オムロン株式会社に学ぶ! 企業理念とリンクした中長期目標をつくる!社内を巻き込む「鍵」とは?【前編】 | 企業のサステナビリティ経営・自治体の町づくりに役立つ情報が満載

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インタビュー

オムロン株式会社 サステナビリティ推進室企画部 貝崎 勝 氏/杉井 勝彦 氏オムロン株式会社に学ぶ! 企業理念とリンクした中長期目標をつくる!社内を巻き込む「鍵」とは?【前編】

2018年、オムロン株式会社は、自社の2020年までの環境分野への取り組みを掲げた「グリーンオムロン2020」の目標を見直し、2050年までの気候変動に対する中長期目標の策定を行いました。
アミタ株式会社は外部コンサルタントとして、本プロジェクトに参加させていただいております。同社が主眼に置かれたのは、社員一人ひとりから経営まで、全社が納得できる企業理念とリンクした目標の策定です。
環境ビジョンの見直しや目標の設定は一体どのように行われたのか、そしてどのような成果を生み出したのかを、オムロン(株)サステナビリティ推進室の貝崎勝氏と杉井勝彦氏に伺いました。
前編では、目標策定のきっかけや、目標達成の具体的な手法についてご紹介します。

(写真:左から大重(アミタ)、杉井勝彦氏(オムロン)、貝崎勝氏(オムロン)、中村(アミタ)。オムロン京都本社にて)
(インタビュー日時:2019年3月14日)

後編はこちら

オムロンの中長期目標の内容と、取り組みのきっかけとは?

アミタ:御社では2018年初めに、「グリーンオムロン2020」の見直し、気候変動における中長期目標の策定を行われていますが、どのような内容だったのでしょうか。

omron_3.jpg貝崎氏:弊社では2020年までの環境目標として「グリーンオムロン2020」を持っていたのですが、それは原単位をベースとした目標であり、また2020年以降の目標がありませんでした。そこで新たな目標策定に向けたプロジェクトを発足し、まずは気候変動に対して2050年までに全拠点、全事業所にて温室効果ガス排出量をゼロにするという中長期目標を策定したのです(2030年までは、全拠点・全事業所で温室効果ガス排出量を2016年度比で32%削減)。この目標を達成するため、「グリーンオムロン2020」目標とも連続性を持たせ、温室効果ガス排出量の削減目標を、原単位目標から、より厳しい内容となる総量目標へと変更しました。

▼オムロンの温室効果ガス排出量削減の目標

2020年

原単位目標:グローバル売上高CO2生産性について、2010年度比で30%の向上

総量目標:温室効果ガス総排出量について、2016年度比で4%の削減

2030年 総排出量について32%削減(2016年度比)
2050年 総排出量ゼロを目指す

オムロン カーボンゼロ」を設定」より引用(オムロン株式会社)

アミタ:そのような目標をたてようと考えたきっかけを教えていただけますか。

貝崎氏:環境目標をたてた背景の一つには、パリ協定をはじめとした社会動向の変化があります。世界中で温室効果ガス削減に向けた機運の高まりもあり、弊社としても、より積極的に取り組んでいこうと考えました。弊社の社憲に「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」があります。この「よりよい社会」をつくる際に、果たして本当に気候変動が適切なのか、様々な解決の仕方が考えられましたが、最終的には地球にかける負荷が地球の回復能力の限界を超えない社会、つまり持続可能社会こそがよりよい社会ではないかという話になりました。そこでまず私たちのものづくりを持続可能なものにしないといけないと考え、このような目標を策定したということになります。

目標策定までの道のり

アミタ:目標策定にあたっては、プロジェクトメンバーとして弊社も参加させていただきました。環境目標の策定にあたって、なぜ外部コンサルティングの導入を検討されたのでしょうか。

貝崎氏:プロジェクトを迅速かつ効果的に実施するには、自社内だけで取り組むのではなく、環境やビジョン策定の専門的な知識と実績をもつ外部コンサルティングの協力が必要と考えたためです。
企業にとって気候変動対策が重要であることは疑うべくもありませんが、自社がこの問題をどのように捉えているのか、独自のスタンスを明確にした上で取り組むことで、本質的に「よりよい社会」へのアプローチにしたいという想いがありました。アミタのコンサルティングサービスは、社会トレンドといった外部環境だけでなく、本業のビジネスモデルや企業理念も考慮して、関係者を巻き込みつつ経営の上流から働きかけていくようなものだったので、弊社のニーズにマッチしていました。

アミタ中村:企業のサステナビリティの取り組みは、本来非財務指標だけにフォーカスして行うものではなく、財務指標も含めた統合的な企業価値向上を目指すものです。私たちは長期ビジョンと、ビジョンに近づいているかどうかを測定するKPI(長期目標)の策定を支援する「Drama & Strategy Stage」を提供していますが、今回はその枠組みに基づき、御社の社憲などがサステナビリティの取り組みにもしっかり反映されることを意識してプログラムを設定させていただきました。

▼アミタ作成:アミタのサステナブル経営支援「Drama & Strategy stage」
(図はクリックすると大きくなります。)

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まずプロジェクトの目標策定に向けたアプローチとしては、未来がどうなっているかを想像し、そこから逆算して現在の課題設定や問題解決法を考える「バックキャスト・アプローチ」手法にもとづいて、2030年、2050年の未来がどのような社会になるのか、メンバー間で議論し、皆で共通の認識を持つところから始めました。

