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コラム

ASC養殖場認証を継続するためのポイント環境と経済は両立する 南三陸バイオマス産業都市構想

taiken_001_0613.jpg南三陸町は人口約1万3千人、海里山が一体となった豊かな自然環境を有する町です。同町は東日本大震災後の復興の過程で「エコタウンへの挑戦」を掲げ「南三陸町バイオマス産業都市構想」を策定。2014年3月に国の認定を受けました。その後、南三陸町では構想の実現に向けて、様々な取り組みが進んでいます。この南三陸町の取り組みは、単なる震災復興だけではなく、多くの地方自治体にとって参考になり得ます。

そこで本コラムでは、南三陸町総合計画の将来像である「森里海ひと いのちめぐるまち 南三陸」の実現のために人材育成などを行っている一般社団法人サスティナビリティセンターの代表理事太齋様に、南三陸バイオマス産業都市構想の経済・社会・環境影響について、参考事例などを交えて連載していただきます。第3回は、ASC養殖場認証を継続させるために必要な事についてご紹介します。(写真は体験学習の様子|認証取得後、視察や体験学習の要望は増えている)

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ASC養殖場認証を継続させるために必要なこと

taiken_002_0613.jpg前回までに、戸倉地区のカキ養殖生産部会が養殖密度を震災前の1/3にし、劇的な生産性向上と、湾の環境への影響が低減したこと、また、養殖密度を守る目的で導入したASC養殖場認証の取得が労働環境改善につながり、浜に若者が増えたという事例をお伝えしました。今回は、ASC養殖場認証取得における課題と、戸倉地区の新たな取り組みについてお話しします。

2018年は3年に一度やってくる戸倉地区のASC養殖場認証の更新時期でした。更新にあたり、後藤清広カキ養殖部会長は、漁業者からどのような意見が出てくるかを大変心配されていました。実際には、否定的な意見はあまり出なかったとのことで、ホッとしたご様子でしたが、部会長の心配のもとはなんだったかというと、それは認証費用に関する問題です。(写真は篭による殻付きカキ養殖風景)

ASC認証は、養殖場(及びそこから出荷される原料を加工・流通する事業者も含めて)が生態系に与える影響が十分に小さく、また法令を守り、労働者や地域への配慮も行っていることを証明する世界共通の厳格な仕組みを持っています。近年、エシカル消費※やESG投資など、持続可能な社会へ向けた関心が高まるにつれ、企業がどんな基準で原料やサ ービスを調達しているかについても厳しい目が向けられるようになりました。ASCなどの団体が提供する環境認証は、そういった責任ある調達に対するひとつのソリューションとなり得ます。消費者や企業はASCマークのついた商品であれば、安心して使うことができるわけです。その信頼性を担保するため、認証取得や維持には多岐の項目にわたる審査が行われ、それにかかる費用も決して少額とはいえません。この費用を誰が負担するのか?ということが取得・更新時の大きな問題となります。

戸倉地区の認証取得時には、南三陸町が補助金で支援を行いましたが、それ以降の年1回の監査や更新時にはそれなりの費用が見込まれるので、参加する漁業者は売上の一部を積み立てて資金を準備してきました。認証の要求する様々な基準をクリアする労力と多くの認証費用をかけたカキですので、その分高く売りたいのが人情というものです。

※エシカル消費...倫理的消費。人や社会・環境に配慮した消費行動の意味。

消費者、小売会社の協力も必要になってくる環境認証制度

一方で、読者の皆さんにちょっと考えてみて頂きたいのは、認証付き商品と、認証がついていない商品がスーパーに並んでいた場合、あなたなら認証商品をどのくらい高く買ってくれますか?ということです。ちなみに、ASC認証は養殖物の品質については保証しませんので、おいしさの差は分かりません。ここで、もし認証品が認証費用を補うくらいの価格差で買っていただけなければ、その分は生産者の持ち出しとなってしまい、認証をとらない方が有利となってしまいます。

