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第9回:「下取り」~現状との乖離が見られる制度~堀口昌澄_連載「揺らぐ廃棄物の定義」

Some_rights_reserved_by_some_of_rebecca's_photos.jpg本連載シリーズでは、廃棄物関連のコンサルタントや研修を数多く実施してきたアミタの主席コンサルタントの堀口昌澄が、連載12回を通じて、「揺らぐ廃棄物の定義」について解説します。 廃棄物を取り巻く法の矛盾や課題を理解することで、今後起こりうる廃棄物関連法の改正への先手を打つことができます。

今回は「下取り」~現状との乖離が見られる制度~について解説いたします。本コラム記事の一覧はこちらから。

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下取り品は廃棄物なのか?

廃棄物処理法の「下取り」とは、許可事務通知(環廃産発第 13032910号)などで示された「新しい製品を販売する際に商慣習として同種の製品で使用済みのものを無償で引き取り、収集運搬する下取り行為については、産業廃棄物収集運搬業の許可は不要であること。」のことである。通常はアンダーラインを引いた部分が「下取り」の要件である。そして、元の所有者ではなく、「下取り」した者が排出事業者として処理することになっている。問題は「下取り品は廃棄物なのか?」ということだ。

一般的な解釈は「廃棄物ではない」である。しかし、通知では「許可は不要」と書かれているだけで、「廃棄物ではない」とは書いていない。つまり、この通知ではそもそも「下取り品」は廃棄物であるという前提に立っているから「許可は不要」と言っているのではないだろうか。

条文を素直に読むと「下取り品=廃棄物」が正しいのかもしれない。以前、環境省の方に聞いた時はこの立場に近かった。もし「下取り品=廃棄物」なら「下取り」車両には自社運搬の車両表示をして、書面の携帯義務が発生する。しかも、「下取り品」を持ち帰って一時保管する場所は、積替え保管の許可は不要だが廃掃法の法定基準―「一日当たりの平均的な搬出量」の7倍までしか保管できない―を遵守しなければならない。例えば1か月に1回2㎥しか搬出しない場合は、約0.46㎥が保管上限となってしまい、しくみとして全く成り立たなくなる。

さらに、「下取り」は販売者(排出事業者)が「許可不要」と考えられる。もし、販売者と運搬会社が別法人の場合は、運搬会社は収集運搬業の許可が必要ということになる。その場合は、販売者が収集運搬会社と収集運搬の委託契約を締結しなければならない。さらに、その収集運搬会社が電子マニフェスト対応していない場合は、販売者が現場に出向いて紙マニフェストを交付し、交付等状況報告書を毎年提出しなければならない。運送部門の分社化、外注化が一般的な現状では「下取り品=廃棄物」は現状に合わないと言える。

事実上廃棄物処理法の適用除外をうけている

現状多くの「下取り品」は販売者の手元に到着するまでは廃棄物として扱われていない。ほとんどの行政もその認識で指導している。「下取り」は事実上、廃棄物処理法の適用除外を受けているのだ。

もし製品が大型で重量がある場合、運搬や積込作業で別途追加費用が発生することがある。この場合は「下取り」の「無償で引き取り」という条件に抵触するので、通常は収集運搬業の許可が必要な廃棄物とされる。"「下取り」の要件に合致するかどうか"という発生した物の本質と別の基準で規制の枠組みが変わってしまうのだ。

このように「下取り」という制度が不安定かつ不十分であることもあり、自動車リサイクル法・家電リサイクル法・食品リサイクル法のループ・広域認定など、製造/販売者が製品を回収する際の特例制度が作られた。しかしそれぞれのしくみに統一感がなく、縦割りだ。本当に効率的な資源循環とEPR(拡大生産者責任)を実現させるためには、制度設計を一から見直すべきではなかろうか。

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執筆者プロフィール(執筆時点)

堀口 昌澄 (ほりぐち まさずみ)
アミタ株式会社 
環境戦略支援営業グループ CSRチーム 主席コンサルタント(行政書士)

産業廃棄物のリサイクル提案営業などを経て、現在は廃棄物リスク診断・廃棄物マネジメントシステム構築支援、廃棄物関連のコンサルタント、研修講師として活躍中。セミナーは年間70回以上実施し、参加者は延べ2万人を超える。 環境専門誌「日経エコロジー」にも連載中。環境新聞その他記事を多数執筆。個人ブログ・メルマガ「議論de廃棄物」も好評を博している。大気関係第一種公害防止管理者、法政大学大学院特別講師、日本能率協会登録講師。

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