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コラム

ブルーカーボンとは?J-ブルークレジット制度とは?

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持続可能な社会を目指す上で重要な、ネイチャーポジティブ、気候変動、サーキュラーエコノミー。これら全てに係わる重要テーマでもあり、30by30において改めて重要性が認識された海の保全と管理。その中で、里海(SATOUMI)という日本発の考え方が、改めて注目されています。第2回目のテーマはブルーカーボン。

沿岸・海洋生態系に取り込まれ、数千年に渡り土壌中に蓄積される炭素のことを、ブルーカーボンと呼びます。陸上植物が光合成によって蓄積する炭素を「グリーンカーボン」と呼ぶのに対しての呼称でもあります。
2009年に公表された国連環境計画(UNEP)の報告書「Blue Carbon」において定義され、温室効果ガス吸収源の新たな選択肢として、世界的に注目が集まるようになりました。ブルーカーボンの主要な吸収源としては、海草(うみくさ)や海藻(うみも)が生い茂る藻場(もば)や、干潟等の塩性湿地、マングローブ林があげられ、これらは「ブルーカーボン生態系」と呼ばれています。

前記事:「里海(SATOUMI)とは?今注目される理由とポイント
関連記事:「30by30目標とは?企業の生物多様性の取り組み方についても解説」

Photo from watanos

目次

ブルーカーボン生態系の保全・再生・創出の意義

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書によると、世界全体のブルーカーボンの気候変動緩和ポテンシャルは、世界全体の温室効果ガス排出量の0.5%を相殺する程度と評価されています。2018年の世界全体の温室効果ガス排出量は553億[t-CO2]であるため、世界全体のブルーカーボンは2億8千万[t-CO2]弱の気候変動緩和ポテンシャルがあることとなり、気候変動対策としてのブルーカーボン活用の重要性がうかがえます。

2021年6月のG7 コーンウォール・サミットにおいて「2030年までに世界の陸地の少なくとも30%及び世界の海洋の少なくとも30%を保全又は保護する」いわゆる「30 by 30」目標が約束されました。環境省では、目標の達成に向けて、OECM(保護地域以外で生物多様性保全に資する地域)の設定を推進する取り組みを進めており、2023年度からは、OECM登録を念頭に置いた「自然共生サイト」の認定制度を開始しています。2023年10月、初めての大臣認定となる122か所を自然共生サイトとして認定し、うち2か所は海域におけるサイトとなっています。

関連記事:「OECMとは? 事業のサステナビリティを向上させる具体的事例を紹介!

■海域における自然共生サイトの登録事例
阪南セブンの海の森(一般財団法人セブンイレブン記念財団)
関西国際空港(関西エアポート株式会社)

J-ブルークレジット制度

ジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE)が創設したJ-ブルークレジット制度は、ブルーカーボン生態系による温室効果ガスの吸収・蓄積量を、売買可能な「J-ブルークレジット」として認証する制度です。J-ブルークレジット制度においては、申請者がクレジットを売却可能であり、取引を通じた認知度の向上により、ブルーカーボン生態系の保全等の活動の活性化が見込まれます。またクレジット購入者はCO2削減のほか温暖化対策活動の開示が可能です。
J-ブルークレジット制度と類似している制度として、しばしば取り上げられるものにJ-クレジット制度があります。同制度では、森林経営活動、植林活動を通して、森林により吸収・貯留される温室効果ガス、いわゆるグリーンカーボンもクレジット化可能ですが、海洋生態系によって吸収・貯留される炭素(ブルーカーボン)は、現在は、クレジット化できません。
(グリーンカーボンとブルーカーボンに関して活用可能なクレジット制度等の比較については、下図を参照)

<申請方法>
J-ブルークレジットは、過去の吸収・蓄積量について認証・発行されるものであり、プロジェクト単位で申請することとなっています。認証対象期間の遡りは5年を限度とし、申請は1年単位となります(複数年の一括申請可)。申請者が、藻場・干潟・マングローブ林の種別、炭素吸収・蓄積量、算定方式などを申告すると、審査認証委員会での審査を経て、認証・登録されます。

▼グリーンカーボンとブルーカーボンについて活用可能なクレジット制度等の比較

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(出典:J-ブル-クレジット認証申請の手引き, p.3, JBE)

今後の流れ

2023年11月には、J-ブルークレジットは、20を超えるプロジェクトが認定され、約3,700[t-CO2]規模となりました。現在需要に対して供給量が不足していることもあり、価格はJ-クレジットより高く(年変動するが4~9倍以上になることもある)、現時点でコストメリットはありませんが、応援や関係性の構築を目的として購入している事業者も見られます。海がない自治体が購入し、そのご縁をきっかけに購入地域の海岸清掃活動に住民と参画することや、現地企業(特に海洋や港湾事業を行う企業等)が寄付的な意味合いも含めて購入している事例があります。一方、販売事業者はクレジットの売却益を里海づくりに活用するなど、継続的な活動資金を得るための仕組み化に向け動いています。

主な参考情報

執筆者プロフィール

kisyo_yoshida.png吉田 季晶(よしだ きしょう)氏
環境省 水・大気環境局 海洋環境課海域環境管理室 審査係長

2019年国土交通省入省。港湾局において、港湾の施設の技術基準の運用・英語化、港湾技術パイロット事業、港湾物流施策に係る企画調整、港湾荷役機械の自動化実証等を担当。2020年9月~2022年3月、総合政策局において本邦企業の運輸インフラ海外展開・案件形成支援、在外公館・外国政府機関との調整等にも携わる。2023年9月より環境省に出向。瀬戸内海環境保全特別措置法に基づく海域の栄養塩類管理制度の運用、自然海浜の保全等の他「令和の里海づくり」モデル事業の企画運営、地域でのブルーカーボンの活用検討等に携わる。

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