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CSRD(企業サステナビリティ報告指令)とは?日本企業も対象?

Image by Pexels from Pixabay

20231月に発効されたCSRDは、EU域内の大企業や上場企業に対するサステナビリティ情報の義務的な開示を規定した指令です。2024年度の会計年度から報告の対象となり、2025年以降日本企業もEU域内の子会社が開示対象の条件に一致した場合など、開示の対応が求められます。今回は、CSRDの概要と開示内容について説明します。

CSRDとは

「企業サステナビリティ報告指令(CSRD: Corporate Sustainability Reporting Directive)」とは、20231月にEU域内の大企業および上場企業を対象に発効された、サステナビリティの情報開示に関する指令です。

これまで、EUでは「非財務情報開示指令(NFRD: Non-Financial Reporting Directive)」の対象となる企業は非財務情報を開示することが義務付けられていました。しかしながら、NFRDが制定された2014年当初は、CSRを起点とした情報開示が求められており、その後のパリ協定や欧州グリーンディールのような野心的な脱炭素目標設定やコミットメント等を前提としたものではありませんでした。また、NFRDでは対象となる企業が従業員500名以上の大企業に限られており、NFRDにおける影響範囲は限定的な範囲にとどまっていました。その後、より対象範囲や開示内容の拡充を図るべく、NFRDを刷新し発効された指令がCSRDです。EU加盟国は、CSRDの発効(20231)から18か月以内(20247)に国内法制化することが求められています。

NFRDとCSRDの違い

CSRDは、NFRDよりも開示範囲や対象企業が拡大し、また第三者認証による保証も義務化されるなど情報への信頼性も求められています。

nfrd_csrd.png

アミタ作成

CSRDの開示項目と基準は、後述の欧州サステナビリティ報告基準(ESRS:European Sustainability Reporting Standards)によって環境、社会、ガバナンスの各ESGのテーマごとに規定されています。これまでNFRDでは統一された開示基準がなく、企業が国際的な規準から任意で選択することができましたが、ESRSに適合した開示が義務化されていることが特徴です。また、これまで第三者認証は任意でしたが、いわゆるグリーンウォッシュを防ぐために義務化されました。とはいえ、まずは限定的保証を求めており、段階的に保証レベルを高めるよう定められています。

CSRDの対象企業とスケジュール

CSRDの対象企業は主にEUの大企業および上場企業(零細企業以外)であり、下図のとおり2024年の会計年度から段階的に適用されます。欧州委員会によると、NFRDでは約1.1万社であった対象企業が、CSRDでは約5万社に拡大されます。日本企業もEUに大企業に該当する子会社があった場合、早ければ2025年の会計年度から報告の対象になり、2028年以降は売上高等の規模により対象企業に該当する可能性があります。

csrd_condition.png

アミタ作成

CSRDのEU域外適用の要件

図「対象企業とスケジュール」のとおり、第三国企業と呼ばれるEU域外企業も条件を満たした場合、適用となります。EU域外の親会社がEU域内における純売上高が2会計年度1億5000万ユーロ以上であり、EU域内に下記のいずれかを満たす子会社があった場合が該当となります。
・EU子会社が大企業または上場企業に該当
・EU子会社の純売上高が4000万ユーロ超

なお、第三国企業においては、欧州委員会がCSRDと同等とみなすサステナビリティ報告基準に基づく報告を行い、第三者認証を受けている場合には、EU域内での子会社と支店によるCSRD報告を免除することができます。

ESRSの概要

CSRDは制度の枠組みを決めるものであり「欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)」は具体的な開示項目や基準を制定したものです。ESRSには、全般的な概念と原則を規定した「横断的(クロスカッティング)な基準」とESGの要素ごとに開示項目を規定した「トピック別基準」があります。なお、今後上記に加えてセクター別基準や、上場中小企業の基準、第三国企業の基準が追加される予定です。

esrs.png

業界関係なく適用される横断的基準には、全般的な原則と業界問わず全ての企業に適用される開示事項を規定するESRS1と2、
また環境(E1~E5)・社会(S1~S5)・ガバナンス(G1)のトピック別の基準が10つあります。

ESRSが定める基準のうち、ポイントとなるものを紹介します。

  • ポイント:ダブル・マテリアリティについて

ESRS1(一般要件)では、全般的な原則が規定されていますが、なかでも重要な原則がダブル・マテリアリティです。ダブル・マテリアリティとは、開示の基準として「気候変動が企業に与える影響」だけでなく「企業が気候変動に与える影響」という双方向の影響から開示を行う概念であり、CSRDでは本概念が採択されています。投資家の投資判断として気候変動が企業に与える影響だけの視点で捉えるのではなく、社会や環境といったより広範囲なステークホルダーにとって有用な情報を開示することが狙いです。

  • ポイント:トピック別基準へのアプローチ

トピック別基準では、戦略、影響、リスク、機会、指標と目標という項目に分かれて開示し、そのなかでもE1~E5S1~S4のそれぞれの項目に対して段階的に導入される開示の要件があります。

例えば、環境トピックに関する「E1」においては、下記のような開示項目があげられます。

E1気候変動

項目

具体的な開示指標

ガバナンス

・気候関連の考慮事項が管理・経営・監督機関の構成員の報酬に
織り込まれているか否か(インセンティブの有無)

戦略

・気候変動緩和への移行計画

・気候変動のリスクが物理的リスクか移行リスクか

・気候変動に関連した戦略とビジネスモデルのレジリエンス

インパクト・リスク・機会

・気候関連のインパクト、リスクおよび機会を特定し、評価するためのプロセス

・気候変動の緩和・適応に関する重要なインパクト、リスクおよび機会を得るための方針

・気候変動の緩和・適応のための行動とその実施に割り当てられたリソース

指標および目標(一部抜粋)

