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コラム

ISO14068-1 カーボンニュートラリティのISO規格とは?世界最古の国家規格協会、英国規格協会(BSI)の考えるサステナビリティ認証・ラベルの「使い方」

banner.jpg2023年11月末、カーボンニュートラリティに関する国際規格、ISO 14068-1:2023が発行されました。前身となるPAS 2060 (※1) の初版発行から13年を経てISO化された本規格は、カーボンニュートラリティの達成と実証を目指す際の原則と要求事項を定めたものです。2024年1月には、世界で初めて(※2)、ヤマト運輸株式会社がBSIより本規格に基づいたカーボンニュートラルの検証を受け、主要商品である宅急便や宅急便コンパクト等について、第三者検証意見書を取得するなど注目を浴びています。今回のコラムでは、ISO 14068-1(気候変動マネジメント-ネットゼロへの移行-第1部:カーボンニュートラリティ)のご紹介をします。

Image by Chris LeBoutillier from Pixabay


※1:PASは 「Publicly Available Specification」 の略であり、日本語では 「公開仕様書」 と訳され「入手可能な一般に公開された(誰でも使用できる)規格」 であることを意味します。カーボンニュートラルの実証の仕様書として、2010年にPAS 2060の初版がBSIより発行されました。
※2:BSI調べによる。

目次

1月25日(火)に開催した「国際認証機関BSIから学ぶ!移行戦略のためのサステナビリティ認証活用方法セミナー」で、BSIグループジャパン株式会社より、サステナビリティ認証の最新動向や活用事例、組織のESG評価から製品のESG評価へという流れについてご講演いただきました。その動画と資料を公開中です。

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ISO 14068-1とは何か。その適用範囲と要件

まず「ネットゼロ」と「カーボンニュートラル」の違いについて、簡単にご説明します。「ネットゼロ」は、スコープ1、2、および3の排出量をゼロにするか、もしくは適格な1.5℃軌道におけるグローバルまたはセクターレベルでのネットゼロ排出達成と整合する残余排出量水準にまで削減することを前提としています。また、ネットゼロ目標の時点における残余排出量と、それ以降に大気中に放出されるすべてのGHG排出量を中和することが求められます。一方「カーボンニュートラル」は、ある一定期間にGHG排出の抑制やGHG吸収・除去等により排出量を削減し、残った排出量もオフセット等により相殺した状態を指します。
ISO 14068-1は、この長期的な目標であるネットゼロに向けて、カーボンニュートラルの仕組みをいかに活用するかをガイドする規格であり、その中ではGHG排出量の定量化、削減、および相殺を通じてカーボンニュートラリティの達成とその実証を行うための原則と要件が規定されています。図1は本文書の構成を示したものです。

▼図1 ISO 14068-1の構成

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(出典:ISO国際規格ISO 14068-1よりBSIが作成 )

本文書においては、カーボンニュートラルに関連する用語の定義や達成・実証のためのガイダンスを提供し、その対象は組織や製品、イベントなど多岐にわたります。特筆すべき点の1つとして、バリューチェーンにおけるGHG排出削減(直接的および間接的)とGHG除去の強化をオフセットよりも優先させた、カーボンニュートラル・マネジメント・ヒエラルキー(図2)を定めている点が挙げられます。

▼図2 カーボンニュートラル・マネジメント・ヒエラルキー

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(出典: ISO国際規格ISO 14068-1よりBSIが作成)

このガイダンスに沿って、いざカーボンニュートラリティを謳う際には対象のGHG排出量の算定に加え、カーボンニュートラルへのコミットメントや目標達成の具体的な計画、継続的改善の体制が整備されていることが必要となります。また、GHG排出量の算定方法は、組織の場合はISO 14064-1(※3)、製品の場合はISO 14067(※4)に準拠する必要があります。オフセットに関しては、GHG排出削減またはGHG除去から生成された炭素クレジットのみを調達し、品質に関する一定要件を満たすクレジットに限定され、かつビンテージ(クレジットが発行された年)が5年以内であることが求められる等、グリーンウォッシュ対策も視野に入れた複数の要件が課せられています。
このように適用範囲と要件が定められたガイドラインに基づき、組織は、組織や製品に対するカーボンニュートラリティを検証することが可能となります。

