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コーポレートガバナンス・コード改訂について、ポイント解説!

Image by jplenio from Pixabay

2021年6月11日、株式会社東京証券取引所(以下「東証」)は「改訂コーポレートガバナンス・コード」を公表し、同日より施行となりました。
今回の改訂は、2018年の前回の改訂から3年ぶりとなります。本記事では、改訂に至った背景や、改訂内容のポイントについて、東証から公表されている資料を元に紹介していきます。

目次

簡単におさらい!コーポレートガバナンス・コードとは

コーポレートガバナンスとは、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みです。

コーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」)は、上場会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために、経営者による的確な意思決定を支える実務的な枠組みを示したものとなります。CGコードが適切に実践されることは、会社、投資家、ひいては経済全体の発展にも寄与することとなるものと考えられています。

CGコードは、5つの基本原則、それに紐づく原則・補充原則の三層構造で構成されています。市場区分によってどの原則に対応すべきか異なりますが、すべての上場会社は、投資家との建設的な対話において共通基盤となるCGコード各原則の「コンプライ・オア・エクスプレイン」が義務化されています。

コーポレートガバナンス・コード改訂の背景

1. 企業を取り巻く社会環境の変化
コロナ禍の企業を取り巻く環境の変化の下で、持続的成長と中長期的な企業価値向上の実現をするためには、各々の企業が課題を認識し変化を先取りすることが求められます。
そのためには、今回のCGコード改訂に関わる課題をはじめとする諸課題にスピード感をもって取り組むことが重要となります。

2.市場区分の変更
背景として、東証が2022年4月よりプライム市場・スタンダード市場・グロース市場の3つの新しい市場区分へ変更することが挙げられます。

sizyoukubun.png

(出典)株式会社東京証券取引所
コーポレートガバナンス・コードの全原則適用に係る対応について

今回の変更により、プライム市場は、日本を代表する投資対象として優良な企業が集まる、国際的に見ても魅力あふれる市場となることが期待されています。プライム市場上場会社はもちろんのこと、その他の市場の上場会社においても、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指してガバナンスの向上に取り組むことが重要と指摘されています。
企業がより高度なガバナンスを発揮するためにも、CGコード改訂を提言するに至っています。

コーポレートガバナンス・コード改訂適用はいつから?

改訂自体は2021年6月11日に公表され、同日施行されています。上場会社は、コード改訂後の内容を踏まえた報告書を準備ができ次第速やかに、遅くとも2021年12月末までには提出しなければなりません。ただし、CGコードの各原則に規定された内容のうち、 プライム市場上場会社のみを対象とするものについては、2022年4月4日から適用となります。対象範囲の変更については下記の図の通りとなります。

explain.png

出典:株式会社東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コードの改訂に伴う実務対応

コーポレートガバナンス・コード改訂について、ポイント解説!

今回のコード改訂では、3つの原則、8つ補充原則が変更、5つの補充原則が追加されました。ポイントとしてまとめると、下記3つになります。

  1. 取締役会の機能発揮
  2. 企業の中核人材における多様性(ダイバーシティ)の確保
  3. サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)を巡る課題への取り組み

ポイント1. 取締役会の機能発揮

企業を取り巻く環境が変化する中において、取締役会が経営者による迅速・果断なリスクテイクを支え、重要な意思決定を行うとともに、実効性の高い監督を行うことが重要となります。

▼具体的な改訂内容
・プライム市場上場会社において、独立社外取締役を3分の1以上選任(必要な場合には、過半数の選任)
・指名委員会・報酬委員会の設置(プライム市場上場会社は、独立社外取締役を委員会の過半数選任)
・経営戦略に照らして取締役会が備えるべきスキル(知識・経験・能力)と、各取締役のスキルとの対応関係の公表
・他社での経営経験を有する経営人材の独立社外取締役への選任

ポイント2.企業の中核人材における多様性(ダイバーシティ)の確保

コロナ後の社会環境の変化を先導し、新たな成長を実現する上では、取締役会のみならず、経営陣にも多様な視点や価値観を備えることが求められます。
取締役会や経営陣を支える管理職層においてジェンダー・国際性・職歴・年齢等の多様性
の確保に向けては、取締役会が主導的にその取り組みを促進し監督することが期待されています。

▼具体的な改訂内容
・管理職における多様性の確保(女性・外国人・中途採用者の登用)についての考え方と測定可能な自主目標の設定
・多様性の確保に向けた人材育成方針・社内環境整備方針をその実施状況とあわせて公表

ポイント3. サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)を巡る課題への取り組み

中長期的な企業価値向上に向けては、リスクとしてのみならず収益機会としてもサステナビリティを巡る課題へ積極的・能動的に対応することの重要性は高まってきていると指摘されています。

また、企業の持続的な成長に向けた経営資源の配分に当たっては、人的資本への投資や知的財産の創出が企業価値に与える影響が大きいと考えられ、持続的な成長に資するよう、実効的に監督を行うことが必要となってきます。今回の改訂によって、人的資本・知的財産に関する内容が取締役会の責務としても記載されております。

▼具体的な改訂内容
・上場会社は、サステナビリティについて基本的な方針を策定し自社の取り組みを開示
・プライム市場上場会社において、TCFD またはそれと同等の国際的枠組みに基づく気候変動開示の質と量を充実

