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今こそ再エネ調達を。再エネの4つの手段と注意点とは?

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脱炭素に向けて、社会の意識が変わっていくにつれ、注目が集まる再生可能エネルギー(以下、再エネ)の調達。サステナブル経営を目指す企業には、欠かせないトピックスです。今回は、「企業と再エネ調達」をテーマに、みんな電力株式会社(以下、みんな電力)の真野氏に、最新動向を解説いただきます。

※本記事は、アミタ(株)主催セミナーにおける真野氏のご講演内容を基に執筆しています。

目次
再エネ調達にはどのような手段がある?4つの手段の特徴とコストを比較

皆さんは、「再エネ調達」と聞いた際に、どのような手段を思い浮かべるでしょうか。実は、再エネを購入する以外にも、自家発電や証書の取得など、様々な手段があります。RE100が示す調達手段は大きく下記の4つに分類できます。

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RE100が規定する再エネ調達手段(クリックして拡大)(みんな電力作成)

調達手段 1、再エネ自家消費(自社敷地内) 2、コーポレートPPA(自社敷地外) 3、再エネ電気の購入 4、証書(グリーン電力証書、Jクレジット、非化石証書)の購入
特徴

・再エネ賦課金や託送料がかからないため、経済性が高い

・現状、経済性が高いのが太陽光のみであり、昼間の電力しか賄えない、屋根面積の制約など、供給量に限界がある

・海外企業では増えているが日本国内では事例がない

・追加性で高い評価が得られるなど、中長期的には有力な選択肢候補である

・再エネ賦課金が課金されるなどコストメリットが出にくい可能性がある

・電力会社の提供する再エネメニューの電気を購入する

・契約切替のみで再エネが使えるため取り組みやすい

・火力+証書といった「実質再エネ」プランなど必ずしも再エネ促進にならないプランもあるため慎重な検討が必要

・契約は変えずに環境価値のみを購入する(電気と切り離された価値のみの購入となり、電源構成は同じまま)

コスト比較 条件が良ければ現状より経済性あり 現状、日本国内ではコストメリットが出にくい可能性がある。中長期的には有力な選択肢 標準電力と比べ再エネプランは 1~2割程度割高 電気代+1〜4円/kWh程度の追加費用がかかる

4つの手段で、最も直接的であるのは、自社敷地内での再エネ自家消費です。初期費用がかからない第三者保有モデル(TPO-PPA)もあるため、経済性や追加性の観点において期待できます。
逆に、最も間接的である手段は、グリーン電力証書、Jクレジット、非化石証書などの証書の購入です。電力契約は変えずに環境価値のみを購入するものですが、サステナビリティ経営の観点からは、必ずしも評価が高いわけではありません。
2つ目の手段として挙げられているコーポレートPPA(Power Purchase Agreement)は、日本国内での事例は2020年7月現在ありません。再エネが火力発電よりも安価になっている海外では事例が増えています。長期固定契約を結ぶことで、安定した調達を行えるというメリットがあります。

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コーポレートPPAについて(クリックして拡大)(みんな電力作成)

どの手段を選ぶ?再エネ調達がもつ「メリット・価値」とは?

「どの手段を選ぶと良いですか?」という質問を多くいただきますが、「導入することでどのような目的を果たしたいのか」「目的を果たすために選ぶべき選択肢はどれか」ということを意識した上で答えを出す必要があると思います。CO2削減を目指すのであればCO2フリーメニューを、再エネ使用比率の向上が目的なら再エネ100%メニューを、地域貢献やSDGsにつながる発電所を応援したいのであれば、再生可能かつ、電源を特定した再エネ100%メニューを選ぶなど、自らの電力の選択がどのような価値に繋がっているかを適切に知り、発信することが大切です。
今、再エネ調達の目的は、「CO2削減」に留まらず、「地域貢献」や「SDGs」といった観点も注視されています。
例えば、前述の非化石証書は、CO2削減に貢献することが目的であり、全ての再エネが同価値として取引され、「CO2削減価値」があると言えます。一方、再エネ電気の取引では、特定の発電所と契約するため、産地・生産者が分かるトレーサビリティのある電気として取引され、特定の地域や発電所を応援することが可能であり、地域貢献にもつなげることができます。

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CO2削減価値と電源価値(クリックして拡大)(みんな電力作成)

再エネ調達と気候変動イニシアチブ(SBTCDPRE100)の関係性は?

