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COP29徹底解説:注目テーマ「資金支援」と残る課題とは?

20241111日から24日まで、アゼルバイジャン共和国の首都バクーにてCOP29(国連気候変動枠組条約第29回締約国会議)が開催されました。注目のテーマであり、今回目標水準が大きく引き上げられた「途上国向け資金支援」をはじめ、議論の最終結果と課題をお伝えします。

COP29の注目テーマ「途上国向け資金支援」

COP29では、気候変動の影響を特に受けやすい途上国への資金支援が最大の焦点となりました。

途上国はこれまで長年にわたって先進国に気候変動対策として資金支援を要求し続けており、これまでCOP21で定められた年間1,000億ドルの資金支援目標が継続されていました。しかし2020年の資金支援は目標を下回る約800億ドルにとどまったことや、発展途上国の気候変動対策の実現にはさらなる資金支援が必要とされるなど、目標の引き上げが求められていました。そのため、前々回のCOP27での「損失と損害」基金の設置や、COP28での基金運用の大枠についての合意採択により、資金支援を効果的かつ迅速に行うための資金メカニズムの整備が進められてきました。

そして今回のCOP29では、さらに具体的な資金支援の新たな目標=NCQGNew Collective Quantified Goal)の設定についての議論が行われました。

COPとは

COPConference of the Parties、以下COPと表記)は、気候変動枠組条約に基づく締約国会議の略称で、1995年から毎年開催されています。世界各国が一堂に会し、気候変動問題を解決することを目標として、その国際的な枠組みや合意を話し合う場です。

COPでは交渉以外にも、各国の展示(パビリオン)やセミナーなどのイベントが開催され、気候変動対策に最前線で取り組んでいる様々なステークホルダーが集まります。研究機関や企業、NGOなどが取り組みの成果を発表する場として、日本はCOP29で「ジャパン・パビリオン」を出展。適応や緩和に関するセミナーだけでなく、洪水シミレーションや太陽光パネルのガラスリサイクル、衛星を活用した地理空間情報プラットフォームなど、日本企業の最先端技術の展示を実施しました。ちなみにもっとも良く耳にするCOPは気候変動枠組条約ですが、その他生物多様性や砂漠化対処条約にもそれぞれ締約国会議があります。

これまでのCOPをおさらい

COPでは、これまでに京都議定書やパリ協定といった重要な合意が生まれ、気候目標の設定や進捗状況の確認が行われてきました。大まかな変遷を見ていきましょう。

  • COP31997年): 京都議定書の採択。先進国に温室効果ガス削減義務を課す。
  • COP212015年): パリ協定の採択。全締約国が気候変動対策を行う枠組みを構築。
  • COP262021年): 石炭削減や脱炭素社会への移行が議論の中心に

▼これまでのCOPにおける成果など

COP21
(2015年)
・パリ協定採択。途上国を含めた全締約国が排出削減
等の目標(NDC)を設定
・年1,000億ドルの気候資金目標を2025年まで継続
COP26
(2021年)
・1.5℃目標への努力を追求
・石炭火力発電の段階的削減に言及
・適応資金支援を25年までに19年比2倍
・パリ協定ルール完成
COP27
(2022年)
・「損失と損害」の基金で合意
・1.5度目標への努力を追求
・石炭火力発言の段階的削減に言及
COP28
(2023年
・初の「グローバルストックテイク」結果の公表
ー 化石燃料からの脱却の加速、再エネ容量3倍、
エネルギー効率2倍などの具体策
・「損失と損害」の基金の設立

出典:日本総研「COP29 の成果と課題」をもとにアミタ作成

▼COPでの主要なできごと

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出典:環境省「COP(コップ)ってなに?気候変動に関するCOPを紹介

こうした議論を通じて、世界の気候変動対策の方向性が定まってきました。

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COP29の最終結果

COP29で、途上国側は2035年までに年1兆ドル超の公的資金による支援目標の設定を求めましたが、最終的には、先進国は途上国に対して、2035年までに途上国に対して年間3,000億ドルの資金支援目標を設定することが決定されました。

また、今後の資金調達の方向性を示す「1.3兆ドルに向けたロードマップ」が作成され、次回のCOP30(ブラジル・ベレン)で具体的な進捗が報告される予定です。

その他にも以下のような合意が成立しています。

COP29における主な決定事項など

新たな
気候資金目標
(NCQG)
・途上国のNDC推進には2030年までに5.1~6.8 兆ドルの資金が必要
・途上国に対して、公的・民間資金から2035年までに年1.3兆ドルの支 援が行われるよう協力、そのなかで、先進国は途上国支援を2035年までに少なくとも年3,000億ドルに増やす
・来年のブラジル ベレンでのCOP30に向けて、新たな 資金支援等を検討する「1.3兆ドルへのロードマップ」 を設立、COP30にて報告
市場
メカニズム
・パリ協定6条ルール完成
― 初日にパリ協定6条4項(国連管理メカニズム)のガイダンス合意
緩和策 ・目立った成果なし(GSTの成果の実施に関するUAE対話の実施指針の合意は先送り)
適応策 ・適応に関する世界目標(GGA)の推進に向けたバクー適応ロードマップの立ち上げ
損失と損害 ・「損失と損害」の基金は2025年に資金配分開始
その他 ・英国やブラジルが新たなNDCを提出。日本など13カ国が強化された透明性報告書を提出

出典:日本総研「COP29 の成果と課題」をもとにアミタ作成

今後の課題

COP29を通じて気候変動への取り組みに前進が見られたものの、不十分との評価、課題も多く残されています。

  • 資金支援の実行力

各国が約束した資金を確実に拠出できるかが問われます。新たな資金支援を検討するために「1.3兆ドルへのロードマップ」を設立し、来年ブラジルで開催予定のCOP30で報告することが決められました。

  • グローバル・ストックテイク(以下GSTと表記)

パリ協定で定めた各目標に対する進捗状況を5年ごとに包括的に評価するGSTの実施に関するUAE対話では、締結国間で見解が一致せず、議論は次回に持ち越されました。GSTのプロセス改善に向けて、各国が主張したGSTの対象分野やスケジュールが非公式文書に残され、次回の検討に用いられます。

次回COP30での具体的な行動が注目されています。

最後に

国際的に、気候変動対策や脱炭素への取り組みは進められてはいるものの、世界のGHG排出量は未だ増加し続けており、2024年の世界平均気温は観測史上最高の上昇幅1.5度(産業革命前比)に達する見込みです。このような状況を踏まえると、現状の取り組みではまだまだ不十分で、気候変動問題は危機的状況に置かれていることがわかります。

取り組みを加速させるには、まずCOPで決められた枠組みや目標をしっかりと達成していくことが求められます。そのためには、企業や地域自治体、研究機関、国民など、地球の全てのステークホルダーが行動変容することが重要です。

支援をする国、される国という彼我の関係ではなく、各国が当事者意識を持ち、取り組みを着実に進めていくことが大切でしょう。

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執筆者情報(執筆時点)

大川 侑菜(おおかわ ゆうな)
アミタホールディングス株式会社
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