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コラム

大阪ブルー・オーシャン・ビジョン、ローカル・ブルー・オーシャン・ビジョン推進事業、瀬戸プラネットとは?令和の里海づくり~世界が注目するSATOUMIとブルーカーボンの可能性~

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持続可能な社会を目指す上で重要な、ネイチャーポジティブ、気候変動、サーキュラーエコノミー。これら全てに係わる重要テーマでもあり、30by30において改めて重要性が認識された海の保全と管理。その中で、里海(SATOUMI)という日本発の考え方が、改めて注目されています。最終回の第5回目のテーマは、「ローカル・ブルー・オーシャン・ビジョン推進事業とは」です。

出典:環境省

目次

海洋プラスチックごみを取り巻く背景~国際問題と国内問題~

海洋プラスチックごみが国際的な問題となっています。海洋プラスチックごみによる汚染は、国境を越えて、生物・生態系への影響、船舶航行への障害、観光・漁業への弊害など様々な問題を引き起こし、国際的にも重要かつ喫緊の課題となっています。このまま対策が取られなければ、2050年までに海洋中のプラスチックごみの重量が魚の重量を上回ってしまうという予測も示されています。

環境省の漂着ごみ組成調査(国内)によりますと、例えば主に日本海側では中国、台湾、韓国、ロシアなど国外から海流に乗って運ばれたと考えられる海洋プラスチックごみが確認されています。瀬戸内海のような閉鎖性海域については、大半が国内の近接自治体からの流出とみられ、国内での発生抑制・流出抑制などが重要となります。

▼モルジブのごみ集積場

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(出典:環境省 2019年)

▼香川県坂出市の海岸に漂着したプラスチックごみ

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(出典:環境省)

大阪ブルー・オーシャン・ビジョンとは?

2019年6月に開催されたG20大阪サミットでは、2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減することを目指すことが提案され「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」として参加国の首脳間で共有されました。他国や国際機関等にもビジョンの共有を呼びかけていて、87の国と地域が共有しています(2023年5月時点)。さらに2023年4月のG7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合、同年5月のG7広島サミットでは、2040年までに追加的なプラスチック汚染をゼロにすることに合意が成されました。現在、プラスチック汚染を終わらせるための条約制定に向けて、政府間で交渉が進められています。

ローカル・ブルー・オーシャン・ビジョン推進事業(通称LBOV推進事業)とは?

ローカル・ブルー・オーシャン・ビジョン推進事業は「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」の実現に向けた具体的なアクションの一つとして、環境省が進めている取り組みです。国内における海洋ごみ対策を推進し、自治体と企業が連携して海洋ごみの回収や発生抑制対策などのモデル事業を実施します。具体的には、有識者の派遣によるコンサルティングや連携体制の構築を通じて、海洋ごみ対策を効果的に進めるための支援を行っています。これにより、美しく豊かな自然を保護し、海洋環境を守るための取り組みを推進しています。

本事業のポイントは、自治体と企業が連携して行うことです。政策的な狙いは、自治体が企業などの持つ先進的な技術や創意工夫を生かして地域住民の参加を促し、実効性のある持続可能な取り組みにすることです。環境省では2021年度から3年間で延べ19事業を採択し、各地域で特色ある海洋ごみの回収、発生抑制対策が行われています。

地域住民が「自分ごと」に~愛媛県今治市「プラスチック・スマートシンポジウム2024」~

2024年2月、愛媛県今治市で「プラスチック・スマートシンポジウム2024」が開催され、2023年度のLBOV推進事業に採択された6自治体が取り組みを発表しました。

発表後のパネルディスカッションでは「効果的に可視化して発信することが重要」「アップサイクル商品など現物があると実感がわきやすい」「家庭で子どもが活動すると保護者(大人)の意識改革につながる」などの意見が出ました。

▼愛媛県今治市民による海岸清掃活動

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(出典:環境省)

地域住民にいかに「自分ごと」として考えてもらい、他の地域に展開できるかが「課題」です。

▼表1 各事業主体と取組概要(2023年度)

