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2022年、現地確認の義務化自治体とその実施方法に関する自治体見解、最新動向!
排出事業者が、自社の産業廃棄物の処理委託先を訪問し、適正な処理が行われているかどうかを確認する「現地確認(実地確認と呼ばれるケースもあり)」。
廃棄物処理法では、廃棄物の処理の状況に関する確認は努力義務とされており、実施が義務付けられているわけではありません。しかし、自治体によっては、条例や要綱の中で「実地での確認」を義務付けている場合があり、実施方法や頻度などを確認しておく必要があります。
一方で、新型コロナウイルス感染症の影響や業務のICT化によって「ビデオ通話システムを利用した遠隔での現地確認」が認められるケースもあります。本記事では、自治体の現地確認に関する動向をご紹介します。
まずはおさらい!現地確認(実地確認)と法規制
現地確認に関する廃棄物処理法での規定は、下記の通りとなります。
法規制:産業廃棄物の処理を委託する場合の処理の状況に関する確認(努力義務)
廃棄物処理法第 12 条第 7 項 事業者は、前二項の規定によりその産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、当該産業廃棄物の処理の状況に関する確認を行い、当該産業廃棄物について発生から最終処分が終了するまでの一連の処理の行程における処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるように努めなければならない。 |
「努めなければならない」とありますから、法律上で、現地確認は義務として定められていません。しかし、自治体によっては、条例や要綱の中で実地の確認を義務付けている場合があります。
2022年最新情報! 20自治体が実地確認を義務付け
2022年5月から10月に、アミタが全国の許可権限を持つ自治体を調査した結果は下記の通りです。
概要 | 件数 | 詳細 |
実地確認の義務あり | 20自治体 | 岩手県、宮城県、愛知県などの10都道府県と10政令市(一宮市が追加) |
処理状況確認の義務あり・実地確認は努力義務等 | 15自治体 | 新潟県、長野県、広島県などの6都道府県と9政令市 |
処理状況確認の努力義務あり(法に類似) | 6自治体 | 石川県や相模原市などの2都道府県と4政令市 |
20自治体が実地確認を義務付けています。なお、都道府県が「義務あり」としていても、その県内の政令市が「義務あり」としているとは限りませんので、注意が必要です。
※本記事での政令市とは、廃棄物処理法の政令で定められた産業廃棄物の管轄権限を持つ市を指します。(地方自治法の指定都市、中核市および廃棄物処理法で定める市)
※アミタが調査した当時の結果です。詳細は各自治体に直接お問い合わせください。
アミタでは、廃棄物管理に関する条例情報の提供サービスを行っています(有料)
▼産業廃棄物の処理委託先確認規制調査報告書 全国の自治体の「現地確認」に関する条例情報を一覧でご覧いただけます。
※全国の自治体の「事前協議」に関する条例情報をまとめた報告書もございます。 購入希望・ご質問等、お問い合わせはこちら:https://amita.web-tools.biz/inquiry-environment/ |
ヒアリング結果|遠隔でのビデオ通話システムによる現地確認(実地確認)は有効?
また、様々な分野で急速にIT化が進む中、注目されるのが「ビデオ通話での遠隔での確認は、【実地確認】として有効か?」という点です。これらは自治体によって見解が異なっています。例えば、新潟県や新潟市では、以前から条例で通信手段を用いた調査を認めています。
▼新潟県産業廃棄物等の適正な処理の促進に関する条例(第8条)/施行規則(第3条)
第8条 事業者又は法第12条第5項に規定する中間処理業者(中略)の処分を委託しようとするときは、規則で定めるところにより、当該処分を受託しようとする者が設置している処理施設のうち当該委託に係るものの稼働状況を確認し、規則で定める事項を記録しなければならない。 第3条 条例第8条第1項の規定による確認は、自ら実地において調査をする方法又は電話その他の通信手段を用いて調査をする方法により行うものとする。 |
出典:新潟県「新潟県産業廃棄物等の適正な処理の促進に関する条例」
▼新潟市産業廃棄物等の適正な処理の促進に関する条例(第7条)/施行規則(第3条)
第7条 事業者又は法第12条第5項に規定する中間処理業者(以下「事業者等」という。)は,市内産業廃棄物の処分を委託しようとするときは,規則で定めるところにより,当該処分を受託しようとする者が設置している処理施設のうち当該委託に係るものの稼動状況を確認し,規則で定める事項を記録しなければならない。
