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2023年、現地確認の義務化自治体とその実施方法に関する自治体見解、最新動向!

排出事業者が、自社の産業廃棄物の処理委託先を訪問し、適正な処理が行われているかどうかを確認する「現地確認(実地確認と呼ばれるケースもあり)」。
廃棄物処理法では、廃棄物の処理の状況に関する確認は努力義務とされており、実施が義務付けられているわけではありませんが、自治体によっては、条例や要綱の中で「実地での確認」を義務付けている場合があります。
しかし、新型コロナウイルス感染症の影響や業務のICT化によって「ビデオ通話システムを利用した遠隔での現地確認」が認められるケースもあります。本記事では、自治体ごとの現地確認に関する動向、見解をご紹介します。

参考情報
現地確認のポイントに関しては「処理先の現地確認を学ぶ|廃棄物管理新任担当者として、覚えておくべきことはどんなものがありますか?」をご覧ください。

まずはおさらい!現地確認(実地確認)と法規制

現地確認に関する廃棄物処理法での規定は、下記の通りとなります。
法規制:産業廃棄物の処理を委託する場合の処理の状況に関する確認(努力義務)

廃棄物処理法第 12 条第 7 項
事業者は、前二項の規定によりその産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、当該産業廃棄物の処理の状況に関する確認を行い、当該産業廃棄物について発生から最終処分が終了するまでの一連の処理の行程における処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるように努めなければならない。

「努めなければならない」とありますから、法律上で、現地確認は義務として定められていません。しかし、自治体によっては、条例や要綱の中で実地の確認を義務付けている場合があります。

2023年も昨年と変わらず20自治体が実地確認を義務付け

2023年6月から7月に、アミタが産業廃棄物の処理の許可権限を持つ全国の自治体を調査した結果は下記の通りです。

概要 件数 詳細
実地確認の義務あり 20自治体 岩手県、宮城県、愛知県などの10都道府県と10政令市
処理状況確認の義務あり・実地確認は努力義務等 15自治体 新潟県、長野県、広島県などの6都道府県と9政令市
処理状況確認の努力義務あり(法に類似) 6自治体 石川県や相模原市などの2都道府県と4政令市

20自治体が実地確認を義務付けています。(なお、都道府県が「義務あり」としていても、その県内の政令市が「義務あり」としているとは限りませんので、注意が必要)
なお、2022年から実地確認の義務や処理状況確認の義務、努力義務について変更となった自治体はありませんでした。

※本記事での政令市とは、廃棄物処理法の政令で定められた産業廃棄物の管轄権限を持つ市を指します。(地方自治法の指定都市、中核市および廃棄物処理法で定める市)
※アミタが調査した当時の結果です。詳細は各自治体に直接お問い合わせください。

  • アミタでは、廃棄物管理に関する条例情報の提供サービスを行っています(有料)
▼産業廃棄物の処理委託先確認規制調査報告書
全国の自治体の「現地確認」に関する条例情報を一覧でご覧いただけます。

  • 015372_image002.jpg条例・要綱における規制の有無
    (頻度やタイミング等の詳細情報を含む)
  • 実地確認に関する義務の有無
  • 代理調査の可否
  • 罰則の規定状況 など
一式15万円

※全国の自治体の「事前協議」に関する条例情報をまとめた報告書もございます。
購入希望・ご質問等、お問い合わせはこちら:https://amita.web-tools.biz/general-inquiry/
2023年追加情報!環境省 現地確認にデジタル技術の活用を推奨する

様々な分野で急速にデジタル化が進む中、注目されるのが「ビデオ通話での遠隔での確認は、【実地確認】として有効か?」という点です。2023年3月31日、環境省は、排出事業者による処理業者の処理状況の確認を行う際、デジタル技術の活用を推奨する通知を公表しました。通知には、廃棄物の処理が適正に行われていることを実質的に確認することができるのであれば、実地に赴いて確認することに限られず、デジタル技術を活用して確認することも可能であると記載されています。

また確認方法の例として、電磁的記録による許可内容や帳簿等の確認、オンライン会議システム等を用いて処理状況や管理体制の聴取を行うことなどが挙げられています。これに伴い「排出事業者責任に基づく措置に係るチェックリスト」も改定されました。処理委託の際の手続きとして、改定前は「実地調査や写真等により施設の状況を確認する」と記載がありましたが「実地調査やデジタル技術の活用等により施設の状況を確認する」と変更されました。現在自治体によってビデオ通話等の使用可否について見解が異なりますが、例えば、新潟県や新潟市では、以前から条例で通信手段を用いた調査を認めています。

▼新潟県産業廃棄物等の適正な処理の促進に関する条例(第8条)/施行規則(第3条)

第8条 事業者又は法第12条第5項に規定する中間処理業者(中略)は、県内産業廃棄物(中略)の処分を委託しようとするときは、規則で定めるところにより、当該処分を受託しようとする者が設置している処理施設のうち当該委託に係るものの稼働状況を確認し、規則で定める事項を記録しなければならない。

