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企業の気候変動対策を加速させるプログラムやイニシアティブとは?参加メリットと6つのプログラムについて解説(CDP、SBTi、RE100、EP100、EV100、JCI)

2015年のパリ協定の採択以降、企業の気候変動対策を後押しするプログラムやイニシアティブが、国内外で多数形成されています。しかしこれらのプログラム及びイニシアティブには、アプローチが少しずつ異なるものがいくつも存在し、それぞれの違いや企業にとっての参加メリットがわかりにくいという難点があります。
そこで今回は、それらの中から注目度の高い6つ(CDP、Science Based Targets initiative(SBTi)、RE100、EP100、EV100、気候変動イニシアティブ(JCI))を取り上げ、参加するメリットや各プログラムについて解説します。

共通する参加メリット

企業の気候変動対策を後押しするプログラム及びイニシアティブ(以下、"プログラム"と記載)に参加するメリットとして、一般的に以下のようなものが挙げられます。

▼プログラムに参加する5つのメリット

対外的なアピール 気候変動対策を積極的に行っていることを対外的にアピールし、認知度やブランド力の向上を図ることができる。
他社との比較 プログラムが提供するガイドラインやツールを使うことで、自社の取り組みを定量化し、他社との比較が可能になる。
投資の呼び込み プログラムを通じて投資家の求める気候変動に関する情報を開示することになり、投資の呼び込みにつながる。
社内への波及効果
(コストダウンなど)
プログラムを通じて野心的な削減目標を掲げることで、コスト削減及びイノベーションの促進につながる。
最新動向の把握 プログラムや他の参加企業を通じて、気候変動に対する社会や他社の最新動向を把握できる。

(出典:アミタ株式会社 作成)

今、注目されている気候変動に関する6つのプラグラム

それぞれのプログラムの詳細は下記になります。
自社の目的に沿ったプログラムを選択することが重要です。

・ CDP気候変動

概要 企業の気候変動への取組みの「情報開示」が目的
CDPは2000年にイギリスで設立された国際NGOで、世界の主要企業の温室効果ガス排出量や気候変動への取り組みに関する情報を「質問書」を通じて収集し、毎年レポートを作成しています。
※現在、CDPは「気候変動」「ウォーター」「フォレスト」「シティ」「サプライチェーン」の5つのプログラムを運営していますが、この記事では「気候変動」にのみフォーカスをしています。
特徴 規模と影響力が大きい
CDPの特徴は、なんといってもその規模と影響力です。2017年度気候変動版の質問書に回答した企業数は2,400社以上を超えました。また、気候変動以外のプログラムも含めたCDPの運営に賛同する機関投資家は800以上になります。CDPは気候変動に関する情報開示の潮流をリードする存在と言えます。
最新動向など ESG投資との関連性が高まる
2018年度版の質問書には、気候関連財務情報開示タスクフォース(TFCD)が推奨する気候関連の情報開示も含まれました。TFCDは、主要25か国・地域の中央銀行、国際通貨基金(IMF)、世界銀行等が参加する「金融安定理事会」が設置した、気候変動関連の財務情報開示を進める組織であり、TFCDによる提言を質問書に盛り込んだことで、CDPとESG投資との関連性はより高まったと言えます。つまり、CDPの質問書に回答することは、ESG投資に求められる情報を開示することにもなり、投資を促す効果が期待できます。
なお、回答企業はCDP側が選定のうえ質問書を送付しますが、企業側が自主的に回答することも可能です。

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・ Science Based Target initiative(SBTi)

概要 企業に温室効果ガスの排出量削減に関する「目標の設定」と「公約」を促す
SBTiは、地球の気温上昇を産業革命前比べて2℃未満に維持するための「科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出量削減目標(SBT)」の設定を企業に促す国際イニシアティブです。また、SBTを設定するためのツール・メソッドの提供及びサポートも提供しています。
特徴 参加は2段階
第1段階として、企業はコミットメントレターを提出することで「参加表明」をします。そして次の段階として、そこから24ヶ月以内にSBTを設定し、イニシアティブから認定を受けることで正式に「参加」となります。
参加を2段階に分けている意図ですが、SBTiのウェブサイトのFAQsに『SBTの認定を受ける前に参加表明するメリットはなんですか?』という問いがあり、これに対してSBTiは『企業は参加表明をした時点ですぐに「参加表明企業」としてSBTiのウェブサイトに掲載されます。』と答えています。
つまり、SBTの設定にはどうしてもそれなりの工数と時間が掛かってしまうため、SBT設定の意思がある企業はまずは参加表明を行い、それによって「SBT参加表明企業」として対外的に認識されるという企業側のメリットを高め、企業の参加を促進したい...というのがSBTiの狙いのようです。
最新動向など 有料化が開始
2019年からサービスが新しくなると共に、目標の申請費用が有料化される予定です。有料化以降は、最大2回までの審査に対して※4,950米ドル(約56万円)が必要となります。

