プロが教える!産業廃棄物処理施設で発生する臭気・粉じんのチェック方法 | 企業のサステナビリティ経営・自治体の町づくりに役立つ情報が満載!

環境戦略・お役立ちサイト おしえて!アミタさん
「おしえて!アミタさん」は、未来のサステナビリティ経営・まちづくりに役立つ情報ポータルサイトです。
CSR・環境戦略の情報を情報をお届け!
  • トップページ
  • CSR・環境戦略 Q&A
  • セミナー
  • コラム
  • 担当者の声

Q&A

プロが教える!産業廃棄物処理施設で発生する臭気・粉じんのチェック方法

Photo by AustinBanon Unsplash

排出事業者の皆様は、処理委託先の処理状況の確認の際に、粉じんや臭気のチェックをどのように行われていますか?特に臭気は感じ方の個人差が大きく、評価が難しいポイントでもあります。今回は、廃棄物管理や環境汚染を専門に研究や企業支援を行っている環境資源システム総合研究所 浦野氏に、有効なチェック方法についてご紹介いただきます。

まずはおさらい!粉じん、臭気が持つリスクとは?

排出事業者は、処理委託先の適切な処理の状況を様々な方法で確認しています。昨今は、企業の社会的責任範囲の広がりによって、委託先の労働環境や周辺環境影響への配慮状況まで、視野に入れた確認を行う企業も増えています。

特に、多様な廃棄物を受け入れている廃棄物処理施設で問題が生じやすく、管理が難しいものが、粉じんの原因になる紛体廃棄物や溶剤等の揮発性有機化合物です。また、無機ガスを含めた揮発性物質が周辺環境に漏出することによるにおいが苦情や訴訟等の問題に発展することもあります。こうしたトラブルの際、「自社の廃棄物が直接的な原因となり、かつ情報伝達が不十分であった場合」を除けば、直接的に排出者が責任を負うことはありませんが、施設の一時的な操業停止や間接的なイメージ悪化などに繋がらないとも限りません。そこで今回は、粉じん、臭気の測定方法について詳しく述べていきたいと思います。

粉じんのリスクとチェック方法 粉じん計を活用

粉じんは、作業者に健康被害を与える可能性があり、また爆発の危険性もあることから、適切な管理が必要です。測定時には、国によって定められた「公定法」(粉じんの場合は、ろ過捕集方法及び重量分析方法、もしくは相対濃度指示方法)が用いられますが、コストアップに繋がるという理由から 、他の管理項目同様に、法定頻度以上での測定は行っていないケースが多いと考えられます。しかし、粉じん量は変動しますし、日常管理を目視などの感覚に頼ると、人によって捉え方が異なるため、適正な評価や改善が難しいのが実情です。

そこで、一般的な粉じんについては、比較的簡易な計測機器としてレーザー照射時の散乱を利用した測定機器などが市販されています。(これらは、公定法分析にも活用されています。)この様な機器は、機器特性や粉じんの質によって、測定結果にずれが出てしまうため、一度は重量法を併せて実施すべきですが、その後は 簡単にかつ連続的に状態を把握することができ、人による評価の差などは生じません。価格帯は、原理や性能にも寄りますが10万円から30万円程度です。 発生抑制や飛散防止などの対策と合わせて、簡便な計測機器による測定値を活用することは、現場管理に効果的と考えられます。簡単に測定方法についてまとめますので、参考にしてください。

▼粉じんの主な測定方法と注意点

概要 注意点
ろ過捕集・重量測定方法 ろ紙を用いて、一定量の気体中の粒子物質等を捕集して重量を測定して濃度を算出する方法。 粉じん量に応じて捕集時間を調整する。湿度が多い場合にはろ紙の選定にも配慮が必要。
相対濃度指示方法
(粉じん計)
レーザーによる光散乱量と空気中粒子量を関連付けて粉じん濃度を測定する方法。ピエゾバランス式粉じん計もある。
特性(換算係数)が分かっていれば日常管理に使用できる。
ろ紙捕集・重量測定法と併行測定することで、測定場、機器に対応し重量濃度への換算係数が得られる。
適度なメンテナンスが必要。

においのリスクとチェック方法 ―なぜ、臭気の測定は難しいのか?