▼コーポレートガバナンス・コード改訂一覧

原則箇所 プライム市場 スタンダード市場
第1章 基本原則1「株主の権利・平等性の確保」
変更

補充原則 1-2④
議決権の電子行使のための環境整備、招集通知の英訳

プライム市場上場会社は、少なくとも機関投資家向けに議決権電子行使プラットフォームを利用可能とすべきであると追加
第2章 基本原則2「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」
変更 補充原則 2-3①
取締役会による、リスク管理としてのサステナビリティを巡る課題への対応、これにとどまらない積極的・能動的な対応
サステナビリティをめぐる課題について、
「気候変動」「人権の尊重」「従業員の健康」など具体的な課題について追加。それらの課題への対応は、収益機会にもつながる重要な経営課題であることを追加
新設 補充原則 2-4① 管理職における多様性の確保(女性・外国人・中途採用者の登用)についての考え方と測定可能な自主目標の設定
多様性の確保に向けた人材育成方針・社内環境整備方針をその実施状況とあわせて公表
第3章 基本原則3「適切な情報開示と透明性の確保」
変更 補充原則 3-1②
海外投資家等の比率等を踏まえた英語での情報の開示・提供の推進
開示書類のうち必要とされる情報について、英語で開示・提供を行うべきであると追加
新設 補充原則 3-1③ サステナビリティへの取り組みや人的資本や知的財産への投資情報、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示・提供すべきである。
気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、国際的に確立された開示の枠組みであるTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべき
第4章 基本原則4「取締役会等の責務」
新設 補充原則 4-2② 取締役会はサステナビリティの取組みについて基本的な方針を策定すべき
また、人的資本・知的財産への投資等の重要性に鑑み、これらをはじめとする経営資源の配分や、事業ポートフォリオに関する戦略の実行が、企業の持続的な成長に資するよう、実効的に監督を行うべき
変更 補充原則 4-3④
コンプライアンス・内部統制体制の適切な構築、運用の監督
取締役会はグループ全体を含めた全社的リスク管理体制を構築し、内部監査部門を活用しつつ、運用状況を監督すべき
変更 原則 4-4
監査役及び監査役会の役割・責務
監査役会による選解任の対象に監査役を追加
変更 原則 4-8
独立社外取締役の有効な活用
独立社外取締役を3分の1以上
総合的に勘案して必要な場合には過半数
独立社外取締役を2名以上
総合的に勘案して必要な場合には3分の1以上
新設 4-8③
支配株主を有する会社の場合
取締役会において支配株主からの独立性を有する独立社外取締役を過半数選任
または、利益が相反する重要な取引・行為について特別委員会を設置すべき
取締役会において支配株主からの独立性を有する独立社外取締役を3分の1以上選任
または、利益が相反する重要な取引・行為について特別委員会を設置すべき
変更 補充原則 4-10①
独立した諮問委員会の設置による指名・報酬等の検討における独立社外取締役の関与・助言
独立社外取締役が半数以下の場合、独立社外取締役を中心とした指名委員会、報酬委員会の設置
各委員会の構成員の過半数を独立社外取締役とすることを基本とし、その委員会構成の独立性に関する考え方・権限・役割等を開示すべきと追加
変更

基本原則 4-11
取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件

取締役会は、ジェンダーや国際性、職歴、年齢の面を含む多様性と適正規模を両立させる形で構成されるべき
変更 補充原則 4-11①
取締役会の多様性に関する考え方等
経営戦略に照らして、取締役会にて必要なスキル(知識・経験・能力)を特定し、スキル・マトリックスをはじめ、取締役の有するスキル等の組合わせを開示すべき
独立社外取締役には、他社での経営経験を有する者を含めるべき
変更 補充原則 4-13③
内部監査部門との連携確保、社外役員に必要な情報を提供するための工夫

上場会社は、取締役会及び監査役会の機能発揮に向け、内部監査部門がこれらに対しても適切に直接報告を行う仕組みを構築すること等により、内部監査部門と取締役・監査役との連携を確保すべき

第5章 基本原則5「株主との対話」
変更 補充原則 5-1①
経営陣幹部または取締役による株主との対話(面談)への対応
株主との実際の対話(面談)の対応者について、社外取締役を含む取締役または監査役を追加
新設 補充原則 5-2①

上場会社は、経営戦略等の策定・公表に当たっては、取締役会において決定された事業ポートフォリオに関する基本的な方針や事業ポートフォリオの見直しの状況について開示すべき

(出典)株式会社東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード(改訂前からの変更点)
をもとにアミタで作成

※報告書作成時の具体的な注意事項については、東証の「コーポレートガバナンスに関する報告書の記載要領(2021年6月版)」からご覧いただけます。
https://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/tvdivq0000008j85-att/tvdivq000000uvc4.pdf

さいごに

今回のコード改訂で、取締役会の機能発揮、企業の中核人材の多様性の確保、サステナビリティを巡る課題への取り組みについて、より具体的な内容が追加・新設されました。
実際、プライム市場上場会社は気候変動に関する開示についてTCFDに沿った情報開示をすべきという内容が新設されたことにより、弊社にもTCFDに関する相談が増えています。
またプライム市場に限らず、その他の市場においてもサステナビリティを巡る課題への取り組みは随所に追加されており、海外だけでなく国内でもESG投資がより活発になる見通しの中で、サステナビリティは事業継続における必須事項として取り組むべきものと言えます。

関連情報
参考情報

株式会社東京証券取引所

事業創出プログラム「Cyano Project(シアノプロジェクト)」を提供

「Cyano Project(シアノプロジェクト)」は、企業が「イノベーションのジレンマ」に陥ることなく、時代や社会の変化に合わせて新たな価値を創出し、経営と社会の持続性を高めることを目的とした約3年間の事業創出プログラムです。
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執筆者プロフィール(執筆時点)

桂山 詩帆(かつらやま しほ)
アミタ株式会社
インテグレートグループ カスタマーリレーションチーム

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