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生物多様性とSDGs(その4): 望ましい「生物多様性オフセット」のあり方とは?本多清のいまさら聞けない、「企業と生物多様性」

Some_rights_reserved_by_Masakishiina-s.jpg本コラムでは、「生物多様性とSDGs」をテーマに、アミタの本多が"超解説"をお届けします! 
4回目の今回は、企業が開発や事業の展開などに伴って環境に負荷を与える場合に実施すべきとされる代償措置、「生物多様性オフセット」のあり方について解説します。

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日本では成立しにくい欧米式のオフセット

前回の本コラムの冒頭では「生物多様性(の価値)を測れると思うな!」と申し上げました。「一つとして同じものはなく、同じことは二度と繰り返されない」生物多様性の世界は、少なくとも全世界で等しく同質の物質であるCO2排出量と同じように効果や価値を測ることはできないからです。

「でも、海外では生物多様性の価値を測って証券みたいに取引するビジネスもあるよね。」と思った方、はい、その通りです。生物多様性オフセット による利用権取引(ミティゲーション・バンキング)ですね。生物多様性の価値を測り、CO2排出量取引のようにクレジット化して売買するビジネスです。しかし日本ではまったくと言ってよいほど浸透していません。日本は遅れているから? いいえ、違います。日本ではそれが正しいのです。なぜかというと、欧米社会と日本社会では自然の成り立ちも、そこに暮らす人々の世界観も全く違うからです。 

一神教で小麦粉が主食物の欧米では、「人間(と神)の領域」と「自然の領域」の境界線は明確です。せいぜいヒバリや野ネズミが暮らす程度の小麦畑も「人間界」です。ところが一方の日本は米が主食の「瑞穂(みずほ)の国」です。水田が育む生きものたちの生息数と多様性は、欧米の乾いた陸地の小麦畑の比ではありません。2000年以上もの長きにわたり、里山と田園からなる「郷(さと)」を生活の舞台としてきた日本では、「人間の領域」と「自然の領域」の境界線は極めて曖昧で両者がグラデーションの中で混在しています。そのような混沌とした領域を"八百万(やおよろず)の神々"が司っている、という世界観が育まれてきたのです【図-1】。

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【図-1】日本で欧米式の生物多様性オフセットが浸透しない理由
(アミタ持続可能経済研究所作成)

このような国では「一方の領域を切り取って他方の領域にはめ込む」といった欧米式の生物多様性オフセットや利用権取引を成立させることは困難でしょう。これまでにも繰り返し述べてきたように、「人の営みが、同時に生きものたちの暮らしをも豊かにしてきた」という歴史的背景こそが、日本の生物多様性の根源だからです。ですから日本でのオフセットには欧米とは異なるアプローチ方法が必要となるのです。

日本で行うべきオフセットの手法とは

このような背景と特色をもつ我が国の場合、どのようにして生物多様性のオフセットをするべきなのでしょうか。まず前提として、純然たる自然界(原生的自然)を企業が乱開発するという状況は、現代の日本では起こりえません。現代の日本で自然環境の多くが劣化している主な原因は、企業による乱開発ではなく、地域社会の低迷、即ち「人の営みの衰退」による荒廃なのです。
そこへ欧米型のオフセットが導入されたらどうなるでしょうか。もし、開発の代償として「人が手を付けない自然の領域」を作ろうものなら、「人の営み」によって成り立ってきたその地域の生物多様性は、ますます劣化してしまうことでしょう。それはまさに「逆効果」なのです。

このような場合、企業は「人の営みの活性化を目指すこと」が正しい選択肢となります。企業が地域に参入し、環境に配慮した持続可能な経済活動を新たに展開すれば、低迷していた地域社会が共生の舞台の「郷(さと)」として再活性化する道が開けます。こうした「人の営みの活性化と共に生物多様の向上(復元)を導く」という生物多様性のオフセットの手法は、日本の環境条件において極めて理に適ったものなのです【図-2】。

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【図-2】日本で取り組むべき生物多様性オフセットのイメージ
(アミタ持続可能経済研究所作成)

このような日本型の生物多様性オフセットの手法を取り入れた企業の活動事例としては、トヨタ自動車株式会社の取り組みが挙げられます。

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詳細事例を含んだ本記事の全文はこちらからご覧いただけます。

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このように、企業が里山や田園の地域社会にコミットし、農林水産業の営みや地域社会のあり方と共に生物多様性の向上を目指す手法こそが、我が国における生物多様性オフセットの望ましい姿と言えるでしょう。

足元の取組みから「未来へのオフセット」を

自社工場等が所在・進出する地域社会への対応としては、上記で紹介したような大規模開発における事例が参考になる企業もあれば、「新たに大規模な開発を行う計画などない」という企業も多いでしょう。しかし、いまの自社工場や事業所が立地している場所は、かつて大規模な開発による環境改変を行った結果の産物ではないでしょうか。臨海コンビナート地帯などはその典型的な存在でしょう。高度経済成長期には顧みられることのなかった「豊かな生物多様性の舞台」が、かつてその場所にあったはずです。

その大規模開発から半世紀が経ったいま、多くのコンビナートでは事業敷地内の未利用地の活用が課題となっています。工場立地法で一定以上の面積の確保が定められた緑地も、管理が行き届かずに荒廃しているケースが少なくありません。ところが、そのような未利用地や工場緑地に、地域の貴重な宝物(=希少な生物など)がひっそりと生き延びて暮らしているというのは「意外とよくあること」なのです。そればかりではありません。地域社会の生物多様性を守り育み、未来へ受け継ぐうえで、現代においては工場敷地ほど理想的な条件を備えた環境はないのです。その最も大きな理由が、「外来生物への対応(除去・根絶した状態での維持管理が可能な、ほぼ唯一の環境」であることです。では、その実践方法を具体的に説明しましょう。

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詳細事例を含んだ本記事の全文はこちらからご覧いただけます。

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「生物多様性」や「持続可能性」という言葉や概念が存在しなかった時代になされた大規模開発のうえに存在する工場敷地やコンビナート地帯。その地を「SDGs(持続可能な開発目標)の舞台」にすること、即ち「持続可能な再開発目標」の構築と実践こそが、先達から受け継いだ事業所を担う企業の使命とも言えるでしょう。


アミタでは、生物多様性戦略/環境調査サービスを提供しています。

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執筆者プロフィール(執筆時点)

本多 清(ほんだ きよし)
アミタホールディングス株式会社
経営戦略グループ

環境ジャーナリスト(ペンネーム/多田実)を経て現職。自然再生事業、農林水産業の持続的展開、野生動物の保全等を専門とする。外来生物法の施行検討作業への参画や、CSR活動支援、生物多様性保全型農業、稀少生物の保全に関する調査・技術支援・コンサルティング等の実績を持つ。著書に『境界線上の動物たち』(小学館)、『魔法じゃないよ、アサザだよ』(合同出版)、『四万十川・歩いて下る』(築地書館)など。

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