また、各イニシアチブによっても、電源構成に対する重点ポイントはやや異なります。代表的なイニシアチブ・法令・条例における電源構成の評価基準は、下記の表のとおりです。

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イニシアチブの概要(クリックして拡大)(みんな電力作成)

再エネ調達時に気を付けたいポイントは?

トレーサビリティが確保できる再エネ電力調達においては、再エネ発電所の環境負荷などの 「質」 が問われてきており、今、「どのような発電所の電気か」を把握して購入することが重要とされています。
注意すべきは、周辺環境に与える影響は発電所により異なる場合があるということです。例えば、FIT制度上の扱いは同じでも、地域住民の反対運動が行われているメガソーラー発電所や、途上国の環境破壊が指摘されているパーム油を燃料とするバイオマス発電所などもあり、発電所によって環境負荷や地域への経済効果は様々です。再エネ電力調達における「質」の基準は主に4つあります。

▼再エネ電力調達における「質」の基準

分類 概要
1.環境負荷 建設時や発電時に環境に与える影響が小さい発電所であること
2.持続性 持続可能な自然資源で発電している・有害な廃棄物がでない発電所であること
3.追加性 再エネ電力の購入により、既設の火力発電等の電力の代替が可能であること
(自社が再エネに切り替えることが、社会における再エネの増加に寄与したか)
4.地域性 地域の合意形成の下で開発された発電所であること

これらの「質」の基準に照らして、「どのような発電所なのか」という中身をしっかりと確認しなければ、せっかく再エネを購入してアピールしても、レピュテーションリスクにつながる可能性があります。自然環境への影響を最小限にとどめ、持続的かつ地域住民の理解を得られているような発電所を選ぶことが重要です。

最後に コロナ禍における気候変動対策の状況

気候変動対策について、コロナ禍でも、投資家や企業は強い関心を持ち続けていることが明らかとなっており、「各国の政府に対して、新型コロナウイルスに関する支援を行う際に、気候変動の危機にも配慮すること」などを求める声明や提言が発表されています。
また、新型コロナウイルスによる経済的な混乱の中、ESG銘柄は好成績を挙げているという見方もあります。世界の同業他社と比べ、ESGスコアが低い企業などを除外した「S&P500 ESG指数」は年初来騰落率が 5 月 15 日時点で 9.8% のマイナスとなりましたが、S&P500 種(マイナス11.4%)に比べ、小幅下落にとどまっています。また、CDPのA評価を受けている企業群の株価評価は、一般企業よりも好成績を挙げています。

いかがでしたか。「再エネに切り替えること=電力コストが変わる」ということだけではありません。再エネ調達で、「企業価値の向上」や、「ステークホルダーとの関係性の構築」にもつながっていきます。記事の内容が、参考になりましたら幸いです。

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電力選択で変わるステークホルダーとの関係性(みんな電力作成)

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講師プロフィール

IMG_0240b_cut.jpgみんな電力株式会社 事業本部 ソリューション営業部 部長
真野 秀太 氏

株式会社三菱総合研究所、自然エネルギー財団を経て、SBエナジー株式会社にて再生可能エネルギー発電事業に携わる。 2018年よりみんな電力株式会社に参画。 RE100企業などのサステナビリティ経営を目指す企業に対して 、 再エネ導入コンサルティングなども実施している。みんな電力株式会社についてはこちら

書き手プロフィール

山田 潔佳(やまだ きよか)
アミタ株式会社
サステナビリティ・デザイングループ マーケティングチーム

大阪府出身。神戸市外国語大学英米学科を卒業後、2019年度にアミタに合流。大学時代には、食や農への興味からヨーロッパで持続可能な農業に従事。現在も持続可能な社会の実現に向け、アミタで奮闘中。

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