揮発性有機化合物やにおいの問題に対して、廃棄物の中間処理を行っている事業者は、ピットや作業場などからの漏えいを防止するために、搬入や処理の状況に応じて扉を開閉することや、当該廃棄物を扱うエリアを限定するなどの工夫を行っているところが多いと思います。しかし、それでも多くの廃棄物処理施設では特有の臭気があります。これらを完全に取り除くことは極めて難しいため、定量的な評価を行いつつ、必要に応じて緩和のための工程改善を進めること、評価結果を排出事業者や周辺住民等とのコミュニケーションツールとして活用することが考えられます。ただし、廃棄物の処理施設でのにおいについては、いくつかの特有の要因が管理を難しくしています。それが下記の2点です。

  • 産業廃棄物処理施設における臭気物質の多様性(物質ごとのにおい特性の相違)
  • 個人間の感度応答の違い、順応の存在

まず、溶剤等の化学物質の揮発性はそれぞれ異なっており、また、同じ気中濃度であっても、においの強さやにおいの質が大きく異なっています。さらに、産業廃棄物処理施設では、臭気を感じる物質が非常に多く、複合することで違った感覚をもたらすこともありうるため、その管理をより一層難しくしているのです。

悪臭防止法で特定悪臭物質として規定されている22物質については、条例等で基準濃度もしくは臭気指数が指定されていますが、例えば、規制物質であるアンモニアでは、らくに感知できるにおいは2ppm程度とされますが、メチルメルカプタンでは0.004ppmと500倍異なっています。また、それぞれの物質のにおいを感じる濃度はアンモニア0.6ppmに対して、メチルメルカプタンは0.00007ppmと約8,600倍も異なっています。

このように物質ごとのにおい方やにおいの質が大きく異なる上、悪臭防止法で指定されている物質以外の臭気物質も多数存在しています。また、廃棄物処理施設では、これらの発生状況が受け入れ廃棄物やその保管状況、作業内容等で変化していると考えられます。そのため、廃棄物処理施設の臭気の評価は、特に難しいのです。

次に個人間の感度の違いと順応についてです。処理施設等の作業者あるいは現場確認を行う排出事業者で考えてみると、個人間の感度差が大きいことによって、同じ作業場に居ても、ある人は悪臭とは感じず、ある人はかなりにおいを感じる状況が生じる可能性があり、さらに同じにおいを嗅ぎ続けることで、順応(馴化とも言う)によって応答感度が低下するので、すぐにあまり強いにおいと感じなくなってしまうということが起こります。

一方、周辺住民で考えると、風向や風速によって、到達する臭気物質の濃度は変動し、順応は生じにくく、特に感度の高い人では、排出状況によっては強い悪臭を感じることとなり、苦情などの問題に繋がりやすくなります。しかし、苦情を受け取る事業者側は、前記の順応によって、においが強い状況と感じていない可能性も高く、さらに住民対応する担当者の鼻の感度によっても、問題認識のギャップが生じることになります。

においのリスクとチェック方法 ―測定器での測定と注意点

臭気のチェックについては、簡易な測定機器を導入することで、定量的な評価値を基に管理を行うことが可能となります。現在の市販品では、「においセンサー」と称されるにおいの強さを数値として表現したものや、揮発性の有機化合物を総量として示すTVOC(全揮発性有機化合物)センサーがあります。測定場が定まれば、相対的なにおいの強さの大小などの判断に活用できると考えられます。排ガス規制などで用いられる一部のTVOCセンサーも、原理的には同じ仕組みのため、感度が合致していれば揮発性有機化合物やにおいの管理に使用できます。

これを活用した事例として、産業廃棄物焼却施設の有機溶剤等の取り扱いに伴うVOCの漏出苦情に対応するための状況の確認のために施設内、施設周辺の大気中濃度測定にTVOCセンサーを用いたことがありますが、測定時の気象条件でのVOCの分布を簡便に把握することができ、高濃度になる場所や作業内容を把握することに成功しています。

最後に

あくまで、においセンサーやTVOCセンサーは、「においの強さの目安」や「センサーに反応性を持つVOCの総量」を測定するものであり、「個人のにおいの感じ方」を測ることはできませんが、においの要因になり得る物質について客観的な指標を示すことが可能です。重要なことは、粉じんや臭気の評価は、感覚に頼ると判断が難しいものであることを認識し、各測定方法の特徴を理解した上で、評価に臨むことです。人的なチェックのみを行っている場合は、評価方法の見直しをお勧めします。ここでは廃棄物の処理委託先を例に粉じんとにおいの問題、およびその対応例を取り上げましたが、これは廃棄物処理に限らず、製造工場などでも発生しうるので、その観点からも参考にしていただければ幸いです。

関連情報

190724_amita-smarteco.pngアミタでは、廃棄物管理置き場等でのセンサーを用いた保管量管理、ビデオ通話システムを用いた遠隔での「現地確認」など、環境管理業務のコストとリスクを低減するICTサービスを提供しています。

詳しくは、こちら

執筆者プロフィール(執筆時点)

浦野 真弥(うらの しんや)氏
有限会社 環境資源システム総合研究所
代表取締役所長

東京農工大学大学院・京都大学大学院修了後、京都大学研究員・豊橋技術科学大学研究員等を経て、現職。PCB等有害物の測定・処理と安全性評価、環境汚染の迅速・低コスト分析機器、排水からの有機物回収技術、廃棄物の再資源化技術、地域の資源循環実態の調査・解析と評価などの開発研究と実用化等で実績。

このページの上部へ