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産業廃棄物管理票交付等状況報告書を提出しなかった場合、罰則はありますか。また行政はどのように改善命令や措置命令を出すのでしょうか?BUNさんの「元・行政担当者が語る 廃棄物管理のイロハ」

by_kev-shine_is_licensed_under.jpg万が一、産業廃棄物管理票交付等状況報告書(以下、交付等状況報告書)の提出を怠ると、どうなるのでしょうか。答えづらい質問ですが、私の個人的な見解は以下の通りです。これまでに、交付等状況報告書未提出で勧告、命令を受けた事案は私が知る限りありませんし、今後も、行政の催促が一度もなく、いきなり未提出を理由としての罰則、勧告、公表、命令を受けることは無いと思います。では、怠ってよいかと言われるとそうではありません。法律で義務付けられていることには変わりなく、適切な運用は排出事業者の身を守ることにもつながります。以下、詳しく解説します。

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参考情報
交付等状況報告書の記入方法やよくある疑問点に関しては「産業廃棄物管理票交付等状況報告書の記入方法と注意点」をご覧ください。

廃棄物処理法の条文

関連する廃棄物処理法の条文は次のとおりです。

(産業廃棄物管理票)
法律 第十二条の三
7 管理票交付者は、環境省令で定めるところにより、当該管理票に関する報告書を作成し、これを都道府県知事に提出しなければならない。

(管理票交付者の報告書)
省令 第八条の二十七 法第十二条の三第七項の規定による管理票に関する報告書は、産業廃棄物を排出する事業場(中略)ごとに、毎年六月三十日までに、その年の三月三十一日以前の一年間において交付した管理票の交付等の状況に関し、様式第三号により作成し、当該事業場の所在地を管轄する都道府県知事に提出するものとする。

(勧告及び命令)
法律 第十二条の六
都道府県知事は、第十二条の三第一項に規定する事業者、運搬受託者又は処分受託者(以下この条において「事業者等」という。)が第十二条の三第一項から第十項まで、第十二条の四第二項から第四項まで又は前条第一項から第三項まで、第五項、第六項及び第十項の規定を遵守していないと認めるときは、これらの者に対し、産業廃棄物の適正な処理に関し必要な措置を講ずべき旨の勧告をすることができる。
2  都道府県知事は、前項に規定する勧告を受けた事業者等がその勧告に従わなかつたときは、その旨を公表することができる。
3  都道府県知事は、第一項に規定する勧告を受けた事業者等が、前項の規定によりその勧告に従わなかつた旨を公表された後において、なお、正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかつたときは、当該事業者等に対し、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。

行政は実際、どこまで確認しているのか

交付等状況報告提出の義務者とは、マニフェストを交付した人、つまり、産業廃棄物の排出者であり処理会社に委託した人です。しかし、誰が産業廃棄物を委託したか、マニフェストを交付したかは排出事業者に「聞いてみないとわからない」状況なんです。誰が産業廃棄物の排出者なのか?管内に所在している事業所、一軒、一軒に「あなたは昨年、産業廃棄物の処理を委託しましたか?」と毎年聞いて廻るわけにもいかないでしょう。

これが処理会社であったり、処理施設設置者であれば、行政も自分で許可を出している訳ですし、台帳も整備していますから、実体の把握や催促することもできるでしょうが、現状は排出事業者の自主的な報告に頼らざるを得ません。

また、行政によっても管理のレベルは様々なようです。ある政令指定都市では全てパソコンに入力し、活用していると聞きますが、書類をチェックしたり、未提出者に催促したりと言うことまでは手が回らないという自治体もあるようです。

ただ、私の経験から言いますと、実際に不適正事案になった関連の報告書や、「怪しい」と推察される報告書は徹底的にチェックします。もう何年も前になりますが、北関東のT県とその政令市であるU市で、次のようなことがあったようです。

最初T県に提出された交付等状況報告書が、管轄が違うとしてU市に転送された。U市の担当者がチェックしたところ、記載してある処理会社はU市の許可は有しておらず、追跡調査の結果、なんと偽装許可証が使用されていたことが判明した。