・気候関連目標

・エネルギー消費量とエネルギーミックスに関する情報

・企業のScope1~3の総排出量と純収益に基づくGHG単位を含むGHG排出量

・自社またはバリューチェーンにおけるGHGの除去および貯蔵

・カーボンクレジットの購入有無

・内部炭素価格制度の適用の有無

・需要な物理的リスクおよび移行リスクから予想される財務的影響・重要な気候関連の機会からの利益

CSRDとCSDDDの違い

2024年4月、欧州議会において、コーポレート・サステナビリティ・デューデリジェンス指令(Corporate Sustainability Due Diligence Directive,以下CSDDD)が正式に採択されました。CSDDDとは、EU域内の大企業を対象に人権や環境への悪影響に対するデューデリジェンス(特定・予防・緩和)の実施を義務づけるものです。

CSDDDの対象企業には、下記の6つが義務として課されます。
1. デューデリジェンスの企業方針及びリスク管理システムへの組込
2. 現実的・潜在的な負の影響の特定と評価
3. 潜在的な負の影響の防止、現実的な負の影響の停止・最小化
4. 現実的な負の影響に係る苦情処理メカニズムの構築
    及びステークホルダーとの有意義なエンゲージメント
5. デューデリジェンス実施方針及び手続の効果に係るモニタリング
6. デューデリジェンス結果の公表

CSDDDは悪影響の軽減の取り組みを義務化する一方で、CSRDはあくまでも報告用のフレームワークであり、透明性と情報開示義務を課します。また、CSDDDは、CSRDの一部内容を補完するものとして捉えられています。CSRDのESRS1(全般的要求事項)では、バリューチェーン全体でのデューデリジェンスを重要視していますが、詳細なガイダンスが欠けており、CSDDDの指針や方法論にて補っているとされています。

CSRDがもたらす日本企業への影響

CSRDの国際的な拡充は、日本企業にも影響を与えます。対象企業とスケジュールにおいて記載したとおり、日本企業もEUに大企業に該当する子会社があった場合は2025年の会計年度から、第三国企業に該当する場合は2028年以降の会計年度から対象となります。まずは、自社のEU域内の子会社が該当するか否か、また該当する場合適用となる年度を確認する必要があります。

また、202311月には、ESRSを策定している欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)CDPが企業のCSRD対応を促進すべく協力する発表がありました。特に、両者はCDPを通じてESRSのデータポイントの報告を行う企業を支援するための情報提供を行うなど、CDPの開示内容と連携してESRSの環境テーマの報告を準備することを推奨しています。例えば、ESRS E3水と海洋資源ではCDP水セキュリティと、ESRS E4生物多様性と生態系・E5資源利用とサーキュラーエコノミーではCDPフォレストと高い適合性が考えられます。

このように、既に企業が取り組んでいる情報開示内容とESRSで求められている開示項目が重なる部分もあるため、ESRSの開示要件を理解した後、既存の開示内容とESRSを照らし合わせ、新たに開示が必要な項目の有無を明確にしてから取り組むとよいでしょう。

CSRDに必要な準備

CSRDを準備する際、基本となるステップを一部紹介します。

1.CSRDの要求事項を理解する
CSRDの要求事項や基準、スコープを理解し、まずは自社が対象となるか、また対象となった場合、適用時期について確認しましょう。また、セクター別基準や、上場中小企業の基準、第三国企業の基準が追加される予定ですので、常に最新動向を把握する必要があります。

2.開示を含む今後のロードマップを作成する
自社が対象企業となった場合、まずプロジェクトチームを結成し、タスクを洗い出しましょう。グループ会社間での業務連携やデータ収集の準備など関係者やタスクが多岐に渡るため、期日を設けてタスク管理を行う必要があります。また、ロードマップを作成する際に重要な点は、開示をすることを目的・ゴールとしないことです。目的を情報開示やその他イニシアティブ対応に据えてしまっては、場当たり的な対応となり、いわゆるESGウォッシュになりかねません。CSRDの目的は情報開示を通じてサプライチェーン上の透明性を明らかにすることであり、つまり「自社の経営が持続可能であるかどうか」を明確にすることです。絶えず変化する外部状況にも適応できるよう、CSRDで開示したデータをもとに、改めて自社の理念とサステナビリティの取り組みを重ねて考え、持続性を担保できるような移行戦略の策定・実践を目指すことが大切です。

3.CSRDに必要なデータを収集する
開示項目に必要なデータを明らかにし、開示に必要なデータがあるかどうか、またなかった場合に、集計・管理・分析するプロセスを設計しましょう。また、第三者保証に対応するためにも、信頼できるツールの活用や、内部統制プロセスを確保しておきましょう。

その後、開示項目に沿って報告書を作成し、第三者保証を得ることも検討しましょう。

本記事では、CSRDの概要やESRS、準備の基本的なステップについて説明しましたが、重要なのは、CSRDへの対応を単なる情報開示のためではなく、自社の持続性を高める戦略・実行計画を策定または見直す機会として捉えることです。CSRDで求められるデータ収集やプロセス管理の取り組みを通じて、自社の経営課題を明確にし、経営層も関与しながら、理念やサステナビリティ施策を再検討していくことが不可欠です。CSRDへの対応は単なる義務履行ではなく、企業価値向上につながる重要な経営課題だと認識し、対象となった企業は積極的に取り組みましょう。

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