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Q&A

自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)とは?企業・金融機関はなぜ「自然」「生物多様性」を重要視するのか

Image by Madeleine Lewander from Pixabay

「自然」や「生物多様性」は、自然破壊や生物多様性の喪失への危機感より企業や金融機関により重要視されているものの、定量評価が難しく、現在、各国で統一された基準や情報開示の枠組みは存在しません。TNFDは自然関連のリスクや機会について、既存の基準などを活用しながら統一した情報開示の枠組みを提供しようとするものです。

目次

TNFDとは?TCFDとの違いは?

TNFDとは
TNFDは、正式名称を自然関連の財務情報開示に関するタスクフォース(Task Force for Nature-related Financial Disclosures)と言い、Global Canopy、UNDP(国連開発計画)、UNEP(国連環境計画)、WWF(世界自然保護基金)の4団体により2020年7月より非公式に発足され、金融機関、規制当局、企業などの参加を経て 、2021年6月に正式に発足しました(※1)。TNFDでは企業と金融機関に向けた、自然関連の情報開示や評価枠組みの検討をしています。TNFDはこうした枠組みを提供することで、世界の金融の流れを、自然破壊ではなく、自然を保全し、再生するために変化させることを目標としています。
2021年6月に行われたG7サミットでは、各国の財務大臣や環境大臣がTNFDの発足を支持する姿勢をみせました。また、2021年10月初めにG20の財務大臣や中央銀行総裁によって新しく作成された持続可能な財務ロードマップでは、TNFDを自然および生物多様性関連の測定と報告を推進する主要な組織として紹介しています。このように、国際的にも広く認められた組織と言えます。

※1:日本からはNPO法人SusCon Japan、三井住友トラスト・アセットマネジメントが非公式ワーキンググループ(IWG)として参加している。

TNFDとTCFDとの違いは?

TCFD TNFD
正式名称 気候変動関連財務情報開示タスクフォース
(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)
自然関連の財務情報開示に関するタスクフォース
(Task Force for Nature-related Financial Disclosures)
発足年 2015年 2021年
テーマ 気候変動 自然関連・生物多様性
設立 G20の要請を受けた金融安定理事会(FSB)により、マイケル・ブルームバーグ氏を委員長として設立。 Global Canopy、UNDP、UNEP、WWにより非公式に発足、現在は金融機関・規制当局・企業・シンクタンクなど様々なメンバーが参加。
情報開示の枠組み ガバナンス:体制、企業経営への反映。
戦略:企業経営への影響とそれについての考え(短期・中期・長期)。
リスク管理:気候変動のリスクをどのように特定、評価、低減しようとしているか。
指標と目標:リスクと機会をどのような指標で判断し、目標への進捗度を評価しているか。
シナリオ分析による、気候変動が事業に与える潜在的な影響を評価することを重視。

4つの主要分野はTCFDと共通







※自然が事業に与える影響だけでなく、事業活動が自然に与える影響の双方を評価することを重視

TNFDとよく似た言葉で、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures 気候変動関連財務情報開示タスクフォース)というものがあります。
TCFDは企業が気候変動への対応を経営の長期的リスク対策および機会の創出として捉え、投資家等に向けた情報開示や対話を促進することを目指しています。
TNFDではさらにその範囲を広げ、より評価の数値化が難しくリスクも広範囲となる自然に関する情報開示の枠組みを検討しています。
TNFDでは4つの主要分野(ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標)を情報開示の枠組みとして採用しています。これは、TCFDと共通するものです。
ただ、自然を定量評価する難しさなどの面から、TNFD では自然が事業に与える影響だけではなく、事業が自然に与える影響について、より幅広く開示するべきとしています。

TNFD1.jpg

出典: TNFD公式レポート「Nature-in-scope」より

また、リスクの評価についてもTNFDはTCFDと共通しており、直近・潜在的な物理的リスク(※2)だけではなく、シナリオ分析を活用した、企業や金融機関が受ける移行リスク(※3) 、その影響下での事業の継続性などについても考慮したものとなります。

関連記事:TCFDが求めている「シナリオ分析」とは、何のために行うものですか。どのように対応すればいいのでしょうか。

※2:物理的リスクとは、異常気象現象の激化などの急性リスクと、海面上昇の原因となる気温の上昇などの長期的なリスクを指す。
※3:移行リスクとは、政策や法規制の変化、気候関連の訴訟や法的なリスク、新技術の開発や利用に伴う既存の技術などの危機、低炭素社会における需要と供給が変化することに伴う市場のリスク、また、企業価値の変化に伴う評判上のリスクなどを指す。

なぜ「自然」・「生物多様性」が注目されるのか?

