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SDGs達成のモデルは「生態系」にあり!生物多様性保全に向けた取り組みの進め方~生物多様性とSDGs①~本多清のいまさら聞けない、「企業と生物多様性」

おしアミサムネイル (3).png持続可能な社会と経済を支える、生物多様性と生態系とSDGsについて解説し、なぜ企業が生物多様性の保全に向けた取り組みをする必要があるのか考えます。アミタ本多による「企業と生物多様性」連載第3弾では、「生物多様性とSDGs」をテーマに全6回のコラム形式で解説します。

本多清のいまさら聞けない、「企業と生物多様性」コラム一覧はこちら

目次

生物多様性はSDGsの根幹

国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)は、私たち人類の誰もが豊かで安全な暮らしを将来に渡って継続的に営めることを目的にしています。となれば、人類の基本的な生存手段である衣食住を担う「生態系サービス」の持続可能性が、SDGsの達成の極めて重要なテーマとなることに、あまり説明を要しないと思います。

例えば2016年にスウェーデンのストックホルムにあるレジリエンス・センターのヨハン ロックストローム氏らによって提唱された「SDGsウェディングケーキモデル」では、生物多様性が生み出す生態系サービスとSDGsの位置付けを表わしています。

▼SDGsウェディングケーキモデル

sdgs wedding cake model.jpg

(出典:Stockholm Resilience Centre


17の目標のうち、生態系サービスに関わる下記の4つの目標が、その他の目標に係るジャンルの「社会と経済」を支えているというものです。

  • 生命の根源である水の保全(目標6)
  • 気候変動(目標13)
  • 海の生態系(目標14)
  • 陸の生態系(目標15)

このように、生態系サービスを支える生物多様性の保全に向けた取り組みは、SDGsにおける「社会と経済の持続可能性」の根底を占めているのです。あらゆる企業は紛れもなく「社会と経済」の一員であり、そこに支えられている存在なのですから「うちは〇〇業だから生物多様性とは関係がないよね」などとは口が裂けても言えないのです。

生物多様性は何から取り組めばよいのか分かりにくい?

ところが「SDGsが大切なのはよく分かるけど、具体的にどう取り組めばいいのかが分かりにくいよね。」という声がしばしば聞かれます。それはごもっともな意見でしょう。

SDGsの主な機能は二つあって、ひとつは「目標(ゴール)とターゲット(達成基準)を設定すること」であり、もうひとつは「それらの進捗度合を評価すること」です。しかし「どのように目標を達成するか」という具体的な課題解決へのアプローチ方法についてはほとんど述べられていないのです。

さらに言うと、例えば「そもそも、なぜ生物多様性が劣化したのか?」といったような、課題の根源的な要因へのアプローチについてもほとんど触れられていません。しかし、これには無理からぬ事情があります。SDGsには「貧困をなくそう」とか「飢餓をゼロに」といった、途上国の政治課題に深く関わる目標も掲げられています。もし、これらの課題原因を特定して課題解決する手法を国連が主導すれば、当事国の政権を窮地に陥れることにもなりかねません。そもそも、民族も歴史も文化も気候も異なる約200ヵ国もの政権が、互いの確執や利害も絡み合う中で一斉に合意形成できるような行動指針は「大雑把なもの」にならざるをえないのです。

以上のようなことから、SDGsは「課題の根源的な解決策へのアプローチが示されていない=従って具体的な解決策の設定方法がわかりにくい」という背景を抱えていると思われます。しかし「具体的な解決策が示されていない」ということは、言い換えれば「やり方は自由自在である」といえるわけです。

生物多様性の取り組み方に迷うなら「原則」に軸足を置きましょう

やり方は自由自在なSDGs。マニュアル重視の真面目な日本のサラリーマンは戸惑うかもしれませんね。「解決策の軸足をどこに置いたら良いの?」と迷うことにもなると思います。そのような時は「原則に軸足を置けばよい」のです。そう、ご存知の方も多い「持続可能な開発の原則(ハーマン・デイリーの3原則)」です。とてもシンプルな3つの原則ですが、人類が直面している課題の根源的要因を見事に捉えていると思います。

「持続可能な開発の原則」(ハーマン・デイリーの3原則)

