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インタビュー

サッポロビールに聞く 脱炭素の取り組みと廃棄物管理

脱炭素やESGへの対応、サーキュラーエコノミーの推進など、企業に求められる対応は年々増加しています。しかしながら日本の生産年齢人口は減少に向かい、実務の現場では人材が不足しています。そのような状況の中、廃棄物管理業務をはじめとした環境管理にどのように向き合えばよいのでしょうか。
今回は、サッポログループにおける廃棄物管理の全体最適化やCO2排出量の算出などの取り組みを進めておられる、サッポロビール株式会社 経営企画部 サステナビリティグループ リーダーの板垣 武志氏に「サステナビリティ経営と廃棄物管理の取り組み」についてお話をいただきました。

サッポログループでは「Sustainable Smile Plan 」として、サステナビリティ重点課題を、①『酒・食・飲』による潤いの提供、②社会との共栄、③環境保全、④個性かがやく人財の輩出の"4つの約束"に整理して取り組んでいる。環境保全の重点課題として地球温暖化防止、3Rの推進、自然との共生を掲げ、CO2排出量削減等を推進。廃棄物管理については、人財の育成に加え、グループの管理基準、ガイドラインを設け、PDCAを強化。さらに、システム導入や一部アウトソーシングを行うことでコンプライアンス強化、業務効率化、サステナビリティ推進へのデータ活用などを実践している。
2050年CO2ゼロに向けての取り組み

武津:先ほどはセミナーでのご講演お疲れさまでした。今回、参加できなかった方もいらっしゃいますので、改めてセミナー内容をインタビューさせていただき、他社様への参考にしていただく内容にしていければと思っています。早速ですが、貴社のサステナビリティ経営で特に力を入れているのはどういったところでしょうか?

板垣氏:環境保全重点課題の脱炭素社会の実現、循環型社会の実現、自然共生社会の実現に注力しています。サッポログループの「環境ビジョン2050」にて2050年までに、自社拠点でのCO2排出量ゼロを目指しています。
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画像:サッポログループ 環境ビジョン2050

脱炭素社会の実現は、なかなか難しいテーマだと思っています。特に、Scope3も含めた目標設定と計画の道筋を考えることに苦労しています。再生可能エネルギー利用促進だけを見ても、自前でどのようにして再生可能エネルギーを獲得していくのか考えなければいけませんし、そもそも、再生可能エネルギーの利用だけで脱炭素の実現はできません。

武津:Scope3の計算は、どのような大変さがありますか?

板垣氏:サプライチェーン上流・下流をどこまで精度を高めて計算していくのかが、難しいですね。実際に他社様にもヒアリングしているのですが、同様のようです。まずは実際にやってみるというのはあるのでしょうが、現在、議論を進めている状況です。

武津:貴社はグループ会社様も多く、多角化されているので、エネルギー計算は複雑なのではないでしょうか?

板垣氏:そうですね。サッポロビール社だけに限らず、グループ会社には飲食店もありますし、海外展開もしていますので、CO2排出をどのようにコントロールしていくのかは課題です。

武津:社内の脱炭素への理解はいかがでしょうか?itagakisama1.png

板垣氏:現在、脱炭素について社内への理解浸透に努めているところです。また、市場や取引先の反応も変わってきていると感じます。たとえば、サッポログループの不動産会社が手がける「恵比寿ガーデンプレイス」では、積極的に電力の100%再生可能エネルギー化を目指しています。実際に、テナントから入居条件として、不動産会社の脱炭素への取り組みを重視されるケースも増えてきているようです。

ただ、CO2の削減目標によっては経営や決算に対してのインパクトが測りきれていません。2050年までにCO2ゼロ宣言をしている企業もありますが、実行していくには解決していかなければならない課題が多いのではないでしょうか?

