株式会社モンベル|代表取締役会長 辰野勇氏 シリーズ「経営者が語る創業イノベーション」インタビュー(第三回) | 企業のサステナビリティ経営・自治体の町づくりに役立つ情報が満載

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コラム

株式会社モンベル|代表取締役会長 辰野勇氏 シリーズ「経営者が語る創業イノベーション」インタビュー(第三回)経営者が語る創業イノベーション

montbell_hedder.png創業者は、社会の課題解決のため、また、人々のより豊かな幸せを願って起業しました。その後、今日までその企業が存続・発展しているとすれば、それは、不易流行を考え抜きながら、今日よく言われるイノベーションの実践の積み重ねがあったからこそ、と考えます。

昨今、社会構造は複雑化し、人々の価値観が変化するなか、20世紀型資本主義の在りようでは、今後、社会が持続的に発展することは困難であると多くの人が思い始めています。企業が、今後の人々の幸せや豊かさのために何ができるか、を考える時、いまいちど創業の精神に立ち返ることで、進むべき指針が見えてくるのでは、と考えました。

社会課題にチャレンジしておられる企業経営者の方々に、創業の精神に立ち返りつつ、経営者としての生きざまと思想に触れながらお話を伺い、これからの社会における企業の使命と可能性について考える場にしていただければ幸いです。

(公益社団法人日本フィランソロピー協会理事長 高橋陽子)

株式会社モンベル「経営者が語る創業イノベーション」インタビュー
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ご縁のある場所への出店で地域を活性化

montbell3_1.jpg辰野氏:来週の月曜日(2016年2月8日)に、毎日経済人賞をいただくんですよ。

高橋:受賞、おめでとうございます。どういう賞なんですか?

辰野氏:毎日新聞社が始めたもので、産業界に新風を送り、企業の社会的・文化的な活動の推進と、国民生活の向上に貢献した経営者を、年にふたり顕彰するそうです。(1979年に創設)。
全国にある支局からノミネートされるなかで、ぼくを推挙したのが鳥取支局。
なぜかというと、鳥取県とは2008年に大山町の伯耆大山(ほうきだいせん)の登山口にモンベルストアを出店したり、環境スポーツイベント「SEA TO SUMMIT」を開催したりして、つながりがありました。

画像説明:「自治体さんから協力してほしいという話が、かなりの数来ています」

※「SEA TO SUMMIT(シー・トゥ・サミット)」とは
人力のみで海(カヤック)から里(自転車)、山頂(登山)へと進むなかで、自然の循環に思いを巡らせ、自然について考えようというモンベル主催の環境スポーツイベント、2009年から実施。

高橋:その大山はアイガー北壁の登攀を目指していたころ、トレーニングした場所だったとか。

辰野氏:そういうご縁もあって、自治体から直営店の出店要請がありました。人口2万人に満たない町でしたが、地域と連携して進め、地元の方々にもインパクトがあり「町が変わった」と、喜んでいただいています。
この大山から派生して、北海道の人口7,800人の小さな町、東川町に出店したところ、町が非常に活性化しました。この動きが全国に広がるなかで、様々な自治体さんから、ぜひ協力してほしいという話が、かなりの数来ています。これは「地方創世」の意味で、ひとつの社会貢献の形なのかもしれません。

高橋:まさに、地域の課題解決につながったんですね。

辰野氏:これにしても、最初に「社会貢献で地域を活性化しよう」という思いつきがあった訳ではなく、ぼくの好きな大山という山の麓に、自治体から出店してほしいといわれて「これは面白いな」と思ったところから始まりました。

ガキ大将のこの指とまれ

高橋:このあいだ、オレゴン州のポートランドに行きましたが、そこでモンベルストアを見つけて、嬉しくなりました。

辰野氏:ポートランドにはアメリカでの第二号店があります。
去年、大山でやった「皆生・大山 SEA TO SUMMIT 2015」のイベントに、オレゴン州セイラム市の市長が来られました。セイラムは州都で市長さんは女性ですが、来年「SEA TO SUMMIT」をセイラムでやりたいと。その話をしたら、キャロライン・ケネディ(駐日米大使)さんもイベントに選手として来られて、カヤック、自転車、登山と全部参加されました。

