第四回 新規事業づくりのポイント解説 | 企業のサステナビリティ経営・自治体の町づくりに役立つ情報が満載

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コラム

第四回 新規事業づくりのポイント解説トランジション・ストラテジー(移行戦略)のすすめ ~循環型ビジネスの実現~

gather.jpg前回までのコラムでは企業のESG戦略におけるビジネスモデルのあり方についてお伝えしました。今回は、事業活動を通じて自社と社会のサステナビリティを向上させるための新たな事業のつくり方について、主に構想~プロトタイピングまでを解説します。

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目次
新規事業づくりの万能な方法とは!?

新規事業づくりに関して、専任担当者や組織編制、経営資源の分析、市場調査、事業アイデア創出といったオーソドックスなプロセスとフレームワークは、今やインターネットや書籍を通じて手軽に学ぶことができます。にもかかわらず、多くの方が新規事業づくりの正解を欲し、手段を求め続けるのはなぜでしょう?その答えは、結局のところ企業によってプロセスやフレームワークの使いどころ、重点の置き方が異なるためであると考えています。「新規事業づくりの万能な方法とは!?」という問いに対しては、残念ながら万能な原則や方法論はない、という答えになりますが、弊社のCyano Projectでは、過去の企業支援経験に基づき、新規事業づくりを進めるうえで、どのような企業であっても重視している最初のプロセスがあります。それは「企業としてどこを目指すかを示すビジョンの明確化」です。そのポイントは、時代観と生態系史観を取り入れることであると考えています。
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「新規事業づくりに必要な要素」アミタ作成

不可欠な最初のプロセス、『ビジョンの明確化』はなぜ必要?

地球温暖化や人口増、資源枯渇といった社会課題による財務影響の可視化要請や、モノ消費からコト消費、さらにはイミ消費といった消費者価値観の変容。未来は現在の延長線上にはない、ということを我々企業は自覚してこの先を描かねば存続することは難しいと感じています。サプライチェーンの維持と価値創出を、これまでのように個社単位で成立させる思考から、生態系のように関わり合う他者とともに変化し、代謝を繰り返すことで他者とともに生存し続けるというように、思考の前提を切り替える必要もあります。(参照:コラム第三回『攻めのESG戦略 ビジネスモデルを変えるためには?』)新規事業を考えるうえでの前提が今までとは異なるのです。そのことを会社として認識し、新規事業開発を担う組織とその組織のオーナーはしっかりと腹落ちしたうえで、自分たちはどこを目指すべきなのか?という問いへの答え=ビジョンがなければ、新規事業開発プロジェクトは早晩つまずくことになります。『いま、いくら儲かるのか?いくらかかるのか?』という既存の評価軸を優先する周囲からの圧力に勝てなくなります。
ビジネスなので綺麗ごとに終始することは避けるべきですが、変化の多い時代に新規事業開発を担う皆様が行き先を見失ってしまったり、他人の意見に簡単に煽られてしまわぬよう、プロジェクトの最初に、時代を認識した会社と皆様の意志・夢・向かう先=ビジョンを共通認識にすることは不可欠です。プロジェクトの目的はビジョンの達成であり、目的に資するビジネスモデルをつくることが目標である、ということを常に念頭におきましょう。VUCA.jpg

「VUCA(ブーカ)時代」アミタ作成

プロトタイピングまでの5つのポイント

1.安心してチャレンジできる組織
構想する新規事業の投資領域が既存事業寄りか、そうでないか。ボトムアップやトップダウン型、新規事業創出プログラム型など、開発アプローチはどのようなパターンか。条件によって程度の差はあれ、新規事業開発はチャレンジです。チャレンジにリスクとコストはつきものです。
チャレンジの原動力を生むためには、先述したとおり、前提として『ビジョンの明確化』により、リスクとコストをかけてでもチャレンジすべきプロジェクトであると、メンバーが確信できることが大切です。
次に、企業に新規事業開発そのものに取り組みやすい文化や価値観があるか、また、新規事業開発に取り組む組織が、開発に集中できる環境があるか、新規事業開発においては企業と開発担当組織という二つの単位での組織のあり方が重要になります。リスクを抱えコストをかける開発担当組織が、公式にチャレンジできる制度があるか。具体的には新規事業創出プログラムや、Googleの20%ルールのような制度、評価基準等があげられます。"安心して新規事業開発にチャレンジできる"かどうかが、成否に大きく影響します。

2.新たな評価軸の設定
ESGを土台とした新規事業の開発において、その事業を評価する軸が従来どおりの財務価値指標だけでは、意味がありません。近年、いわゆる非財務価値について、財務価値とトレードオフの関係にあるものではなく、将来の財務価値にインパクトを与えるものという意味で、「未財務価値」と捉えるという考え方が広がりつつあります。こうした評価軸は、NPVやIRRといった従来の事業採算性評価のロジックからは生まれ出ないものです。新規事業によって獲得すべきものは新しい市場や顧客であり、企業として達成すべきビジョンへ到達するストーリーであるはずです。脱炭素目標値への貢献度や、資源利用の効率性の向上など、財務価値指標だけではない、バランスの取れた評価軸を設定していきます。mamoriseme.jpg

