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SBTi参加に向けた申請方法と基準とは?- WWFジャパン池原氏が伝授!

Photo by rawpixel.com from Pexels

Science Based Targets initiative(以下、SBTi)は、世界の中でも、日本企業の参加割合が高いイニシアチブとして、注目度が高まっています。現在、世界で参加している企業数は492社、うち承認を取得している企業は141社です。
また参加企業のうち日本企業は64社で、日本はアメリカに次いで2番目に参加率の高い国となっています(2018年10月時点)。今回は、申請を検討するにあたって、知っておきたいSBTiへの申請方法やポイントについてご紹介します。

※本記事は、アミタ(株)主催セミナーにおける池原氏のご講演内容をもとにアミタ(株)の見解をまとめたものです。

SBTi参加のメリットは?

SBTiから承認を取得した目標を設定した場合、「パリ協定と整合した実効性の高い目標」として客観的な証左を得ていることになり、自社だけで削減目標を設定している場合に比べ、投資家からの評価を得やすくなります。
SBTiは、パリ協定で世界共通の長期目標として掲げられた「2℃目標」を達成するために、個別企業が総量でのCO2削減目標を策定する際の最低限の数値として「2050年には2010年に比べて、49%以上の削減」が必要であるとしています。企業にとっては「2050年といった遠い未来の数字を出すことは難しい」という意見もあります。
しかし、脱炭素を目指す取り組みにおいては「長期目標を掲げる」ことにも、十分に意味があります。なぜなら、2050年に自社が考える「あるべき姿」をステークホルダーに明示し丁寧に説明を行うことで、新しく協働関係が生まれたり、目標達成を共に目指す過程で、新たな商品やサービス開発のアイデアにつながる「シーズ」を生み出す可能性があるからです。こうした理由からも、参加のメリットがあると考えられます。

SBTiへの申請方法は?

申請方法は、以下の2段階に分かれています。2)にあたっては、質問項目への回答に加え、必要に応じて補足説明資料を添付する必要があります。

▼SBTiの申請方法の流れ

1) まだSBT(Science Based Targets)に合致する目標設定に至っていないが、そのような目標を設定することにコミットしたい場合

  1. "Commitment Letter"(書類)に記入・提出
  2. SBTiのウェブサイト上で、「Committed」の企業リストに掲載される
  3. フォームの提出後、24か月以内に目標を策定し発表する必要がある

2)SBTに合致する目標を策定した場合

  1. " SBTi Target Submission Form"(書類)に記入・提出
  2. SBTiのテクニカル・ワーキング・グループが内容を審査
  3. SBTiのステアリング・コミッティーが承認
  4. 企業に結果を通知
  5. SBTiのウェブサイト上で、目標承認企業(「Target Set」)として掲載
認定を得るための要件は?

「認定要件」と「推奨事項」という2種類の要件があります。それぞれ文字通りですが「認定要件(C:クライテリア)」は、認定に際して必ず満たさなければならない要件であり、「推奨事項(R:レコメンデーション)」は、満たすことが推奨されている事項です。例えば、下記のような例が挙げられます。

▼目標年に関する「認定要件」と「推奨事項」の事例

認定要件(C) 全目標はSBTiに公式提出時から5年以上先、15年以内である必要がある。(C5-基準年・目標年)
推奨事項(R) 必須となっている中期目標に加えて、長期目標(例えば2050年目標)を開発することを推奨する。(R5-目標年)
認定にかかる費用や期間は?認定のためのポイントは?

2019年からサービスが新しくなると共に、目標の申請費用が有料化される予定です。
有料化以降は、最大2回までの審査に対して※4950米ドル(約56万円)が必要となります。

※例えば、非公式の申請(Unofficial validation)と、公式な申請(Official validation)の計2回、あるいは公式な申請(Official validation)を2回、といったかたちで選択することができます(2種類の申請については後述)。

※「最大2回までの審査」について、2回申請を行うケースとしては、スコープ1,2のみに関して非公式申請し、その後にスコープ3も含めて公式申請をするケースや、公式申請をしたものの、目標が不十分で承認が取れなかった場合に、不十分な所を再検討した上で改めて公式申請をするケース等が想定されます。

現在の無料サービス下では、順調にいけば2カ月~2カ月半ほどで認定を取得することができると言われていますが、新たな有料サービスの下では、このプロセスの短縮化(30営業日程度)およびより詳細なフィードバックが望めるようです。

この新しいサービスは2018年10月から利用可能になります。なお、現在の無料サービスも、2018年末までは利用することができます。

また、テクニカルな内容についてのやりとりとは別に、広報面に関するやりとりも可能であり、無事、承認を得ることが出来れば、自社のプレスリリースの時期等を考慮し、ウェブサイトへの社名掲載のタイミング等について相談することも可能です。そして、承認を得るためには、目標申請フォーム(SBTi Target Submission Form)への記載内容の納得性、妥当性、説得性が最大の鍵となります。

例えば「スコープ3排出量の算出が一部のカテゴリーで完了していない」という場合、該当する回答部分を空欄にしたり、目標設定でも一切触れなかったり、というのはNGです。
審査側は、業種ごとに重要なカテゴリー等を把握しているため、それらに言及していないと、質問が送られてきます。そうしてSBTi側とやり取りを繰り返しているうちに半年~1年ほど、時間がかかってしまうケースもよく見られます。したがって、明確化できていない部分についても、「○年度までには着手する」と記載するなど、重要度の高いカテゴリー等を疎かにしない姿勢を表明しておくことが重要です。

すぐに取り組むのが難しい企業は、"お試し"も可能!

実は、SBTiの目標申請のタイプには2通りあります。正式な承認を取るために申請したい場合の「Official validation」と、試しに目標の案を審査してもらいたい場合の「Unofficial validation」です。
後者は、全社的には決定が下りていないが、部署的にトライしてみたいというケースでも活用できます。例えば「スコープ1,2の範囲だけ基準に沿っているかどうか見てほしい」など、部分的な範囲で、試しに応募してみることも可能です。

最後に

SBTiでは、気候科学者が示している科学的な知見と整合した目標であることが重視されているため、参加を通して、自社の削減目標の正当性を高めたり、サプライチェーンに対する説得性を高めることができます。
2050年などに向けた長期目標に関して、「コミットメント(参加)」という意思表示はハードルが高いという場合には、「チャレンジ」や「ビジョン」という表現を用いている企業も多数あります。
脱炭素に取り組み、企業価値を向上させる一手として、申請を検討してみてはいかがでしょうか。

講師プロフィール

池原 庸介(いけはら ようすけ)氏
公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)
自然保護室 気候変動・エネルギーグループ プロジェクトリーダー

企業で環境関連業務に従事した後、英エディンバラ大学で気候変動科学の研究に従事。2008年より現職。SBT、企業の温暖化対策ランキングプロジェクトなどを通じ、主に気候変動分野における企業協働に取り組んでいる。グリーン電力証書制度運営委員。法政大学人間環境学部 非常勤講師。

執筆者プロフィール(執筆時点)

amita-nishijima.jpg西島 有紀(にしじま ゆき)
アミタホールディングス株式会社
経営戦略グループ 共感資本チーム

社会的事業や非営利団体を支援する(公財)信頼資本財団の事務局スタッフとして活動後、アミタに合流。現在は、持続可能社会への希望や共感といった無形の"想い"を、未来づくりの"資本"に変えていく共感資本チームにて、広報業務を担当。

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