半径5mからの社会変革【第4回】「37.5℃の涙」の実際に迫る! 共働きの子育て事情 | 企業のサステナビリティ経営・自治体の町づくりに役立つ情報が満載

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コラム

半径5mからの社会変革【第4回】「37.5℃の涙」の実際に迫る! 共働きの子育て事情半径5mからの社会変革

florence4-top.png夏のドラマが口火を切る中、7月9日の木曜9時、TBSテレビではひそかにテレビ史上稀有な連続ドラマがスタートしました。その名も『37.5℃の涙』。子どもを保育園に預けて働く親にとって「37.5℃」は馴染みのある数字。子どもが保育園で預かってもらえない、何度もぶつかる「ピンチ」です。このドラマは、そんな病気の時の子どもを預かる病児保育士・桃子を主人公に、さまざまな事情を抱えたワーキングマザー、子育て家庭が登場し、親子を軸にストーリーが展開していきます。主人公は病児保育士ではありますが、いわば日本初の「ワーキングマザードラマ」(または「共働き家庭ドラマ」?)なのです。

こんなテーマが夜9時のドラマで選ばれる時代がくるとは!とうれしくなる一方で、気になるのが共働き家庭の実際のところ。37.5℃の涙は誰の涙なのか!? 最新の調査結果をもとに、共働き子育て家庭の実状に迫ってみます。

【半径5mからの社会変革】全6回はこちら

病児保育はワーキングマザーまかせ?「子どもの病気」母親の負担は父親の9倍!

florence4-001.png子どもの体温が微熱(37.5℃)のボーダーラインを越えると、保育園は子供を預かってくれません。預けた後に発熱してしまったら、親はたとえ仕事中でももちろん子どもを迎えに行かなくてはなりません。

一般財団法人日本病児保育協会では2015年5月~6月、未就学児を持つ全国の共働きの父親・母親計600人(父親と母親で各300人)を対象に、子どもが病気で保育園を休まざるを得ない日にどのように対応しているのかについてアンケート調査を実施しました。

調査結果を見ると、対応として最も多いのが「母親が仕事を休む」(63%)でした。対して、父親が仕事を休む割合は僅か7.8%と、働く母親に負担が偏り、この差はなんと9倍にもなっています。
病気の子どもに対して父親の関与が相対的に高い場面は、「土曜日にかかりつけ医など医療機関の受診に子どもを連れていく」(24%)ことでした。しかしながら父親が病気になった子どもに関わるのは土曜日など休日が中心となっていることがうかがえ、「急な体調不良時に子どもを保育所や幼稚園に迎えにいく」、「平日にかかりつけ医など医療機関の受診に子どもを連れていく」といった、平日・仕事中の急な調整ごと・予定変更に父親が対応しているケースは更に少ない(約1割)状況でした。

その状況をあらわすように、子どもが病気になった場合の父親と母親の負担感を合計100%になるよう数値で応える設問では、半数を超える母親が「自分の負担が90%以上である」(父親の負担は10%以下)と回答しました。中には母親の負担が100%のフル負担(父親の負担は0%)という回答も2割いました。

一方で同じデータを父親からみると、父親の負担は20%台(母親の負担が80%台)という回答が最も多く、父親の負担が0%(母親の負担が100%)という回答はわずか5%。

共働き家庭のお父さんには少々耳が痛い話でしょうか...、これを読んでくださっている方々の中にもワーキングファーザーの方々がいらっしゃるかと思います。みなさんのご家庭ではどうでしょう?

母親の職場での気苦労、10年前からほぼ変わらず。

florence4-002.pngまた、心理的な負担について調査するための設問では、「仕事を休むと職場に迷惑をかけると感じる」と回答した母親は68%でした(父親は43%)。注目すべきは10年前との調査データとの比較です。母親の68%というスコアは、2002年に実施されたワーキングマザーに関する調査(調査実施:マクロミル)における「子どもの病気で遅刻や欠勤をすることがあり、周囲に迷惑をかけてしまう」(72%)とほとんど変わらない水準でした。10年以上経過した現在も、母親にとって『子どもの病気』は依然として子育と仕事の両立する上で大きな悩みであり、その状況はあまり前進していないとも言える状況であることが垣間見えました。

※参考資料
 一般社団法人日本病児保育協会「急な子どもの病気について、共働きの父親・母親を対象としたアンケート調査」(http://sickchild-care.jp/press/8924/)

共働き時代の"共育て"のために、企業の「社員の両立支援」ができること

florence4-003.jpgここまで見てきたデータから、病児保育が必要なシーンにおいて、悩むのも影響を受けるのもほぼ母親となっている現状があります。共働き夫婦は2人で働いて、2人で育てているのですから、父親も関係あるはず。 "共働き時代"には、"共育て"しないと立ち行かず、どちらかに負担がかかりすぎることで体力的にも精神的にもつぶれてしまいます。

私はこの課題に対して、企業の側から舵をきることも有効なのではと感じています。
時々、企業の人事や経営企画室などのご担当者から、社員向けの子育て支援制度についての相談を受けることがありますが、その多くの方々が当たり前に「女性社員」を想定して話をされます。もちろん、女性の離職が多く子育て中の女性社員がほとんどいないという状況を改善したい、まず女性が仕事を続けられる職場を創っていくことが先決と考え、まずは母親を対象とした育児支援を整備することはまっとうな判断であり、素晴らしいことです。

しかしぜひその策を実施する時には、支援策の対象を「ワーキングマザー」だけでなく「ワーキングファーザー」を含め、社内へのアナウンス時にも男性が対象となっていることをアピールし、利用を促進してみることをお勧めします。私たちの職場でも、男性社員が時短勤務で日々子どものお迎えをしていたり、子どもの病気の看病で休んだり、ということが多々あります。残念ながらまだまだ日本全体では少数派ですが、もっともっとたくさんの職場で、子育て中の男性が保育園からの呼び出しのお迎えで早退したり、子どもの看病で休んだりすることがごく普通のことになったとしたら- 
結果として母親の負担は軽減され、それこそ一番の女性支援、女性活躍の起爆剤となるはずです。

子育て支援とは、母親支援ではなく、夫婦双方が子育てに関わることを支援をすること。企業がそういうトレンドを牽引し、ぜひ母親の「37.5℃の涙」ではなく、共働き・共育て実践夫婦を増やしていってくださることを願っています。ドラマもぜひぜひ見てください!

写真:病児保育の朝の引継ぎ。お父さんが担当されることも増えています。

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プロフィール

florence_fujita.jpg藤田 順子(ふじた じゅんこ)氏
認定NPO法人フローレンス
経営企画室 マネージャー

前職では広告会社で商業施設や大手通信会社のマーケティングに携わる。在職中、実母の看病で介護休職した経験をきっかけに、介護や子育てなど「家族のケア」を抱えるライフステージにある人が、仕事を辞めることなく家族や生活を大切にできる日本社会にしたいと課題意識を持つようになる。
2010年、子育てと仕事の両立をはばむ社会課題の解決を軸に事業展開するNPO法人フローレンスに参画。ひとり親家庭の支援、被災地の子どもの学習支援などの活動に携わり、応援してくれる人を活動に巻き込むソーシャルプロモーションに取り組んでいる。

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