「財務価値と非財務価値の重要度」アミタ作成

3.課題の設定 -主観・客観・俯瞰-
課題の設定においては、主観・客観・俯瞰を意識します。
前述したように、これから先の時代を俯瞰したビジョンから、設定する課題の方向性を絞り込んでいきますが、それと同時に"主観"を見極めましょう。すなわち「この課題にアプローチするソリューションを、未来の私は欲しいのか?」といった問いです。ビジョンへ到達するストーリーと新規事業開発を担うみなさんの想いを重ねること、"未来の私"を想定することで、個人の想いと社会の想いを融合して考えることが大切です。
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「課題設定と主観・客観・俯瞰のイメージ」アミタ作成

そして、以下のような点でその課題の"質の良さ"を客観的に検討します。

  • 課題の量:課題の広さ×発生頻度。同じ課題を抱える人(企業)がどのくらい存在するか
    検証方法の例 定量アンケート調査、ネットリサーチ、SNSへの反応など
  • 課題の深さ:課題を抱える人(企業)が、対価を払ってでも解決したいと思うか
    検証方法の例 顧客インタビュー、定量アンケート調査など
  • 課題の時間軸:課題を抱える人(企業)が、対価を支払って解決したいと思うタイミングはいつからいつまでか
    検証方法の例 PESTや5フォース分析などの外部環境分析

課題設定において最も基本的で重要なことは「それが課題である要因(課題が発生し、解決されない理由)」を分析・考察することにより、より本質的な課題に焦点を当てることです。本質に近い課題であるほど、解決によるインパクトが大きくなり、解決策に対して多くの、そして確かな共感を獲得できます。本質に近づくほど、抽象度や難易度が増し、解決策がぼやけてしまったり、1社での解決が難しくなる傾向にあるため、敬遠する向きもあるでしょう。しかしそれは、競合も同じです。難易度や理解不能性の高い本質的な課題に、志を同じくするパートナーと共に臨み、ファンを獲得することが、競争力を獲得する第一歩となります。

また、"課題を抱える人(企業)"とは顧客セグメントを意味します。課題の広さと深さを検討しつつ顧客セグメントを設定しますが、市場投入期と展開期を想定し、絞り込むことがポイントです。市場投入期の顧客に良いプロダクトを提供し良い評価を得て、市場を展開していきます。最初から顧客セグメントを広く設定することが必ずしも最適な判断とは言えないということは注意しておきたい点です。

4.解決策(ビジネスモデル)の構想
課題が設定できたら、次にその解決策となるビジネスモデルを構想します。ビジネスモデルを構想するうえでは、攻めと守りの両軸について、それぞれのポイントを押さえて考えることが大切です(参照:コラム第二回『守りのESG戦略 既存のビジネスにESG価値を追加するには?』、コラム第三回『攻めのESG戦略 ビジネスモデルを変えるためには?』)。自らの強みに固執しすぎることなく、自社だけではないエコシステムで解決策を組み立てる、価値づくりの一端にあえて顧客を巻き込むといった「価値共創」の思考が新しい時代のビジネスモデル構想には求められます。

5.プロトタイピング
本格的なプロダクトフェーズに入る前に試作し、顧客の反応を得て解決策の効果を確認します。設定した課題と解決策の検証がプロトタイピングの目的です。すなわち、仮説立てした課題やニーズを持つ顧客が確かに存在し、対価を支払ってでも得たいとその価値を評価する解決策(製品、サービス)になりそうか否かの確認であり、顧客やパートナーと新しい価値観を確かな手触りとして共有するプロセスと捉えます。したがって、試作品の完成度は検証するに足る状態にする必要があります。

  • 想定した課題を抱える人(企業)が存在する
  • 解決策が有効である
  • 課題を抱える人(企業)が、自社に対価を支払って解決策(製品、サービス)の購入意思を示している
  • 価値共創のバリューチェーンが想定通りに機能する
  • 想定した収支が見込める

以上をクリアした後、次の事業化フェーズにチャレンジします。もし、クリアできなければ、解決策を変えクリアできるよう試行錯誤していき、それでもクリアすることが難しければ、課題の設定のプロセスに戻る必要があります。

最後に

前回のコラム「攻めのESG戦略 ビジネスモデルを変えるためには?」に続き、今回は新規事業づくり初期の構想段階について『ビジョンを明確化する』ということを起点に解説しました。アミタのCyano Projectでは、この先自社がどこを目指すのかを再認識し、捉えた課題に対してお客様と一緒に解決策(攻めと守りのESG戦略)を構想~実装する支援をしています。

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執筆、編集

kinoshitasan.jpg木下 郁夫(きのした いくお)
アミタ株式会社 社会デザイングループ
グループマネージャー付

企業向けのソリューション営業の経験をベースに、廃棄物管理に係わるシステムの設計・開発、業務フローの構築などに従事。現在はサステナビリティ経営に向けた新規事業の提案など、更なる顧客満足度の向上を目指し、提案・サービス活動を行っている。

atsumisan.jpg渥美 黄太(あつみ こうた)
アミタ株式会社 社会デザイングループ
群青チーム チームマネージャー

石油精製・化学・自動車・食品・機械など、環境を軸に多くの企業への提案・支援実績を経て、現在はコンサル部門にてビジョン・長期目標の策定、循環型のビジネスモデル構築を支援中。

komaisan.jpg駒井 真帆(こまい まほ)
アミタ株式会社 社会デザイングループ
山吹チーム

2018年、アミタ株式会社に合流。環境管理業務の統合支援サービスSmartEcoの営業を担当後、現在は企業向けのサステナビリティコンサルティングを行っている。

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