アフターコロナ 〜エシカルのこれから〜 | 企業のサステナビリティ経営・自治体の町づくりに役立つ情報が満載

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コラム

アフターコロナ 〜エシカルのこれから〜今さら聞けない、そもそもなぜ今エシカルなの?を徹底解説!

Photo_by_Benjamin_Davies_on_Unsplash.jpg「新型コロナウイルス」の感染拡大に伴い、私たちは予期せぬ形で大転換期を迎えました。外出制限により人と直接会うことが減り、多くの経済活動が休止し、リモートワークをする人が急増しました。

この間、インドの都市部からヒマラヤ山脈がハッキリと見え、ガンジス川に四万十川のような透明さが戻り、絶滅危惧種であるジュゴンの大群がタイ南部の海で確認されるなど、コロナ禍が環境にとってはプラスに働いているという変化もみられます。

本連載の最終回では、この大転換期の中で「エシカルのこれから」について、変化の兆候と私見を交えながらお伝えしていきたいと思います。

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Photo by Benjamin Davies on Unsplash

消費者の意識の変化が「エシカル消費」を広げる駆動力になる

2020年4月頭、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために政府および各自治体から史上初となる緊急事態宣言が発令されました。この外出自粛要請により多くの飲食店や小売店が顧客を失い、今もなお厳しい局面に立たされています。

そんな中、海外ではじまった「Dining Bond Initiative(応援したい飲食店に先に支払いだけをしておき、事態が落ち着いた後で来店できるという取り組み)」を発端に、日本国内でも「ごちそうさまの先払い」で、飲食店を支援する動きが注目を浴びました。こうした社会現象は多くの消費者にとって、「購買行動そのものが生産者や事業者の支援につながる」という大きな「気づき」になったのではないでしょうか。

また、新型コロナウイルスの感染拡大は、地球規模のサプライチェーン(供給網)に甚大な影響をもたらしました。簡単にいえば、ものづくりの現場で国をまたにかけた生産物や部品、人の往来に大きな支障をきたしたのです。4月1日には、FAO(国連食糧農業機関)やWHO(世界保健機関)などは、各国が食糧の確保に向けた輸出制限をすることで、国際市場における食糧不足や一部の地域で食糧危機が起こる可能性があるとの共同声明も発表しました。新型コロナウイルスで、生産や物流が停滞し、所得が下がって、食糧危機が懸念される中、アフリカではサバクトビバッタが異常発生し植物や農作物を食い荒らす被害が出ています。これにより、エチオピアやケニアなどで約2千万人がより深刻な食糧危機に陥る可能性があるというニュースも出ました。

地球規模のサプライチェーンの崩壊は、私たち消費者一人一人に「食料自給率の低さ」という生存リスクを突きつけています。この結果としてアフターコロナでは、地産地消型の食料やエネルギーに対する関心が今まで以上に高まる可能性が出てきています。実際、国内の一次産業者と消費者をつなぎ、食のインターネット販売をしているスマホアプリは、コロナ禍で、お客さんの購入数と生産者の新規出品数の両方を大きく伸ばしているといいます。

こうした意識の変化は「エシカル消費」が今まで以上に広がる駆動力になると思います。できるだけ国内や地元生産者の商品を購入する動きが広まれば、地方創生につながり、商品輸送に伴うCO2排出も削減することができます。

アフターコロナで「ESG投資」の裾野はより拡大する。

Image_by_Lars_Nissen_from_Pixabay .jpg2020年5月8日に発表された、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の報告書によれば、ESG活動における主要テーマとしては、①コーポレートガバナンス(70.8%)②気候変動(53.9%)③ダイバーシティ(44.0%)という企業・社会の共通課題を掲げる企業が多いとされています。

(写真:Image by Lars Nissen from Pixabay)

また前回(2019年)より回答比率が上昇したテーマは、気候変動(前回比+8.4%)、サプライチェーン(同+3.3%)、ダイバーシティ(同+2.4%)となっており、ガバナンス(G)に加えて、環境(E)・社会(S)における意識が高まっているとGPIFは指摘しています。

この調査自体は新型コロナウイルスが深刻化する前に行われたものですが、アフターコロナでは、ガバナンス(G)は共通にあるものとして、今まで以上に環境(E)と社会(S)が重視されるようになるはずです。

なぜなら、環境や生態系の破壊は、気候変動に影響を及ぼすだけでなく、人と動物の間で病気が広がるにつれ、さらなるパンデミックを招くリスクになり(E)、環境リスクが高まれば、労働者が不安定な立場に追いやられ、その状況を目の当たりにするようになると、人権と労働権という社会的な問題に繋がっていきます(S)。

