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分別|資源をごみにしないための第1歩~自分の出すごみから生活を見直す~ 初心者向け企業・地域を変える!?「ゼロ・ウェイスト」の可能性

previous_segregation_area.jpgごみはすべての人に関わりがある事柄といって過言ではありません。そして今までは、個人、自治体、企業にとって、できるだけコストと労力を割きたくない事象でもありました。しかし今、この「ごみ」が、世界の資源枯渇・生態系破壊などの環境問題への意識の高まりと共に、可能性ある資源として注目されています。また、コミュニティ内すべての構成員が関わる共通課題として、まちづくりへの参画を促すきっかけとしても注目されています。

本コラムでは、日本で初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」を行い、徹底資源化を実施している徳島県上勝町での実績がある特定非営利活動法人ゼロ・ウェイストアカデミーの理事長 坂野 晶様に「ゼロ・ウェイスト」の可能性と、具体的な進め方について連載していただきます。今回は「分別」です!
(写真は上勝町の回収ステーション。クリックすると拡大します。)

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適正処理、資源化率向上に寄与する分別

「ごみ」への取り組みで、誰もが一番身近に「できること」あるいは「取り組んでいること」として挙げるのが、ごみの分別でしょう。本来、一番身近にできる効果的な取り組みは、そもそもごみが出ないようなライフスタイルを心がけること(例:買い物時にごみになるものをなるべく選ばない)なのですが、やはり「ごみになったものを何とかする」取り組みとして一番身近なのは、ごみが適正に処理される、さらに出来る限り資源に戻るお手伝いをする、という意味でごみの分別となるのは間違いではありません。

そもそも、日本で初めてごみの分別を正式に始めたのは静岡県沼津市と言われています。行政がごみを回収した後に何とかするのではなく、市民が排出段階で「燃えるごみ」「埋め立てごみ」に加えて「資源」を分けるという方式は、1975年にこの3分別から始まり、「沼津方式」とも呼ばれ、今では全国で広く導入されています。

日本では、一般廃棄物、つまり産業廃棄物以外の各家庭や事業所から出るごみの回収・適正処理は各自治体の責任です。そのため、ごみの回収方法や分別の種類も自治体によって異なります。同じ東京都でも、違う区に引っ越すとごみの分別も回収方法も違って大変!という声をよく聞きますが、それは区の行政ごとで独自の方針を立てているからです。

自治体ごとに異なる分別種と回収方法~拠点回収と集団回収~

例えば墨田区では15分別、隣の江東区では13分別(不定期回収物は除く、粗大ごみは含む。筆者カウント)。近い数のようですが、分別品目は異なります。江東区では古紙は新聞紙、雑誌・雑がみ、ダンボールの3種類ですが、墨田区では新聞、段ボール、紙パック、雑誌、雑がみの5種類です。さらに回収については曜日で決められていますが、同じ区内でも地域によってどの曜日にどのごみを出す日かは異なっています。しかし、墨田区も江東区も朝8時までに最寄りの集積所まで住民が出しておくという回収方法は同じです。

また、家から数分の徒歩圏内の集積所まで住民が出しておくという回収方法の他に、自治体内の特定の回収拠点(多くは公共施設内など)まで少し長距離の移動をかけて住民に持ち込んでもらう「拠点回収」方式や、地域内で住民に複数世帯で自主団体を組織してもらい、主に販売できる有価資源の回収に自発的に取り組んでもらう「集団回収」方式などもあり、これらを全て使い分けて実施している自治体が増えています。

拠点回収は、排出頻度の低いもの(例:乾電池、小型家電)、集団回収は有価資源(例:販売できる古紙など)を対象とすることが一般的です。一方で、「資源ステーション」などの名称の、特定の拠点で全てを回収する形式を取っている自治体もあります。拠点回収は、もちろん受付可能時間の設定にはよりますが、決められた曜日の早朝に特定のごみを出すというプレッシャーが少なく、比較的自由なタイミングで全てのごみを持ち込めるというメリットがあります。さらに、分別の観点からは、一旦1か所に持ち込めば、ある程度細かく分別が必要となっていてもその場で対応できるため、あまり難しくなくなるというメリットもあります。

「混ぜればごみ、分ければ資源」

そもそも、市民にとってあまり嬉しくないと言われそうなごみの分別ですが、なぜ大事なのでしょうか。資源のリサイクルをするためには、資源が素材ごとに分かれている必要があります。素材ごとに分けた上で、再度溶かしたり加工したりして、再び資源に戻すためです。不純物が混ざれば、良い品質の資源に戻すことはできません。確かにごみを回収した後に、素材ごとに分別するという手段もあります。手作業だけでなく、素材ごとにセンサーで分別できるような機械も発達してきています。しかし、一度他のものと混ざったり汚れたりしたものを、再度分けなおすことは容易ではありません。

例えば、搬送過程でガラスが割れたら、他の素材にもガラス片が混入してしまい、良い品質の資源に戻すことは困難です。さらに、生ごみが混ざっていたらどうでしょうか・・?市民一人ひとりの手元にある時は、まだ他のものと混ざったり汚れたりはしていません。その状態のまま、ごみを出すときに、他のものと混ぜずにきれいな状態で出していくことが出来れば、資源としての活路が開けるのです。まさに、「混ぜればごみ、分ければ資源」。しかし市民一人ひとりの責任だというだけで終わらせず、分別してもらうために、分別しやすい方法など仕組みを整えることや、なぜ分別が必要なのかの明確な説明など、行政が行うべきこともたくさんあります。

