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欧州委員会、サーキュラー・エコノミー推進に向けた新しい行動計画を発表、日本国内への影響は?

Photo by Luis Villasmil on Unsplash

世界で注目が集まる「サーキュラー・エコノミー(循環型経済)」。このたび、2020年3月11日に、欧州委員会が、新しい行動計画※を採択しました。本計画では、サーキュラー・エコノミーの実現に向けて、いくつかの立法や非立法措置が示されています。詳しい内容をご紹介します。

※『A new Circular Economy Action Plan for a Cleaner and More Competitive Europe(よりクリーンで競争力のあるヨーロッパのための新しい循環経済行動計画)』

新しい行動計画の概要は?

本計画は、設計と製造から消費、修理、再利用、リサイクル、そして経済への資源の持ち帰りまで、製品のライフサイクル全体に対する取り組みについて発表しており、立法措置と非立法措置を導入していくことが明記されています。

欧州委員会の発表によれば、本計画の目的は、経済成長を促進しながら、EUの消費フットプリントを削減し、今後10年間でEUの循環材料使用率を2倍にすることとされています。

また、温室効果ガスの総排出量の半分は、資源の入手や加工によるものであるため、サーキュラー・エコノミーに移行せずに、2050年までに気候中立性の目標を達成することは不可能であるとされており、本計画は、気候中立性を目指すEUのロードマップである「欧州グリーンディール」の中核とされています。以下、主要な発表について、紹介します。

<EUで持続可能な製品を標準に>

欧州委員会は、EU市場に投入される製品について持続可能な製品取り扱いに関する法律、規制の導入を目指しています。製品はより長持ちすることや、再利用や修理、リサイクルが容易であること、可能な限りリサイクルされた材料を利用された製品であることなどが求められ、使い捨て製品などは制限されます。具体的な立法案は、2021年に提案される見込みです。

現在、既にある法律などで、エネルギー関連商品の規制が進んでいますが、新しい立法案では、これらの枠を超えて、可能な限り幅広い製品へのエコデザインの適用を目指すとされています。

<消費者の権利を強化、「修理の権利」を付与>

生産者の行動を変えていくために、消費者の権利を強化する動きが進んでいます。欧州委員会は、本計画にて、製品の寿命や利用できる修理サービスやスペアパーツ、修理の方法などに関する確かな情報を、消費者が販売時点で知ることができるよう、EU消費者法の改正を提案すると発表しました。消費者にとっては、より長持ちする製品を購入できる機会となります。また、今後、消費者の「修理の権利(right to repair)」を強化するとしています。修理する権利については、優先する分野として電子機器やICT関連製品が設定されており、廃止されたソフトウェアを更新する権利などの設定が目指されています。

その他、消費者をグリーンウォッシング(環境に配慮しているかのように偽装すること)や、すぐに耐久性が無くなってしまうような製品の購入による被害から守るために、持続可能性ラベル/ロゴおよび情報ツール用に関する最低限の条件設定を行うとしています。企業においては、自社製品の持続可能性について、さらなる情報開示が求められると考えられます。

<特定分野での規制の強化>

特に、欧州委員会は、サーキュラー・エコノミーに対して影響力が大きいとされる7つの分野を挙げており、本計画では、それぞれの分野における規制の強化などが発表されています。

▼新しい循環経済行動計画 分野別規制の紹介(一部抜粋)

分野 概要
エレクトロニクスとICT
  • 製品の寿命を延ばし、廃棄物の収集と処理を改善するためのイニシアチブの設立
  • 使用済みデバイス等の回収に対し、報酬を付与する仕組みづくり
  • 電子機器における特定有害物質の使用制限に関する規制の見直し
バッテリーと自動車
  • バッテリーの新しい規制の提案
  • 使用済み車両に対する規則の見直し
包装
  • EU市場で許可されている製品に関する新しい必須要件の設定
    (過剰包装の削減を含む)
プラスチック
  • 故意に利用されるマイクロプラスチックに対する制限と意図的でない流出に関する対策
  • 包装、建設資材、車両などの主要製品における再生プラスチック含有量と廃棄物削減対策に関する最低条件の設定(再生プラスチック利用の促進)
繊維
  • 繊維廃棄物の分別に関するガイダンスの提供
    (加盟国は、2025年までに分別の実行を義務付け)
建築
  • 建設に関わる製品の法規制の改訂(特定製品におけるリサイクル原料の含有率の基準の設定を含む)
食品
  • 使い捨ての包装、食器、カトラリーの再利用に関する法律制定のための調査を開始

出典:欧州委員会「A new Circular Economy Action Plan for a Cleaner and More Competitive Europe」より

日本国内への影響は?

本計画に基づき、今後、EU市場においては、製品の持続性に関するデータの提出や製品寿命の情報開示などが、新たな法規制によって求められていきます。欧州委員会は、製品の寿命の短さや使い捨てへの危機感を募らせており、今後も、リサイクル原料の利用や再利用に関する規制の強化が続く見込みです。さらに、これらはEU市場に留まる話ではありません。国際的にも、先進的にサステナビリティ施策を推進する今回のEUの革新的な発表は、今後、数年以内に日本国内でのより明確なサステナビリティ規制やガイドラインに影響を与える可能性があります。日本企業も国内外での企業活動において、透明性があり、より具体的なサステナブル対応が求められるでしょう。

本計画の冒頭では、「バイオマス、化石燃料、金属、鉱物などの材料の世界的な消費量は、今後40年で2倍になると予想され、年間の廃棄物発生量は2050年までに70%増加する見込みである」と述べられています。企業の責任ある行動が求められます。


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2020年9月末発表「世界を変えるサーキュラーエコノミー最新ビジネス39事例」を解説

Filmshop Boutique (5).png2020年9月29日~30日に開催された世界循環経済フォーラムのオンラインイベントにて、サーキュラーエコノミーの優良事例(39企業の取り組み事例)が発表されました。日本からも2社が選定されています。今、世界で実践されている新しいビジネスモデルは、どのようなものか?ぜひ、ご一読ください。


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執筆者プロフィール

amita_ishida77.png石田 みずき(いしだ みずき)
アミタ株式会社

サステナビリティ・デザイングループ マーケティングチーム

滋賀県立大学環境科学部を卒業後、アミタに入社。メールマガジンの発信、ウェブサイトの運営など、お役立ち情報の発信を担当。おしえて!アミタさんへの情熱は人一倍熱い。

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