第3条 条例第7条第1項の規定による確認は,自ら実地において調査をする方法又は電話その他の通信手段を用いて調査をする方法により行うものとする。 |
出典:新潟市「新潟市産業廃棄物等の適正な処理の促進に関する条例」
出典:新潟市「新潟市産業廃棄物等の適正な処理の促進に関する条例施行規則」
また、2022年は実地確認以外の方法を認める自治体が昨年よりも増加しています。実地確認を義務付けている一部の自治体でも、新型コロナウイルス感染拡大の影響を理由に実地確認以外の方法を認めています。
現地確認の実施を義務付けている複数の自治体にアミタがヒアリングをしたところ、以下のような回答を得ました。
ビデオ通話システムによる現地確認(実地確認)の実施に関する自治体見解例
▼実地確認を義務化している自治体
東北某県 | 実地が原則であるが、社会情勢によりリモート視察、写真、ヒアリングなど事業者で適正処理が確認できる方法であればよい。 |
中部地方某市 | 特に咎めるものではない。 |
東海地方某市 | 基本は実地。ただし実情として、立入調査をした際にZoom等で実施して記録している例もあり、それを否定するような指導はしていない。 |
東海地方某市 | どんな理由・経緯で遠隔でやることになったのか記録しておき、立ち入りの際に説明できるようにしてほしい。ただしコロナ禍での暫定的な措置なので、基本は現地に行ってほしい。 |
中国地方某県 | 手段はオンラインでも構わない。 |
▼現地確認を義務化している自治体(実地確認は努力義務)
北陸甲信越地方某市 | 市として実施方法を定めているわけではないので、処理状況を問題なく確認できるのであれば、遠隔での実施でもよいと思う。 |
中国地方某市 | 手段はオンラインでも構わない。 |
※ヒアリング調査は2022年7~8月にアミタが各自治体に電話で実施しました。アミタがその内容を保証するものではありません。詳細は各自治体に直接ご確認ください。
2020年・2021年のヒアリングと同様に、各自治体からは、訪問か遠隔かということよりも、排出事業者責任の下、適正処理の状況をきちんと確認できるか、という実効性を重視してほしいとの意見が多い傾向にあります。優良認定業者の場合は、Webでの公表情報などで処理状況を確認できる場合が多いため、ビデオ通話システムによる現地確認も手段の一つとなりうるという意見もあります。また、現地に赴かないため臭気等はチェックできず、実地確認の代替にはならないのではとの疑問も挙げられています。
この点については、個人差のある人的チェックではなく臭気測定器を用いる方法もあります。
最後に
新型コロナウイルスの流行により、企業のテレワーク推進など非接触型・遠隔型業務への転換が一気に進みました。現在は収束しつつありますが、今後、業務の仕方が戻ることはないでしょう。なぜなら人口減少・少子高齢化がますます深刻化していく日本においては、生産年齢人口の減少も見込まれています。そのためICTなども活用しながら業務を効率化し、価値創出業務に使う時間を生み出し・有効活用することによって企業の優位性を確立していく必要があります。
廃棄物管理業務は、業務の幅が広いだけではなく、法的知識も必要になるのでなかなか効率化が進みにくいのも現状です。しかしながら今後の社会状況を考えると本格的に業務改善していく必要があります。
現地確認については各自治体のヒアリングから「訪問」か「ビデオ通話システム」かということよりも、適正処理の状況をきちんと確認できるかという実効性について重要視している傾向があることがわかりました。必ずしも現地に赴くのではなく、双方向のコミュニケーションができるビデオ通話システムを用いて、適正処理の状況をきちんと確認し、業務時間やコストも削減できる遠隔での現地確認も効果的に取り入れると良いでしょう。
ICT化で廃棄物管理業務をスマートに!「Smart 現地確認」
Smart現地確認は、ビデオ通話システムを用いて遠隔で実施する「現地確認」です。業務時間やコストも削減しながら適正処理の状況をしっかりと確認することができます。
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執筆者プロフィール(執筆時点)
宮内 達朗(みやうち たつろう)
アミタ株式会社
社会デザイン・スマートエコグループ
デザインチーム
香川県出身。立命館大学大学院社会学研究科を卒業後、アミタに合流。環境に関するテレマーケティングやセミナー企画・運営などの業務に携わる。その後、関西・九州エリアにて廃棄物管理などを中心とした企業環境部に対する戦略支援業務に従事し、現在は、廃棄物管理業務アウトソーシングサービスの開発・運用を担当している。