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SDGsインパクト評価とは?【前編】
-SDGsマッピングから抜け出すレバレッジポイント-

Image by aymane jdidi from Pixabay

現在、多くの企業がSDGs(持続可能な開発目標)の開示および経営対応を進めています。しかし、企業の方からは、「自社の取り組みに問題はないか不安」、「どうやって自社のSDGs活動の成果、インパクトを評価していったらいいのかがわからない」という声がよく聞かれます。そこで今回は、NPOや企業の社会的インパクトの評価手法を開発し、数多くの企業へ診断やアドバイスを実施されている、株式会社ソーシャルインパクト・リサーチ 代表 熊沢氏に、「SDGsのインパクト評価」をテーマに解説いただきます。

前編では「SDGsインパクト評価が求められる背景や概論」を、後編では、「企業がSDGsインパクト評価を行う具体的な方法」をお届けします。

後編はこちら

企業がSDGのマッピングにとどまってしまう根本の原因は何か?

現状、多くの企業が既存事業とSDGsの17つのゴールを紐づけただけの、「SDGsのマッピング、紐付け」から、抜け出せないという課題に悩んでいます。ただ、既存事業へマッピングをするだけでは、当然のことながら、SDGsのゴール達成には貢献しません。特に、今後はSDGsウォッシングの批判を浴びるリスクもますます高まってくるのではないかと思います。

図表は、企業がSDGsマッピングにとどまってしまう原因を考察したものです。SDGsの課題については、多くの企業が直面するいくつかの共通パターンがありますが、これらのパターンの背景にも、原因として共通の構造要因や共通のメンタルモデルがあると考えられます。

▼企業のSDGs事業がマッピングにとどまる構造要因

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出典:株式会社ソーシャルインパクト・リサーチ作成

いかがでしょうか。ご自身の会社でも、上記のパターン、構造要因、メンタルモデルの内、いずれかに当てはまるケースがあるのではないでしょうか。

図表を見ていただくとわかるように、根底に「企業が社会課題の解決で儲けるのは難しい」、「社会課題は本業の事業領域ではない」などのメンタルモデルがあります。

また、SDGsはグローバルな社会課題の達成目標ですので、テーマが非常に大きいものです。それと比較すると、どんな大企業であっても、SDGsに関わる事業は取り組み規模が小さくなります。そのため、SDGsが掲げる達成目標と、自社の事業との関係性が弱く見え、自社のSDGsの取り組みの成果、インパクトを示すのが難しくなります。こうしたことから、企業のSDGsの取り組みは、既存事業とSDGsをマッピングするだけで終わってしまっているというのが現状ではないでしょうか?

SDGs負のスパイラルから正のスパイラルへどう転換するか?

さらに、私は多くの企業が、「SDGsの負のスパイラル」に陥っているのではと考えております。「SDGsの負のスパイラル」は、1.社会課題の真の原因がわからない→2.有効な解決策が見出せない→3.目標と活動が不明確になる→4.インパクトを評価できない→5.事業と社会性の両立モデルできない→6.SDGsは経営(マネジメント)と分離、と続きます。 

では、「SDGsの負のスパイラル」を、どのように「正のスパイラル」に転換していくのか。この転換を行う上で有効な手段の一つが、SDGsインパクト評価の導入です。

▼SDGsインパクト評価の役割

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SDGsインパクト評価は、現在、よく利用されるロジックモデルである社会的インパクト評価と異なる特徴を持っています。

▼社会的インパクトとSDGsインパクト評価について

社会的インパクト 短期、長期の変化を含め、当該事業の結果として生じた、社会的、環境的なアウトカム
社会的インパクト評価 社会的インパクトを定量的・定性的には把握し、価値判断を加えること
SDGsインパクト評価 自社が行うSDGs活動によって生じたインパクトを定量的・定性的に把握して、価値判断を加えること

SDGsインパクト評価の導入が有効な理由は、この手法が3つの構造要因に働きかけるからです。SDGsインパクト評価は、モデルを作ることによって社会課題の解決策を見出し、社会的価値を評価・測定します。また、事業性と社会性が両立するモデルを構築します。

▼3つの構造要因とSDGsインパクト評価の特徴

3つの構造要因 SDGsインパクト評価の特徴
社会課題は様々な制約条件が絡み合い因果関係が複雑で解決策を見出すのが難しい 目指すべきゴールを設定した後、社会における制約条件を洗い出し、クリアすべき課題を明らかにする
SDGs事業の社会的価値を評価・測定していない 社会的価値だけでなく、事業における価値も取り扱う
事業性と社会性を両立するモデルを持っていない 事業性と社会性を両立するモデルを構築する

また、「評価のための評価」で終わってしまっては意味がありません。近年、インパクト評価業界では、インパクト評価からインパクト・マネジメントということが盛んに言われるようになっています。これらは、インパクト評価を、PDCAのサイクルの中に正しく位置づけことによって、マネジメントサイクルの中で活かし、事業の改善、インパクトの最大化に事業者がインパクト評価を活かしていこうという考え方です。次回は、「SDGsインパクト評価の方法」について、詳しく解説します。

後編はこちら

まとめ
  • 多くの大企業はSDGsの取り組みを進めているが、現状は既存事業のSDGsとのマッピング、紐づけにとどまっており、今後はSDGsウォッシングの批判を浴びるリスクがますます高まる可能性がある。
  • 現状、企業のSDGs事業は3つの構造的な要因により、十分な成果を生み出せていない。
  • この課題を解決する上で、SDGsインパクト評価の導入が有効であると考えられる。
関連情報

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執筆者プロフィール

image004.png熊沢 拓(くまざわ たく)氏
株式会社ソーシャルインパクト・リサーチ
代表

ベンチャーキャピタルにてベンチャー投資を行っていたが、リーマンショックでサステナブル投資の必要性を実感し、2010年に創業。日本で先駆けとなる独自のインパクト評価指標を開発する。大手企業やNPOにインパクト評価コンサルを提供。また、自社ファンドにて事業性と社会性を両立するインパクト投資を行う。

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