つまり、わざわざ費用をかけて認証を取得したカキの評価が、それを負担した漁業者の負担感と釣り合わなければ、当然、認証に対する風当たりが強くなります。このあたりを漁業者が3年間でどのように受け止めたのか?ということを後藤部会長は気にしていたわけです。

もちろん、高く売れるからASC養殖場認証を取得したわけでないことは、前に述べたとおりなのですが、とはいえ、多くの漁業者の参加で成り立っている養殖場認証ですので、様々な意見があることも事実です。幸い今回の更新では、戸倉のカキは市場で比較的高い評価を得たことで反対意見はでなかったということでしょう。

ASCのような認証が広まることは、持続可能な社会をつくる上でも有効なことだと思いますが、その負担を生産者のみに押しつけるのはフェアではないし、うまくいきません。実際、今回のケースでも認証費用の多くを税金で支援していたといえます(税金を使って支援することが悪いという意味ではありませんので、誤解のなきように)。この問題に関し、ASCを押している大手小売業者がどのような対応をしているのか?ということについては、もっと注視していくべきかと思います。

1年物のカキは味もおいしくて、環境にも良い

結局のところ、本当の問題は「漁業者に浜のカキの価格決定権がない」ということにつきます。原因は水産物の複雑な流通機構や商習慣等様々ですが、このことにメスを入れずして漁業者が本当に安心して養殖を続けられるのか?ということは大きな問題です。そのことに気付き、行動を起こしている若手漁業者もいます。当センターでは、そういった若手漁業者と協力して戸倉のカキの魅力を伝え、それを理解して下さる方に適正な価格で買って頂く取り組みを始めています。

ASC養殖場認証では、カキの品質は保証しないということを書きました。そこで行ったのは、日本各地のカキと戸倉のカキのうまみ成分(遊離アミノ酸)の比較です。同時に1年ものと2年ものの差調べたところ、以下が明らかになりました。

  1. 戸倉の1年もののカキは美味しいと評判の的矢ガキと同等以上の甘み成分をもち、苦みが少ないこと
  2. 同時期の2年ものより1年ものの方が甘み成分もうまみ成分も多いこと

kaki_0613.jpgtable_0613.png

※画像と図はクリックすると拡大します。

これらのことから、おいしさという品質においても、1年ものの方が優れていると自信を持っていえるようになりました。カキはどうしても身の大きなものが好まれ、価格も高い傾向がありますが、皆さんに知って頂きたいのは、たとえ身は小さくても、十分に栄養の行き渡った1年もののカキの方が断然美味しい!という事実です。1年もののカキを選ぶということはまた、環境にも良い、ということもすでにお分かりのことと思います。こうしたエビデンスを積み重ねながら消費者の選択に対しての判断材料を示し、少しでも価値を理解して下さる方のもとにお届けするために試行錯誤しています。ひとつの成果として、戸倉っこかき殻付き1年ものは、昨年から福岡の某有名オーガニックスーパーで扱っていただけるようになりました。

togura-kaki_movie.png今後、ASC養殖場認証は取得が当たり前の存在になっていくことと想像します。震災からの復興をなし得た戸倉の漁業者の夢は、そのさらに先にある「真にこども達に誇れる漁業」の実現にあります。それはきっと日本の漁業や流通のあり方まで変えていくものになるのではないかと期待しています。

▼HPと動画も是非ご覧下さい。
南三陸戸倉っこかき:https://toguraquest.com/

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執筆者プロフィール

mr.dazai_s.jpg太齋 彰浩(だざい あきひろ)氏
一般社団法人サスティナビリティセンター

代表理事

民間研究所での研究生活を経た後、地域密着型の教育活動を志し、志津川町(現・南三陸町)へ移住。東日本大震災で後は、行政職員として水産業の復興に取り組むとともに、「地域循環の仕組み」づくりに注力。平成30年4月、有志により(一社)サスティナビリティセンターを設立。現在は、世界に誇れるまちづくりを自分事として目指す人々の支援を行うとともに、持続可能なまちづくりを担うリーダーを養成するためのプログラム開発を行う。

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