これにより、アフターコロナではESG投資の裾野はより拡大することになりそうです。

クラウドファンディングサービス「CAMPFIRE」が5月に発表した内容によれば、国内購入型クラウドファンディングサービス史上最高記録を更新した2020年3月単月流通額10億円超から、4月は昨月対比約2倍(20億円超)、昨年同月比約4倍と、急速に流通額が伸びているという報告がありました。

この間、私自身もお世話になっていた飲食店が行うクラウドファンディングをいくつか支援しました。寄付型のクラウドファンディングの特徴は、従来の寄付とは違い、相手の顔がよく見え、何のために使うのかはっきりしているところです。相手だけでなく、お金も喜ぶ、気持ちの良いお金の使い方だということを改めて実感する機会になりました。

はからずして、新型コロナウイルスは私たちの「お金の流れ」に対する意識にも働きかけました。自分のお金をどこにどうやって融通するのか。「エシカル金融」はアフターコロナにおける一つのガイドになり得るのではないでしょうか。

リモートワークは「エシカルな働き方」を考えるきっかけに。

新型コロナウイルスの影響により、多くの企業が不要不急な出社を禁止し、リモートワークを中心とした勤務体制へ切り替えました。

リモートワーク自体は、以前より「働き方改革」の一環として推進されていたため新しい働き方ではありません。しかし、実際に導入している企業は一部に留まるという状況でした。

今回、強制的に多くの企業がリモートワークせざるを得ない状況に置かれたことで、急速に導入が進んでいる様子を見ると、新型コロナウイルスは「私たちの働き方を真剣に考えるよい機会」になったと言えます。

実際、5月13日の日本能率協会の発表によれば、新型コロナウイルスの感染拡大を機に、在宅勤務を始めた人の約8割が「感染拡大収束後も在宅勤務制度の継続を望む」といった傾向が見られ、働き方が大きく変わる可能性を示しています。既に、米ツイッター社のように、新型コロナウイルスを契機に在宅勤務希望者に対して「永久在宅勤務」の許可を示すような企業も出てきています。

リモートワークには、子育てや介護、引きこもりや障害など、今まで「何らかの理由で自宅にいざるを得なかった人々」に対して、雇用機会のアクセスが増えるというポジティブな側面があります。これを機に、自宅での働き方が広がれば、多様な人材に活躍の機会を与えることができるはずです。

つまり、リモートワークは雇用をより「ダイバーシティ&インクルージョン」にする、ということです。また、人材の採用をオフィスの所在地と切り離して行うことができるようにもなり、都市と地方の雇用機会格差の解消につながる可能性もあります。

新型コロナウイルスの拡大によって広まった「リモートワーク」は、労働の生産性をあげるだけでなく、「エシカルな働き方」を牽引する大きなドライバーになる、と考えています。

「距離」を意識して、「距離」を調整する

Photo_by_Drew_Beamer_on_Unsplash.jpg新型コロナウイルスの拡大は私たちに、あらためて「距離」という概念を意識させたようにみえます。

一緒に働いていた仲間、学業を共にしていた友人達との「距離」は、緊急事態宣言とソーシャルディスタンスにより、突如として広がりました。しかしその一方で、「働くことと暮らすこと」や「家族」との距離は急速に縮まり、「環境と企業活動」や「生産者と消費者」については「精神的な距離」が縮まったように思います。

(写真:Photo by Drew Beamer on Unsplash)

そして、広がるにせよ縮まるにせよ、そういった「距離」が調整されたことで、今まで解決することが難しいとされていた問題が解決の方向へ進みました。これはコロナ禍が私たちにもたらした大変ポジティブな側面だと思います。

例えば、2020年4月の自殺者数が、最近5年間ではもっとも大きい減少幅の「前年比約20%減」というニュースがありました。この驚くべき事実は、アフターコロナにおけるコミュニケーションや人間関係が、少なくとも以前よりは「つかず離れず」といった距離に調整されていくことを示唆しています。

本コラムを通じてお伝えしてきた「エシカル」に関しても、「距離」は重要なキーワードだと思います。人や地球環境や社会との「距離」を意識するからこそ新しい気づきが生まれ、それらを「配慮する気持ちや行動」が生まれるのではないでしょうか。

意識が変われば、行動が変わります。行動が変われば生活が変わります。生活が変われば人生が変わります。エシカルはこうした変化の総体です。アフターコロナにおける「新しい生活様式」を考える際には、ぜひ自分の身の回りにある色々な「距離」を、あらためて意識してみてはいかがでしょうか。

執筆者プロフィール

ECEF_photo001.png田中 新吾(たなか しんご)氏
一般社団法人ECEF
代表理事

中央大学理工学部卒業後、マーケティング会社でキャリアを積み、現在はコミュニケーションデザインという領域で活動しているコミュニケーション・ディレクター。ECEFでは埼玉県を拠点にして企業や自治体のエシカルな事業のサポートや企画の立案実装を行なっている。エシカルコンシェルジュ。NPO法人地球のしごと大學の副理事長も務める。

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