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SDGsインパクト評価【後編】
-SDGsマッピングから抜け出す8つのステップ-

「企業は、どのように自社のSDGs事業を評価するのか?」株式会社ソーシャルインパクト・リサーチ 代表 熊沢氏に解説いただきます。後編である今回は、「企業がSDGsインパクト評価を行う具体的な方法」です。

前編はこちら

従来のロジックモデルとSDGsインパクト評価システムの違い

前編では、企業がSDGsマッピングにとどまる要因についてご紹介しました。後編は、SDGsインパクト評価の具体的な方法の1つとして、(株)ソーシャルインパクト・リサーチが開発した制約理論(TOC)を活用するSDGsインパクト評価をご紹介していきます。
従来のインパクト評価でよく使われる手法にロジックモデルという手法があります。ロジックモデルとSDGsインパクト評価システムの違いを対比したのが図表になります。

▼ロジックモデルとSDGsインパクト評価システムの違い

SDGs_impact_2_001.png

従来のロジックモデルは、インプット→活動→アウトプット→アウトカム→インパクトといった直線的な流れで、インパクトの流れを可視化していきます。これに対してSDGsインパクト評価システムは、その社会課題の制約条件を認識し、その制約条件をクリアする小目標を設定し、そこから全体最適な行動計画を立案し、行動施策に組み込んでいきます。また、従来のロジックモデルは社会的価値のみを評価するのに対して、SDGsインパクト評価システムは社会的価値と事業価値の両方を評価するモデルを構築します。このフローの中で、重要な役割を果たすのが、自社のアンビシャスなSDGs目標ターゲットの設定と、ストレッチゴールを具体的な行動計画に落とし込む実行システムの立案です。

具体的な流れは以下の図表になります。

SDGs_impact_2_002.png

SDGsインパクト評価システムの8つのステップ

SDGsインパクト評価システムの流れは以下のようになります。実例として、コンサートホールを運営するA社の例を併記します。

  • ステップ1:当社のパーパス(存在意義)は何か?

会社全体のパーパスをまず確認します。全体のステップはパーパスからスタートし、そのパーパスの成果をインパクト評価で確認するという流れになります。

  • ステップ2:アンビシャスなSDGsゴールは何か?

パーパスに基づく、アンビシャスなSDGsストレッチゴールを設定します。SMARTな目標設定に囚われすぎずに、自社のアンビシャス(野心的な)SDGsストレッチゴールを設定します。この段階ではその方法が具体的に思いつかなくても大丈夫です。A社の場合は、「世界一美しい響きをモットーに、音楽を通じて、豊かな生活文化を創造する」、というゴールを設定しました。

▼<ステップ2>A社の事例

SDGs_impact_8_002.png

  • ステップ3:ゴールの阻害要因は何か?

社会課題の解決にアプローチするには、社会課題の様々な制約条件が複雑に絡まっているので、その制約条件を認識する必要があります。なぜ、自社のゴールが期日までに達成できないのか、その理由をできるだけ多く列挙していきます。A社の場合は、9つの阻害要因を列挙しました。

▼<ステップ3>A社の事例

SDGs_impact_8_003.png

  • ステップ4:阻害要因を小目標に転換する

その制約条件(群)をクリアすることができる小目標(中間目標)を設定します。ゴールの阻害要因を反対に反転させることで小目標が生成することができます。

▼<ステップ4>A社の事例

SDGs_impact_8_004.png

  • ステップ5:評価軸の定義

SDGs事業の評価指標の設定は、小目標をグルーピングすることで、このゴール達成に必要な評価項目を可視化することができます。例えば、大学入試を考えた場合、数学、英語、国語が試験科目でその総合点が合格点をクリアできれば合格できます。大学合格というゴールで、それぞれの評価項目でいかに高い点を取れるかでゴールが達成できます。企業のSDGsの場合は、そのゴール達成のための評価項目自体も自分たちで設定する必要があるのです。ゴールが達成できないのは、必要な評価項目が欠落しているか、もしくはその評価項目の達成度が低い、もしくはその両方のケースが考えられるからです。評価は何のためにあるのか? 評価項目は何のためにあるのか?ということを突き詰めると、自分のSDGsゴールを最短で達成するためにあります。このプロセスを経ることで、KPI(重要経営指標)を超えるメタ・アウトカムを生成することができます。メタ・アウトカムは複数のKPIを統合した評価軸を意味しています。

A社の場合は、革新性、多様性、大衆性という3つの評価軸が浮かび上がり、その定義づけをしました。

▼<ステップ5>A社の事例

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  • ステップ6:小目標の整理・最適化

ステップ6ではステップ4であげた小目標を、ステップ5でまとめた評価軸で整理します。

小目標(群)を整理、統合することにより、目標、ゴールの最短ルートを探索します。必ずしもすべての小目標をクリアできなくてもゴール達成にショートカットができるルートが見つかることがあります。むしろ、そのようなイノベーションを積極的に探索すべきです。

▼<ステップ6>A社の事例

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  • ステップ7:KPI候補・設定

それぞれのKPI候補をあげて、KPIを決定していきます。

▼<ステップ7>A社の事例

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  • ステップ8:SDGsインパクト評価の実行計画の落とし込み

そのゴールへの最短ルートを設定した後に、具体的な行動計画に落とし込みます。その場合に、if then型の条件文(〇〇ならば、△△を実行する)にすることが組織のSDGsの実行力を高めることができます。

最後に、SDGsインパクト評価を行うチェックポイントをまとめておきます。

  • SDGsインパクト評価を行うためのチェックポイント
    社会課題の解決の様々な制約条件をシステム思考で認識し、根本的な真の原因を把握し、それに基づく解決策になっているか?
  • SDGs達成のために、野心的なストレッチゴールと具体的な行動計画を組み合わせて実行計画まで落とし込めているか?
  • SDGsのインパクト評価の部分だけを独立させるのではなく、SDGsインパクト評価サイクルの中に、適切にSDGsインパクト評価が位置付けられているか?

SDGsインパクト評価の流れは以上になります。いかがでしょうか?

まとめ

SDGsインパクト評価は、第一に自社のSDGsのアンビシャス(野心的な)目標設定によるストレッチゴールを提案し、そのストレッチゴールに対して、社会的な制約の列挙を行い、改善に向けた小目標を立てていくことで、ストレッチゴールの実現性を高めるという特徴があります。具体的な行動計画をどのように設計するかが非常に重要となります。

是非、ご自身の会社のSDGs活動へのSDGsインパクト評価の導入を一度検討してみてください。SDGsのインパクト評価を導入・活用することで、これまでよりも、SDGs社会課題の解決策をシステム的に立案し、社会価値評価指標を設定し、事業性と社会性を両立するモデルを作ることが可能になります。

関連情報

企業ビジョンの策定、具体戦略の立案などの総合支援サービス「The Sustainable Stage

執筆者プロフィール

image004.png熊沢 拓(くまざわ たく)氏
株式会社ソーシャルインパクト・リサーチ
代表

ベンチャーキャピタルにてベンチャー投資を行っていたが、リーマンショックでサステナブル投資の必要性を実感し、2010年に創業。日本で先駆けとなる独自のインパクト評価指標を開発する。大手企業やNPOにインパクト評価コンサルを提供。また、自社ファンドにて事業性と社会性を両立するインパクト投資を行う。

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