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コラム

進む世界の対策、私たちはどうすればいいの? 初心者向け原田先生の廃プラ問題最前線!企業におけるリスクとチャンス

Image_by_Matthew_Gollop_from_Pixabay.jpg本コラムでは、今話題の"廃プラスチック問題"について、大阪商業大学公共学科准教授の原田禎夫氏に分かりやすく解説いただきます!第3回である今回は、国内外で行われているプラスチックごみそのものを減らすための具体的な取り組み事例をご紹介します。

ぜひ環境制約・リスクをチャンスに変える戦略立案にお役立てください!

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関心が高まるプラスチックごみ問題

最近急速にプラスチックごみ問題への関心が高まっています。少し前までは「ごみ拾いばかりせずに研究しろ」とか「ごみの研究なんて"ごみ"だ」などと言われていたことが遠い昔のように思われます。

関心の高まりにつれて、多くの企業の社員研修などでもプラごみ問題についてお話しする機会をいただくようになりました。そこで感じることのひとつは、国内企業と海外企業のスピード感の違いです。多くの国内企業は「今日はいいお話を聞かせていただきました」でおしまい。しかし、海外企業の場合はしばらくすると「社内で検討した結果、こんなプログラムに取り組むことになりました!」とすぐさま具体的な行動に移してくださり、しかもどんどん取り組み内容も充実していくことが多いのです。

しかし、プラスチックごみ問題はもはや待った無しの状況です。この原稿を書いているときにもスイスで開催されているバーゼル条約締約国会議で、汚れた廃プラスチックの国際的な移動が厳しく制限されることが決まったというニュースが流れてきました。これまで汚れた廃プラスチックの処理の大半を海外に依存してきた日本ですが、これからは国内で処理しなければならなくなります。しかし十分なリサイクル・システムを持たない日本では、プラスチックごみの総量そのものを減らさないといけないのはこれまでご紹介してきた通りです。では、具体的にどんな取り組み事例があるのでしょう?

  • 非分解性プラスチック製品の削減

幼児向けのブロックで有名なレゴ・グループは、「レゴ」での石油由来のプラスチックの使用を2030年までに取りやめ、すべてのブロックを植物由来のものに置き換えると発表し、2018年8月からサトウキビを原料とするブロックの販売を米国、カナダ、英国、ドイツ、オーストリアで開始しました。

  • ランニングイベントでのエイドステーション

190521_image01.jpgエイドステーション(給水所)で大量の使い捨てプラカップが問題になっていたランニング・イベントですが、2018年9月にロンドンで開催されたハーフマラソンでは「食べられる水」が登場しました。「Ooho!」と名付けられた海藻でできた生分解可能なボールに入った「水」は、そのまま食べることもできますし、道端に捨てられても4〜6週間で完全に分解され土に還ります。また、私たちが開催している「ほづがわチャリティ・ファンラン」では、全国で初めて、ランナー全員がマイカップを持って走るエイドステーションで大会を運営しました。400人近くが出場された今年の大会でしたが、大きな混乱もなく、ごみの大幅削減にも成功しました。
(写真は、マイカップでのエイドステーションの様子。「ほづがわチャリティ・ファンラン」(執筆者提供))

  • オフィスでのペットボトル飲料の禁止

積水ハウスが2019年1月から本社だけではなく、関連会社29社と子会社7社の合計36社で社内会議でのペットボトル使用を禁止しました。社内の自動販売機からも順次、ペットボトル入り飲料を無くしていくそうです。国内の市町村で最初にプラごみゼロ宣言を発表した鎌倉市(神奈川県)でも、今年の4月から市の公共施設に設置された自動販売機からペットボトル入り飲料をなくすとともに、マイカップ対応の自動販売機を導入しています。

  • イベントでのリユース食器の導入

最近では、規模の大小を問わずリユース食器を導入するイベントも増えてきています。日本三大祭のひとつ、京都の祇園祭ではすべての屋台でリユース食器をすでに導入し、大きな成果を挙げています。2年前からは同じく日本三大祭のひとつである大阪の天神祭でも試験導入が始まり、ごみの大幅な減量に成功しています。また、Jリーグのヴァンフォーレ甲府は、リユース食器を地元のNPOや活動の趣旨に賛同したスポンサー企業とともにエコスタジアムプロジェクトを展開し、サッカースタジアムでの使い捨てプラスチックごみの削減に取り組んでいます。

  • 無料給水スポットの展開

190521_image02.jpg国内外で、無料の給水スポットの設置が急速に進んでいます。この給水スポット、お国柄もあらわれて興味深いものです。たとえばパリ市では、炭酸水も無料で提供されます。東京でも国内初の自立型給水機がデビューしました。中国や台湾では冷水だけではなくお湯(多くは熱湯とぬるいお湯)が提供され、お茶や乳児用ミルクのためにお湯を補給することも可能です。また、スマホアプリで無料でマイボトルに給水してくれるお店を紹介し、お店の側の来店機会の増加=売り上げ増加につなげるような取り組みも、ロンドンやニューヨークで本格的に始まっています。
(写真は、台湾の給水機(執筆者提供))

  • 洗濯機からのマイクロファイバー流出対策

今まであまり知られていなかったプラスチック汚染の原因のひとつに化学繊維から抜け落ちた「マイクロファイバー」があります。大都市だけに限らず、空気中や河川からもたくさん見つかるマイクロファイバーですが、洗濯機からの流出も少なくありません。アウトドアウェアメーカーで知られるパタゴニアは、フリース素材からのマイクロファイバー流出の調査、衣類の構造の違いによる抜け落ちの研究のほか、流出を防ぐ洗濯バッグの販売をしています。

  • 農業用生分解性マルチシート

畑の雑草の繁茂を抑え省力化を図ったり、地温を高めたりする目的で急速に普及したマルチシートですが、海や川のごみでもたくさん見つかるものの一つです。薄くて破れやすいマルチシートはプラスチック汚染へのリスクの高い製品のひとつでもありますが、最近では生分解性素材のものもたくさん開発されています。サツマイモの栽培が盛んな鹿児島県では、規格外などの廃棄処分になっていたサツマイモを原料にしたマルチシートが開発されていますが、使用後も回収する必要がなく、そのまま土にすき混むだけなので、大幅な施業コストの削減にもつながっているそうです。

コンプライアンスだけでは不十分?

想像を超えるスピードで脱プラスチックへの取り組みが世界中で進んでいます。そんな中で、私にもさまざまな企業の方から、プラごみ対策は何をすればいいのか?というご相談をよくいただきます。もちろん、すべての使い捨てプラスチックを今すぐゼロにできればそれに越したことはないのですが、現実にはなかなか難しい場合も多いことと思います。

ここで一つ大事な点は、従来の法規制がまったく追い付いていないということです。それは言い換えると、これまでのコンプライアンス(法令遵守)とはまったく違うレベルの取り組みが必要とされている、ということでもあります。

執筆者プロフィール

mr.harada.jpg原田 禎夫(はらだ さだお)氏
大阪商業大学 公共学科 准教授
NPO 法人プロジェクト保津川 代表理事

1975年京都府生まれ。現在、大阪商業大学公共学部准教授。近年深刻な問題となっている海や川のプラスチック汚染について、内陸部からのごみの発生抑制の観点から取り組むNPO法人プロジェクト保津川代表理事。

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