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Circular Economy=ビジネスモデルの完全循環型への変革

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いま、世界の潮流として資源循環型経済を目指すサーキュラー・エコノミーが注目され、様々な形で展開されています。その一つがストローやレジ袋などの「石油由来のプラスチック素材」の使用規制です。しかし日本では、「なぜ、現状でただちに原料の石油が枯渇するわけでもなく、大量生産で安価に供給できるプラスチック素材が規制されなければならないのか?」という疑問をもつ企業経営者も少なくないと思います。私たちはサーキュラー・エコノミーをどのように捉え、ビジネスモデルに組み込んでいけばいいのでしょうか。今回は資源循環による「ごみゼロ社会」を目指すNPO法人ゼロ・ウェイストアカデミーの代表理事・坂野晶氏をお招きし、サーキュラー・エコノミーの実現に向けた方向性を伺いました。

(坂田晶氏による「おしえて!アミタさん」の連載『企業・地域を変える!?「ゼロ・ウェイスト」の可能性(全10回)』 に関する記事はこちら

※本記事は、アミタ(株)主催セミナーにおける坂野氏のご講演内容やご提供いただいた資料をもとにアミタ(株)の見解をまとめたものです。

警察だ!この白い袋は何だ?レジ袋使用罪の現行犯で逮捕する!

そんなことが現実に起こりうる国があるでしょうか?そう、あるのです。ケニアでは一昨年(2017年)8月からレジ袋をはじめとするポリエチレン製の袋の製造・販売・輸入、そして使用までもが禁止され、違反者は最長4年の禁固刑か最大4万ドル(約430万円)の罰金が課される場合があり、実際に逮捕者も出ています。タンザニアでもレジ袋を所持しているだけで87ドル(約9400円)の罰金か禁錮1週間、またはその両方が科せられます。法規制の目的は、街や田畑そして河川や海岸などにあふれる廃プラスチックごみによる環境汚染への対策です。これが世界の「現実の潮流」なのです。

サーキュラー・エコノミーへの転換が必須とされる背景

プラスチックの原料である石油は「枯渇性資源」の代表的な存在であり、私たちの暮らしの根底を支えている重要な資源です。その枯渇リスクが近い将来に迫っていることは夙に知られています。しかし今、世界がより深刻な危機感を持っているのは、その枯渇による調達リスクよりも、むしろ利用することによる気候変動や環境汚染のリスクなのです。例えばレジ袋の原料となるポリエチレンは様々な石油化学素材の中でも"余剰的な資源"で、製造コストも極めて安価です。そのためポリエチレン製のレジ袋や、使い捨て製品のポリ容器類は「タダ同然のもの」として暮らしの中に浸透しました。しかし、その結果として海洋プラスチックなどの深刻な環境問題を引き起すことになってしまったのです。

その一方で、例えば金属資源では2050年までにほとんどすべての金属の使用量予測が現有埋蔵量を上回るとされており、現有埋蔵量の数倍もの使用が見込まれている金属も少なくありません。つまり2050年にはほとんどすべての金属が「リサイクル資源としてのみ利用可能」という状況になるのです。

このように、私たちは「近い将来に必ず起こる資源枯渇」という潜在的な課題と共に、「いま目前で起きている環境問題」という顕在化している課題に直面しています。製造業にとって原料調達は必須事項ですが、他方では製品の使用時や使用後の環境対策に大至急取り組まなければ「明日にも自社製品が販売も使用も禁止になる」という状況にあると認識するべきでしょう。

上記のような危機的な状況の中で、今、必要とされているのがサーキュラー・エコノミーの考え方です。
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【Circular Economyの考え方の主な特徴】

  • リユースやリデュース、リサイクル、リペアを前提にした製品設計を行う
  • 「とる-つくる-すてる」の一方通行のビジネスモデルから資源をできる限り付加価値をつけて利用しつづける
  • 短い製品寿命、頻繁なアップグレード製品の提供から、長い製品寿命、競争力が持続する製品の提供に切り替える
  • 製品販売からサービス販売へ移行する。リース、シェア、交換、修理、再生産の考え方をベースとしたビジネスモデルの構築を進める など
ゼロ・ウェイストが示す意義とは?

このようなサーキュラー・エコノミーへの転換に必須のプロセスが、ごみゼロ社会の実現、即ち「ゼロ・ウェイスト」です。ゼロ・ウェイストを「生産物の制限や縮小で経済活動を規制せざるをえないもの」と捉えるのは誤りです。ごみゼロ社会は、持続可能な発展目標(即ちSDGs)を実現するために必須の手段であり、新たな成長のための経済戦略なのです。「不要なもの=ごみ」という既成概念を脱し、「あらゆる排出物を有用資源として捉えること」が、全ての産業や企業にとって不可避のミッションとなります。それによって環境破壊の要因と共に、資源枯渇のリスクが解消されるという、経済活動における二つの課題を同時に克服する成果が生まれます。ゼロ・ウェイストは経済活動を持続可能にするための大前提であり、サーキュラー・エコノミーの実現における大原則なのです。

世界経済におけるビジネスモデルのあり方も、「ゼロ・ウェイスト」を目指すサーキュラー・エコノミーに大きく変革しつつあり、新規性のあるビジネスモデルの実現と共に飛躍的な成長を遂げている企業もあります。このように、サーキュラー・エコノミーへの転換はリスク管理だけではなく、経済的な成長戦略にも直結しているのです。

欧州では再生可能資源を軸とした中長期的な循環型資源の確保に向けた戦略的なルールメイキングが進んでおり、一方の環境対策としてのプラスチック製品の規制はイギリスやEUはもとより、アフリカ諸国や中国・インドという巨大市場でも進みつつあります。今後、企業がそうした社会トレンドをキャッチアップしていくことは、市場シェアと操業の維持にも必須の課題となるでしょう。これは、言い換えれば「循環型・再生可能なモデルではないビジネスは(競争に敗れて)生き残れない」ということです。

