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コラム

宿泊型研修プログラム「マインドシフトツアー」体験レポート

top_tree.png「外部環境の変化に対応した新しいビジネスの発想が生まれない」「既存事業が大きく成長しているため今の状態を変えることができない」循環型ビジネス創出支援「Cyano project」のオプションサービスとして、2023年7月より提供している「マインドシフトツアー」はこのような悩みに気づきやヒントを提供する2泊3日の宿泊型研修です。
本記事ではオムロン ソーシアルソリューションズ株式会社、大和ハウス工業株式会社と実施したマインドシフトツアーの内容と、体験レポートをご紹介します!

<マインドシフトツアーとは>
マインドシフトツアーとは、企業が循環型のビジネスを構想する上で、社内において変化を起こす中心となる人材を育成することを目的としたサービスです。いきなり具体的なアイデアを出したり、その他明確なアウトプットを求めたりするのではなく、まずはメンバーの意識の変容(=マインドシフト)を重視し研修のゴールとしています。本研修は頭での知識のインプットだけではなく、体験や五感を通じた"身体"による学びを重視した宿泊型のプログラムです。

目次

ツアー概要

今回のツアーは、岡山県西粟倉で1泊したあと、京都市へ移動。アミタミュージアム「風伝館」の見学と西粟倉で学んだことのまとめとアウトプットを行いました。参加者はオムロン ソーシアルソリューションズ株式会社の新規事業開発部門/生産部門ご担当者と、大和ハウス工業株式会社 の研究開発部門/環境部門ご担当者をそれぞれ2名ずつお招きし、ツアー企画者を含めた計12名で実施しました。

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Point1:原生林で植物の生存戦略から調和と共生を学ぶ

研修の舞台となるのは岡山県西粟倉。県の北東端に位置し、人口は約1600人、土地の約9割が山間部です。この村は、森で取れる間伐材を使って家具や内装材をつくったり、生産過程の端材を燃料に活用したり、森の資源を活かし独自の価値を生み出し続けています。また、移住者やベンチャー企業が数多く存在し子育てもしやすいことから"奇跡の村"として注目を集めています。
このような流れから村全体で村興しをスタートし、未来に向けて、美しい百年の森林に囲まれた上質な田舎を実現するため「百年の森林(もり)構想」を打ち出しています。

マインドシフトツアーでは西粟倉村で活動し「未来の里山をつくる」ことをビジョンとして掲げるエーゼロ株式会社(以下エーゼロ社)をはじめとし、地域の価値づくりに携わる方とツアーを進めました。
1日目、エーゼロ社が原生林で行ったワークショップは、まず五感で森を感じることからはじまり、植物たちの生存戦略について解説いただきました。鳥の目、虫の目、魚の目を通して原生林を見渡すと、普段は見えない小さな気づきが得られます。例えば「この木はなぜ隣の木に寄生して生えているのか」「葉の形・色がどうしてこんなに違うのか」素朴な疑問の背景には、植物が長い時間をかけて編み出してきた「生存戦略」の秘密があり、長く存続する企業の事業活動のヒントとなり得るものを感じます。一方、自然界と現在の企業の事業活動を比較してみると「時間軸の考え方」「影響の範囲」等、異なる点もあり、その差に今後の企業が持続可能性を担保しながら価値を生み出し続けるヒントが隠されているようにも感じました。

Point2:長期的視点でみる価値創造

西粟倉村の「百年の森林構想」では、経済活動をなるべく村内で循環させ、かつ災害のない健全な村土を保全することを掲げています。2日目はその取り組みを体現する地元の役場・企業の方々からその構想に至った経緯や考え方、重要な視点を学びました。西粟倉で新しい取り組みを検討する際には「市場規模や需要予測からではなく、本来の村の価値向上に繋がっているか」「自然資本の視点も加味し、価値を損ねない資源量を把握して事業活動を行えるか」という点が重視されている点が印象的でした。

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夕食では西粟倉村近郊でとれた鹿のジビエ料理です。西粟倉では増えすぎた鹿が、百年の森林構想のために植樹した苗などを食べてしまい次世代の木が育たない、という食害が深刻化しています。

害獣として駆除を余儀なくされた鹿は、自然の営みからいただいた贈り物として捉え、エーゼロ社が地域の方々から教わった解体方法で丁寧に解体・精肉し事業を行っています。夜は焚火を囲み、原始的な空間で、お酒を飲みながら参加者とこれまでのプログラムの中で得た視点や気づき、また各々の人となりをざっくばらんに会話し、心理的距離を縮めました。

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Point3:循環の考えを、企業人・個人としてどう活かすか

3日目は、京都へ移動。アミタが運営する築150年の京町家を活用したミュージアム「風伝館」にて、人類の歴史と2日間で学んだことを融合させ、参加者同士、何を感じたか言語化して共有していきます。最後はツアー参加者が企業人として今後どのような役割を果たしたいか、また個人として社会的責任を果たしていくべきかについてアウトプットをまとめていきました。

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参加者にきく!ツアー参加前後での変化

今回マインドシフトツアーに参加いただいた2社のご担当者に、ツアー前と後にアンケートに回答していただきました。ツアーを通し"身体"で得た体験で意識はどう変わったのか・・・ここからはその内容をご紹介します。