人々の経済活動は直接的・間接的に、自然・生物多様性に依存しています。
世界経済フォーラムの推計によると、世界の総国内総生産の半分以上(44兆ドル)が、中程度~高度に自然に依存しています。世界経済は過去70年間で13倍に増加という驚異の発展を遂げ、生物資源の消費スピードに地球の再生が追い付かない状況になっているとされています。例えば、2020年時点で、これまで失われた生物資源を再生するためには1.6個分の地球が必要とされています。

喪失した生物多様性の90%は、天然資源の採掘・精製に起因するとされ、21世紀の人類への最大のリスクとなっています。IPBES(生物多様性および生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム)は、この生物多様性に関する危機は主に5つの人間の活動が原因によるものであるとし、①土地/海域利用変化、②天然資源・生物の直接採取、③気候変動、④汚染、⑤侵略的外来種を挙げています。現在、世界の約1/5の国の生態系が生物多様性の低下により崩壊の危機に瀕しているとされています。

すでに環境問題が与える経済・金融へのリスクは重大であると認識されており、先んじてTCFDなど気候変動への対策が進められていますが、上記のような背景により、金融の分野では気候変動への対策だけでは足りないという指摘、認識が高まり、自然そのもの、生物多様性の保全や再生が重視されているのです。

生物多様性についてのおすすめの記事はこちら:本多清のいまさら聞けない、「企業と生物多様性」

TNFDの情報開示の枠組みは、既存の枠組み・イニチアチブを活用

TNFD2.png2021年11月24日時点ではまだ、TNFDにおける情報開示に関する枠組みは発表されていません。TNFDは構築、テスト、協議、公表、市場への普及という5つのフェーズを2021年から2023年までに完了させ、2023年以降に正式に枠組みが発表される予定です。
また、TNFDが整合性を図るための、CBD(生物多様性条約)の「2030年までのグローバル目標」が決定されるのは2022年5月になります。

現在、判明している情報として、TNFDでは新たに基準を作り出すのではなく、可能な限り関連する既存の基準やイニシアチブ、フレームワークを活用するとされています。なぜなら、様々な既存の基準を集約することで、統合されたリスク管理と開示の枠組みを確立することを最も重視しているからです。
そのため、企業においてはTNFDの開示に向けて、既存の基準を確認し、計測を進めておくことをおすすめします。具体的にTNFDが取り上げるとされるフレームワークやガイドラインの一部は下記です。

グローバル・レポーティング・イニシアチブ(GRI:Global Reporting Initiative)
サステナビリティ会計基準審議会(SASB:Sustainability Accounting Standards Board)
気候変動開示基準委員会(CDSB:Climate Disclosure Standards Board)
国際財務報告基準(IFRS:International Financial Reporting Standard)
生物多様性条約(CBD: Convention on Biological Diversity)ゼロドラフトグローバル生物多様性フレームワーク
ENCORE:Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposure
世界経済フォーラム(WEF:The World Economic Forum)
オランダ銀行(DNB :De Nederlandsche Bank)
  

企業はどう変化していくべきか?サーキュラーエコノミーと生物多様性

今後、企業は「TNFDに対応していかなければならない」と考えるより「TNFDの提供する枠組みを活用することで、自然や生物多様性に関わる自社の事業の短期的リスクや長期的リスクが把握できること」や「機会の創出にもなり得ること」に着目しましょう。危機的状況にある自然・生物多様性の再生に寄与する事業へと、それぞれの企業が自社の変革をしていくことが最も重要なことです。

企業取り組みの例として、サーキュラーエコノミーは、生物多様性を再生させる原動力になるとされています。エレンマッカーサー財団(英)のレポート「The Nature Imperative_ How the circular economy tackles biodiversity loss」によると、生物多様性の喪失を止めるには単なる保全活動だけでは不十分であり、以下の3つの原則を持つサーキュラーエコノミーは、生物多様性の再生に有効だとされています。
① 生物多様性の脅威となる有害な廃棄物と環境汚染を排除する
② 天然資源や自然からの消費量を抑え、循環型の製品開発と材料調達をする
③ 生物多様性繁栄のため自然を再生する

