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現地確認の義務化自治体とその実施方法に関する自治体見解、最新動向! 
排出事業者が、自社の産業廃棄物の処理を委託している先を訪問し、適正な処理が行われているかどうかを確認する「現地確認(実地確認と呼ばれるケースもあり)」。廃棄物処理法では、廃棄物の処理の状況に関する確認は努力義務とされており、実施が義務付けられているわけではありません。しかし、自治体によっては、条例や要綱で「実地の確認」を義務付けている場合があり、実施の方法や頻度などを確認しておく必要があります。現状はどのような傾向が見られるのか、そして、テレビ会議システムを利用した遠隔での確認は有効か。各自治体の動向を調査しました。
まずはおさらい!現地確認(実地確認)と法規制
現地確認に関する廃棄物処理法での規定は、下記の通りとなります。
法規制:産業廃棄物の処理を委託する場合の処理の状況に関する確認(努力義務)
廃棄物処理法第 12 条第 7 項 事業者は、前二項の規定によりその産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、当該産業廃棄物の処理の状況に関する確認を行い、当該産業廃棄物について発生から最終処分が終了するまでの一連の処理の行程における処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるように努めなければならない。 |
「努めなければならない」とありますから、法律上で、現地確認は義務として定められていません。しかし、自治体によっては、条例や要綱で実地の確認を義務付けている場合があります。
自治体の現地確認(実地確認)に関する規定
2018年5月から10月に、アミタが全国の許可権限を持つ自治体を調査した結果は下記です。
概要 | 件数 | 詳細 |
実地確認の義務あり | 19自治体 | 岩手県、宮城県、愛知県などの10都道府県と9政令市 |
処理状況確認の義務あり・実地確認は努力義務等 | 15自治体 | 新潟県、長野県、広島県などの6都道府県と9政令市 |
処理状況確認の努力義務あり(法に類似) | 6自治体 | 石川県や相模原市などの2都道府県と4政令市 |
19自治体が実地確認を義務付けています。なお、都道府県が「義務あり」としていても、その県内の政令市が「義務あり」としているとは限りませんので、注意が必要です。
※本記事での政令市とは、廃棄物処理法の政令で定められた産業廃棄物の管轄権限を持つ市。(地方自治法の指定都市、中核市および廃棄物処理法で定める市。)
※アミタが調査した当時の結果です。詳細は各自治体に直接お問い合わせください。
アミタでは「産業廃棄物の処理委託先確認規制調査報告書」の提供サービスを行っています(有料)。各自治体の義務化の状況や代理調査の可否、頻度、タイミング等がまとまっています。ご興味のある方はお問い合わせください。 <お問い合わせ先>https://amita.smktg.jp/public/application/add/110 |
遠隔でのテレビ会議システムによる現地確認(実地確認)は有効?
また、様々な分野で急速にIT化が進む中、注目されるのが「遠隔でのテレビ会議システムによる確認は、【実地確認】として有効か?」という点です。現地確認の実施を義務付けている複数の自治体にアミタがヒアリングをしたところ、以下のような回答を得ました。
<テレビ会議システムによる現地確認(実地確認)の実施に関する自治体見解例>
長崎県 | 現地確認の頻度や方法までは規定していない。テレビ会議システムを用いた遠隔での確認についても、実行性があるのであれば、問題はない。 |
郡山市 | 確認すべき内容を確認し、排出事業者責任が果たせるのであればテレビ会議システム等による遠隔での確認でも問題ないと考える。 |
東北某市 (市名公表不可) |
条例の中では、現地確認は実地の確認だけでなく、「自らの責任において,実地に調査している者から聴収し,及び確認する場合を含む。」としている。また、確認方法について、特にテレビ会議システムがNGとは定めていない。そのため、テレビ会議システムでの確認も問題はないと思われる。 ただし、処理会社が不適正な処理をしていたときに、テレビ会議システムでの現地確認をしているから排出事業者責任を問われないことを約束するものではない。それは実地での現地確認も同様。手段よりもしっかりと意味のあるコミュニケーション、監査をすることが大事である。時代も変わってきており、テレビ会議システムも一般的になってきている。これから実地確認のあり方も変わっていくものと思う。 |
福島県 | 委託前の実地確認は、実際に訪問するのが望ましい。1回実地を訪問したことがある委託先であれば、委託後の実地確認はテレビ会議システムでの確認でも問題ないと考える。ただし、委託後についても、頻度は問わないが実地に行く機会を設けるとなお良い。 |
東北某自治体 (県名公表不可) |
実地確認は、あくまで実地に行くことを想定しているので、テレビ会議等はその代わりにはならないと認識している。ただし、条例では「自らの責任において、実地に調査している者から聴収し、及び確認する場合を含む。」としており、この代わりにはなると考える。 |
静岡県 | 実地確認を条例で義務付けている。条例や指導要領では、確認方法等は記載していないが、課内では、実地を訪問するよう指導しており、カメラをつないでの確認だけでは足りないと考える。理由は処理業者がカメラを操作するのであれば、都合の悪いところは見せない可能性があるため、排出事業者責任を果たすのは不十分と考えるため。 ただし排出事業者やグループ会社など、代表者が1名でも現場を訪問し、カメラを操作し、テレビ会議をつなぐのであればOK。チェックリストの作成は必要。 |
某自治体 (県名公表不可) |
テレビ会議による方法など、排出事業者が遠隔で現地確認を行おうとする行為は、条例施行規則で定める確認事項である施設の状況・保管状況及び処理の実施の状況の確認を十分に確保できる方法とは言えず、望ましくない。 |
※ヒアリング調査は2019年6月にアミタが各自治体に電話で実施しました。上記自治体からは掲載の許可を頂いておりますが、アミタがその内容を保証するものではありません。詳細は各自治体に直接ご確認ください。
訪問かテレビ会議かということよりも、適正処理の状況をきちんと確認できるか、という実効性が問われるという見解が多くみられました。日々の会議等でテレビ会議システムを導入されている企業は多いため、今後、テレビ会議でも現地確認の実効性に問題ないとする自治体の場合は、交通費や移動時間の削減のため、効果的に遠隔による現地確認を取り入れると良いでしょう。
また、現時点で現地へ訪問を必須としている場合でも、論点は処理会社がカメラを操作することで適正処理の確認ができるのか、という点であることから、現在複数人で現地確認を行っている企業は、今後、1名が現地に赴きカメラ操作を行い、他のメンバーは遠隔で参加することや、現地確認を外部にアウトソースするといった手法を検討すると良いかもしれません。臭気等の確認については、個人差のある人的チェックではなく臭気測定器を用いる方法もあります。
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アミタでは、廃棄物管理置き場等でのセンサーを用いた保管量管理、ビデオ通話システムを用いた遠隔での「現地確認」など、環境管理業務のコストとリスクを低減するICTサービスを提供しています。
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執筆者プロフィール(執筆時点)
福田 栄二 (ふくた えいじ)
アミタ株式会社 スマートエコグループ
スマートエコ・デザインチーム チームリーダー
広島大学大学院を卒業後、社会環境分野の調査研究を行う民間シンクタンクを経て、アミタへ合流。廃棄物管理に関する専門知識と業務合理化のノウハウを活かし、顧客の業務負荷軽減を支援している。