第3条 条例第8条第1項の規定による確認は、自ら実地において調査をする方法又は電話その他の通信手段を用いて調査をする方法により行うものとする。

出典:新潟県「新潟県産業廃棄物等の適正な処理の促進に関する条例

▼新潟市産業廃棄物等の適正な処理の促進に関する条例(第7条)/施行規則(第3条)

第7条 事業者又は法第12条第5項に規定する中間処理業者(中略)は,市内産業廃棄物の処分を委託しようとするときは,規則で定めるところにより,当該処分を受託しようとする者が設置している処理施設のうち当該委託に係るものの稼動状況を確認し,規則で定める事項を記録しなければならない。

第3条 条例第7条第1項の規定による確認は,自ら実地において調査をする方法又は電話その他の通信手段を用いて調査をする方法により行うものとする。

出典:新潟市「新潟市産業廃棄物等の適正な処理の促進に関する条例
出典:新潟市「新潟市産業廃棄物等の適正な処理の促進に関する条例施行規則

また、実地確認を義務付けている一部の自治体でも、新型コロナウイルス感染拡大の影響を理由に実地確認以外の方法を認めています。
現地確認の実施を義務付けている複数の自治体にアミタがヒアリングをした結果、以下のような回答が得られました。

ヒアリング結果|ビデオ通話システムによる現地確認(実地確認)の実施に関する自治体見解例

▼実地確認を義務化している自治体

東北某県 条例では実地確認を定めているが、排出事業者が条例を踏まえて問題なく処理状況を確認できると判断した場合は、遠隔でも確認することができる。
東海地方某県

新型コロナウイルス感染症が感染症法上の位置づけとして5類感染症に分類されたが、現状遠隔での現地確認を認めない、ということはない。条例に準じた現地確認を行えば、現地でも遠隔でも問題ない。

東海地方某市

遠隔でも確認すべき箇所を確認できるのではあれば、遠隔での確認でも問題ない。

東海地方某市 遠隔でも確認すべき箇所を確認できるのではあれば、遠隔での確認でも問題ない。
中国地方某県 手段は遠隔でも構わない。

▼現地確認を義務化している自治体(実地確認は努力義務)

北陸甲信越地方某市 排出事業者が適正に処理されているか確認をできるのであれば、方法は問わない。
中国地方某市 手段は遠隔でも構わない。

※ヒアリング調査は2023年6~7月にアミタが各自治体に電話で実施しました。アミタがその内容を保証するものではありません。詳細は各自治体に直接ご確認ください。2021年・2022年のヒアリングと同様に、各自治体からは、訪問か遠隔かということよりも、排出事業者責任の下、適正処理の状況をきちんと確認できるか、という実効性を重視してほしいとの意見が多い傾向にあります。優良認定業者の場合は、Webでの公表情報などで処理状況を確認できる場合が多いため、ビデオ通話システムによる現地確認も手段の一つとなりうるという意見もあります。また、現地に赴かないため臭気等はチェックできず、実地確認の代替にはならないのではとの疑問も挙げられています。

この点については、個人差のある人的チェックではなく臭気測定器を用いる方法もあります。

最後に

新型コロナウイルスの流行により、企業のテレワーク推進など非接触型・遠隔型業務への転換が一気に進みました。2023年11月現在は収束しつつありますが、今後、業務の仕方が以前と同様なことはないでしょう。なぜなら人口減少・少子高齢化がますます深刻化していく日本においては、生産年齢人口の減少も見込まれています。そのため、ICTなども有効活用しながら業務を効率化し、より価値を生み出す業務に時間を費やし企業の優位性を確立していく必要があります。
廃棄物管理は、業務の幅が広いだけではなく、法的知識も必要になるため、なかなか効率化が進みにくい業務です。しかしながら今後の社会状況を考えると本格的に業務改善を検討していく必要があります。

現地確認については、各自治体のヒアリングから現地確認については「手段」ではなく、適正処理の状況をきちんと確認できるかという「実効性」を重要視していることがわかりました。また、環境省からの通知にもあるよう、現在実地確認を義務化している自治体でも、今後デジタル技術を活用した方法に緩和する可能性もあります。適正処理の状況をきちんと確認することを目的とし、業務時間やコストも削減できる遠隔での現地確認も効果的に取り入れると良いでしょう。

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執筆者プロフィール(執筆時点)

南 修央
アミタ株式会社
エコ・ブレーン営業部 ソリューション課 主任 

排出事業者向けの廃棄物リスクコンサルティング部門を経て、廃棄物管理の業務効率化コンサルティングを担当。顧客のニーズに基づいて開発した廃棄物管理ツール「e-廃棄物管理」は全国すべての都道府県で使われており、製造業の廃棄物管理ツールとしては日本最大規模。


執筆者プロフィール(執筆時点)

tatsuro_miyauchi.jpg宮内 達朗(みやうち たつろう)
アミタ株式会社 
社会デザイン・スマートエコグループ
デザインチーム

香川県出身。立命館大学大学院社会学研究科を卒業後、アミタに合流。環境に関するテレマーケティングやセミナー企画・運営などの業務に携わる。その後、関西・九州エリアにて廃棄物管理などを中心とした企業環境部に対する戦略支援業務に従事し、現在は、廃棄物管理業務アウトソーシングサービスの開発・運用を担当している。

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