武津:たしかに、最近では社長自らが率先してCO2ゼロを宣言するケースも多いです。そのためには、かなりの投資が必要になるでしょう。

板垣氏:そうですね。たとえば、再生可能エネルギーのための設備投資や、再生可能エネルギーの購入など、経営としてどこまで投資するのかが悩ましいところです。

次世代の廃棄物マネジメントのあるべき姿とは?

武津:サッポログループでは、廃棄物管理についても脱炭素への動きと連動して取り組みを進めていますよね。たとえば、弊社のSmartマネジメント をうまくご活用いただき、CO2削減の項目を設けるなど、従来の枠を超えた、廃棄物マネジメントをされているなと思います。
また、こういったCO2削減の項目の使用を前提として、全社へのルールの統一を図っていただいていますね。
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画像:サッポログループ 廃棄物管理の仕組み

板垣氏:サッポログループでは、環境基本理念を最上位概念とし、グループ統一の仕組みを整備しています。管理基準でPDCAを確立し、ガイドラインでは注意点や対応方法など統一したものを使用してもらっています。こういった、統一された仕組みのなかで、Smartマネジメントを利用しています。

武津:統一されたルールについて、他社様と比べ、社内浸透ができていると感じます。どうしてなのでしょうか?

板垣氏:全社的に浸透できているのは、各拠点の担当者がその価値をしっかりと理解したうえで運用していることが大きいと感じています。業務フローを統一することで、各拠点の廃棄物管理の業務が、今までより負担軽減され、効率化されることを伝えてきました。

武津:弊社のSmartマネジメントは、貴社の内部監査でよく使っていると聞いています。いかがでしょうか。

板垣氏:Smartマネジメントを導入して、これまでは現場に行かないとわからないようなことが、本社にいてもよくわかるようになりました。たとえば、導入前でしたら、各拠点の産業廃棄物の契約書の確認は本社ではできませんでしたし、実際に、その拠点が何を廃棄しているかも現場に行かないとわかりませんでした。導入してからは、契約書や委託状況を本社で確認できますし、許可証の期限管理はモニタリングで警告も出ていますので、いつでも現場の状況がわかるようになりました。

武津:Smartマネジメントのコンプライアンス面はいかがですか?

板垣氏:やはり、廃棄物管理の専門家にみてもらっているという安心感はあります。業務に習熟していない人が確認しても気づかない部分を教えてもらえるのが良いと思います。たとえば、社内の契約書の雛形は本社でチェックしているので問題ないのですが、社外の処理業者がもってきている雛形を全てチェックすることは簡単ではありません。できるだけ自社の雛形を使うように伝えていますが、社外の雛形の契約書についてアミタさんにチェックしてもらえるのはありがたいです。

武津:貴社の非生産拠点では、廃棄物管理業務の一部業務にアウトソーシングを取り入れたことで業務フローも変わったのではないでしょうか?貴社の廃棄物管理に対する考え方としては、非生産拠点の業務負荷を下げてコンプライアンスを担保するために、コア業務でない部分については、アウトソーシングを活用していこうとしているのでしょうか?interview2.png

板垣氏:廃棄物の排出が年1回くらいの非生産拠点では、どうやって廃棄物を処理すればいいのかについて、知識やスキルが定着しにくいものです。たとえばその対策として、毎年、廃棄物処理法の講習に参加してもらう方法もありますが、コストや時間も掛かって大変です。おそらく、教育を受ける側も、通常の業務以外に覚えることが増えて大変だと思います。それならば、廃棄物管理の専門家に任せた方が安心で効率的という判断になりますよね。そのほうが全社での管理もしやすいですし、コンプライアンスを担保できます。ただ、特に今まで一生懸命に廃棄物管理をされてきた人にとって、そういった新しい取り組みは、なかなか納得できることではありませんし、その気持ちは十分に理解しています。今までよりも業務負荷が軽減されること、会社全体のコンプライアンスが担保されることをしっかりと伝えることで、納得してもらえるように取り組んできました。