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・ RE100

概要/特徴 企業の消費電力の「再生可能エネルギーへの転換(100%)」が目的
RE100は、事業で消費する電力を100%再生可能エネルギー由来のものに切り替えることを目指す企業によって構成される国際イニシアティブです。
後述する、EP100並びにEV100と同じThe Climate Groupという団体が事務局となっており、それぞれ「再エネ」「エネルギー効率」「車両」といった3つの異なる切り口から企業の温室効果ガス削減を促しています。
最新動向など 環境省が参加
2018年6月には、環境省も公的機関として初めてRE100に参加。同省は今後庁舎などでの再エネ100%を進めていくとともに、RE100への参加支援も始めており、今後RE100に参加する日本企業はますます増えていくと思われます。

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・ EP100

概要/特徴 企業の「エネルギー効率の改善」が目的
EP100は、エネルギー効率倍増を目指す企業によって構成される国際イニシアティブです。EP100に参加する企業には、具体的には、エネルギー1単位あたりの経済生産性の倍増や、エネルギーマネジメントシステムの導入によるビル・工場のエネルギー効率化、炭素を排出しない建物の所有・開発などが求められます。
最新動向など 環境省による参加支援が開始
RE100同様、環境省がEP100の参加支援(具体的には情報提供やアドバイザリーなど)を2018年より開始しました。

・ EV100

概要/特徴 企業が使用する車の「EV(電気自動車)への転換」が目的
EV100は、EV(電気自動車)の使用、及びEVの普及(インフラ整備)に取り組んでいる企業によって構成される国際イニシアティブです。RE100やEP100が電力にアプローチするのに対して、EV100は「車」という切り口から企業の温室効果ガス排出量の削減を試みます。
参加している企業数は世界的にもまだ多くはありませんが、EV台頭の流れを受け、今後伸びが期待されるイニシアティブです。なお、EV100の言う「EV」には、プラグインハイブリッド車や燃料電池車も含みます。
最新動向など EVの製造を促す新イニシアティブ「ZEV Challenge」との相乗効果に期待!
EV100の運営団体であるThe Climate Group(TCG)は2018年7月に、新たなイニシアティブ「Zero Emission Vehicle(ZEV)Challenge」を立ち上げました。EV100の目的が企業全般にEV導入を促すことであるのに対して、ZEV Challengeは、TCGが企業や自治体、市民団体と共に、自動車メーカーに温室効果ガス排出ゼロの車両の製造を促すものです。EV100がEVの需要を、ZEV ChallengeがEVの供給を後押しすることから、両イニシアティブは互いに相乗効果を生むことが期待され、EV導入を検討している企業には追い風となるでしょう。

・ 気候変動イニシアティブ(JCI)

概要/特徴 日本国内における気候変動対策を推進する「ネットワーク構築」が目的
気候変動イニシアティブは、気候変動対策に積極的に取り組む企業や自治体、NGOなどの情報発信や意見交換を強化するために2018年7月に発足された、日本国内のネットワークです。
国家政府以外の多様なアクターの横断的な組織であることが特徴と言えます。このような横断的な組織をつくる動きが各国で広まっており、米国の"We Are Still In"(連邦政府のパリ協定離脱表明後も、気候変動対策への取組み強化を表明する企業、州政府、自治体などによるネットワーク)がその代表的なものですが、JCIはその日本版とも言えるでしょう。
最新動向など 発足から3ヶ月で参加団体倍増/国際社会でも存在をアピール
イニシアティブの公式発表によると、発⾜当時 105 であった参加団体数は、わずか 3ヶ月の間に 240 を超えたとのことで、注目度の高さが伺えます。
また、2018年9月に米国カリフォルニア州で開催された「グローバル気候⾏動サミット(Global Climate Action Summit)」に参加し、日本の「非国家アクター」による気候変動への取り組みを発信。国内だけでなく、国際社会においてもパリ協定実施への機運づくりに働きかけています。
今後の動向 ―参加企業のさらなる増加、及び裾野の広がりが予測される―

気候変動に関するプログラムは、今回紹介した6つ以外にも、様々なレイヤー(グローバル/各国国内、民間企業連合/官民横断的組織など)で、様々なアプローチ(削減目標、電力、車両、テクノロジー、政策への提言など)のものが構築されていますが、それは世界の各機関・ビジネスリーダーたちが、気候変動に対して強い危機感を持ち、本気で取り組みを始めている表れと捉えることができます。
このような機運を受け、気候変動に関するプログラムに加入する企業はさらに増え、その範囲も大企業だけでなく、中小企業にも広がっていくことは間違いありません。プログラムを上手く活用し低炭素経済へと舵を切ることができれば、気候変動防止に貢献するだけでなく、自社の企業価値を高め、気候変動というリスクをチャンスに変えることにもつながるでしょう。

参考情報

執筆者プロフィール(執筆時点)

amita_tatsumi.png辰巳 愉子(たつみ ゆかこ)
アミタホールディングス株式会社
経営戦略グループ

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