SBTとは?概要や取得のメリット、設定要件を解説 | 企業のサステナビリティ経営・自治体の町づくりに役立つ情報が満載!

環境戦略・お役立ちサイト おしえて!アミタさん
お役立ち資料・セミナーアーカイブ
CSR・環境戦略の情報を情報をお届け!
  • トップページ
  • CSR・環境戦略 Q&A
  • セミナー
  • コラム
  • 担当者の声

Q&A

SBTとは?概要や取得のメリット、設定要件を解説

Image by Pexels from pixabay

Science Based Targets (以下、SBT)は、科学的な知見と整合する、企業の温室効果ガス削減目標のことです。本記事ではSBTのメリット、日本での取り組み状況についてご紹介します。

参考情報
サプライチェーン排出量(Scope1,2,3)については「サプライチェーン排出量とは何ですか?」をご覧ください。

SBTとは

SBTは温室効果ガスの増加による問題を解決するため、CDP、国連グローバル・コンパクト、世界資源研究所(WRI)、 世界自然保護基金(WWF)が設立した共同イニシアチブ(以下、SBTイニシアチブ)によって提唱されました。日本語では「科学的根拠に基づいた排出削減目標」と訳されます。環境省Webサイトによると、SBTは以下のように定義されます。

▼SBTとは

Science Based Targetsは、パリ協定(世界の気温上昇を産業革命前より2℃を十分に下回る水準(Well Below 2℃)に抑え、また1.5℃に抑えることを目指すもの)が求める水準と整合した、5年~15年先を目標年として企業が設定する、温室効果ガス排出削減目標のことです。

(出典:環境省

▼パリ協定が定める温室効果ガス排出の水準

画像1.png

(出典:環境省

なお、2019年4月に新しいルールが発表され、それまで認められてきた「世界の気温上昇を産業革命前より2℃程度に制限する水準」と整合する目標(2℃レベルの目標)は、2019年10月以降、認定の対象外となっています。また2025年から、企業は最初の目標承認日から5年ごとに目標を見直し、必要に応じて再検証することが義務付けられたことから、現在「2℃レベル」で目標設定済みの企業は「2℃を大幅に下回る(Well Below2℃)」または「1.5℃」レベルでの目標再設定が必須になります。

SBTとRE100の違い

SBTと併せて環境保護や地球温暖化対策を目的として構成されたものとしてRE100という国際イニシアティブがあります。それぞれの特長とSBTとの違いについてご説明します。

RE100とは事業で消費する電力を100%再生可能エネルギー由来のものに切り替えることを目指す企業によって構成される国際イニシアティブです。
SBTとRE100の違いは、SBTが企業全体の温室効果ガス排出量の削減を目指しているのに対し、RE100は再生可能エネルギーの導入推進を目標としている点です。また、RE100は電力に限定していますが、SBTはより高い削減目標を掲げ、電力を含むサプライチェーン全体の排出量に焦点を当てています。

▼関連記事

SBTの取得方法と認定要件

実際にSBT認定を受けるにはどのような手順を踏んでいく必要があるのでしょうか。SBTによると大きく分けると以下のような5つのステップがあります。

▼SBTの手順
画像2.png(出典:SBTよりアミタ作成)

まず、企業向けのSBTとしては「中小企業版SBT(SME Targets)」と「通常SBT(Near-term targets) 」2種類に分かれていますので、それぞれの認定要件を確認し自社が申請するSBTの種類を明確にしましょう。SBT認証の削減対象範囲としては、通常SBTの場合Scope1,2,3全てですが、中小企業版の場合はScope1,2のみが対象となっており、自社による排出量のみで取得可能となっているためSBT取得に対して多くのリソースをさけない中小企業でも取り組みやすい設計となっています。

▼中小企業向けSBTと通常のSBTの認定要件

中小企業向けSBT 通常のSBT
対象 以下を満たす企業
従業員500人未満・非子会社・独立系企業
※2023年12月時点
特になし
目標年 2030年 公式申請年から、
5年以上先、10年以内の任意年
基準年 2018年~2022年から選択 最新のデータが得られる年での設定を推奨
削減対象範囲 Scope1,2排出量 Scope1,2,3排出量
ただし、Scope3がScope1~3の合計の40%を超えない場合には、Scope3目標設定の必要はなし
目標レベル Scope1,2
1.5℃:少なくとも年4.2%削減
Scope3
算定・削減(特定の基準値はなし)
下記水準を超える削減目標を任意に設定
Scope1,2
1.5℃:少なくとも年4.2%削減
Scope3
Well below2℃:少なくとも年2.5%削減
費用 1回USD1,000(外税) 目標妥当性確認サービスは
USD9,500(外税)
(最大2回の目標評価を受けられる)
以降の目標再提出は、1回USD4,750(外税)

