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CSR監査(サプライヤー監査)とは?ISO認証との違いを教えてください。

Image by Philip Neumann from Pixabay

サプライチェーンの管理状況を第三者が検証する「サプライヤー監査」が"新たな主流"となりつつあります。しかし、サプライヤー監査を実施する立場の方からも、監査を受ける立場の方からも、「具体的な方法やノウハウがわからない」、「ISO審査との違いは何か?」といったお声をよくお聞きします。そこで今回は、サプライヤー監査をテーマに解説いたします。

※本記事は、アミタ(株)主催セミナーにおけるDNV GL河村氏のご講演内容を元に執筆しています。

サプライチェーン管理とは?

「サプライヤー監査」がトレンドとなる背景には、サプライチェーン管理への関心の高まりがあります。サプライチェーン管理とは、自社の管理だけでなく、外部(取引先や委託業者)の事業運営に問題がないかを管理することを指します。例えば、調達する材料等の製造・生産元において、紛争関与・環境破壊・法令違反・人権侵害等の反社会的行為に繋がっていないかなど、ESGに関連するリスクがないかを確認することが挙げられます。取引の継続が社会的な倫理に反しないかを検証することが、実施の主な目的となります。

サプライチェーン管理が強化される背景
  1. 投資家意識の変化
    特にリーマンショック以降、投資における短期的な利益追求に批判が高まり、投資家に対して、「責任ある投資」が求められるようになりました。その結果、投資家は投資配分を慎重に検討するようになり、機関投資家によるPRI(社会的責任投資)、そしてESG投資に象徴されるように、投資先を選択する際の重要な判断材料として、企業の長期的な成長や潜在的なリスクにも、目が向けられるようになりました。
  2. 取引先の視点の変化
    取引先との関係において、従来は取引相手企業の財務健全性と短期的な安定性・成長性が重視されましたが、現在は、社会情勢の変化や気候変動等も加味した社会的な健全性が重視され、サプライチェーンの管理も求められるようになりつつあります 。これが企業の責任ある調達、すなわち「CSR調達」です。
  3. 世界の先進企業の意識の変化
    上記1.2.の流れを受けて、世界の先進企業の意識も変わりました。従来は取引先のQCD(品質、コスト、納期)が重視されていたのに対し、現在はそれらと同等、もしくはそれ以上に、取引先の商慣行や労働管理等の健全性が重視されるようになりました。

こうした流れを受け、「サプライヤーに関する監査」が、今、進められています。

CSR監査(サプライヤー監査)とは?従来のISO審査との違いは?

自社において「CSR調達が実施されていることを証明する手段」として、取引先のサプライヤーの業務実態を監査するのが「CSR監査(サプライヤー監査)」です。自社基準等を用いて、企業自らが行う第二者監査もありますが、第三者機関による監査の実施も広がっています。
従来の調達監査は主に「購入する物品やサービスの品質等が問題ないか」の確認が中心であり、取引先の組織における一般的なマネジメントの適正度は、業界規格やISO審査に頼るというのが一般的な考え方でした。しかし、現在のCSR監査では、主に「取引先の組織管理、労働状況や、環境や社会への配慮に問題がないか」の確認に重点が置かれます。自社の調達先において社会への悪影響が与えられていないか、労働者の安全や権利が守られているかを直接あるいは業界共通の枠組み等で確認することで、自社事業の信頼度を高めるというものです。

ISO審査(マネジメントシステム審査)との主な違いは、ISO審査が『企業が自主的にマネジメントシステムの認証を受けるために行うものであり、認証範囲、認証機関を自ら選べる。ISO審査においても規格のスコープ外には基本的に関知しない』というものであるのに対し、CSR監査は『外部の企業が取引条件として求めることも多く、より客観的で厳格な判断が下される傾向にある。対象組織範囲の安全衛生、労働者の権利、環境、ビジネス倫理を統合的に確認する』というものである点です。ISO認証は企業が健全であろうとすることを前提にしていますが、CSR監査はその健全さの状態までを確認し、問題がないかを検証します。

ISO審査とCSR監査の違い
ISO審査 CSR監査
審査・監査を求める主体
  • 企業がマネジメントシステムの認証を得るために自主的に行う。
  • 取引先が求めるなど、外部からの要請による場合が多い。
実施機関の選択
  • 被認証側の企業が自ら審査機関や認証範囲を選べる。
  • 被認証側の企業は監査機関や認証範囲を選べないことも多い。
審査・監査の対象
  • 規格のスコープ外は基本的に関知しない(例えば品質審査の場合、労働安全分野にはあまり立ち入らない。)
  • 対象組織範囲の安全衛生、労働者の権利、環境、ビジネス倫理を統合的に確認する。
  • 労働者(労働組合)インタビュー、賃金、労働時間 、組織の倫理規定など多岐にわたる。
審査・監査の範囲
  • 部署単位で審査を行う部分が多く、通常、派遣社員や委託業者、構内請負業者等は確認・インタビューの対象になることはない。職場・業務関連以外のエリアが確認されることも稀。
  • 部署単位で見ることは少なく、組織全体の傾向・ガバナンスを見ることが多い。
  • 食堂、寮や派遣/委託/構内請負業者等も確認・インタビュー等の対象となりうる。

