している方もいらっしゃるでしょう。

そこで、今回は、廃棄物の処理施設についての基本的事項の復習や、知っているとちょっと自慢できるトリビア等を紹介したいと思います。まず、処理施設設置にあたっての必要な手続き、設置許可について確認しましょう。

原則的な設置許可

処理施設の「設置許可」は、廃棄物を処理する施設には全て必要というわけではなく、許可が必要とされる処理施設は廃棄物処理法第15条を受けた政令第7条により、18種類に限定されています。

なお、「設置許可の要・不要」と「処理基準の適用」は別物ですから、設置許可が不要な施設でも「処理基準」は守らなければなりません。ちなみに、「処理基準」のうちの「共通基準」は、どのような場合でも適用となり、「廃棄物を処理するにあたり、飛散、流出、悪臭、地下浸透、害虫、ねずみ等を発生させてはならない」という、極めて常識的なものです。

設置許可が必要な産業廃棄物処理施設の多くは、「産業廃棄物の種類」、「処理の方法」、「処理能力」の3つの要素により規定されています。例えば、施行令にて「汚泥の乾燥施設であって、一日当たりの処理能力が10m3を超えるもの」(施行令第7条第2号)と規定されていますから、「乾燥施設でも、動植物性残渣の乾燥なら設置許可は不要」、「汚泥の処理施設でも、発酵施設なら許可不要」、「汚泥の乾燥施設でも、処理能力が9m3なら許可不要」ということになります。

一方、最終処分場やPCB処理施設等は能力を限定していないので、これらは「いくら小規模でも」設置にあたっては許可が必要です。

例外的な運用

処理施設への該当・非該当については、廃棄物処理法がスタートした直後の昭和46年に発出された通知(平成17年発出の規制改革通知により、より明確化)により、次のような運用となっています。(文章表現は「わかりやすく」をモットーにBUN流に修正していますので、実際に関係する方は原典でご確認ください)

  1. 生産工程に組み込まれ自社の排出物のみを使用する施設は、廃棄物処理施設には該当しない。
  2. 水処理施設として、系外の流入がない脱水施設は廃棄物処理施設には該当しない。
  • 1の事例
    プラモデル製造工場があり、必要な本体の周囲に「バリ(※1文末参照)」ができるが、この「バリ」を、再び原料のプラスチックと混合して、破砕している。
    ⇒あたかも、不要なプラスチックを破砕しているので、「廃プラスチック類の破砕施設」の設置許可が必要にも思えますが、この行為は再び原料として用いるための加工行為であり、施設の設置許可は不要です。
  • 2の事例
    食料品製造工程で発生した汚水を処理するために、工場内に活性汚泥法を用いた排水処理施設を設置している。
    ⇒その排水処理施設から発生する余剰汚泥を脱水するための「脱水機」が、プラントに組み込まれている場合などがこれにあたります。

なお、1、2ともに廃棄物や排水が系外から持ち込まれて追加されるようなケースは該当になりません。例えば、1で「他の工場で発生するバリもこの工場に持ち込んで併せて破砕している。」、2で「他の工場の排水も併せて処理している」や「汚泥を持ち込んで併せて脱水している」等です。

これ以外にも、「許可不要」が適用にならず、原則通り「許可必要」となるケースも示されていますので、原典通知で確認してみてください。

例外中の例外、移動式破砕施設

処理施設の中で最も設置数が多いのが破砕施設だと思います。破砕施設は、廃プラスチック類、木くず、がれき類の破砕施設等が設置許可の対象です。例えば「ガラス陶磁器くずの破砕施設」は対象ではありません。

さて、この破砕施設の運用で、なんとも理屈が立たない運用が、「移動式破砕施設」です。これは平成13年2月1日施行の政令の附則により、規定されています。

第2条  当分の間、移動式がれき類等破砕施設を設置しようとする者(事業者に限る。)は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律第15条第1項の許可を受けることを要しない。

木くずとがれき類(※2文末参照)の移動式破砕施設は、「排出事業者の設置」については、「当分間許可不要」ということです。 この「木くず」「がれき類」の破砕施設は、ほとんどが建設会社によって設置されています。

皆様ご存じのことと思いますが、「建設系廃棄物の場合、廃棄物の排出者は元請」となります。これは、昭和の年代からそのように運用されてきましたが、平成22年の法改正により、法律第21条の3で明文化されました。したがって、移動式破砕施設については、元請(=排出事業者)が設置するときは「許可不要」であり、下請が設置するときは「許可必要」となってしまいます。

建設関係では、受注形態により、「本日は元請」「明日は下請」という業務も出てくると思われますが、そのような場合には、がれきを破砕する施設について、本日は許可不要、明日は許可必要、ということもあり得るということです。そもそも、なんのために廃棄物の処理施設の設置に当たり、許可制度を採用しているのか?を考えたとき、この運用はなんとも説明がしにくいなぁと当時から感じているものです。

<文言解説>
※1 バリ (英語: burr) とは、材料を加工する際に発生する突起。材料を加工する際に発生する、素材の残材部分である。

※2 木くずとがれき類
廃棄物処理法で「がれき類」というのは「コンクリートとアスファルト片」だけで、木くず廃プラスチック類紙くずは「がれき類」とは言いませんが、附則では、「がれき類<等>」として、第七条第8号の2に「第2条第2号に掲げる産業廃棄物」とあり、これに「木くず」が該当します。

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執筆者プロフィール

長岡 文明 (ながおか ふみあき)
アミタ株式会社 特別顧問

山形県にて廃棄物処理法、廃棄物行政、処理業者への指導に長年携わり、行政内での研修講師も務める。2009年3月末で山形県を早期退職し、廃棄物処理法の啓蒙活動を行う。廃棄物行政の世界ではBUNさんの愛称で親しまれ、著書多数。元・文化環境部循環型社会推進課課長補佐(廃棄物対策担当)。

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