コラム
マニフェストを学ぶ|廃棄物管理新任担当者として、覚えておくべきことはどんなものがありますか?(その3)
廃棄物管理の基礎を学ぶ
(※ 本記事は2011年11月の記事をもとに、2015年4月1日現在のものに更新しています。)
産業廃棄物を引き渡す際は、廃棄物管理票(マニフェスト)を交付する必要があります。今回はマニフェストについてお話します。
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マニフェストを運用する目的は?
マニフェスト(産業廃棄物管理票)は、廃棄物の種類や数量、運搬先、処分先などの適正処理に必要な情報を記載して、廃棄物を引き渡す際に収集運搬業者に交付します。よく宅急便の伝票に例えられますが、宅急便の伝票がどこ(誰)からどこ(誰)へ品物を運ぶのか記載していれば良いのに対して、マニフェストは、どのような廃棄物がどこから排出され、誰が運搬して、どの処理会社で処分が行なわれるのか、法律で定められた事項を記載しなければなりません。
また、宅急便の伝票は運送会社が品物の送り先や到着日時を間違えないために運用されていますが、マニフェストは排出事業者が自社の廃棄物が適正に処理されているのか確認するために運用します。
つまり、マニフェストを運用する義務は排出事業者にあるのです。
マニフェストの法定記載事項や交付してから返送されるまでの流れについては、「マニフェストの流れと、法定記載事項について教えてください」をご覧下さい。
マニフェストの管理で注意すべきこと
先ほどマニフェストを運用する義務は排出事業者にあると書きましたが、マニフェストを運用する際に必要な業務は次の4つになります。
廃棄物管理の現場では、必要事項を印字したマニフェストを収集運搬業者が持って来て、排出事業者は署名と捺印を行うだけという場合も多くあります。このような場合でも、マニフェストを交付する義務は排出事業者にあるということを念頭において、収集運搬業者が記載した内容に漏れや間違いがないか、処理委託契約書の内容と相違ないかなどを確認してから、サインをするようにして下さい。
マニフェスト 運用義務 |
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法律で定められた事項を全て記載して交付すること |
返送されたマニフェストの記載内容を確認すること |
交付したマニフェストの控えと返送されたマニフェストは5年間保存すること |
マニフェストの返送期間や記載内容に不備があった場合は行政に報告すること |
マニフェストは、収集運搬・中間処理・最終処分と、それぞれの処理工程が完了した時点で、処理を委託した事業者から返送される仕組みになっています。マニフェストを交付してから返送されるまでの期間も収集運搬と中間処理では90日、最終処分については180日と定められており、期間内にマニフェストが返送されるよう管理しなければなりません。
ややもすると、マニフェストは期間内に返送されていれば良いと思われがちですが、返送されたマニフェストに記載漏れが無いかや、記載されている中間処理業者や最終処分業者が処理委託契約書で定められた業者であるかも、確認する必要があります。
実際にマニフェストの返送期限が過ぎてしまった場合や返送されたマニフェストに記載漏れがあった場合には、委託した廃棄物の処理の状況を収集運搬会社や中間処理会社に確認して、必要な措置を講じた上で、行政に報告しなければなりません。
マニフェストの交付状況を報告
マニフェストの交付と返送管理の他に、排出事業者は、毎年6月30日までに前年度(4月1日~3月31日)のマニフェスト交付状況を取りまとめて行政に報告する必要があります。
マニフェストを交付した事業場ごとに、都道府県等に報告しなければならないため、報告していない事業場がないよう注意が必要です。
報告対象 | 排出事業者が事業場ごとに報告 |
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報告内容 | 排出事業場の名称・住所・電話番号・業種 産業廃棄物の種類・数量・マニフェスト交付枚数 運搬受託者の名称・住所・許可番号 処分委託先の名称・住所・許可番号 |
報告日 (対象期間) |
毎年6月30日まで(前年度の交付状況) |
報告方法 | 排出事業場のある都道府県等に法律で定められた様式の報告書を提出 |
2020年5月追記:提出期限が10月31日に変更新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、2020年5月15日に廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則の特例を定める省令が公布されました。
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電子マニフェストとは
マニフェストには、これまで説明してきたように紙の伝票で運用する方法(紙マニフェスト)と、情報システムを通じて運用する方法(電子マニフェスト)があります。紙マニフェストの運用が基本になって、それをオンラインシステムとして利用できるようにしたものが電子マニフェストです。
電子マニフェストの場合は、法律で定められた事項を全て入力しなければ交付できないことや、返送期限が近づくと自動的にアラームが出ること、交付等状況報告書の作成が不要なことなどの情報システムならではのメリットがあります。
一方で、電子マニフェストシステムを利用するには、利用料がかかることや、排出事業者・収集運搬会社・処理会社の三者が電子マニフェストシステムに加入していないと利用できないなどの制約があります。詳しくは、「電子マニフェストは、実際のところ具体的にどのようなメリットがあるのでしょう?」をご覧下さい。
現在は、電子マニフェストの利用率は35%程度といわれています。普及も進んできており、紙マニフェストから電子マニフェストへの切り替えの時期や方法を検討されても良いかも知れません。
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