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インタビュー

株式会社村田製作所ムラタに聞く 社会価値と経済価値の好循環のつくり方

資源循環をはじめとするサステナビリティ経営の取り組みは、目標を掲げることはできても中身のある取り組みを行うことは簡単ではありません。取り組みを活性化させるためには、どのような目標設定やロードマップづくりを行っていくべきなのでしょうか。
今回は、最新の統合報告書において、環境をはじめとする社会価値の定量目標を設定するなど、先進的な情報開示と取り組みをされている、株式会社村田製作所 管理グループ サステナビリティ推進部 部長の熨斗 英人氏にお話を伺いました。

※株式会社村田製作所は、2021年に社会価値を取り入れた「Murata value report 2021」を公表。想定される社会の変化やそれに伴う事業機会とリスクに対して備え、持続的な成長に結びつけるため、長期視点の投資を積極的に推進(例:環境投資、技術獲得、リスク対策、ITインフラ等)する「戦略投資枠」として2022年度から2024年度の3カ年で2,300億円を投じ、変化が激しい経営環境の中でも社会価値と経済価値の好循環を生み出すことを通じて、成長・事業拡大できるよう先進的な経営戦略を打ち出している。
ムラタの社是とサステナビリティ

中村:本日はよろしくお願いします。早速ですが「Murata value report 2021」を拝読しました。サステナビリティの分野について、かなり踏み込んだ内容と感じました。まず、サステナビリティに関する貴社の考え方、捉え方について伺えますでしょうか。

熨斗氏:村田製作所は非常に社是を大事にしている会社です。社是にもあるように「文化の発展に貢献する」ことが我々のミッションです。社会価値と経済価値の好循環を生み出し、豊かな社会の実現に貢献していきたいと考えています。サステナビリティや資源循環の取り組みも、世の中の課題は何か、我々は事業を通じてその解決にいかに貢献するかというところから始まっています。また、最近では弊社の顧客や投資家、評価機関も、持続可能な社会への関心が急速に高まっていると感じていまして、我々の考え方と共通する部分が大きくなっているとも捉えています。レポートの中でも、弊社の社是と価値創造プロセスが連環していることを表現しています。

▼村田製作所 社是 Vision2030(長期構想)「ありたい姿」(村田製作所HPより)
shazetokachisouzo2.png中村:そのあたりの表現も先進的ですね。次にやはり目を惹くのが、売上高や営業利益率といった経済価値と並んで、循環資源化率などの社会価値について、定量的な目標値が設定されている点ですね。ここにもこだわりを感じました。

熨斗氏:そうですね。「社会価値と経済価値の好循環を生み出すことが持続的な成長に繋がるという考え方」が反映されていると思います。目標化にあたっては、どう表現することが、見る側にとって見やすいかを意識しました。定量的な数値で見える化できないことは、達成できたのか、できなかったのかも分かりませんし、その進捗も分かりません。見える化へのこだわりも社風の一つですね。会社の風土として、ロジカルに、科学的に考えていきたい。それもやはり社是に根差していると思います。「科学的管理を実践し」という部分です。

どうありたいか、から考える

中村:掲げられている目標を決めるにあたって、どのような議論があったのですか?

熨斗氏:2050年の世の中はどうなっているのか。資源循環で言えば、資源は今のように使うことはできない。一方で省エネ・省資源などの技術も進展している。その前提で、いつまでにはこうありたい、という姿を掲げることがスタートでした。細かいことを言うようですが「あるべき」ではなく「ありたい」姿を掲げて、積み上げ式でなく、バックキャスト型でマイルストーンを置いていきました。本当にそれが達成できるのか、エビデンスはどうだ、といった議論もなかったわけではありません。しかし、重要なのは、世の中はそうなっていくんだという想いのもと大きな方向として、そこに向けて走っていくことが大事だと考えて定量化にも踏み込みました。

▼村田製作所 全社経営目標(村田製作所HPより)
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中村:どうありたいか、から考えたということですね。

熨斗氏:それが大事だと思います。例えば弊社の経営陣も「グローバルNo.1部品メーカーを目指す」ということをよく口に出しています。「ムラタがお客様にとって最善の選択となるようになっていたいよね」とも。我々もお客様に「最善だ」と思って選んでもらうために、どんな会社になっていたいのかという発想から考えられているかと思います。ただ、高い目標は掲げましたが、まだまだ課題も多いです。設定したKPIの算定手法から構築しなければならないし、現在の積み上げだけでは2030年の目標にも到達しませんので、どう達成するかの手法もこれから考えていかなければなりません。どこから手を付けるべきかを明らかにする必要がありますし、例え特定できなくともやるべき箇所には手を付けていく、それがこれからの3カ年になると考えています。

経営陣としての意志を伝える

中村:長期視点の投資を積極的に推進する「戦略投資枠」にも、好循環を生み出そうとする御社の経営陣の意志を感じます。

熨斗氏:RE100※への加盟や、インターナルカーボンプライシング※の導入などについても、当時は思い切った舵取りをしてきたと思いますが、顧客や世の中は確実にそうした流れに向けて進んでいます。この3カ年についても、前述のように課題や未整理な部分はあっても、経営陣としてはそこに投資する意志を示してくれています。弊社ではこれまでも、環境会計などで対外的に公表してきましたが、環境やサステナビリティといったテーマに対して、どれだけの経営資源を投入しようとしているのかを明らかにすべきだと、経営陣も考えています。

※RE100...事業で消費する電力を100%再生可能エネルギー由来のものに切り替えることを目指す企業によって構成される国際イニシアティブ
※インターナルカーボンプライシング...組織が独自に自社の炭素排出量に価格を付け、何らかの金銭価値を付与することで、企業活動を意図的に低炭素に変化させることを狙いとした取り組み。

中村:そうした経営の意志も示されたことで、社内外に何か変化は生まれましたか?

熨斗氏:全社経営目標を掲げたことで、これまで社内であまり接点がなかった人や部署から「我々の部署はこの目標に向けて何をすれば貢献できるのか」といったコンタクトが増えました。貢献の仕方が分かりにくい部署もどうしてもありますから、そうした部署や社員にどのように伝えていくのか、或いは業務との繋がりをどうつくっていくのかもまだまだ課題ですね。社外については、現在掲げている目標は弊社が単独で頑張っても達成できず、社外の色々なステークホルダーと共創していく必要があります。色々な方と出会っていきたい。そうした動きが全社的に生み出されていくためにも、まずは社内浸透が重要だと考えています。

中村:なるほど。本日は貴重なお話をありがとうございました。

話し手プロフィール

noshi2.jpg熨斗 英人(のし ひでと)氏
村田製作所
管理グループ サステナビリティ推進部 部長

1997年、株式会社村田製作所に入社。入社後は本社や工場で環境保全、防災、建設・工事・ファシリティ管理などを担当。2020年より現職で、CSR・環境・安全・防災・健康推進などを担当。

聞き手プロフィール

Mr.nakamura_014.jpg中村 圭一(なかむら けいいち)
アミタ株式会社
社会デザイングループ

大学では環境教育を専攻。教育ツールや情報サービスの企画運営、商品開発、マーケティング、および広報、さらに製造とリサイクル営業と、アミタの事業の上流から下流までを幅広く手掛ける。現在は分析力と企画力を生かし、企業の長期ビジョン作成や新規事業立案に従事。

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