カレーハウスCoCo壱番屋|創業者 宗次德二氏 シリーズ「経営者が語る創業イノベーション」インタビュー(第三回) | 企業のサステナビリティ経営・自治体の町づくりに役立つ情報が満載

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コラム

カレーハウスCoCo壱番屋|創業者 宗次德二氏 シリーズ「経営者が語る創業イノベーション」インタビュー(第三回)経営者が語る創業イノベーション

cocoichi_header.jpg創業者は、社会の課題解決のため、また、人々のより豊かな幸せを願って起業しました。その後、今日までその企業が存続・発展しているとすれば、それは、不易流行を考え抜きながら、今日よく言われるイノベーションの実践の積み重ねがあったからこそ、と考えます。

昨今、社会構造は複雑化し、人々の価値観が変化するなか、20世紀型資本主義の在りようでは、今後、社会が持続的に発展することは困難であると多くの人が思い始めています。企業が、今後の人々の幸せや豊かさのために何ができるか、を考える時、いまいちど創業の精神に立ち返ることで、進むべき指針が見えてくるのでは、と考えました。

社会課題にチャレンジしておられる企業経営者の方々に、創業の精神に立ち返りつつ、経営者としての生きざまと思想に触れながらお話を伺い、これからの社会における企業の使命と可能性について考える場にしていただければ幸いです。

(公益社団法人日本フィランソロピー協会理事長 高橋陽子)

カレーハウスCoCo壱番屋「経営者が語る創業イノベーション」インタビュー
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ビーフカツ横流し事件への迅速な対応

高橋:宗次さんがお客さまへのまごころと感謝の気持ちを貫いていらして、そのことに結びつくのかなと思うんですが、今年の1月のビーフカツの横流し事件に対する「株式会社壱番屋」の対応は、素晴らしかったと思います。

cocoichi_3-001.JPG宗次氏:対応そのものは早かったですね。パートさんが自分の生活圏のスーパーで、売っていないはずのビーフカツを見つけたあとですね。それと、洗浄作業で器具に欠けた部分を見つけたときに、万が一商品に紛れ込んでいると大変だと、その日のうちに全品廃棄を決めたことの対応もよかった。ただ、県から紹介を受けた産廃業者さんを、安心して頭から信頼してしまった。処理したと書面にはあったけれど、実際そうではなかった。そのことに対して、そこまで見届ける義務がないわけじゃないですよね。

画像説明:宗次氏は、コンサートのときには、必ずお客さまのお迎えとお見送りを欠かさない。取材の日は、雨が降っていた。

高橋:そこで再発防止にも、すぐに対応なさいましたね。

宗次氏:教訓にして、箱を崩して再利用されないようにしましたけど。ほかのメーカーさんも、そうですよね。それと、ロスの問題も浮彫になりましたね。日本中でそんなに廃棄されているのかと、びっくりしました。

信用金庫に借りた100万からの寄付

高橋:こうした対応に、宗次さんの精神がしっかりと継承されていると感じます。
もうひとつ、びっくりしたことがあるんですが、四店目を出される時に、借りたお金を寄付なさったとか。

cocoichi_3-002.JPG宗次氏:ええ、そうなんですよ。ふたつの喫茶店を処分して、四番目の店に移った年の昭和54年の12月でした。そのときの支払いが、給料を含めて70万円不足していたので、尾西市(いまの一宮市)の尾西信用金庫さんへ行って、100万円を貸してくださいとお願いしました。借りたお金は、そのうちの10万円を、尾西市の社会福祉協議会さんに寄付して、もう10万円を、一号店のある所の社会福祉協議会さんに寄付しました。本当はこうした寄付は望ましくはありませんがね。それでも、しないではいられなかった。残った10万円で新年を迎えることにして、70万円は、給料袋に詰めて皆さんに渡したんです。

画像説明:名古屋、栄の駅から宗次ホールのあるところまで、季節によって花は異なるが、黄色の鉢植えが置かれている。水をやるのは、宗次氏の日課だ。

高橋:自分のところでさえお金が足りないときに、寄付をするというのは、なかなかできませんね。信金の人には寄付すると伝えたんですか?

宗次氏:いいえ、しなかったですね。あとで人伝に聞きましたが、尾西信金の人は悔しがっていたそうです。取引は、あのとき一回だけでしたから。こんなふうになるとは、思えなかったのでしょうね。自身でさえそうですから(笑)

高橋:社会福祉協議会さんに寄付なさる、その思いは、どんなものだったのでしょうか?

宗次氏:夫婦が共に健康で商売させていただける、只々「感謝」です。その気持ちは、年末になると必ず蘇ります。人のためにといっても、ない袖は振れませんけれど、できるなら、だんだん増やしていけます。花を育てたり、早起きしたりすることもおなじですよね。いいことは広がっていきます。

匿名から、寄付を啓蒙する呼び水になろう

cocoichi_3-003.JPG高橋:寄付は、社会に対する「感謝」の気持ちなんですね。そのことは、会社の皆さんもご存知でしたか?

宗次氏:「ココイチ」を引退するまで、寄付は匿名でした。人知れずやっていましたから、社員に呼びかけた記憶もあまりないですね。ただ、大災害は別で、全社をあげてやったりしましたけど。

画像説明:キッチンには、スタッフの募金箱が置いてあり、ゆとり1%、ラッキー20%と書かれていた。

高橋:社員さんも、そういうときは自発的になりましたか?