こうしたCSR監査の代表的なものに、RBA(旧EICC:本部・米バージニア州)のVAP監査や、Sedex (本部・英ロンドン)のSMETA監査があります。
そこで特に重視されるのは労働者の処遇や安全衛生などです。また、監査員が選んだ労働者へのインタビューは個人や小グループに対して行われます。構内請負業者や委託・派遣社員等も監査では被雇用者と区別されません。食堂や寮なども確認対象です。監査の結果、NC(不適合事項)が確認されれば是正・改善が取引継続の条件になることもあり、一定の期限内の早急な是正・改善が求められます。

今後の社会・企業の方向性(まとめ)

ESG投資をはじめ、企業の社会責任の範囲は事業のサプライチェーンの隅々まで至り、監査によって顕在化もしくは潜在化している社会的なリスクの芽を取り除くことで事業の持続可能性を高めることが求められています。
監査実施にあたっては、すべての取引先を一度に対象にするのは難しい場合もあるでしょう。自社がサプライヤーに監査請求する場合、優先順位の付け方のポイントは、相手方に事業継続への問題や不祥事が発覚した時などを想定し、自社にとってリスクが高い取引先を選択することです。例えば「自社にとって、その会社の部品がないと事業への影響が大きい」という取引先は優先的な監査対象となりえます。その他、「実態を問わず、自社との繋がりが深いと想起される場合や子会社等である場合に、相手方に問題が発覚した際に自社の評判にも影響する」ということもあります。関連企業における違法な児童労働や強制労働など、いわゆる「最優先不適合」が発覚した場合のペナルティとしては、即時の取引停止もありえます。東南アジアや中国では労働環境を巡っての不適合で、取引先からの一発取引停止の措置も発生しています。

こうしたCSR監査の時代を迎えるにあたって、サプライヤー企業のCSR管理のポイントは以下の通りになると思います。

  • 自社の組織・事業マネジメント管理の徹底
    (取引先・社会を含めた企業責任の履行により、真のCSRを実現すること。)
  • 持続可能性、長期的な事業継続を踏まえた調達の実施
    (SDGs(2030年目標)をはじめ、将来の社会的な視点を明確にもつこと。)
  • マネジメントシステムのみでなく、労働者配慮のガバナンスや倫理遵守も必要
  • 投資家や社会との相互関係や相手に与える影響についての考慮を深掘りすること。
  • リスクに基づくアプローチ
    (不祥事や突発的事象へのリスク低減策は取られているかを検証すること。)

★アミタ編集部より
いかがでしたでしょうか。グローバル社会では、いつ海外の大口顧客から容赦のないCSR監査が請求されても不思議ではありません。監査を拒否すれば取引にも影響するでしょうし、監査の結果次第では即刻取引停止という事態も起こりえます。特に、製造業のCSR担当者は、ある日突然CSR監査を請求されても慌てふためくことのないように、自社マネジメントの管理をしっかりすすめておきましょう。

講師プロフィール

河村 渉(かわむら わたる)氏
DNV GL ビジネス・アシュアランス・ジャパン株式会社 
リスクマネジメントグループ アセッサー

情報通信機器製造業にて生産・調達関連業務に従事した後、豪グリフィス大学にて環境学(経済、温暖化緩和・適応策)を学ぶ。帰国後、東京都の温室効果ガス(GHG)削減・排出量取引制度の事務局業務を経て、外資系審査機関におけるGHG第三者検証業務やISO審査業務に従事。2018年よりDNV GLに入社、サプライヤー監査、グリーンボンド、CDP質問書を含む、日本の大手企業の環境・CSR・温暖化対応に関する業務を実施している。

執筆者プロフィール

本多 清(ほんだ きよし)
アミタ株式会社
環境戦略デザイングループ 環境戦略デザインチーム

環境ジャーナリスト(ペンネーム/多田実)を経て現職。自然再生事業、農林水産業の持続的展開、野生動物の保全等を専門とする。外来生物法の施行検討作業への参画や、CSR活動支援、生物多様性保全型農業、稀少生物の保全に関する調査・技術支援・コンサルティング等の実績を持つ。著書に『境界線上の動物たち』(小学館)、『魔法じゃないよ、アサザだよ』(合同出版)、『四万十川・歩いて下る』(築地書館)など。

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