承認までの

プロセス

目標提出後、自動的に承認され、SBTi Webサイトに掲載 目標提出後、事務局による審査(最大30営業日)が行われる
事務局からの質問が行われる場合もある

(出典:環境省

また通常SBTと中小企業向けSBTでは申請方法が異なります。申請方法については以下のようになっています。

  • (通常SBT、任意)コミットメントレター申請方法
    コミットメントレターとは2年以内にSBT認定を取得する意思を表明するものです。提出は任意ですが、提出した場合SBT事務局、CDP、WMBのウェブサイトにて公表されます。
SBTサイトにアクセスする
申請書類をダウンロードし、必要事項を記入する
申請フォームに必要事項を記入の上、申請書類をアップロードして提出する
  • (中小企業向けSBT・通常SBT)SBTの申請方法
    次にSBT認定の申請手順です。
中小企業向けSBT 通常SBT

SBTサイトにアクセスする
申請フォームを開く
③ SBT事務局により承認される
④ 承認後メールで連絡がくる
⑤ 目標がSBT等のウェブサイトで公開
 される

SBTサイトにアクセスする
申請書類をダウンロードする
予約システムから事務局に申請書類を提出する
④ SBT事務局による目標の妥当性
 確認・回答(有料)がされる
⑤ 認定された場合は目標がSBT等
 のウェブサイトで公開される

通常SBTではSBT認定取得後、年1回の進捗報告と5年ごとの見直しが求められています。すなわち目標の再提出をする必要があるため、認定を取得したら終わりということではありません。目標に向けて継続的に取り組みをしていく必要があるため、SBT取得にむけた社内の体制づくりも重要な工程だといえるでしょう。

2024年1月からの中小企業向けSBT制度変更について

2024年1月から中小企業向けSBTの対象企業の条件と認証の手数料が変更される予定があります。ここではその変更内容について紹介していきます。

1.中小企業向けSBT、対象企業の定義の変更
現在は「従業員500人未満・非子会社・独立系企業」が対象となりますが、2024年1月からは以下の条件に該当する企業が対象となります。変更時期は間もなくですので、中小企業向けSBTを取得予定の企業は変更後の条件を踏まえた検討を行うように注意する必要があります。

▼中小企業向けSBT、対象企業の定義の変更点

【必須条件】
1.Scope1およびロケーション基準手法※でのScope2の合計排出量が10,000tCO2e未満である
2.海上輸送船を所有または管理していない
3.発電設備(再エネ発電設備以外)を所有または管理していない
4.金融機関または石油・ガス部門に分類されていない
5.通常版SBTを取得している企業の子会社ではない

【必須条件に加えて下記2つ以上に該当する】
1.従業員数が250人未満である
2.売上高が5,000万ユーロ未満(77億6000万円 2023/12/18時点)である
3.総資産が2,500万ユーロ未満(38億8000万円 2023/12/18時点)である
4.森林、土地、農業(FLAG:Forest, Land and Agriculture))部門に分類されていない

(出典:SBT

※ロケーション基準手法:特定の地域に対する平均的な電力排出係数に基づいてScope2に分類されるCo2排出量を算定する手法

2. 手数料の変更
中小企業向けのSBTについて認証の手数料が1,000ドルから1,250ドルに変更される予定です。

SBT認定のメリット

SBT認定を取得することで企業は以下の効果が期待されています。

▼SBT認定のメリット

① 環境問題に貢献することができる
SBTは、温室効果ガスの排出を科学的根拠に基づいて削減することを目指しています。これにより、温室効果ガスの排出を抑えることができ、気候変動や自然災害、生物の絶滅などの環境問題に対して大きな貢献をすることができます。

② CDP等外部評価の向上が期待できる
CDP(Carbon Disclosure Project)は、気候変動をはじめとした企業の環境への取り組みを投資家に情報提供するシステムを運営する国際的なNGOです。CDPは企業の気候変動対応や環境リスク管理を評価し、その結果を公表します。SBT認定を受けることで、企業はCDPなどの外部評価機関から高い評価を得ることが期待でき、投資家やステークホルダーに対して自社の環境への取り組みを示すことが可能です。これにより、企業の信頼性や企業価値が向上し、ESG投資の対象として選ばれる可能性が高まります。

