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生ごみを制すれば、「ごみ」を制す1|ゼロ・ウェイストに取り組むステップ#1 初心者向け企業・地域を変える!?「ゼロ・ウェイスト」の可能性

Some_rights_reserved_byP_retty_Poo_Eater.jpgごみはすべての人に関わりがある事柄といって過言ではありません。そして今までは、個人、自治体、企業にとって、できるだけコストと労力を割きたくない事象でもありました。しかし今、この「ごみ」が、世界の資源枯渇・生態系破壊などの環境問題への意識の高まりと共に、可能性ある資源として注目されています。また、コミュニティ内すべての構成員が関わる共通課題として、まちづくりへの参画を促すきっかけとしても注目されています。

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本コラムでは、日本で初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」を行い、徹底資源化を実施している徳島県上勝町での実績がある特定非営利活動法人ゼロ・ウェイストアカデミーの理事長 坂野 晶様に「ゼロ・ウェイスト」の可能性と、具体的な進め方について連載していただきます。

本コラム一覧はこちら

生ごみを制すれば、「ごみ」を制す|一廃の約4割・圧倒的な重量を占める生ごみ

日本全国で私たちが出す「生ごみ」は年間推計で約2,842万トン。その内訳は約70%が食品産業から、残り約30%が家庭からの排出と言われています。実は、生ごみの排出量の実態を表す正確な数値はなく、あくまで推計値です。日本において生ごみの多くは、「燃えるごみ」「可燃ごみ」などの分類で焼却処分されているため、生ごみだけを計量した数値が集められないからです。推計値は、いくつかの自治体などにおいてごみの組成調査をした際の数値を参考に算出することになります。ごみの組成調査については前回コラムをご参照ください

しかし、全体量が完全に把握できないとはいえ、生ごみについて注目すべき理由はその圧倒的な量の多さ(重さ)にあります!ごみの組成調査を行っている自治体での組成結果を参照すると、大抵の自治体で、少なく見積もっても一般廃棄物に占める生ごみの推定量は約40%。特に生ごみは水分を含んだまま捨てられることが多く、重量比で圧倒的な割合を占めることになるのです。そんな、ごみの約40%を占める生ごみだからこそ、生ごみを無くせば、ごみはほぼ半減します。思い切って抜本的にごみ削減に取り組もうとするなら、生ごみを何とかするのが一番の近道です。まさに、「生ごみを制すれば、「ごみ」を制す?!」。

【発生抑制】と【資源活用】|生ごみの約4割が食べ残しで、その半分は「手付かずの食品」

ではどのように生ごみの削減に取り組んでいけば良いのでしょうか。取り組みを考える前提として、まず一口に生ごみと言っても、その内容を詳しく知る必要があります。5年に1度、定期的に生ごみの詳細な組成調査を行っている京都市のデータを参考にすると、生ごみの約60%弱が調理くず、約40%弱が食べ残しです。さらに、食べ残しのうち半分以上が「手付かずの食品」つまり未開封などの状態で手を付けずにそのまま捨てられた食べ物です。

調理くずについては、ある程度は出てしまうことが避けられないものです。なるべく無駄なく皮まで食べられるよう調理を工夫するなど、取り組みの余地はありますが、それらによって抜本的に量が減るものではありません。そのため、取り組み方としては、出てしまったごみをいかに活かすかというアプローチになります。一方で、食べ残し・手付かず食品については、いかにそもそも捨てられないようにするかというアプローチが重要です。つまり、生ごみへの取り組みには大きく分けて、「そもそも出さないようにする」や「出す量を減らす努力をする」【発生抑制】へのアプローチと、「出てしまったものを有効活用する」【資源活用】の2つの取り組み方があるのです。

【資源活用】生ごみを土に返す

まず今回は、【資源活用】から見ていきましょう。生ごみは、焼却処分する場合でも厄介者です。含水率が高いため、焼却しづらく、炉の温度を下げてしまう原因となります。各地で生ごみの「水切り」をしてから捨てるように呼びかけられているのはこのためです。後に紹介する【発生抑制】への取り組みと合わせて、「使いきり」「食べきり」「水きり」の「3キリ運動」などと推奨している自治体もあります。焼却に適さないのであればより一層、上手く活用する術を探りたいところです。そこで取り組まれているのが、生ごみから「堆肥をつくる」活用方法です。

生ごみはもちろん自然由来のものですから、土に還すことができます。単純に、埋めて土に還すことで生ごみを焼却しない・処理費用を無駄にしない、というアプローチもあります。神奈川県葉山町から始まった「バクテリアdeキエーロ」はその優良事例。誰でも一定の場所さえあれば、簡単に土に戻すことができるもので、家庭の生ごみを簡単に処理することができます。一方で、一定量の生ごみは各家庭(そして事業所からも)定期的に出続けるわけですから、上手く活用すれば、地域内で堆肥を作ることができる有効な資源となるのです。