高橋:どんどん広がっていますね。

辰野氏:ガキ大将が面白いことをいいだしたら、この指止まれじゃないけれど、みんなが集まってくる。

高橋:わくわく感がないと人は集まりません。経営者、トップがガキ大将のリーダーっていいですね。

辰野氏:創業者というのは多かれ少なかれ、そういうものじゃないかな。

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高橋:地域と連携した「フレンドエリア」が増えてたくさんの方が訪れると、地域も活性化しますし、いい循環ができて、モンべルクラブの会員もさらに増えそうです。その魅力はなんでしょう。

※「フレンドエリア」とは
モンベルと提携する施設、「フレンドショップ」が集積し、町・島・村など地域ぐるみで顧客のアウトドアライフをサポートしているエリア。

画像説明:「会員のみなさんをサポートするフレンドエリア。そのための仲間作りを広めたい」

辰野氏:買ってよかったと思ってもらえるもの、社会に必要とされるものを作ること、そのなかには、ささやかながら社会に役立つ活動も含まれているかもしれません。そして、60カ所の「フレンドエリア」と1,500カ所におよぶ「フレンドショップ」が、会員のみなさんをサポートすること。そのための仲間作り、これを是非広めていきたいと思っています。

(つづく)

話し手プロフィール

montbell_mr.tatsuno.jpg辰野 勇(たつの いさむ)氏
株式会社モンベル
代表取締役会長

1947年大阪府堺市に生まれる。少年時代、ハインリッヒ・ハラーのアイガー北壁登攀記「白い蜘蛛」に感銘を受け、以来山一筋の青春を過ごす。同時に将来登山に関連したビジネスを興す夢を抱く。1969年には、アイガー北壁日本人第二登を果たすなど、名実ともに日本のトップクライマーとなり、1970年には日本初のクライミングスクールを開校する。そして、1975年の28歳の誕生日に登山用品メーカー、株式会社モンベルを設立し、少年時代からの夢を実現する。またこの頃から、カヌーやカヤックにも熱中し、第3回関西ワイルドウォーター大会で優勝する。以降、黒部川源流部から河口までをカヤックで初下降、ネパール、北米グランドキャニオン、ユーコン、中米コスタリカなど世界中の川に足跡を残す。
一方、1991年、日本で初めての身障者カヌー大会「パラマウント・チャレンジカヌー」をスタートさせるなど、社会活動にも力を注いできた。近年では、びわこ成蹊スポーツ大学客員教授、文部科学省独立行政法人評価委員会など、野外教育の分野においても活動する。
2011年に発生した東日本大震災では、阪神淡路大震災以来の「アウトドア義援隊」を組織し、アウトドアでの経験をいかした災害支援活動を自ら被災地で陣頭指揮する。

趣味は、登山、クライミング、カヤック、テレマークスキー、横笛演奏、絵画、陶芸、茶道。

主な編・著書

聞き手プロフィール

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高橋 陽子 (たかはし ようこ)
公益社団法人日本フィランソロピー協会
理事長

岡山県生まれ。1973年津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業。高等学校英語講師を経て、上智大学カウンセリング研究所専門カウンセラー養成課程修了、専門カウンセラーの認定を受ける。その後、心理カウンセラーとして生徒・教師・父母のカウンセリングに従事する。1991年より社団法人日本フィランソロピー協会に入職。事務局長・常務理事を経て、2001年6月より理事長。主に、企業の社会貢献を中心としたCSRの推進に従事。NPOや行政との協働事業の提案や、各セクター間の橋渡しをおこない、「民間の果たす公益」の促進に寄与することを目指している。

主な編・著書

  • 『フィランソロピー入門』(海南書房)(1997年)
  • 『60歳からのいきいきボランティア入門』(日本加除出版)(1999年)
  • 『社会貢献へようこそ』(求龍堂)(2005年)

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