自治体名 連携企業・団体名

取組概要

広島県 ・広島テレビ放送(株)
・(一社)フウド
・タメンタイ(合)
・復建調査設計(株)
海岸清掃や海ごみによるアート作成、展示などの活動をテレビ番組として放送し、海洋ごみ削減に向けた自発性や当事者意識を醸成するための"仕掛けづくり"、"広島の海へのファンづくり"を行う。
広島県 ・(株)そごう・西武
・そごう広島店
・(株)中国放送
・GSHIP参画会員
※GREEN SEA 瀬戸内ひろしま・プラットフォーム:広島県が2021年6月に設立した海洋プラスチックごみ対策に係る官民連携プラットフォーム
・エリアマネジメント団体(地元企業・団体)
地域を巻き込み実施するアクションプロジェクト「スポーツ×海洋プラスチック」を実施、清掃イベントやアップサイクルの見える化を行う。スポーツの要素を加えて間口を広げ、プラスチック削減の意識醸成を図る。
京都府 ・(有)フクオカ機業
・協栄産業(株)
・東レ(株)
・(株)京都環境保全公社
・(一社)京都府産業廃棄物3R支援センター
・佛教大学
・京都市
ペットボトルの効率的な回収でごみとしての発生を未然に防ぎ、廃棄するペットボトルをスマホケースやトートバッグなど西陣の織物にアップサイクルする仕組みを構築する。ノベルティ商品として普及啓発に活用し、一般消費者の意識改革と行動変容を目指す。
和歌山市 ・花王(株)
・KATIES
・(株)テレビ和歌山
・大阪府堺市
豊かな海づくりに向けた取り組みを全国的に普及させることを目標に、和歌山市が考案したキャラクター「ウミプラ―」の教育コンテンツを試験的に大阪府堺市にも展開・連携して効果検証を行う。
愛媛県今治市 ・今治コミュニティ放送(株)
・今治商工会議所
・南海放送(株)
今治市の湊・大新田海岸(人工護岸)について、市と地域住民が連携して持続可能な海岸清掃活動を確立する。商工会議所、コミュニティFM、地元の中学校などと共同で海岸清掃イベントや意識調査アンケートを実施し、市民がわが子のように海岸の美化に取り組む機運を醸成する。
三重県度会町 ・度会小・中学校
・度会町内事業所、各種団体
町内の小学3年生を資源ごみ分別マイスターに認定し、資源循環の考え方を各家庭(幅広い世代)に広げてプラスチックごみの減量化や発生抑制を推進する。町内の事業所、商工会などを「宣言の店」に指定し、ローマ字表記のスローガンパネルを掲げてもらい町民の意識醸成につなげる。
福岡県吉富町 ・田邊三菱製薬工場(株)
・NPO法人エコリテラシー協会
・(合)縄文企画
小学生と地元企業関係者を対象に海洋ごみなどを活用したアップサイクルのワークショップ、ホットスポット(ごみが集中する場所)での海岸清掃活動を実施し、町内全体の行動変容につなげて「脱炭素日本一」の実現を目指す。
瀬戸プラネット(「瀬戸内海プラごみ対策ネットワーク」)

「瀬戸内海プラごみ対策ネットワーク」(以下、瀬戸プラネットと省略)は、きれいで豊かな瀬戸内海との共生、その恵みを未来へ共有・継承していくため、瀬戸内海流域の14府県(大阪・兵庫・和歌山・岡山・広島・山口・徳島・香川・愛媛・福岡・大分・京都・奈良・滋賀)と環境省が2023年10月に立ち上げました。14府県がそれぞれの取組の情報を共有したり、意見を交換したりし、広域一丸となって海洋プラスチックごみ対策を進めています。

▼瀬戸プラネットのロゴ

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(出典:環境省)

▼瀬戸プラネットを構成する14府県

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(出典:環境省)

まずは、瀬戸内海に流入するマクロプラスチックごみの量の推計や、ホットスポットの調査を通じて実態を把握し、効果的な回収・発生抑制対策につなげる方針です。また、プラスチックごみが海洋に流出するまでの各段階でのアクションとして、使用量の削減や適性処理の促進、海岸等での回収活動など、企業・団体、関連行政分野とも連携した取組を検討しています。日本最大の閉鎖性海域、瀬戸内海の成果を国内外に発信・展開することで、国際的な取組に貢献することが期待されています。

各府県の主な取組としては、愛媛県では2024年1月から県内6市町の二級河川でモニタリング調査を実施しています。上流からのプラスチックごみをデジタルカメラで撮影し、画像を解析して輸送量(海に流れ込む量)を調べます。愛媛県の海岸線の長さは約1700キロメートルで全国第5位、複雑に入り込んだリアス式海岸など立ち入り困難地域の漂着ごみが大きな問題となっています。愛媛県が2021年度に南予地域(愛媛県南部)の563カ所の海岸を調査したところ、軽トラック約3万2500台相当の漂着ごみが確認されました。海域由来も多くありますが、内陸部から河川をつたって海に流れ込むプラスチックごみの実態を把握し、今後の発生抑制対策や県民への啓発に役立てる狙いがあります。

多くの方の当事者意識醸成が今後の鍵

私も里海づくり推進専門官として、各地の現場に赴き、海洋ごみ回収の取組に参加しています。2024年2月、香川県最大のホットスポットと呼ばれている干拓地を訪ねました。堤防と消波ブロックの間に大量の海洋ごみが漂着し、ペットボトル、発泡スチロールの破片、カキ養殖用のパイプ、プラスチック製の部品、廃タイヤなどが何重にも層になっていて、直径5ミリ以下まで小さくなったマイクロプラスチックも散乱していました。あまりの量の多さに言葉を失い、いくら回収しても状況が変わらず無力感すら抱きました。それでも海岸清掃ボランティアや地方自治体の職員と力を合わせ、自問自答しながら回収を続けました。どこから漂着したごみなのか?海への流出を防げなかったのか?

▼香川県観音寺市の干拓地で海洋プラスチックごみを回収する筆者

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(出典:環境省)

このまま放置するとどうなるのか?海洋プラスチックごみ対策は「正解がない、終わりのない取り組み」だと感じています。「ローカル・ブルー・オーシャン・ビジョン」の活動を通して「自分ごと」として考え、行動する仲間の輪が広がることが鍵と考えます。

参考情報
執筆者プロフィール

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引田 章徳(ひけた あきのり)氏
環境省 中国四国地方環境事務所四国事務所 環境対策課 里海づくり推進専門官

1971年生まれ。岡山大学法学部を卒業後、KSB瀬戸内海放送に入社。営業、報道、編成・広報業務に携わる。1999年11月から1年間、朝日新聞神戸支局に出向して海・経済・教育の記者クラブを担当。KSB報道では、「国内最大級の不法投棄」と呼ばれた香川県豊島の産廃処理事業を取材した。2022年4月、中国四国地方環境事務所(岡山市)に出向し、新設された里海づくり推進専門官を務める。2023年7月、四国事務所(高松市)に異動し、四県の現場を回っている。

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