特に、食品、建設・ファッション、プラスチック容器包装の分野が生物多様性の喪失に影響が大きく、重要な鍵を握る業界だと考えられています。TNFD3.jpeg

出典:エレンマッカーサー財団(英)のレポート
The Nature Imperative_ How the circular economy tackles biodiversity loss」より

以下、2つの企業の取り組み事例をご紹介します。

TNFD4.jpeg

「アルグラモ(Algramo)」(チリ)
米、豆類、洗剤など、自分の容器で必要な分量のみ購入できる自動販売機を展開していますが、コロナ禍で急速に拡大し、すでに25万人以上が利用しています。今後、ユニリーバ、ネスレなどと協業し、移動販売のモデルをアメリカとインドネシアにて計画しています。
(画像:Algramoウェブサイトより引用)

TNFD5.jpeg

NotplaのOoho(イギリス)
「食べられる容器包装」として注目を集めているOohoは、海藻を原材料とし、完全な生分解性を可能としている容器包装です。原料としている海藻は食用に利用されているものではない、育成に淡水を必要としないなど、持続可能な原材料としての可能性を秘めています。プラスチックに替わる容器包装としてさらなる取り組みが進められています。
(画像:Notpla ウェブサイトより引用)


リスクの特定はもちろんのこと、このような生物多様性の回復に寄与するような持続可能な事業を新たに生み出していくことができれば、ビジネスチャンスにつながります。TNFDの情報提供の枠組みも、ぜひこういった事業創出に役立てるという次のステップまで意識して、対応していきたいですね。

まとめ
  • TNFDとは、自然関連の財務情報開示に関するタスクフォース(Task Force for Nature-related Financial Disclosures)のことで、自然関連リスクと機会について企業と金融機関が情報開示や評価をする枠組みを2023年に正式に発表する予定となっています。

  • 人々の経済活動は直接的・間接的に、自然・生物多様性に依存していますが、一方で急速な産業の発展に伴う自然破壊に、自然の回復力は到底追い付かず、類を見ない生物多様性の喪失が進んでいます。金融の分野においても気候変動への対応だけではなく、より広範囲に自然・生物多様性へのリスクを脅威と捉えており、対策が迫られています。

  • TNFDは既存のフレームワーク(例えば、GRI、SASB、CDSB、IFRS基準審議会など)を活用し、CBD目標とも整合性を取る予定です。自然関連リスクの特定については、科学的根拠に基づく自然保護目標の設定に関するSBTN の企業向け初期ガイダンス、IUCN が発表した企業の生物多様性パフォーマンスの計画とモニタリングに関するガイドラインなどの活用、また、ENCORE、SASB、WEF、DNBなどから自然関連リスクと機会についての類型を産業別に整理して提供する可能性があります。

  • 企業としては、単にTNFDに対応するための情報開示に向けて準備を進めるだけではなく、生物多様性の再生に寄与する事業を展開していくために、サーキュラーエコノミーに取り組むといった、事業変革や様々なステークホルダーとの協業などを模索していく必要があります。

参照

TNFDホームページ:https://tnfd.global/
TNFDレポート
・nature-in-scope: https://tnfd.global/publication/nature-in-scope/
・technical-scope: https://tnfd.global/publication/proposed-technical-scope-for-tnfd/
エレンマッカーサー財団「The Nature Imperative_ How the circular economy tackles biodiversity loss」:https://ellenmacarthurfoundation.org/biodiversity-report

事業創出プログラム「Cyano Project(シアノプロジェクト)」を提供

「Cyano Project(シアノプロジェクト)」は、企業が「イノベーションのジレンマ」に陥ることなく、時代や社会の変化に合わせて新たな価値を創出し、経営と社会の持続性を高めることを目的とした約3年間の事業創出プログラムです。
特設サイトはこちら:https://www.cyano-amita.com/

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執筆者プロフィール(執筆時点)

小杉 日奈子(こすぎ ひなこ)
アミタ株式会社
インテグレートグループ カスタマーリレーションチーム

米澤 理音(よねざわ りお)
アミタ株式会社
インテグレートグループ カスタマーリレーションチーム

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