①「再生可能資源」の消費速度は、その資源の再生速度を超えてはならない。
 ➡ 例えば、水産物の繁殖や農作物の栽培で資源が再生する以上の速度で消費しないこと。

②「枯渇性資源」の消費速度は、再生可能な代替資源が生まれる速度を超えてはならない。
 ➡ 例えば、石油が枯渇しても直ちに風力やバイオマス等で代替できるようにすること。

③「汚染物質」の排出速度は、環境が汚染物質を無害化できる速度を超えてはならない。
 ➡ 例えば、下水の処理水を河川や海洋等の環境の浄化能力を超えて排出しないこと。

SDGsで掲げられている目標(ゴール)のほとんどは、これらの3原則を人類が守らなかったがための産物である、といっても過言ではないでしょう。要は、「生産と消費と排出の不適解」が人類の持続可能性を脅かしているのです。

生態系から学ぶ持続可能な社会モデル

180424_eco-system.pngデイリーの3原則の意味を一言でいえば「生産・消費・排出のバランスをとること」です。しかし、このような原則を当然のこととして実践している持続可能な社会モデルがあります。それが「生態系」です。

市場経済に基づく社会は「生産者」と「消費者」の2者によって構成され「排出」は両セクションが環境に負荷を与えつつも一定のルールに基づいて行う(ルールがなければ捨て放題、垂れ流し放題)というものです。その悪しき姿の典型が、高度経済成長期からバブルにかけての日本のような「大量生産・大量消費・大量廃棄の時代」でした。

図2:生態系の概念図(アミタ株式会社作成)
図はクリックすると大きくなります。

しかし、生態系は「生産者」「消費者」「分解者」の3者が構成しています。この3者がそれぞれに最適解を生み出しているからこそ、太陽と空気と水がある限り、持続可能な状態を維持できているのです。市場経済には存在しない「分解者」を含めた3者が互いに支え合いながら、持続可能な物質循環を生み出しているわけですね。

このような姿の生態系は、一見「弱肉強食」の競争社会に見えます。しかし、それは競争市場の観点から「食物連鎖」を見誤ったものです。生態系とは「生命同士が命を支え合う関係性(生物多様性)で成立するシステム」なのです。

一方の市場経済では、生産者と消費者の利益のみを追求する競争に陥ってしまう傾向にあります。しかし、これからの企業は自社(生産者であり消費者でもある)の利益のみを追求するのではなく、持続可能性の視点を持つ必要があるのです。そのために世界共通の目標として掲げられたのがSDGsなのだとご理解いただければと思います。要は「世界の皆で地球という生態系の一員になろう」、ということなのです。

そのような目標が掲げられた国際社会で、とりわけ企業価値の向上・存続という視点から近年とくに重要視されているのがESG投資ですね。環境対策(E)と社会貢献(S)、そしてコーポレートガバナンス(G)にきちんと向き合える企業でなければ、世界中の投資機関や株式市場から、まともな投資対象として認められずに淘汰される時代が到来しようとしています。

こうしたSDGsのような価値観が浸透した未来社会を想像してみましょう。それは企業も市場経済も「勝者か敗者か」という競争社会ではなく「持続可能性(あらゆる主体が互いに支え合う関係性)の主体=共生社会の一員」となるべく時代が来ているのです。つまり「競争のグローバル化」から「共生のグローバル化」へのパラダイムシフトの時代が来ているということなのです。

SDGsとは、そのような共生社会を全人類が目指すために生まれた目標=価値観であり、それに世界各国の政権が合意したという点で、人類史上、極めて画期的なことなのです。

今回はSDGsの達成に向けた「生物多様性との関係性」についてお届けしました。次回以降は、いよいよ実戦的な生物多様性に対して企業がどのように自社の取り組みを考え、構築していくべきかのポイントをご紹介していきたいと思います。

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執筆者プロフィール(執筆時点)

本多 清(ほんだ きよし)
アミタホールディングス株式会社
経営戦略グループ

環境ジャーナリスト(ペンネーム/多田実)を経て現職。自然再生事業、農林水産業の持続的展開、野生動物の保全等を専門とする。外来生物法の施行検討作業への参画や、CSR活動支援、生物多様性保全型農業、稀少生物の保全に関する調査・技術支援・コンサルティング等の実績を持つ。著書に『境界線上の動物たち』(小学館)

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