ゼロ・ウェイストの推進には「住民との協働」が不可欠

そもそもゼロ・ウェイストという概念は、企業の経営方針ではなく自治体の施策の中から生まれました。オーストラリアの首都キャンベラ市が、増え続ける市内のごみ埋め立て量への課題対策として、1996年に世界で初めて「No Waste Strategy(ノー・ウェイスト戦略)」を打ち出し、「A Waste Free Society by 2010」という目標を掲げたのが起源です。市民との徹底した協議の中で「廃棄物処分場」を廃し、「資源管理施設」(埋立地にリユース・リサイクルセンター、堆肥化施設、資源保管場所等を併設したもの)を設けたのです。その政策は世界中に衝撃的な影響を与え、各国の自治体で「ゼロ・ウェイスト宣言」と共に資源循環政策が進められる契機になりました。

日本の自治体で初めての「ゼロ・ウェイスト宣言」をした徳島県の上勝町も、山村地域で家庭ごみの収取業者もなく回収も処理もできないという、廃棄物をめぐる危機が逼迫していたという経緯がありました。その解決手段として、「ごみそのものをなくす=徹底した資源循環活用」という選択をしたのです。そこで生み出されたのは、拠点回収への各家庭からの持ち込みと、45品目もの徹底した分別・資源化のシステムです。ごみ全体の重さの3割を占めていた生ごみは全量を各家庭で堆肥化して資源利用します。その結果、リサイクル率は81%(通常は20%)にまで上昇し、資源化された有価物が収入源にもなって、町のごみ処理経費は全量を焼却処分した場合と比較して6分の1までに圧縮されたのです。ごみ処理費から削減された分の税金は、医療費や福祉、教育などに充てることができます。こうした変革には住民の理解協力を得るための丁寧な説明や、取組みへの意欲を喚起する細やかな工夫やインセンティブの設定が重要な役割を果たしました。

地域と企業の協働によるゼロ・ウェイストの達成へ

このように、自治体のゼロ・ウェイスト推進には廃棄の当事者である「住民」との協働が不可欠です。それは即ち、企業のゼロ・ウエィスト推進にはサプライチェーン上の「消費者」との協働が不可欠であることを意味するでしょう。つまり、「いかにして循環型経済のビジネスモデルに消費者=住民を巻き込み、協働できるか」が、企業のゼロ・ウェイスト戦略の鍵になります。その達成には、製品を製造する企業側が住民によるリサイクル活動の現場を知り、新たなリサイクル技術や新素材による製品開発を展開することが不可欠です。企業がそうした製品開発をなし、社会に実装するうえでも、住民と共に実地でトライアルできる地域社会やフィールドが必要になるでしょう。今後は、地域と企業が相互の課題解決を実地で生み出してくステージが求められていくことになると思います。

例えば、家庭ごみの徹底した分別でリサイクル率81%を達成した上勝町ですが、それでも、残り19%では「燃やす」か「埋める」という処理をせざるを得ない状況です。その主な理由は、それらの排出物が「そもそもリサイクルする想定で作られていない素材・製品」であることによるものです。これは、「地域内の取組みだけではゼロ・ウェイスト社会を達成できない」ことを物語っています。地域をめぐる様々な課題や困りごとに対し、企業が自らの製品やサービスをサーキュラー・エコノミー型に転換しつつ、解決策を生み出していく。一つの企業だけでなく、複数の企業が各社の得意技を活かして自社事業と地域をサステナブルに発展させる。そのようなケーススタディから生まれるイノベーションが、サーキュラー・エコノミーにおける成長戦略につながるのではないでしょうか。

講師プロフィール

sakano_akira.jpg坂野 晶(さかの あきら)氏
特定非営利活動法人ゼロ・ウェイストアカデミー
理事長

大学で環境政策を専攻後、国際物流企業での営業職を経て現職。日本初の「ゼロ・ウェイスト」宣言を行った徳島県上勝町を拠点に、同町のゼロ・ウェイストタウン計画策定や実装、ゼロ・ウェイスト認証制度の設立、企業との連携事業など政策立案や事業開発を行うとともに、国内外で年間100件以上の研修や講演を行いゼロ・ウェイストの普及に貢献する。2019年1月には世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)の共同議長に日本人で唯一選ばれた。

ゼロ・ウェイストアカデミー:http://zwa.jp/

執筆者プロフィール

本多 清(ほんだ きよし)
アミタ株式会社
環境戦略デザイングループ 環境戦略デザインチーム

環境ジャーナリスト(ペンネーム/多田実)を経て現職。自然再生事業、農林水産業の持続的展開、野生動物の保全等を専門とする。外来生物法の施行検討作業への参画や、CSR活動支援、生物多様性保全型農業、稀少生物の保全に関する調査・技術支援・コンサルティング等の実績を持つ。著書に『境界線上の動物たち』(小学館)、『魔法じゃないよ、アサザだよ』(合同出版)、『四万十川・歩いて下る』(築地書館)など。


【経営企画・事業企画・サステナビリティ推進担当、必見!】
2020年9月末発表「世界を変えるサーキュラーエコノミー最新ビジネス39事例」を解説

Filmshop Boutique (5).png2020年9月29日~30日に開催された世界循環経済フォーラムのオンラインイベントにて、サーキュラーエコノミーの優良事例(39企業の取り組み事例)が発表されました。日本からも2社が選定されています。今、世界で実践されている新しいビジネスモデルは、どのようなものか?ぜひ、ご一読ください。


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