※3: ISO 14064-1(Greenhouse gases Part 1: Specification with guidance at the organization level for quantification and reporting of greenhouse gas emissions and removals)は、組織におけるGHG算定のルールを定めた文書。
※4: ISO 14067(Greenhouse gases Carbon footprint of products Requirements and guidelines for quantification)は、製品のカーボンフットプリントを定量化するための要求事項とガイドラインを定義した文書。

ISO 14068-1への取組みのステップと検証の取得メリット

図3は、本文書内で提示されたカーボンニュートラルのフレームワークです。カーボンニュートラルの達成と実証のための管理計画は、このフレームワークに記されているステップに基づいて、炭素排出量を削減するための持続的な改善アプローチを行う必要があります。

▼図3 カーボンニュートラルのためのフレームワーク

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(出典:ISO国際規格ISO 14068-1より抜粋)

組織は図2の優先順位に基づいて、カーボンニュートラルを達成するための措置を実施していきます。オフセットへの依存を最小限に抑えるために、持続的な改善に基づく計画の策定とそれに従った行動が求められるのです。
また、組織においては、明確なカーボンニュートラルの目標や方針、そしてビジョンを策定することが求められます。加えて、部署を超えた連携も重要です。検証に向けた準備に際しては、通常、複数部署が関与するプロジェクトとなることが想定され、関係者間での役割分担の明確化と密な協力体制が必要とされます。たとえば、環境関連データを管理する部署と関連財務データ等の数値の取りまとめを担当する別の部署がある場合、どちらが取りまとめを行うか等の具体化、加えて是正対応の責任分担などの課題を事前に洗い出し、協力体制を確立することが欠かせません。

本文書に基づきこのような目標設定や協力体制の構築を実務的に行うことにより、組織や製品またはプロジェクトがカーボンニュートラルである根拠を示すことが可能となることに加えて、これを実行する組織作りが期待できます。また、定量化された数値と将来の削減計画を独立した第三者によって、またはグローバルな基準に照らして検証することで、カーボンニュートラルの主張の正確性を立証し、グリーンウォッシュの疑いを払拭し、サステナビリティを実現する企業としての信頼獲得が期待できます

ISO 14068-1とファミリー規格

ISO 14068-1には、図4に示されているようにいくつかのファミリー規格が存在しますが、これらはすべてネットゼロに向けた取り組みに関連する規格です。GHGに関しては、ISO14064、14065、14067などの既存規格がGHGの定量化、報告、妥当性確認、および検証に関する基本的なガイドラインを提供していますが、ISO14068-1はこれらの国際規格の上に構築されるよう設計されています。ISO 14068が発行される際に名称に-1(パート1)が付与されたことからも、今後-2(パート2)や-3(パート3)が発行される可能性が大きいと言われており、シリーズ規格の開発にも注目が集まっています。

▼図4 ISO 14068シリーズと本文書(ISO 14068-1)との関係性

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(出典: ISO規格ISO 14068-1より抜粋)

最後に、ネットゼロガイドラインに関して

2022年に開催されたCOP27で公開された「ネットゼロガイドライン」についてご存じの方もいらっしゃるかと思います。このガイドラインは、組織が高いレベルの野心を持って共通のアプローチを取り、GHG排出をネットゼロに達成するための指針や推奨事項を提供しています。組織が自主的な取り組みや規格の採用、政策、国内および国際的な規制を含む統治組織としての共通の参照となることを意図しており、組織がネットゼロの達成に貢献するための具体的な行動を促進します。また、ガイドラインの中でISO 14068-1の位置づけも明記されているため、あわせてお読みいただくと規格の解釈に役立つかと思われます。ネットゼロガイドラインの日本語版は、以下のリンクからダウンロード可能です:https://www.iso.org/netzero

さて、次回のコラムでは、現在開発中のサーキュラーエコノミーに関する国際規格について最新情報をお届けする予定です。お楽しみに!

関連情報

今回ご紹介したISO14068-1につきまして、認証取得やその他脱炭素目標の設定や移行計画策定に関するご相談をお受けしております。下記よりご相談ください。

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執筆者情報(執筆時点)

BSI野村様_2.png野村 梢(のむら こずえ)氏
BSIグループジャパン株式会社
Business Development Div' 
Carbon Neutral and Disclosure Lead

環境ソリューション会社にて、森林認証、漁業認証、CSR等の業務に従事。2014年にBSIジャパンに入社後は、サステナビリティ関連認証、PAS規格策定、製品認証等、マーケティングの立場から幅広く携わる。2023年8月から環境関連サービスの事業開発を担当。

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