③ 新しい技術や事業の推進などのイノベーションを後押しする
SBT認定を受けることで、企業は温室効果ガス削減のための新しい技術やビジネスモデルの導入を促進することができます。これにより、企業内でのイノベーションが活性化し、新たな技術の開発や事業の多角化が進むことが考えられます。具体的には、再生可能エネルギーの導入や効率的なエネルギー使用の推進などが考えられ、SBTで具体的な目標設定をすることが構想を形にするきっかけにもなり得るでしょう。

④ 化石燃料由来の資源価格の上昇が予測される中で、コストを節約し競争力を高める
再生可能エネルギーへの転換は、長期的に見て企業のコスト削減に寄与します。化石燃料などの限りある資源は、供給が追いつかなくなると価格が高騰するリスクがありますが、再生可能エネルギーは無限に利用可能であるため、価格の安定性が期待できます。これにより、企業はエネルギーコストを削減し、競争力を高めることができます。また、自社でエネルギーを賄うことができれば、外部依存を減らし、リスク管理の面でも有利になります。

⑤ ステークホルダーに対して企業の信頼と評判を築く
SBT認定を受けることで、企業はパリ協定に整合する目標に取り組む企業であることを示すことができます。これにより、顧客や投資家に対して企業の信頼性を高めることができます。特に、環境意識の高まりやESG投資の拡大が進む中で、温室効果ガスの排出削減に積極的に取り組む企業は社会からの信頼を得やすくなり、企業価値の向上が期待できます。また、持続可能な経営を行っていることで、企業のイメージアップにもつながります。

以上のように、SBT認定を受けることで企業は多方面にわたるメリットがあります。もちろん、SBTはステークホルダーへの対外的な評価を受けられるという側面もありますが、ビジネスを脱炭素型に移行させていくことを後押しするという面でも効果的でしょう。

▼関連記事

日本でのSBT取り組み状況

2015年、当初8社しかなかった認定企業は年々増加し続けており、SBTイニシアチブによれば、2023年3月1日時点で、世界で認定を受けている企業は2310社、日本で認定を受けている企業は369社となります。これらの企業は環境省から企業名とその目標が公開されています。

▼SBTの参加表明もしくは認定を受けている企業数
(2023年3月1日時点)

世界 日本

SBTへの参加を表明している企業数

2,304社 69社
SBTの認定を受けている企業数 2,310社 369社

(出典:環境省よりアミタ作成)

企業によるSBTの目標設定を推進し、目標設定した組織や企業のコラボレーションを促進する国際的なイニシアチブである、 SBTi(Science Based Targets initiative、以下SBTi)によると、2024年3月で日本のSBT認定取得企業数は1000社を超え、日本はイギリスに次いで2番目に参加企業数の多い国となっています。

▼関連記事

最後に

科学的な根拠に基づいた目標設定は、投資家などのステークホルダーの関心を高めるためにも重要です。削減目標を設定することで自社の取り組みを推進する大きなきっかけにもなることが考えられます。SBT認定の取得を目指すことは、自社のカーボンニュートラルに向けた取り組みを加速させるでしょう。

カーボンニュートラル推進支援

サーキュラー分野での事業経験を生かし、カーボンニュートラル目標を達成するため実行支援を実施しております。
脱炭素移行計画策定と企業評価の両軸支援するツール"ACT"を運用するCodo Advisory社と連携し、包括的な移行戦略の構想/構築/実行の支援体制を構築し、総合的なサービス提供いたします。
詳細はこちら

関連情報
  • アミタでは企業の循環型ビジネスモデルへの「移行」を支援するコンサルティングを提供しております。詳しくは下記よりお問い合わせください。

otoiawase_sustainable.png

執筆者情報(執筆時点)

梅木 菜々子
アミタ株式会社 
社会デザイングループ 共創デザインチーム

ESG経営に関する情報をお探しの方必見

お役立ち資料・セミナーアーカイブ一覧

お役立ち資料・セミナーアーカイブ一覧
  • なぜESG経営への移行が求められているの?
  • サーキュラーエコノミーの成功事例が知りたい
  • 脱炭素移行における戦略策定時のポイントは?
  • アミタのサービスを詳しく知りたい
そのようなお悩みありませんか?

アミタでは、上記のようなお悩みを解決するダウンロード
資料やセミナー動画をご用意しております。
是非、ご覧ください。

このページの上部へ