宗次氏:なかなか難しいですね。でも、わたしが「さあやろう」といえば、本当の気持ちはわからないけれど、やってくれる。どうして協力してくれないのかと、イライラすることもありましたけれど、そういうものだと思って腹を立てないことです。掃除でもなんでも、自分がやり続ける。それほど大変で貴重なことをやっている。その気持ちがパワーになって「わたしはやるぞ!」と、返って元気になりますよ。

高橋:そうだったんですね。いまでは、株式会社壱番屋さんは、さまざまな社会貢献活動や寄付をなさっています。児童養護施設や授産施設への給食サービスや、バザー会場や被災地などへの移動販売車でのカレー提供、フードバンクへの食材提供などをなさっています。寄付については、前年度利益の1%程度を目処に、予算として策定していらっしゃいます。

宗次氏:わたしは、「1パーセントチャリティ運動」を提唱していて、経営者なら報酬の1%、法人なら利益の1%の寄付を奨励しているんです。いまのこの宗次ホールの事務所でも、キッチンにそれぞれの募金箱を置いていますよ。

※「株式会社ライトアップ」:ホール内にある宗次徳二氏の個人事務所。宗次氏のさまざまな活動の窓口として2012年に設立。社名のライトアップには、人生が右肩あがりになり、その結果、誰にも自分自身に光が当たるようにとの、ふたつの意味が込められている。

高橋:経営者時代には匿名で寄付を続けていらして、「ココイチ」を引退なさったのを機に、「わたしはやるぞ!」の気持ちで、社会貢献活動をはじめられたんですね。

宗次氏:皆さんもやりましょう。という気持ちでね。困っている人が、ほんとに多いんです。それなのに、支え合い助け合いに関心のある人が少ないんです。引退したときに、自分で稼いだお金をなぜ寄付するのかとか、ホームレスさんは自業自得じゃないですか、放っておきなさいと叱られることすらありました。そんなことがあったので、引退直後から寄付での匿名はやめました。それどころか、こんなことをしていると伝えて、なにもしないのは恥ずかしいですよと、むしろ呼び水になるよう啓蒙しようと思ったんです。

(つづく)

話し手プロフィール

mr.munetsugu_pro.jpg宗次 德ニ(むねつぐ とくじ)氏
カレーハウスCoCo壱番屋
創業者

1948年(昭和23年)10月14日 生(出身地 石川県)
1967年(昭和42年)3月 愛知県立小牧高等学校 卒業
1967年(昭和42年)4月 八(や)洲(しま)開発 株式会社 入社
1970年(昭和45年)2月 大和ハウス工業 株式会社 入社
1973年(昭和48年)10月 不動産業 岩倉沿線土地 開業
1974年(昭和49年)10月 喫茶店 バッカス 開業
1978年(昭和53年)1月 カレーハウスCoCo壱番屋創業
1982年(昭和57年)7月 株式会社壱番屋設立 代表取締役社長 就任
1998年(平成10年)6月 株式会社壱番屋 代表取締役会長 就任
2002年(平成14年)6月 株式会社壱番屋 創業者特別顧問 就任
※肩書  カレーハウスCoCo壱番屋 創業者

その他経歴
2003年(平成15年)1月 NPO法人 イエロー・エンジェル設立 理事長就任
2007年(平成19年)3月 クラシック専用「宗次ホール」オープン 代表就任
2012年(平成24年)4月 株式会社 ライトアップ(※講演依頼窓口)設立 代表就任
2013年(平成25年)7月 NPO法人 クラシック・ファン・クラブ設立 理事長就任
      
■ 著書 
「宗次流日めくり 達人シリーズ 日々のことば」2009.11
「日本一の変人経営者」(ダイヤモンド社)  2009.11
「CoCo壱番屋 答えはすべてお客様の声にあり」(日経ビジネス人文庫)
「夢を持つな! 目標を持て!」(商業界) 2010.11

■ 表彰
アントレプレナー大賞部門
中部ニュービジネス協議会会長賞 受賞 1994年11月
2004年 第6回企業家賞 受賞 2004年6月
まちかどのフィランソロピスト賞 受賞 2007年11月
名古屋市芸術奨励賞 受賞 2012年1月
(http://www.munetsugu.jp)

聞き手プロフィール

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高橋 陽子 (たかはし ようこ)
公益社団法人日本フィランソロピー協会
理事長

岡山県生まれ。1973年津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業。高等学校英語講師を経て、上智大学カウンセリング研究所専門カウンセラー養成課程修了、専門カウンセラーの認定を受ける。その後、心理カウンセラーとして生徒・教師・父母のカウンセリングに従事する。1991年より社団法人日本フィランソロピー協会に入職。事務局長・常務理事を経て、2001年6月より理事長。主に、企業の社会貢献を中心としたCSRの推進に従事。NPOや行政との協働事業の提案や、各セクター間の橋渡しをおこない、「民間の果たす公益」の促進に寄与することを目指している。

主な編・著書

  • 『フィランソロピー入門』(海南書房)(1997年)
  • 『60歳からのいきいきボランティア入門』(日本加除出版)(1999年)
  • 『社会貢献へようこそ』(求龍堂)(2005年)
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