コラム
BSI Kitemark™と「カーボンニュートラルプロダクトBSI Kitemark™」とは?概要と取得事例、メリットなどについて解説世界最古の国家規格協会、英国規格協会(BSI)の考えるサステナビリティ認証・ラベルの「使い方」
カーボンニュートラリティの達成に対する国際認証「カーボンニュートラルプロダクトBSI Kitemark™」。
第三者保証により自社の取り組みに信頼性を持たせ、事業が有利になるメリットがあります。
国際認証機関であるBSIグループジャパン連携コラム4回目では、第三者機関によるカーボンニュートラリティに関する認証である「カーボンニュートラルプロダクトBSI Kitemark™」について、概要や取得事例についても解説します。
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1月25日(木)に開催した「国際認証機関BSIから学ぶ!移行戦略のためのサステナビリティ認証活用方法セミナー」で、BSIグループジャパン株式会社より、サステナビリティ認証の最新動向や活用事例、組織のESG評価から製品のESG評価へという流れについてご講演いただきました。その動画と資料を公開中です。
はじめに
2050年のネットゼロ達成に向けて企業は様々な施策に取り組んでいます。目標達成のために、各企業では再生可能エネルギーの利用や製品設計と製造プロセスの見直しといった施策が進められており、最近ではカーボンニュートラリティの達成を一部の製品やサービスにおいて宣言する企業も出てきました。その一方で、明確な根拠の提示がなく、自己宣言でカーボンニュートラリティが謳われる場合もあり、グリーンウォッシュではないか?と批判を受けることもあるようです。そのような中、BSIでは 「カーボンニュートラルプロダクトBSI Kitemark™(カイトマーク)」 として、第三者機関の目で根拠に基づき客観的にカーボンニュートラリティ達成の検証を行うサービスを2023年より提供開始しました。今回の記事では「BSI Kitemark™」「カーボンニュートラルBSI Kitemark™」 について解説します。
BSI Kitemark™(BSIカイトマーク)とは
BSI Kitemark™は、100年以上にわたり様々な製品やサービスにおいて活用され、優れた品質、安全性、信頼の象徴として認められてきました。BSI Kitemark™は、もともと英国規格の仕様を満たして製造された製品を識別するためのシンボルとして考案され、その起源は英国の路面電車の線路にトレードマークとして使用され始めた1903年までさかのぼります。BSI Kitemark™認証に相当する初期の制度は、1926年にゼネラル・エレクトリック社の照明器具にBSI Kitemark™が授与されたときに誕生しました※1。それぞれのBSI Kitemark™認証制度に規定されている要求事項を満たしているかどうか、技術書や現場確認、また製品試験などを通して審査し、厳しい基準を満たしているものだけにBSI Kitemark™が付与される仕組みです。
英国の線路に初めて導入されたBSI Kitemark™ですが、その後は対象を拡大し、二重ガラスや火災安全性などの分野においてもBSI Kitemark™認証制度が開発されました。2024年現在、プリント基板や家畜のタグなど多様な製品を対象とする450以上の個別BSI Kitemark™認証制度があり、現在も使用されている世界最古の製品品質マークの一つとなっています。
▼BSI Kitemark™(BSIカイトマーク)
出典:BSIグループ
関連ページ:BSI Kitemark™ 認証
カーボンニュートラルプロダクトBSI Kitemark™ の概要とその取得メリット
2023年、BSI Kitemark™ にカーボンニュートラルプロダクトBSI Kitemark™(以下、CN BSI Kitemark™)が新たに加わりました。これは、製品のライフサイクルでのGHG排出量をゼロまたは極めて低く抑え、環境負荷低減に貢献することを目指して開発された認証プログラムです。認証の対象とするサービスや製品がカーボンニュートラルであることを第三者機関が検証し、認証書を発行するものです。
詳しくは後述しますが、本認証を受けるまでの過程には7つほどのステップがあり、排出削減を実現するための具体的な実施計画策定や、国際規格に基づいた排出量の算定等のプロセスを踏む必要があります。7つのステップを経てカーボンニュートラリティの第三者検証を受けるまでには平均で10か月ほどの時間を要しますが、本認証は高い信頼性を持ち、企業の持続可能性への取り組みを具体的なトレードマークで製品上に示すことができます。トレードマークにより高い信頼性を消費者に直接訴えることができ、市場競争力の強化も見込むことができるのです。
以下、本認証制度におけるメリットを挙げます。
- 環境に配慮した製品としての差別化
CN BSI Kitemark™認証は、製品がカーボンニュートラルであることを確かなデータや現場審査の結果に基づいて第三者が証明する仕組みです。消費者は環境に配慮した製品を選択する際に、信頼できるマークの添付や認証の有無を重要視することが分かっており※2、認証された製品は信頼性と品質が高いと認識され、消費者の選択肢として有力候補になりえます。環境への配慮を重要視する消費者や企業に選ばれる存在になることで、商品やサービスの価値が向上し、競争力を高めることができます。 - 新たなビジネス機会の創出
サプライチェーンでの排出量削減が求められる中、企業は購買戦略としてサステナビリティの要素を考慮する必要があり、脱炭素の取り組みを進めた商品サービスを展開することでサステナビリティ対応に意欲的な取引先として選ばれる可能性があります。例えばBtoB企業においては、カーボンニュートラル製品を取引先が購入することで、先方のGHG排出量削減に貢献することができます。カーボンニュートラル製品を取り扱うことにより、その企業はサプライヤーとして付加価値をつけ、新たな市場の開拓につなげることができます。
カーボンニュートラルプロダクトBSI Kitemark™認証の取得方法
本認証の基準となる規格はISO 14068-1(Carbon neutrality気候変動マネジメント-ネットゼロへの移行-第1部:カーボンニュートラリティ)ですが、認証の過程においてはいくつかのステップに分かれます。
本認証取得までのステップは下記の1から6のとおりです。
▼カーボンニュートラルプロダクトBSI Kitemark™認証取得までのステップ
(クリックで拡大します)
出典:ISO 14068-1を元にBSIジャパン作成
関連記事:
ISO14068-1 カーボンニュートラリティのISO規格とは?