武津:今回、私も貴社の説明会に立ち会いましたが、説明がきちんとされていると感じました。

板垣氏:実際に取り組んでみて、色々と問題が発生することがあるかもしれませんが、発生した段階で一つ一つ解決していくようにしてきました。アウトソーシングは始まってからわかることも多いと思っています。まずはやってみないと、細かい部分の課題も見えてきません。改めてアウトソーシング導入のために業務を見直すなかで、本社では見えていなかった、各拠点の多岐にわたる業務を知る機会にもなりました。また、特に、年に数回しか廃棄物の処理が経験できない拠点などでは、専門的な知識、スキルのある企業に任せる価値を見出すことが出来るのではないかと考えています。

武津:サッポログループでは、工場にもアウトソーシングのニーズはあるのでしょうか?最近では、自社でITツールを導入しているものの、それを使えるメンバーの退職や、廃棄物管理よりも脱炭素に注力するためなど、工場でのアウトソーシングのニーズが高まってきていると感じています。

板垣氏:そうですね。工場から排出される廃棄物については、現場だからこそわかることも多いので、今は工場の方々に任せていることが多いです。ただし、弊社でも廃棄物管理についてわかるメンバーが年々少なくなってくる可能性もあります。今後についてはアウトソーシングをすることも検討していく必要があるかもしれないですね。

武津:おっしゃるとおり、人材不足は今後益々、課題となってくると思います。これまでのお話のとおり、貴社ではすでに取り組まれていますが、これからの廃棄物管理は、DX化やシステム化、外部へアウトソーシングするなどの様々な選択肢を活用していくことで企業としての全体最適が可能だと考えています。

4月施行のプラ新法への対応

武津:今年4月からプラ新法がスタートしましたが、貴社の取り組みはいかがでしょうか?

板垣氏:2021年10月に、サッポログループでは、プラスチックの使用削減、減量化、リサイクル性の高い製品設計や再生材・バイオマスプラスチックへの転換を推進するため「プラスチック方針」を定めました。
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画像:サッポログループ プラスチック方針

弊社でも、2030年までに化石燃料由来のワンウェイプラスチック製の広告類を国内で原則廃止にすると決め、ポリコップについては紙コップへの切り替えを順次、進めています。また、国内製造のワインについては、2030年までにリサイクル原料の使用割合を50%にしていく予定です。その他の酒類でもペットボトルを使用していますので、再生ペットボトル使用の比率をどのように上げていくかは今後の課題だと考えています。
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画像:サッポロビール社 プラスチック 取り組み事例

グループ会社であるポッカサッポロ社では、2030年までにポッカサッポロ社が販売するペットボトル商品について、リサイクル原料の使用割合を50%にすると決めています。サッポロライオン社では、順次、プラスチック製のストローを紙製のストローに切り替えています。

武津:プラ新法への取り組みも、各社、手探りの中だと思いますが、貴社ではすでにグループとしての方針を決め、取り組みを進めておられるのですね。

板垣様、貴重なお話をありがとうございました。引き続き、貴社へのご支援をさせていただきますので、今後ともどうぞよろしくお願いします。

話し手プロフィール

profile_itagakisama.png板垣 武志(いたがき たけし)氏
サッポロビール株式会社
経営企画部 サステナビリティグループ リーダー

入社後、エリア営業を数年経験後、地区本部営業企画部部門でマーケティング業務を長く担当。本社人事総務部、経営戦略部門を経験後、ビール酒造組合に出向。2021年 9 月より経営企画部で廃棄物管理を担当し、現在に至る。

聞き手プロフィール

profile_fukastu.png武津 雄太(ふかつ ゆうた)
アミタ株式会社
社会デザイン・スマートエコグループ グループマネージャー

製造業を中心とした環境管理のマネジメントシステムの導入支援、廃棄物リサイクルルートの構築支援、脱炭素に向けた目標設定支援等、環境業務全般のコンサルティングを実施。2021年1月より社会デザイン・スマートエコグループのマネージャー。ICTやアウトソーシングによる企業の環境管理業務をトータルサポート。

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