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コラム

東大院生レポート第10回:水俣のソーシャルイノベーションへの取組み長濱さん@東大院生レポート

nagahama10-001.jpg7月下旬から8月にかけて熊本県水俣市に滞在しました。リアス式海岸の広がる美しい不知火海や、豊富な水源を涵養する樹木の広がる山々に囲まれた美しい土地です。驚いたのは、20種類以上ものゴミの分別!でした。環境に配慮した暮らしとまちづくりが推進されています。

この地は、戦後の日本の経済成長の過程で、水俣病という世界でも例を見ない公害が起きました。地域住民への被害は地域コミュニティを崩壊させ、地域経済を疲弊させました。今なお苦しんでいる被害者やその家族の方々がいらっしゃいます。こうした厳しい公害の経験と教訓をもとに、水俣市が取り組んでいる取り組みをご紹介しましょう。

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写真1:埋立地から臨む不知火海

水俣市の取り組み

nagahama10-002.jpg水俣市は、経済最優先の社会構造で起きた公害の反省から平成4年に「環境モデル都市づくり」を国内で初めて宣言し、翌年にゴミの20種類分別回収開始(平成24年には24分別で実施)、国からは平成13年にエコタウン事業の認証を受けたのち、平成20年には全国で初めての「環境モデル都市」*1)に認定されました(平成27年8月現在で合計23市町村が認定)。平成23年には、「日本の環境首都」*2)としての称号を獲得しました。

写真2:水俣市内の樹林地と湧水(冷水)

*1)環境未来都市・環境モデル都市 http://future-city.jp/
*2)環境首都コンテスト全国ネットワーク(全国14の環境市民団体で構成)http://eco-capital.net/

みなまたエコタウンとは

nagahama10-003.jpg市民が取り組んできた環境保全活動の努力を産業に結びつけ、地域経済の活性化につながるように価値を転換させ、推進することを目的にしているのが、「みなまたエコタウン」プランです。そもそも平成9年に経済産業省と環境省がゼロエミッション(廃棄物ゼロ)構想を推進するために創設した制度で、「エコタウンプラン」の承認を受けるとこのプランに基づく事業に対して国から支援を受けることができます。

水俣産業団地では、地域で排出された廃棄物の地域企業によるリサイクル事業等を促進し、環境リサイクル関連産業の集積を目的とした「総合リサイクルセンター(生活支援工房)」を整備されています。また地域内ゼロエミッション(地域で発生したものは地域でリサイクルすること)を宣言し、資源循環型地域システムの構築をめざしています。

図1:エコタウン事業スキーム(経済産業省HPより)

エコタウンの哲学

nagahama10-004.jpgこの「みなまたエコタウン」のコンセプトには、

  • 小規模であっても、全国中小都市のモデルになること
  • 市民、行政、産業界の三位一体となった4R
    (リデュース、リユース、
     リサイクル、そしてリフューズ(拒否)!)
  • 身の丈にあった、市民参加型

が掲げられています。場合によっては「リフューズ」も必要であるとしながら,「環境を汚さない」「地球環境に負荷を与えない」というライフスタイルの確立と、環境に対する市民意識の向上、そして地域経済の活性化につながる価値転換とその推進を図ることは、水俣だけではなく、地域社会全体で求められていることでもあります。

図2:水俣の多様性な取り組み(水俣市産業振興戦略, 2015)

ソーシャルイノベーション

nagahama10-005.jpg社会問題の画期的な解決策が普及して、定着化することをソーシャルイノベーションといいます。既成概念にとらわれない手法やアイディアが生まれ、人々の行動パターンが変わること、そしてその仕組みがモデル化されて普及することです。

ソーシャルイノベーションの動機は「社会ニーズ」であると説明されています。つまり、社会の抱えるさまざまな問題(治安、失業、貧困、環境など)を解決するために必要とされる、「新しい社会的商品やサービスやその仕組みの開発」を示している概念です。それまでのモノ・仕組みなどに対して全く新しい技術や考え方を取り入れて新たな価値を生み出して社会的に大きな変化を起こすことをめざします。

 「イノベーティブ」というところが重要で、それは単なる下請け投げやアウトソーシングではなく、新しい工夫が施されていることが重要と言われています。

写真3:伝統的農業と広がる樹林地

水俣のソーシャル・イノベーションへの挑戦

nagahama10-006.jpg水俣では人口がピーク時の半分に減少し(平成26年で人口約2万6千人)、少子高齢化が進んでいます。また平成23年の経済循環分析では、市外から獲得したお金が地域で循環せずに、相当な割合で流出している実態も明らかになりました(水俣市産業振興戦略,2015)。市内の雇用状況は全国の小規模自治体と同様に、厳しい状況にあります。

水俣市では「みなまたエコタウン」という資源循環型地域システムにおいて、地域経済の活性化を図るとともに、「売上よし・買い手よし、世間よし」の「三方よし」に「未来よし」を加えた「四方よし」の「産業クラスターの形成」をめざしています(図2 水俣の多様な取り組み)。多様な自然環境と社会資源が存在する水俣では、企業・NGO/NPO・大学・自治体等が関連して、水俣に集まり競争しつつ、同時にお互いが協力できるような関係を促進させる取り組みが見られます(図3 人口と経済の好循環)。例えば、星槎大学主催の教員免許取得講習や、NGO相思社によるワークショップ、水俣市の内発的産業振興の取り組みなど、人を水俣へ呼び込む活動です。そうした主体のつながりによるイノベーション創出と、分野横断的な産業の振興が期待されます。今後の水俣市の取り組みに注目しています。

図3:人口と経済の好循環(水俣市産業振興戦略,2015)

おまけ

「ソーシャル・イノベーション」は、これからのCSR(企業の社会的責任)の方向性として、重要なキーワードです。またCSRとして「ソーシャル・イノベーション」に関与する企業が増えています。例えば、日用品多国籍企業ユニリーバのインド法人による「プロジェクト・シャクティ」の取り組みは、インド農村地帯の「衛生状態」や「貧困・雇用状態」を大きく改善しました。またデュポン・カナダ社は、カナダのマギル大学と共同で「マギル-デュポン・ソーシャル・イノベーション・シンクタンク」を設立して、ソーシャル・イノベーションの成功要因を研究しています。

社会を動かすということは「人」を動かすことであり、変革者と「人」の間には必ず「相互作用」が発生します。「複雑系の理論」についても、知っておくことをお勧めします。

プロフィール

nagahama_pro.jpg長濱 和代(ながはま かずよ)氏

東京都の小学校教員をしていた2006年に、国際環境NGOアースウォッチによる途上国の森林プロジェクトに参加して、地球環境の劣化を目の当たりにして以来、環境教育の可能性を模索中。2013年3月に筑波大学大学院生命環境科学研究科で環境科学修士。同年4月から東京大学大学院・新領域創成科学研究科博士課程に在籍中。

<研究テーマ>
海外の研究調査地は北インド・ヒマラヤ山麓に位置するウッタラーカンド州で、住民参加による森林管理の事例として森林パンチャーヤトを研究している。インドは今後世界中で最も多い人口を抱え、経済的かつ地球環境的変化を遂げる国の一つとして注目している。

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