また、本認証においては、上記のステップに加えてカーボンフットプリント計画(CFMP)が重要になります。CFMPとは、対象製品の原材料、製造、使用、廃棄までのライフサイクルの中で、どれだけの二酸化炭素を使用するのかについて、どのように把握をし、それをどのようにニュートラルにするのかについての管理計画のことを指します。CN BSI Kitemark™の認証を取得・維持するために、組織は CFMP を通じて証明される継続的な炭素削減を目指すことになります。
<CFMPの要素 ※一部>
- 対象製品のカーボンニュートラルへのコミットメントを表明するもの
- 対象製品のカーボンニュートラル達成のためのタイムスケール
- カーボンニュートラル達成のタイムスケールに見合った、規定された製品の炭素削減目標
- 炭素排出量の削減を達成し、維持するための計画された手段
- GHG排出量削減のために実施される技術などの条件、その根拠を含む、GHG排出量削減を達成し維持するために予測される活動
なお、GHG排出量については、製品のカーボンフットプリントは、製品のシステムバウンダリー内のスコープ1、2、3全ての排出を含みます。またスコープ1および2の排出については、合理的なレベルの保証、スコープ3の排出については、限定的なレベルの保証が求められます。カーボンニュートラルを達成するために測定、オフセットもしくはインセットが確認された製品については、最新版の規格ISO 14067およびISO 14068-1の要件に定義されたカーボンフットプリント削減への継続的な取り組みと、CFMPの継続的評価が、認証取得および維持に必要となるのです。
また、認証取得企業は、少なくとも12ヶ月ごとにCMFPを更新しなければならず、CFMP は、ISO 14068-1で定義された原則および要件に沿ったものでなければなりません。
なお、BSI Kitemark™認証は、一度取得をすると基本的に3年ごとの更新が必要ですが、CN BSI Kitemark™も同様です。審査はステージ1(事前審査)とステージ2(訪問審査/リモートもしくは実地)の2段階に分かれ、その後別の専門家によるテクニカルレビューを経て認証が付与される流れになっています。また、認証取得後は、CAV(Continuous Annual Visit:継続的な年次訪問審査)が必須となっており、基本的にCAVでは、本スキームの要求事項および規格への継続的な適合を確認することを目的として12か月ごとに実施されます。
カーボンニュートラルプロダクトBSI Kitemark™の取得事例と事業における認証の活用方法
CN BSI Kitemark™認証自体がスタートしたばかりということもあり、認証取得事例はまだ多くはありませんが、イギリスでの最新事例をご紹介いたします。
鶏卵メーカーであるMorrisons社は、今年3月に英国で初めてBSIからカーボンニュートラルの第三者認証を受けた鶏卵小売業者です※3。Morrisons社は、2021年以降「Better For Our Planet」シリーズの卵で60%の炭素削減を達成しており、2022年にカーボンニュートラル卵を発売しました。その後、BSIによる厳格な試験を経て、同製品が国際基準を満たしていることが確認されました。Morrisons社は循環給餌方式や再生可能エネルギーの利用などで鶏の健康と福祉を維持しつつ、森林や牧草地を管理して炭素捕捉も進めています。様々な施策により、2030年までにスコープ3の排出量を30%削減するという目標を掲げ、2035年までに自社事業でのネットゼロ達成を目指しています。Morrisons社は、GHG排出量の削減に加えて、アニマルウェルフェアの観点からも様々な施策に取り組んでおり、これらのサステナブルな事業活動を行っていることを消費者に直接訴えかけることで、社会全体を変えていこうとしているのです。
さいごに
カーボンニュートラリティを証明する方法はいくつかありますが、その中でもBSI カーボンニュートラルプロダクトKitemark™は有効な選択肢の一つです。調査会社YouGov社の報告(2021年)によると、英国でのBSI Kitemark™の認知度は73%と高く、旧英国領であるオーストラリア、カナダ、香港、さらに中東の国々でも広く浸透しています。グローバルに事業を展開する企業にとって、BSI Kitemark™は有力な選択肢となるでしょう。BSIは、企業のネットゼロ達成への取り組みを支援するとともに、日本国内でのKitemark™の認知度向上にも尽力してまいります。
お問い合わせ
アミタは、BSIグループジャパン(株)のアソシエイト・コンサルタント・プログラムメンバーに認定されています。
今回ご紹介した認証につきまして、認証取得やその他脱炭素目標の設定や移行計画策定に関するご相談をお受けしております。下記よりご相談ください。
執筆者情報(執筆時点)
野村 梢(のむら こずえ)氏
BSIグループジャパン株式会社
Business Development Div'
Carbon Neutral and Disclosure Lead
環境ソリューション会社にて、森林認証、漁業認証、CSR等の業務に従事。2014年にBSIジャパンに入社後は、サステナビリティ関連認証、PAS規格策定、製品認証等、マーケティングの立場から幅広く携わる。2023年8月から環境関連サービスの事業開発を担当。
参考文献
※1 https://www.bsigroup.com/localfiles/en-gb/kitemark/infographic/default.html
※2 YouGov社調べ(2023年) ※サンプル数 5390人(英国、中国、アメリカ、インドの成人)
※3 Morrisons社WEBサイト
https://www.morrisons-corporate.com/media-centre/corporate-news/morrisons-eggs-achieve-the-first-uk-carbon-neutral-bsi-kitemark-certification/
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