このように、報告書の内容をきっかけに排出事業者責任が問われることもあるのです。

また、不法投棄などがあれば、交付等状況報告書やマニフェストは徹底的に調査されます。それはなぜかと言うと、マニフェストに関する違反は法律第19条の5の措置命令の対象になるからです。不法投棄が発生した場合、現状回復には費用がかかります。これを誰が持つかということですが、行政は自ずと、不法投棄とは無関係な人のお金である「税金」を使うことになる「代執行」は極力やりたくないと考えます。そのためどうしても、当事者である投棄者はもちろんのこと、その人物に委託した人物、つまり排出事業者に、必要経費を負担してもらうよう頑張ります。だから、そういったケースでは、マニフェスト違反を徹底的に調べることが多いのです。

では、交付等状況報告書なんて提出しない方が得じゃないかと思われるかもしれませんが、交付等状況報告書を提出していなければ、それは勧告や公表、命令の対象にできる、と繋がる訳ですね。

交付等状況報告書の実態

BUNさんは交付等状況報告書は、「スピード違反」と似ているなと感じています。「スピード違反したときに警察に捕まりますか?」みたいなものなんです。スピード違反が車を運転する人全てに適用になり、見つかれば、当然罰則の対象になる。では、世の中のスピード違反をしている運転手を警察は全て検挙しているかというと、決してそうではない。そうではないが、ちょうど検問をやっている時にスピード違反をすれば、そりゃ捕まりますよ。でも、この時捕まった人は必ずこう言うんですね。「なぜ、オレばっかり捕まるのか。不公平ではないか。オレを捕まえるのなら、世の中の全てのスピード違反を捕まえろ」と。冷静に現実的に考えれば、それは無理なことだとわかりますよね。

実は、この制度がスタートしたとき、BUNさんはまだ現役の行政マンだったのですが、霞ヶ関に異議を唱えました。「こんな正直者が馬鹿を見るような制度は撤回すべきだ」と。

当時は、まだそれほどパソコンが普及しておらず、膨大なデータの統計や紐付けをするのは大変な時代だったのです。この不平不満を申し立てたのはBUNさんだけではなく、多くの自治体から霞ヶ関へ申し入れがなされ、そのため一旦廃棄物処理法で決めた制度だったのですが、平成12年省令附則で「凍結」した経緯があるのです。

まぁ、「ほとぼりが冷めた」と言ってはなんですが、パソコンも急速に世の中に普及したせいもあるかと思いますが、平成20年に「凍結」を解除し現在に至っています。

さいごに

以上のように、なにかと不公平感は残る制度ではありますが、制度の趣旨どおりに、排出事業者(マニフェスト交付者)が、年に一回、自分が委託した産業廃棄物について、整理しておくのは必要なことだと思います。万一、処理会社側の不適正な兆候が見られたら、大規模な事件になる前に未然に防ぐことができるはずですし、自分が措置命令の対象になるリスクはずっと減ります。

また、現実には、良しに付け悪しきに付け、処理会社がお客様(自分への委託者)の報告書を作成してやり、それを排出者にお渡しし、排出事業者の印鑑を押して(様式では必ずしも印鑑を押す必要はありませんが)、排出事業者が交付等状況報告書を提出した、としているのが圧倒的に多いような気がします。本来であれば、処理会社はそんなお節介なことはせずに、「自分のことは自分でしなさい」と排出事業者にお伝えすればいいのでしょうが、やはり相手は「お客様」です。実体的に、処理会社側が段取りしてあげて、排出事業者に提供している例も多いのではないでしょうか。

不法投棄のリスク回避なども含めて、交付等状況報告書も書かれる方は、処理会社任せにせずに、是非、ご自分で作成し提出するようお願いします。

ちなみにこの交付等状況報告書は、電子マニフェストを使用しているケースでは不要になります。全ての委託処理に電子マニフェストを使用している事業所は、この手間はなくなりますので、電子マニフェストへの切り替えを検討されてみてはいかがでしょうか。

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執筆者プロフィール(執筆時点)

長岡 文明 (ながおか ふみあき)
アミタ株式会社 特別顧問

山形県にて廃棄物処理法、廃棄物行政、処理業者への指導に長年携わり、行政内での研修講師も務める。2009年3月末で山形県を早期退職し、廃棄物処理法の啓蒙活動を行う。廃棄物行政の世界ではBUNさんの愛称で親しまれ、著書多数。元・文化環境部循環型社会推進課課長補佐(廃棄物対策担当)。

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