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フォレストック認定制度の活用方法~導入事例のご紹介フォレストック認定制度の特徴とメリット

Photo_by_D. Jameson_RAGE_on_Unsplash.jpg前回のコラムでは、CO2吸収量クレジットの会計・税務上の取り扱いを紹介し、クレジット購入企業の会計・税務上の影響についてご紹介しました。今回のコラムでは、フォレストック認定制度に基づくプログラムの導入事例についてご紹介します。
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Photo by D. Jameson RAGE on Unsplash

プログラム導入手法の考え方

本コラムの第1回にも記載しておりますが、フォレストック認定制度は、適切な森林管理に特化したクレジットであるため、購入企業にとってはメッセージ性の強いブランディングが可能となります。例えば「わが社は●●の森を守っています」、「この商品1つ当たり、●㎡の森が守られます」といった独自のメッセージとして利用することができます。これを、「●●グリーンプログラム」といったプログラムとして発表し、企業の製品と関連付けることで、単なるCSRにとどまらず、より戦略的なCSVとしての利用が想定されます。

以下では、企業がどのように自社製品との関連付けを行い、メッセージを発信しているかを2つの事例と併せてご紹介します。

事例1:セーラー万年筆株式会社

191212_forestock_image001.png同社は、2013年8月1日より「フォレストック認定制度」を活用した『FOREStationery(R) フォレステーショナリー』プロジェクトを実施しています。「適応製品(本体価格3,000円以上)となる万年筆1本につき、1年間約3㎡の森林の保全活動を支援します。」というメッセージを発信し、顧客の万年筆購入に応じて、CO2吸収量クレジットを購入しています。これは、文具業界としては初の取り組みでした。(画像はクリックすると拡大します)

同社のプログラムには以下の3つの特徴があります。

① 万年筆という自社製品と森林との関連付け
万年筆は木材や漆を用いた製品も数多くあり、森林と関わりが強いことは容易に想像できます。同社の2013年7月に公表されたプレスリリース上でも、「当社では木軸や漆を使った万年筆を多く製作しています。」と記載されており、"万年筆の製造⇒森林伐採⇒森林を守る必要性"という必然性を非常にシンプルに分かりやすく関連付けています。こうすることで、顧客はそのメッセージを容易に理解することができます。

② CO2吸収量クレジットを購入する森林の限定
上記をさらに印象付けるのが、同プログラムがCO2吸収量クレジットを購入する森林を限定していることです。フォレストック認定森林の中でも同社に所縁のある森林(当初3カ所でスタートしたが、現在は9カ所に拡大)に限定してCO2吸収量クレジットを購入するとアピールすることで、発信するメッセージがより分かりやすくなり、「●●の森を守っている」という点を強調することができます。

③ プログラム名とロゴマーク、端的なメッセージ
同プログラムには『FOREStationery(R) フォレステーショナリー』という名称が付されたことに加えて、ロゴマークも作成されたことで、より親しみやすさを演出しています。そのような土台の上に、「万年筆1本につき、1年間3㎡の森林の保全活動を支援します」というメッセージがあることによって、単なるCSRにとどまらない、戦略的なCSVとして機能していると言えます。

事例2:株式会社ジュピターテレコム

191212_forestock_image002.jpg同社は、電力販売事業を実施しており、そのWebサイト上のCSR項目において、「J:COMへお支払いただく電気料金の一部で、森林保護活動を支援。1世帯につき約5平方メートルの森林を1年間にわたって守ることができます。」という内容の「J:COMグリーンプログラム」を実施しています。このプログラムについても特徴を分析してみます。(画像はクリックすると拡大します)

① 製品との関連付け
同社の販売する電力はその発電の過程で環境保全と切っても切り離せない関係にあります。環境に配慮した次世代エネルギーがメディアなどで多数発信され、世間でも注目される中、電力の一般消費者にも、「節電」「省エネ」などのキーワードが浸透し、誰もが意識する状況です。その中で、電力料金の一部が森林保全に使用されているというメッセージは消費者には非常に分かりやすく、ダイレクトにメッセージが伝わる仕組みとなっています。

② 消費者にさりげなく伝わる工夫
先のセーラー万年筆は、製品購入の際に認定証が付されており、購入したことがステータスとなるように制度設計されていました。しかし、電力消費は誰もが行うものであり、かつ、環境に配慮した電力消費という意識はもはや当たり前となっています。そのため、あえて環境保全を前面に出すことはせず、しかし、ちゃんと配慮しているということをさりげなく消費者に伝えることが重要となります。同社では、同プログラムをあえてあまり前面に出さず、Webサイト上の安心・便利の項目の最下段に表示させることで、あまりアピールしすぎないという点を配慮しています。換言すると、本プログラムは消費者の購入を積極的に獲得する効果というよりも、消費者を同社につなげとめておく効果を狙っているとも言えます。

まとめ

本コラムでは「フォレストック認定制度の特徴とメリット」と題し、5回にわたって、その概要や特徴の説明、森林認定の手続きやメリットの解説、購入企業側の視点からメリットや会計税務の取扱いの説明、等様々な角度からフォレストック認定制度を解説して参りました。フォレストック制度は単なる社会貢献の一種と見られがちですが、工夫一つで本業と絡めたプログラムに一変する可能性を秘めています。今後、フォレストック認定制度を活用したプログラムが読者の皆様のお役に立てる日が来ることを願って、まとめに代えさせて頂きます。

参考情報
執筆者プロフィール

190801_imageforprofile.jpg吉永 誠(よしなが まこと)氏
一般社団法人 フォレストック協会
ヴァイスプレジデント 公認会計士・税理士

一橋大学商学部卒、早稲田大学大学院会計研究科修了後、有限責任監査法人トーマツを経てトラスティーズコンサルティングLLPマネージャーと共に現職。現在は、フォレストックの普及活動を中心としながら、トラスティーズのメンバーとして、株式評価業務、M&A関連業務、相続税対策、金融関連の会計・税務におけるアドバイス等も提供している。

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