  • オムロン ソーシアルソリューションズ株式会社

Q1, ツアー参加へのきっかけ、貴社部署内でお持ちのミッションや課題について教えてください
私たちは新規事業開発部門と生産部門の所属であり、サステナビリティ課題を「事業」としてビジネスにしていく取り組みを進めています。課題はサーキュラーエコノミー等を理解して事業検討するものの経済合理性との両立が難しく企画が成り立たないことです。できることから進めている部分もありますが、中長期視点でトランスフォームが必要だと感じています。今回のツアーでは他者の感性に触れながら、サステナビリティ視点と事業を繋ぎ合わせる際の大切な視点や気づきを得て、自組織のベースマインドにするヒントを持ち帰りたいと思い参加しました。

Q2,ツアーに参加して特に印象に残っていることや学んだことについて教えてください。
経済効果を基準に事業を考えるのではなく、長期的な時間軸で社会全体を俯瞰し、資源の絶対量を把握した上で今後の事業活動を考えるということが、ビジネスのトランスフォームには必要だと改めて学びました。そのためには、自社の事業活動の影響範囲を手触り感をもって測れないと正しい判断ができないと理解した一方で、事業規模が大きくなればなるほど影響範囲は広くなり測ることが難しくなるので、この点をどのように取り戻していくのか考えなければなりません。今後もビジネスは発展しながらも成長定義や評価基準、行動指針は変わっていくと思います。ものづくりを生業としている我々ですが、事業成長の研ぎ澄ませ方、社会への貢献の仕方、責任範囲の視点を学びました。

Q3,今回の学びからこれから自分や自社が果たしたい役割、アクションを教えてください。
組織が大きくなればなるほど、会社のミッションと事業活動において、自然資本との結びつきが分かりにくくなってしまうため、自ら関係部署を巻き込み、自社パーパスの解像度を上げ、既存の枠に縛られない新しい軸を作りたいと思います。既存事業にはこれまでの目的とパーパス・価値観が存在するため、新しい価値観を強引に当てはめようとすると無理が生じる可能性があります。我々が取り組む新規事業検討の中でコンセプトや行動基準を定めることで既存事業へも浸透させていきたいと考えています。仕事への向き合い方が変わり、いかに自社らしくトランスフォームしていくか、考えるきっかけをいただきました。

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  • 大和ハウス工業株式会社

Q1, ツアー参加へのきっかけ、貴社部署内でお持ちのミッションや課題について教えてください
私たちは研究開発部門と環境部門に所属しており、研究開発部門では社会に新しい価値を創造すること、環境部門では環境と企業収益の両立を果たすことがミッションです。社内に向けてESGの観点を踏まえた取り組みを促進していますが、これまでの価値観と異なる考え方や行動様式を認め、新しい取り組みを進めていくことが苦手な人もいます。そのため、人々はどのようにしてESG思考をもって行動できるのかという部分に興味がありツアーに参加することにしました。

Q2,ツアーに参加して特に印象に残っていることや学んだことについて教えてください。
自社では、環境の中長期ビジョンを掲げていますが、本ツアーで自社と自然の関わりがより身近に感じられ、目標達成の重要性を頭ではなく感覚で理解できました。エーゼロ社が限られた資源を最大限有効活用して事業を行い、関連する事業が次々に生まれ成長していること、それにお客さまが共感し商品の購買動機につながっていることが印象的でした。循環型社会の実現に貢献しながら、事業を推進するということを考えるヒントとなりました。

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Q3,今回の学びからこれから自分や自社が果たしたい役割、アクションを教えてください。
自社にはパーパスの社内外浸透という課題があると感じていますが、人々が共感するきっかけ(取り組みの背景、わくわく感、仲間になりたいと思う視点等)を取り込み自身が持つ発信チャネルを通じて関係者を巻き込める人になりたいと思います。本ツアーではインプットだけで終わらせず一人一人が意見を発表し、他者の考えも共有し合う時間が設けられ、自分なりに考えを整理しアウトプットできました。「持続可能性」「循環」の本質を理解し、変化を起こすマインドに変容するという意味で学びの多い3日間でした。

最後に

いかがだったでしょうか。体験や五感を通じた"身体"による学びは、企業が循環型のビジネスを構想するための最初の一歩(意識の変容)を喚起します。マインドシフトツアーは、春・夏・秋シーズンで開催が可能です。1社のみで開催、また今回のような複数社交えての開催が可能です。

ESGを含むサステナビリティの変化に対応しなければならない、と頭では理解しているが、アクションに対して行き詰っている、サステナビリティを理解・実行する経営方針を示さなければならないが、どこか腹落ち感が持てない、などの課題をお持ちの方は是非一度お問い合わせ・ご相談ください。mindsihft.png

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執筆者プロフィール

komaisan.jpg駒井 真帆(こまい まほ)
アミタ株式会社 社会デザイングループ
サーキュラーデザイン東日本チーム

アミタ株式会社に合流後、環境管理業務の統合支援サービスSmartEcoの営業を担当。現在は企業向けのサステナビリティコンサルティングを行っている。

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