ゼロ・ウェイスト宣言自治体の一つ、福岡県大木町は早くから自治体単位で生ごみの回収と液肥化に取り組んできました。2001年からモデル地区での生ごみ分別回収を始め、2006年から町内全域で実施。焼却ごみは有料の袋を購入する必要がある一方、生ごみを分別してバケツに入れて回収する場合は回収費用を無料とするインセンティブを設けました(事業系は10キロあたり30円の処理費用を徴収)。実際に翌年2007年には焼却ごみが40%以上も減るという結果を出し(モデル地区での実施時にはなんと平均70%、最高90%も削減できたという結果もあったそうです!)、実際に従来のごみ処理より町としての処理費用が軽減されるという成果にも繋がっています。

具体的には、回収した生ごみを別途回収したし尿や浄化槽汚泥と合わせてバイオガスプラントでメタン発酵させ、バイオガスと有機液肥を回収するというしくみ。出来た液肥は無料配布し、町内の農家に活用してもらうとともに、この液肥を使ったブランド米も作って売り出しています。バイオガスは発電・熱回収し、プラント自体の電気・熱の供給に使用しており、プラントのランニングコストを抑えられるしくみになっているとのこと。また、このバイオガスプラントには環境学習機能があるとともに、隣接する道の駅では先述のブランド米などを味わえる「デリ&ビュッフェくるるん」があるのも魅力です。大木町の取り組み詳細についてはこちらのコラムもご覧ください

小規模単位での資源循環

このように自治体規模での回収・堆肥化を行う事例がある一方、徳島県上勝町のように各世帯にその機能を分散させる手法もあります。上勝町ではほぼ全ての世帯に庭や畑があり、各戸に堆肥の活用先があるという地域環境があったため、各世帯でコンポスターや小型の電動生ごみ処理機を導入してもらい、堆肥化を図るという政策方針で生ごみの活用に取り組みました。1991年の導入当初はコンポスターへの購入補助(本体約5千円、自己負担3,100円)を、その後1995年からは電動生ごみ処理機の購入補助(本体約5万円、自己負担1万円)を行い、2018年現在でも「生ごみは回収せず各家庭で堆肥化」というしくみは根付いています。

また、事業所向けには大型の電動生ごみ処理機の購入補助及び維持管理費補助を行っており、各主体が各々に生ごみの堆肥化を進めるという体制を築いています。こちらでも、出来た堆肥は町内の農家に無償提供しています。

同じように、堆肥化でも半径2キロ圏内を目安とした「生活圏内」で「食べたものから出た生ごみを、もう一度食べ物をつくる資源とする」資源循環に取り組んでいる事例があります。福岡県福岡市を拠点に活動するNPO法人循環生活研究所が推進する「ローカルフードサイクリング」です。個人単位ではなく、地域単位(自治体という区切りではなく)で取り組んでいることも特徴です。家庭から出る生ごみを各家庭で手軽に堆肥化し、「生活圏内」に複数ある菜園で野菜を育てるのに使うというしくみ。なかなか自宅で自ら基材を用意してコンポストを始めるのはハードルが高い、生ごみを堆肥化しても、出来た堆肥を使う先が無い、などの課題を抱える住宅地の居住者にも気軽に参加してもらえるしくみであるため、モデル地区での継続率はなんと96%以上。利用者は、堆肥化したコンポストを回収してもらう度に貯まるポイントで、それら堆肥で作った野菜をもらうことも出来ます。まさに食べ物が地域内で循環する、嬉しいしくみです。

実際に利用者の反応や取り組みの効果はどうなのか、循環生活研究所のたいら由以子理事長に伺うと、「むしろコンポストに取り組むと、自分の出したごみをよく見直すことになるから、無駄にする食品を減らそうという動きになるよね」、という答えが返ってきました。

その他にも、大規模な事業所や企業が生ごみの有効利用に取り組む方法としては、堆肥化以外に「飼料化」もあります。今回は詳しく紹介しませんが、主に食品関連事業者が出す食品廃棄物を発酵処理し、飼料を作成して、豚肉を生産し、また食品として提供していくという資源循環の輪をつくる取り組みは各地で少しずつ広がっています。

・・ということで、次回は生ごみへの取り組みpart2として、「そもそも出さないようにする」や「出す量を減らす努力をする」【発生抑制】へのアプローチについてご紹介します!

執筆者プロフィール

sakano_akira.jpg坂野 晶(さかの あきら)氏
特定非営利活動法人ゼロ・ウェイストアカデミー
理事長

大学で環境政策を専攻後、国際物流企業での営業職を経て現職。日本初の「ゼロ・ウェイスト」宣言を行った徳島県上勝町を拠点に、同町のゼロ・ウェイストタウン計画策定や実装、ゼロ・ウェイスト認証制度の設立、企業との連携事業など政策立案や事業開発を行うとともに、国内外で年間100件以上の研修や講演を行いゼロ・ウェイストの普及に貢献する。

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