上勝流!45分別を可能にする3つの工夫

日本初の「ゼロ・ウェイスト宣言」を行った徳島県上勝町のごみステーションでは、住民に分別にわかりやすく取り組んでもらうための工夫が大きく3つあります。1つ目は、なぜ分別するかを情報として明示していること。上勝町では45種類のごみ分別を行っていますが、全ての回収箱に、その資源が回収後どこへ行き、何になるのか、そしてその過程にいくらお金がかかるのか(あるいは有価資源の場合はいくらで売れるのか)が明記してあります。ごみは捨てたらその後どうなるか考えもしない、という無関心で終わらせるのではなく、きちんと行先やプロセスを明示することで、分別することの意義を理解してもらうことができます。さらに、金額まで開示することで、品質が下がったり混ざったりしていると高くなる、あるいは分ければ売れるようになる、ということがわかりやすく説明できます。

2つ目は、ごみステーションの現場に常に2~3人のスタッフがいるという体制です。わからない分別はスタッフに気軽に聞くことができますし、スタッフからも間違った分別に対して声がけをしたり説明をしたりすることが出来ます。さらに、個人では難しい電子部品などが入った製品の解体や粗大ごみの解体などを現場で担っており、上勝町の誇る81%のリサイクル率は、住民の協力はもちろんですが、こうした現場スタッフの水際の努力によって達成されています。

3つ目は楽しく分別に参加してもらうためのインセンティブづくりです。特定の分別品目をきちんと分けて持ち込むと、ポイントが貯まる仕組みがあり、貯まったポイントで「ごみ袋」や古紙資源をしばる「紙ひも」、さらにエコバッグや高価なものではコンポスター(堆肥化装置)などゼロ・ウェイスト実践に繋がるグッズと交換することができます。ポイントを貯めること自体が楽しいという人から、欲しいものを見つけて頑張って貯めようという人まで、分別することに楽しみを見出してもらえるきっかけとなっています。さらに、行政としては、この賞品交換にかかる資金を、有価資源の販売収入から充てており、分別に協力してきた住民への還元施策として取り組んでいます。

種類が多くても区分が明確だと分けやすい!

IMG_8674.JPGもう一つ、分別の細かさについても少し触れておきます。上勝町が45分別をしていると聞くと、大抵の人は「そんな大変なこと無理でしょう!」という反応を返します。確かに簡単だとは言えませんし、45種類全てを暗記して言える人はいないでしょう。それだけ細かく分けることで、回収する資源の品質を上げ、その後のリサイクルが確実に行われるように、かつリサイクル業者にとって扱いやすい状態で引き渡せるように工夫した結果であり、それだけの良い状態での引き渡しを行うことで出来る限りコストカットに繋げようという意図があります。
(写真は、上勝町の分別ステーション ©Masataka Namazu クリックすると拡大します。)

しかしそれだけではなく、「分ける」ことだけに焦点を絞ると、面白いことが見えてきます。上勝町の小学生に分別の競争をしてもらった時のことです。小学生には上勝町だけでなく、他の自治体の分別にもチャレンジしてもらいました。中には、「燃えるごみ」と「燃えないごみ」だけの2分別の自治体の例もありました。しかし、これが意外と難しいのです。例えばプラスチック。燃やせば燃えますが、燃やしてもいいのか?と考え込んでしまいます。分別の種類は少なくても、どちらに分けていいのかを考えることと、その正答率を鑑みると、逆に少ない分別の方が手間だと考えることも出来るかもしれません。45分別となると、分ける観点からは、「透明のガラスびん」「茶色のガラスびん」あるいは「ライター」「ペットボトル」など具体的な名称で表示があるため、よほど分かりやすい!というのが小学生の意見です。

今回は分別についてお伝えしてきましたが、実は一番大切なのは、分別をすることで自分の出すごみを見直すということです。徳島県上勝町では45種類の分別品目がありますが、これだけ細かく分別すると、自分が普段どんな生活をしているのか、何を買って何を食べて何を無駄にしているか・・ということが全てわかります。ごみを見れば暮らしがわかる。ごみを見れば暮らしの中の無駄がわかるのです。

次回は分別だけでは解決できない「難しいごみ」についてご紹介します。

執筆者プロフィール

sakano_akira.jpg坂野 晶(さかの あきら)氏
特定非営利活動法人ゼロ・ウェイストアカデミー
理事長

大学で環境政策を専攻後、国際物流企業での営業職を経て現職。日本初の「ゼロ・ウェイスト」宣言を行った徳島県上勝町を拠点に、同町のゼロ・ウェイストタウン計画策定や実装、ゼロ・ウェイスト認証制度の設立、企業との連携事業など政策立案や事業開発を行うとともに、国内外で年間100件以上の研修や講演を行いゼロ・ウェイストの普及に貢献する。2019年1月には世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)の共同議長に日本人で唯一選ばれた。

ゼロ・ウェイストアカデミー:http://zwa.jp/

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