▼プロジェクトの実施ステップ

第1回討議 未来の社会像を描く
SWOT分析を用いた機会と強みの抽出
第2回討議 「ありたい姿」の検討
気候変動における中長期目標の検討
第3回討議 なぜオムロンが気候変動に取り組むのかの整理

持続的なものづくりを実現するシナリオ検討

▼アミタ作成:システム・テクノロジー・価値観の変化から社会像を捉える(イメージ図)
(図はクリックすると大きくなります。)

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杉井氏:議論の対象としては、気候変動や地球環境に限らず、今後の人口動態や、エネルギー枯渇、情報技術の進展や仮想通貨まで、弊社にとって重要と思われる要素すべてについて行いました。次にこの未来の社会像に対して、弊社がいかに事業を通じて貢献できるか、SWOT分析の手法を使って、弊社の事業活動における強みや機会を整理していただきました。この段階から、気候変動問題への対策というテーマにフォーカスしていきました。

アミタ中村:どのような目標にすべきかは各社の状況によって大きく異なります。その目標が企業、社会のどこに、そしてどのように貢献するかは、よくよく検討が必要です。
第2回目の討議で行ったのは、今後御社が目指すべき将来像、こうありたいと思う姿を定義することです。未来の社会像において何を解決すべきかを、事前に各メンバーに考えてきていただき、当日メンバー間で議論致しました。

▼アミタ作成:フレームワークを用いた未来の社会像のまとめ
(図はクリックすると大きくなります。)

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貝崎氏:議論をしていくうちに、弊社がなすべきことは変動する社会・生活環境から人々が受けるデメリットを最小限に抑えること、そしてより健康で快適な暮らしを実現することではないかという話になりました。その結果、オムロンの社憲にある「よりよい社会」とは持続可能社会なのではないかという考えに至り、自社のものづくりを持続可能なものにしようという視点が生まれました。さらに、そもそも顧客が存続しなければ自社の事業も成り立ちませんので、自社のものづくりを持続可能にした上で、顧客のものづくりも持続可能にしようという話がでてきました。
その後、第1回目の討議で整理したオムロンの強みや機会を活かし、気候変動に関して具体的にどのようなアプローチを行うべきかを検討した結果、今回の気候変動に関する中長期目標の数字がでてきたということです。

杉井氏:最後の討議では、なぜオムロンが気候変動対策に取り組むのかという部分の追究を行いました。周りがやっているからではなく、オムロンが「なぜ」やらなければならないのかを。

アミタ中村:温室効果ガスを減らしていくことが、なぜよりよい社会をつくることになるのか、御社にとってそれがどういう意義を持つのか、御社がどのような認識を持って気候変動対策に取り組むのか、具体的な文章についても、「何故この言葉を使うのか」というレベルから議論しました。
持続可能社会を目指しましょうという考え方は、企業や経営者によって大きく変わることはありませんが、それが自社のビジネスモデルに適用されたときに具体的に何を指すのか、あるいは、何故自社は社会をよりよい方向へ変えていかねばならないのか、といったことは、それこそ千差万別であるはずなのです。それを丁寧に突き詰めていくことでしか、サステナビリティと経営の統合、つまり環境・社会的な価値と経済的な価値を統合させることはできないのです。自分たちの言葉で「持続可能社会」を語れるということは、その企業が事業を通じて社会的な価値を提供していることの一つの証左と言ってもいいのではないかと思います。

▼2050年までのシナリオを実現するために議論され生まれた具体案

エネルギーの最適な使用
(省エネ)

人材開発・組織体制の整備
コスト削減責任者と別に省エネ責任者を設定する
工場の見える化
再生可能エネルギーの活用 使用電力の可視化
地域のエネルギー資源の利用
オムロン由来の太陽光発電を導入した顧客や地域からの電力調達

前編では、「目標策定にあたり具体的にどのような手法を用いられたか」等についてお届けいたしました。後編は、実際に御二人が、環境目標をたてるにあたって苦労された点について伺います。経営層からの思いがけない反応や、環境目標に対するその後の反響についてもご紹介します。お見逃しなく。

後編はこちら

話し手プロフィール(執筆時点)

omron_11.jpg貝崎 勝(かいざき まさる)氏
オムロン株式会社
サステナビリティ推進室企画部 企画部長 経営基幹職

1990年オムロン株式会社入社。
デザイン部門でインダストリアルデザインやユーザインタフェース研究を担当後、コーポレートコミュニケーションセンターで全社Webサイト構築やブランド戦略、経営企画室で技術・新規事業戦略などに従事。その後、事業開発本部、環境事業本部で新規事業の企画業務などを経て、2017年から現職。

omron_2.jpg杉井 勝彦(すぎい かつひこ)氏
オムロン株式会社
サステナビリティ推進室企画部 主査

1992年オムロン株式会社入社。
ものづくり現場で生産活動・現場改善を担当した後に、生産設備の保全業務に従事。
その後、本社環境部門で、全社環境目標の実行計画策定や、省エネ推進をグローバルに展開。2017年から現職。

聞き手プロフィール(執筆時点)

Mr.nakamura_014.jpg中村 圭一(なかむら けいいち)
アミタ株式会社
環境戦略デザイングループ 西日本チーム

静岡大学教育学部を卒業後、アミタに合流しセミナーや情報サービスの企画運営、研修ツールの商品開発、広報・マーケティング、再資源化製品の分析や製造、営業とアミタのサービスの上流から下流までを幅広く手掛ける。現在は分析力と企画力を生かし、企業の環境ビジョン作成や業務効率化などに取り組んでいる。

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